少林サッカー | 6/7 | 渋谷東急 | 監督/チャウ・シンチー | 脚本/チャウ・シンチー、ツァン・カンチョング |
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話題の中国映画だ。かっとんでいるところが、とっても楽しい。仲間をつのってチームをつくり、よろよろスタートするが、俄然強くなってくる・・・という、お決まりのパターン。けれど、脚本がしっかりしていて、話の破綻がない。こういう破天荒な話だと辻褄が合わないとか、なんか変、ってのが必ずあるもんだけど、そういうのがない。たとえば、主人公たちの目的は少林寺の普及にあることは、最期まで一貫している。しかも、メンバー6人の性格や様子が、じつに的確に描かれていて、キャラクターがはっきりつたわってくる。それは、巧み。さらに、善悪の対立も、過去と現在の対比で分かりやすい。それから、特筆すべきはCGやワイヤの大ネタではなく、小さな気の効いたギャグがたくさん盛り込まれていることだ。これが、とてもオカシイ。ちと問題は饅頭屋の娘の扱いかな。彼女の顔のいぼいぼは、なにが原因で、最期はなぜキレイになってしまうのか。合理的な解説が欲しかった。たとえば、ちゃんと手術したとかいいくすりが見つかったとか。それに、登場シーンは多いのだけれど、映画の中で素顔ででることがないのも、文句をつけたい。最初はぶつぶつ顔で髪に隠れて見えない。つぎは、化粧をして肩をいからせいノリノリで登場して唖然(あの性格の激変はなんなんだは?)。最期は頭をそりあげてでる。最期ぐらい、フツーの様子で見せて欲しい。看板だけじゃ不満だ。サッカーシーンは、どこまでが実写で、どれがCGか分からないでき。迫力満点で、笑えるというか、楽しめた。 客席にかなりの小学生男子がいた模様。平日の12時にどーしているのか分からないが。で、「少林サッカー」とタイトルがでると、「オーッ!」と歓声が湧き、試合のとんでもシーンやゴールシーンでは、パチパチと拍手まで起こる。なかなか少年たちに人気らしい。 | ||||
ルーヴルの怪人 | 6/20 | 渋谷東急3 | 監督/ジャン=ポール・サロメ | 脚本/ジェローム・トネール |
ものすごくテンポの速い映画で、最初の10分ぐらいは目が回った。余韻を残さないカット、時間をとばしたつなぎ。小気味よすぎて、ついていくのがやっと。「ヴィドック」のテンポに似ているな、と思った。フランス映画の古典的よさである饒舌さと甘ったるさが、ない。かといってハリウッドのテンポとも違う。たんにめまぐるしいだけ? それと、全編にいえるのが、翻訳と字幕のひどさ。意味をとるのに時間がかかり、つっかかる日本語になっている。「使命を全うしろ」なんて、会話じゃ使わないし、第一読めないよ。読んで考えているうちに次のシーンに行ってしまう。それと、1枚に2項目以上の内容がつまっているので、分かりにくいことも多かった。で。本物のルーブル美術館で撮影したのがウリのようだけれど、だからどうした? って感じだな。スリルもなければサスペンスもない。でてくる「怪人」が、学芸会なみの陳腐さで、思わず笑いを誘ってくれたりもする。お話は単純で、成仏できなかったミイラが悪さをする、というもの。その割りにあっけらかん、なんだよね。だれもが深刻さがない。主人公も、次第に誰なんだか何なんだか分からなくなっていく。便利屋青年に絞るとかすればいいのに、老刑事がでてきたり、考古学フリークの警備員(個人的には彼が面白くなりそうなキャラクターだと思うが、いかしきれていなかった)がちょっかいを出したり、老女の研究員(HPで見たら、ジュリー・クリスティだったとは・・・どーりで色っぽいはず)もでてくるわ。わけ分からない。んで、あのミイラは誰だったの? よく分からないです。緻密さや布石が足りないのも、致命的。過去の博士の日記がいとも簡単に発見されたり、護符が突然土産物売場に並べられたり。あれっていったい何よ? ってなもんだ。ソフィー・マルソーはオバサンになりすぎ。それに、何で彼女にミイラが乗り移ったのかも分からず。墓地で笑ってた女はなんなんだ? それにしても、彼女、1人で夜中の博物館に忍び込んでミイラを見て、怖くないのかね? 面白かったのは、墓地の墓標で、割れて人間が飛び出てくるような彫刻のあるものがあったこと。すげえな。 | ||||
es[エス] | 6/26 | シネセゾン渋谷 | 監督/オリバー・ヒルシュビーゲル | 脚本/マリオ・ジョルダーノ |
恐怖と怒りを感じさせる凄い映画。インパクト十分。怖さ200%。つくりもののサスペンス何かより、100倍も怖いぞ。ちょっと疲れていたので、フツーの映画なら寝てしまうかも・・・なんて思いながら見始めたのだが、俄然目が冴えてしまい、ドキドキしながら見入ってしまった。設定の面白さ、鋭くえぐる人間の本性。スリリングで衝撃的な映画だ。事前に知っていたのは、刑務所で実験するということだけ。ま、その通りなのだけれど、看守と囚人に分けてその行動の変化を調べるというのは、興味深くもあり、怖い。想像通り看守組がどんどん強権を発揮しだし、囚人をいたぶり、エスカレートして・・・。本来の実体はなく、単にそういう役割を与えられただけなのに、錯覚というか思いこみというか、使命感に燃えてきてしまう人間の怖さ。これは、世の中の制服を着て商売をしている主に役人の方々にじっくりと見せるべき映画だと思う。別に本人が偉いわけでもないのに、思いこんでいく。単に実権なのにここまでエスカレートするのだから、職務として制服を着てあれこれ指示を出している警官の方々は、自分がとても大きな存在に見えているはずだと思う。日頃の横柄でつっけんどんな態度なんか、制服と役割とねじ曲がった使命感が大きいのだろう。あとでホームページを見たら、過去にスタンフォード大学で行われた実験をベースにしたものだとか。さもありなん。単に机上の空論でなく、事実を元にした映画の迫力が十分につたわってくる。面白いのは、これをドイツ人がつくったことだ。どうしてもナチスが連想されてしまう。失礼ながら、ドイツ人ならこうも豹変するんだろう、という偏見で見てしまう。アメリカ人だって日本人だって同じように性格も変わるんだろうな。怖いな、怖いな。役者もいい。まるで乗り移ったかのような、というか、実験者そのものみたいな豹変ぶり。ひとつ物足りないのは、主人公の彼女の存在。たまたま事故で知り合った、というバックグラウンドが紹介されるだけで、うまく活かされてないような気がする。なんとか、有機的に活用できなかったものか。いやー、それにしても面白かったし、衝撃度も十分だった。 | ||||
マジェスティック | 6/26 | 渋谷東急2 | 監督/フランク・ダラボン | 脚本/マイケル・スローン |
とんかつ勝一でひれかつ定食900円を食べて旭屋書店、三省堂をめぐって時間前に映画館にはいる。平日の3時過ぎというのに、館内には客がすでに並んでいる。人気があるのか、入りはよい気配。地味そうな映画なんだけど。で、眠気はこの映画で襲ってきた。30分過ぎから眠くなり、40分目ぐらいから15分間は完全に寝ていた。気がついたら、灯台でしゃっくりを直すためにキスするシーンだった。そのあとずっと見続けて、それでも十分に面白かった。けれど、見損なった部分を見るためにそのまま残り、2度目は歓迎パーティが終わった翌日、映画館の修繕をはじめようとするところまで見た。この映画では、アメリカ映画界と、アメリカ人の心意気を見たような気がする。アメリカ人が第二次世界大戦後に一瞬忘れてしまった建国の際の決意、そして、自由を守ることへの誇り。そいつを忘れた時期を臆せず表に出し、恥じ、本来のアメリカを再確認する。これは、いまのアメリカにとって必要な自己確認なのだろう。日本で社会派の映画監督がつくると国家への対立の姿勢や告発という傾向がつよくなるが、これは国民性の違いだろう。日本人はもともと愛国心なんてもっている人種は少ないし、口に出すこともない。たまに口に出す人がいるとすれば、それはばりばりの右翼だったりする。そして短絡的に憲法改正や軍備増強を主張する。この映画を見ると、愛国心というのが小さな町の小さなレストランのコックにも深く根づいていることが分かる。それは、単に国を守るということだけでなく、自由を守ることであるということがはっきり分かる。そして、映画人としては、映画こそがその自由を延々とつたえ、守ってきているんだ、という主張も読み取れる。そうしたメッセージがあるにも係わらず、この映画はとても優しい。なぜなら、愛国心もなにもかも、人を犠牲にするのではなく、人と人とが愛し合い、ともに築き上げるものであるということが描かれているからだ。滅私奉公なんてお呼びではない。もちろん、アメリカの小さな町でも60数人が戦争で犠牲になり、深く悲しんでいる。そして、勇ましく戦った子供たちを誇りに思ってもいる。けれど、英霊ではなく、いまでもなお、亡くなった友だちたちであり、愛すべき子供たちなのだ。国に捧げた命などではない。ハリウッドを襲ったレッドパージを背景に、ハリウッドのシナリオライターと、アメリカの<理想的>な町の1軒のうらびれた映画館の経営者をパラレルに構成し、映画こそ人々の喜び、と主張する。・・・もっとも、主人公は合議制でどんどん売れる、または、お涙頂戴の映画づくりを追求するハリウッドを棄てて、小さな町の経営者の道を選択するのだけれど、これも予定調和的で、また、アメリカ人の心意気でもあるだろう。こうした精神が、すべての人々に息づいているとも思わないけれど(だって、設定は戦後すぐの時代になっているからね)、それがアメリカの理想であり、守るべき精神であるということがつたわってくる。まったく、あざとい映画だ。こいつはアカデミー賞狙いか? 個人的には、クラシックを弾けとかつての女教師にいわれ、結局、ジャズを弾いてしまうところが気に入っている。ヒロインは、決して美人でなく、いかつい。けれど、そのいかつい顔つきが、この映画には合っていると思う。音楽がいい。ナット・キング・コールとかスイングジャズとか、気持ちが和らいでくる。 |