2013年6月

コレクター6/4シネマスクエアとうきゅう監督/モーガン・オニール脚本/モーガン・オニール、ポール・A・ライデン
原題は"The Factory"。あの「コレクター」のリメイクではない。allcinemaのあらすじは「ニューヨーク州バッファロー。3年にわたって謎の娼婦失踪事件を追い続けるNY市警のマイクとケルシー。ある日、そんな2人のもとに、マイクの17歳になる愛娘アビーが娼婦と間違われて犯人に連れ去られたとの衝撃の連絡が入る。誘拐事件における被害者救出の可能性は、まさに時間との勝負。必死に犯人の行方を追うマイクとケルシーだったが」。ワーナーとダークキャッスルの製作。名作にあやかっての邦題はセコイ。「ファクトリー」でもいいと思うんだが。
最初に"Based on the actual story"とでてきた。フツーは"Based on the true story"が多いと思うんだが、違いはなんだろ。女性を連続的に襲い、飼育して子供を産ませていたという話。しかし、犯人がなぜ子供を欲しがったのか、については言及されていない。だから、いまひとつ妖しさが盛り上がらない。犯人は、いったいどういう目的で…が肝だと思うんだけど。
最初、ジュモーはオカマを誘ってしまい、怒って殺す。なので殺しが目的? おと思わせておいて、実は…な展開。アビーが囚われ、他の飼育され中の2人と会って、なるほどと分かるんだけど、まだこの段階では個人的なハーレム? それにしても、ジュモーはなぜさっさとアビーを犯さない? 映画だからもったいぶってる? それとも、儀式が必要だったから? それにしてもアビーは幼児体型で、妖しい。中高生かと思ったら、コーネル大学に合格してるとかいってた。バカじゃないのね。でも、彼氏のタッドと別れたくないからと、入学を拒んでるらしい。やっぱバカだ。
そのタッドは、アビーが誘拐されたとき近くにいた。タッドが働いてるダイナーにアビーが会いに来ていて、アビーに「別れよう」と言っていた。それで外に出たアビーが、まるで売春婦みたいな格好なのでジュモーに声をかけられ、誘拐されたわけだ。あのときタッドはアビーがクルマの男と話してるのを見ていて、止めに行くのかと思ったらカバンか何かをいじってて、すると携帯が鳴って「自宅」と字幕でる意味が分からなかった。最初タッドはマイクに「アビーとは会ってない」と嘘をいったりするしね。でも後から、アビーはカバンと携帯を店に置いていったとマイクに言う。でも、携帯をおいて飛び出すか? たんにタバコを吸いにでただけ?

で、追っている刑事たちがトンマ。上司は「この事件はもう探るな」といっている。でもマイクは、黒いセダンの男だと確信し上司に「最後だから」と頼み込み、急襲する。でも、そこにいたのは車椅子の男だった…。ジュモーがその男のナンバープレートを盗んで使っていたというオチだけど、これって失態だろ。このシーンで、車椅子の男の部屋に蝶のコレクションがあったのは、「コレクター」に経緯を払ってのことかな?
さらにマイクはダリルの部屋でジュモーのメモ書きを発見するんだが、封筒には薬剤名(ヘパリンとか)がメモってある。でも、そこでマイクの思考がストップ…。とりあえず封筒の住所に電話して留守電にメッセージを残す…の翌日かにケルシーに言うと、「なぜそんな大事なことを早く言わない」と非難される。で、その後マイクが件の会社に電話すると封筒の会社がケータリング会社で病院にも派遣していることを知る。そこで、やっとケータリング→ホットドッグの匂い→額の傷→訛り→「ジュモーだ!」と結びつく。でも、封筒の会社が何してるかなんてネットで検索すりゃ一発だろ。アホかと思う。で、マイクとケルシーがジュモーの家に急行。光の広がらない(定番の)懐中電灯で潜入する…のだけれど、はやく応援を呼べよ! と言いたい。
飼育場での、女たちを飼い慣らしていく感じはでてた。ただし、ジュモーの目的は示唆するだけ。そういえば前半からヒッチハイクのイメージが断片的にインサートされていて、これがラストのドンデンにつながるんだが、ちょっと意外な展開ではあった。マイクと一緒に犯人を追っていたケルシーが、実は、ジュモーの最初の被害者で、信者でもあった、と。それでジュモーが捕まらないよう情報を攪乱していた、と。意外すぎて呆気。その直後、ケルシーがジュモーの手先としていかにふるまってきたかがフラッシュバックでだだだっと描かれるんだけど、早すぎて分からんよ。
とはいえ、ジュモーのどこにそんなカリスマ性があるのかが分からないのでは説得力がない。いったいジュモーとケルシーは、誘拐した売春婦に子供を産ませ、どうしようとしていたんだろう。なぜ売春婦だったのだろう。ケルシーは、他人の生んだ子供でも、ジュモーの血を引いていればうれしい? ケルシー自身も彼氏いない歴が長そうだったけど、それでジュモーに入れあげた?
ジュモーの屋敷に潜入したマイクは、ジュモーを射殺するけれど、ケルシーに殺されてしまう。そして、飼育されていた、でもアビーはまだ犯されていなかったいなかったけれど、解放された。そして、保育器で成長していた赤ん坊は…なんと、ケルシーが連れ去って、どこかの住宅地に引っ越していった…というラストなんだけど、ぜんぜん恐ろしくない。やっぱ、ジュモーの神秘性・カリスマ性を描き切れていないと、ね。
アビーが渡されるあの装置は妊娠検査? 排卵検査? 妊娠検査なら、まだセックスしていないアビーになぜ渡す?
娼婦の潜入警察官がいたけど、コートの下にバッジをすぐ見えるようにつけてるのか? 娼婦仲間はみな知ってるってことか? だって客はとらないんだろ。
ジュモーは、病院の入院患者も調達してたんだっけ? 薬だけだっけ? ダリルに女とやらせて、口止め料として…。そのダリルの上司の女性がなかなか美しかった。
オブリビオン6/5新宿シネマ1監督/ジョセフ・コシンスキー脚本/カール・ガイダシェク、マイケル・デブライン
監督のジョセフ・コシンスキーは原作者でもあるようだ。原題も"Oblivion"で、「忘れている状態、無意識の状態」の意味らしい。なるほど。題名は絵解きになっているのだな。allcinemaのあらすじは「2077年、地球はエイリアンの襲撃によって壊滅的な被害を受ける。やがて生き残った人類は他の惑星へと移住し、人々のいなくなった地球では、ドローンと呼ばれる無人偵察機による監視が続けられていた。そんな地球に残り、ドローンのメンテナンスやパトロールなどの任務に当たるジャック。ある日、未確認の宇宙船の墜落現場へと向かった彼は、そこでカプセルの中で眠る美女を発見する。やがて目を覚ました彼女はジュリアと名乗り、なぜか会ったこともないジャックの名を口にする。しかし肝心な記憶は曖昧で、彼女自身が何者なのかも分からなかった。一方ジュリアとの出会いをきっかけに、自分にも失われた記憶があることに気づくジャックだったが」
「惑星ソラリス」(実は未見なんだけど)「月に囚われた男」「アイランド」「スターウォーズ」…。SFを見つけた人ならもっと思い浮かぶに違いない。エイリアンの攻撃、大戦後の汚染された地球、取り残されて働く主人公、記憶喪失、立ち入り禁止地区、エイリアンの残党、実は自分がエイリアンの立場、クローン、命を捧げた主人公が残してくれた幼い命…。設定や展開、ラストまで既視感に満ちている。CGは見事でダイナミックなんだけど、話自体は1980〜90年代のものみたいに古めかしい。得体の知れない状況から次第に分かっていく事実も、ほとんど意外性がない。「やっぱり」「なーんだ」の連続だ。それでも、つくりが丁寧で適度な緊張感に満ちているから、飽きない。
飽きないもうひとつの理由は、ヒロインのジュリア(オルガ・キュリレンコ)の存在感かも。調べたらウクライナの出身らしいけど、顔立ちは土人顔。なかなか魅力的でスタイルもいい。そして、妖しい雰囲気。もうひとりの女性、ヴィクトリア(アンドレア・ライズブロー)の、つくったような偽者の笑顔との対比すると、際立っている。
ジャックはヴィクトリアと2人だけの生活。で、立ち入り禁止地区以外のパトロールをしている。たまに宇宙人スカブの残党が現れるので、それを見張ってる。地球にいるのは2人だけ。他の人類は地球を捨て、土星の惑星タイタンへ移住することになり、現在は宇宙ステーション・テオに仮住まい。海水から水をどうたらしてるらしいけど、真水化にしては規模がでかすぎる。なにやってたんだろ。しかも核融合がどうたらといってたな。燃料電池が起爆剤になってるみたいなことも。固有名詞は立派だけど、因果関係がよく分からん。
あとからスカブが戦争で負けた人類で、テオが宇宙人側と分かるんだけど、その宇宙人が一切でてこない。どういうことなんだろう。月を破壊し、地球も壊滅させ、それで気が済んだから立ち去った? ただし反撃してこないようにクローンとドローン(無人偵察機)を配置し、その管理・維持のためにテオを設置した? そうすれば宇宙人の損失は一体もなく、地球人によって地球人を管理できるから? そのメリットは? 海水をどうしようってんだ? テオのサリーは実体ではなく、アニメかCGなのか? とか、ツッコミどころはたくさんある。
ジャックは、クローンで過去の記憶を抹殺されているはずなのに、わずかな記憶に動かされる。それはたとえばジュリアとの記憶であったりする。それに、2017年のアメフトの試合は鮮明に覚えているらしいんだが、これは消されなかった記憶なのか? ジャックにだけ過去の記憶があるのは、できそこないのクローンだからか? それともすべてのジャックに過去の記憶があるのか? クローンはテオで造られるようだけど、羊水から取り出されるのは何歳? その後、教育を受け、何歳ぐらいから何歳ぐらいまで配備されるんだろう。20歳ぐらいのジャックと、60歳近いジャックが共存しているのかな? そんな記憶が消され、別の記憶が植え付けられる?
その2017年に宇宙へと飛び立った人たちのなかに、ジャックもいたわけだよな。で、どういうわけか、選ばれてクローンになり、宇宙人側の戦士となって地球人と戦った…。で、途中で落下してきた宇宙船は、2017年に飛び立った宇宙船だけど、なぜそのまま宇宙に浮かんでいたのだ? フライトレコーダーを聞きながらの再現映像は、よく分からなかった。もう一回見れば、分かるのかな。
スカブ(実は地球人)たちは、軌道を回ってる(?)宇宙船に信号を送り、墜落させた。どうやらビーチ(モーガン・フリーマン)はそのいわれを知っていたようだけど、でも何の目的で墜落させたのだ? 宇宙船が飛んでいることをテックの連中は知っていながら、なぜ放置していたのだ?
ラスト。ジュリアは2歳ぐらいの娘と一緒。ってことはジャックの子供? いつセックスしたんだ? そんな時間がよくあったな。…のところに、一緒に戦った地球人がやってくる。のだけれど、なにを感動的に描いてるんだ。だって、カプセルに入ったジュリアをここに運んだのは彼らだろ。2年以上もどこで何をしてたんだ? 変だろ。
ラストでやってきた地球人たちのなかに、ジャックのクローンが混じってる。たぶん殴り合って縛ったまま放置していたやつだろう。どうやらこのクローンとジュリアは、以後、一緒に暮らすみたいな雰囲気。ううむ…。それはさておき、立ち入り禁止区域には、もっとたくさんのジャックとヴィクトリアが配置されていたはず。彼らはどうなったんだろう?
プロコルハルム「青い影」がジャックの好きな曲として登場するんだけど、2017年に流行っていたのかね。よく分からんよ。
プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命6/6ヒューマントラストシネマ有楽町シアター2監督/デレク・シアンフランス脚本/デレク・シアンフランス、ベン・コッチオ、ダリウス・マーダー
原題も"The Place Beyond the Pines"。原案もデレク・シアンフランス、ベン・コッチオ。allcinemaのあらすじは「移動遊園地で曲芸バイクショーをしながら各地を巡り、その日暮らしの気ままな生活を送る孤独な天才ライダー、ルーク。ある日、かつての恋人ロミーナと再会した彼は、彼女が自分との子どもを密かに生んでいたことを知り、根無し草生活から足を洗うことを決意する。しかし職探しは上手くいかず、母子を養うために銀行強盗に手を染める。そんなルークを、正義感にあふれる新米警官エイヴリーが追い詰めていく。15年後、何も知らないルークの息子ジェイソンとエイヴリーの息子AJは高校で出会い、すぐに仲良くなるのだが」
圧倒的な緊張感と迫力の140分だった。概ね3部に分かれていて、因果はめぐるを世代を越えて見せてくれる。それぞれが映画1本分の厚みがある。
ファーストシーンは、ルークのタトゥー入り筋骨隆々の背中から鉄球内バイク3台の曲乗りまで長回し。渋いね。そこに、ロミーナが薄着に乳首をとがらせてやってくる。「覚えてる?」「ああ」と。行きずりのセックス相手だったわけだ。この夜もしたのかどうか分からないけど、バイクには乗っていたな、2人で。で、翌日(?)、町を去る前にルークがロミーナの家を訪ねると、ロミーナの母親が赤ん坊を抱いてでてくる。「あんたの子よ」と。
ルークは即刻サーカスをやめ、ロミーナの家に押しかける。ロミーナにはすでに黒人の夫がいるんだけど、それは無視。「俺がそばについていてやらないと、この子は俺と同じ人生を歩みそうだから」とロミーナに言い、町を去って行かない。たぶんルークは両親とくに父親との関係が薄かったんだろう。父親がいれば、自分はこんな風になっていなかった。だから守ってやらなくちゃいけない。そういう強迫観念に駆られているんだと思う。ダメ人間の自分がついていて、果たして息子がまっとうに成長できるのか。そんなことは考えていないと思う。
ルークは自動車修理工のロビンと知り合い、銀行強盗に誘われる。最初はとまどっていたけど、子供のために金が必要…と初挑戦。しかし、アメリカの田舎って、こんななの? 「俺たちに明日はない」と変わらん感じだけど、映画だからな。ロビンの貨物トラックに逃げ込み、いきなりゲロを吐くシーンが、ルークの緊張感をつたえて生々しい。
その後のルークはロミーナと子供にまとわりつき、一度はロミーナと寝たり、息子と3人で写真を撮ったりするんだけど、ロミーナの亭主に暴力まで振るい、ムショ入り。ロビンの保釈金ででてきたけれど、息子のために金が要る、と「もういやだ」というロビンと離れ、1人で強盗をつづけようとする。が、銀行もカウンターにガラス壁をつくって対応。その様子が分かっていながら突入し、パトカーに追われる…。
銀行強盗の映画、とは知ったけど、こんなんで捕まっちゃって、その後の展開はどうなるんだ? という不安をよそにバイクが転倒し、前のクルマに衝突。乗っていたルーク(スタントだろうけど)が立ち上がり、近くの民家に入り込むまでが1ショットで撮られていた。ルークが立て籠もった近くに居合わせたのがエイヴリーで、家に突入してルークを撃ち殺す、というより、撃たれたルークが仰向けに窓から落下し、頭を打って死んでしまう。エイヴリーも足を撃たれる。この後エイヴリーは検事の事情聴取を受けるのだけれど、ここでどっちが先に撃ったか、が問題になる。で、そのシーンでは確かエイヴリーが先に撃ち、瞬時にルークが打ち返したけれど、そのまま窓から落ちた、んだっけかな。エイヴリーは「一瞬だった」とか誤魔化してたけど。
という展開で、ルーク役のライアン・ゴズリングはこれで出番がオシマイ。惜しげもなく。しかし、さすらい人で無法者に近いルークが、行きずりの女に生ませた子供に対する愛情が尋常でない。フツーは「降ろせ」「知らん」になるのに、なぜこだわるのか。まあ、理屈じゃないんだろう。そういう男もいる、ということなのだろう。あるいはまた、自分の生い立ちを顧みて(おそらく父親に捨てられたか)、この轍は踏ませたくない、と思ったのか。
で、ここからは主人公が主人公はエイヴリー。どちらが先に撃ったか、で自分を誤魔化し、いちやく地元のヒーローになってしまう。エイヴリは父親が裁判官で、ロースクールをでているらしい。それでなぜ警官になったのかは分からない。法律家になれなかったのか、それとも現場の経験を積もうとしたのか。上司に特殊部隊を組織し、リーダーになりたい云々言うんだけど、無視される。また、犯人射殺など体験した警官は現場を離れ、事務職それも証拠品倉庫の管理係? みたいなのをさせられることになる。ここで近づいてきたのがデルカら古参の連中。一同がエイヴリーをつれだしてロミーナの家に押し入り、ルークが渡した大金を隠してあるのを見つけ、みんなで分けてしまう。もちろんエイヴリーにも…。断り切れないエイヴリー。さらに、証拠品倉庫に保管してある麻薬を要求されたり、あれこれ使われるようになって、悩み、信頼できる上司に直訴。ついでに、一網打尽にしたら検事補の職をよこせ、と要求する。おお。なかなか上手じゃないか、エイヴリー。もしこの上司も組織的悪徳警官につながっていたら…とか思ったけど、そんなことにはならず。
さて、15年後。エイヴリーの父親の葬儀で、彼は妻から「AJはあなたと住みたがってる。あなたがそばにいないと、あの子がダメになる」と言われる。妻とも久しぶりに出会った様子。きっと2人は離婚し、AJは元妻が育てていたんだろう。でも女の手には負えなくなってきていた。AJも「オヤジのところへ」といっていたらしい。州法務長官(だっけ?)の再選に向け、子供になんか構っていられないことも承知で、オヤジのところの方が羽が伸ばせる、と思っていたに違いない。AJもエイヴリーに似て知恵者だし、狡猾だ。
ルークと、エイヴリーの妻の似たようなセリフ。父親がいないと息子はダメになるというのは、本当か? と問うているのかもね。
ルークの息子がジェイソン。エイヴリーの息子がAJ。AJは父親の家に移り、転校。ジェイソンと友だちになる。AJはかなりのワルで、ジェイソンにドラッグをねだる。2人で売人のところに行き、でも帰りに捕まってしまう。AJは父親の口利きで30分(だっけ?)で釈放。ジェイソンは裁判にかけられたものの、罰金刑だけで済んだ。これもエイヴリーの口利きね。エイヴリーはジェイソンの過去に気づき、AJに「あの少年とはつき合うな」という。でも登校すれば会う。黒人の義父に送られて学校へやってきたジェイソンをからかうと、ジェイソンは一瞬むっとする。でもすぐに謝って、仲直り。したと思ったら「家でパーティがあるから来い。風邪薬(だっけ?)でもなんでもいいからもってこい」という。で、始めは拒んでいたけど、「仲直りしたじゃないか」とAJに言われると、断れず、薬局から薬を盗んでしまう。
…というジェイソンの立場が微妙である。ジェイソンは孤独で、友だちがいないようだ。AJが最初にジェイソンに会ったときも、彼は食堂で一人だった。AJはきっと「こいつは使える」と思ったんだろう。それで友だちになってやって、指図するようになった。ジェイソンは、そんなAJでも、友だちとして認めてくれるAJにすがった、ということだな。
実は裁判の後、ジェイソンは義父に実父(ルーク)のファーストネームを聞き出していた。それまで知らなかった真相をネットで知り、父を撃った警官の顔も古い新聞記事で見ていた。その同じ顔が、AJの家のパーティで壁に掛かっているのを見て、AJに殴りかかる。のだけれど返り討ちに遭い、ボコボコにされてしまう。入院→退院のとき、迎えに来た母親ロミーナをまいて、ルークの仲間だったロビンのところへ。そこでルークのだというサングラスと昔の新聞かなんかを見せてもらい…銃はここで調達したんだっけ。忘れた…。で、エイヴリーの家に行ってAJに復習。ここで、ひょっしたらAJを殺した? という含みをもたせつつ、たまたま帰ってきたエイヴリーを人質にし、クルマを運転させて山中に。ここではすでに、互いに存在を知っているわけだ。いくらなんでも父の仇を討ったりはしないだろうの読み通り、財布を奪って逃亡する。その財布の中に、ルーク・ロミーナ・赤ん坊のジェイソンの写真が…。小道具の使い方が抜群にいいね。ジェイソンは、エイヴリーが呵責の念に苛まされながら生きてきたと、悟ったはず。でももう故郷には戻れない。どこかでクルマは捨てたのだろう。雑誌かなんかを見て売りバイクをみつけ、500ドル即金で支払ってHONDAを購入。それで遠景へと去って行く。
まさしく、父親の道を辿っていくことになったジェイソン…。故郷のロミーナのところに、ジェイソンから封書。そのなかに、3人で撮り、ジェイソンがつねにもっていたけれど、事件後は証拠品として警察にあり、それをエイヴリーが拝借して財布に入れていた写真。これをロミーナに見せることで、たぶん、エイヴリーを許してやれ、ということなのかも知れない。
親の因果が子に報い、な3部構成であるけれど、ギリシア悲劇に似たような話はあったりするのだろうか、な重厚な話だった。
しかし、話の始まりはロミーナからルークに会いに行ったこと。行かなきゃいいのに、行ってしまった自分。抑えきれなかったんだろう。口に出してはいえなかったけれど、あなたの息子がいる、ということを知って欲しかったんだろう。もし知ったらどうなるか、なんて考えていなかったに違いない。だっていまは夫がいる身なのだから。
修理屋のロビンは、4回も銀行強盗をやったと言っていた。ひとりで? かどうか知らないけど、それでよく捕まらなかったもんだ。ルークのときも、一緒に住んでいたのは明らかなんだから、そうとう調べられたはずだけど、うまく逃れた模様。地方警察は無能なのか。
きっと、うまくいく6/7キネカ大森2監督/ラージクマール・ヒラニ脚本/ラージクマール・ヒラニ、アビジット・ジョシ
英文タイトルは"3 Idiots"。「三馬鹿大将」だな。allcinemaのあらすじは「超難関の名門工科大ICEに入学したファランとラージューは、そこで超天才の自由人ランチョーと出会う。彼らは、一緒にバカ騒ぎを繰り返しては鬼学長の怒りを買い、いつしか“3バカ”として札付きの問題学生となっていく。そんな中、ランチョーは天敵である学長の娘ピアと恋に落ちるが…。時は流れ、3人が卒業してから10年後。ファランとラージューは、行方知れずのランチョーの消息を知っているというかつての同級生と再会する。そして彼とともにランチョーを探す旅に出る」
ニセ学生の話である。軽いノリのバカ話の積み重ねで話が進んでいくんだけど、新鮮味はない。韓国映画がよくやるような悪ふざけが主で、もともとはアメリカ映画のキャンパス映画なんかにルーツがあるのかな。尺は170分もあって、でも途中でインターバルの表示がでるので現地では休憩が入るのだろうけど、ぶっつづけで上映。最初の30分ぐらいは概説的な感じで、入学してきたメンバーの紹介、教条的で頑固な学長に対立するランチョー、の図式を刷り込んでいく感じ。ランチョーの反抗は柔軟でウィットに富んでいるので、見ていて快感。なのだけれど、その後、学長の娘ピアとの恋物語とかになって、話が単調に。1時間目の山を越えるあたりは、ほんと、寝るかと思った。けどなんとか乗り切って後半へ、てな具合だった。
170分に伸びた、というより、連ドラを170分に縮めたみたいな感じで、だから焦点が定まらずあれこれ拡散。ま、その拡散具合が面白いという向きもあるだろうけど、やっぱりムダが多いように思った。それと、もう手垢の付いたような定番のエピソードや展開が多すぎる。卒業して離れ離れになったランチョーの行方をファランとラージュー、そしてサイレンサー(消音銃)と呼ばれるウガンダからの留学生(?)らの元同級生が探しに行くんだけど、その先の展開はもうミエミエ。サイレンサーが契約に行くという発明家がランチョーであることも観客はみな分かってしまっている。こんな、裏切りのない予定調和な話がなぜか面白いのが不思議なんだけど、でも意外性ということを考えると、はたしてこれでいいのかどうか、疑問もある。そこそこ面白いんだけれど、いろいろ物足りない。そんな感じ。ま、これぐらいのゆるさが、現在のインド映画の限界なのかも。また、この限界を越えてフツーな映画になってしまうと、それはそれでつまらなくなってしまうのかも。難しいところ。
バカコメではある一方で、インドの学歴主義に対する強烈な社会批判も込められている。大学に行くのはほんの一部で貴族とか地主の金持ち階級らしいが、理系至上主義。それも親の意向が強く、子供は逆らえない。
ひどいの学長の考え方だ。最初の方に、課題の提出日が遅れたから卒業させない、と学長に言われ、自殺する学生が描かれる。その学長の息子は何度もICEを受験させられ、でも合格できずに自殺した。学長は事故死と思っていたようだけど、他の家族は真相を知っている…。息子はほんとうは文学をやりたかったことも・・・。ま、息子を合格させるために、学長といえど不正をしなかった、のはさすがだけど…。3バカの1人ラージューも、後半で学長の怒りを買って退学を宣告され、窓から飛び降りる(死ななかったけど)。てなわけで、この学長は映画の中だけで2人殺して1人に重傷を負わせている。こんなで、よく学長を務めてられるな、と思う。そういえばランチョーは学長に、インドでは自殺者が多い、同級生の自殺や学長の息子が死んだのは自殺じゃなくて、あなたが殺したも同然、とまで(確か)言っていたっけな。
そもそもランチョーがニセ学生になったのも、学歴主義がある。地方の豪族の下働きで、でも頭はよかった。そこを見込まれ、豪族のバカ息子の代わりに大卒の肩書きを取りに行かされたということだ。そのバカ息子は、記念写真のランチョーの部分に自分の顔をコラージュし、応接室に飾っている。そこまでして箔をつけたいインド人がいるということか。
ラージューの家が極貧ながら大学に行かせている、というのもあった。父親は脳卒中で寝たきり、姉は行かず後家状態で、それも持参金を確保できないかららしい。母親がなんとか稼いでいるけれど、なにをしているかまではわからなかった。
学生の中にも学歴主義者がいて、ウガンダからの留学生サイレンサー。1番じゃないと落ち込むガリ勉だ。教科書を丸暗記(「ペーパー・チェイス」を連想させる)し、権威に弱く、ランチョーのような発想が自由な人間は大嫌い。この手のエリートがいまインドには多いのか。それは成長の大きなネックになるだろうな。
というように、この映画は呑気で楽しいバカコメの様相を呈しているけれど、実は鋭い社会風刺・メッセージ性をもった映画である。本音は、こっちの方を言いたかったのかもね。
結局は親=学長の決めた相手と結婚しようとする娘のピアもアホだよね。ランチョーに、彼氏の拝金主義を教えてもらっていたのに…。なピアの結婚式に乗り込んでピアを掠ってしまうのは「卒業」がベースなのかな。そのピア役のカリーナ・カプールは、かわいいと言うより面長のオバサン顔なのでううむ。そういえば主人公のランチョーを演ずるアーミル・カーンは撮影時47歳だったというからオドロキ!
ガリ勉のサイレンサーはみんなに疎まれてるやな奴なんだけど、その彼が学長のためにみんなの前でメッセージを語ることになった。でもヒンドゥー語がダメなので丸暗記することに。で、そのなかのある言葉をランチョーに「強姦」に変えられてしまい、まるで学長が強姦魔みたいに話になってしまう。その恨みを忘れることなく、卒業後10年。現在の地位の差を見せつけてやろう、と思ったのが後半のランチョー探しの旅になる。のだけれど、「強姦」という言葉が登場するたび客席が沸くのが不思議だった。日本ならどん引きだろうに。このあたりの感覚のズレが、いまひとつだった。
日本が何度も登場するのもびっくり。ヒロシマ・ナガサキと、衝撃の大きさを表す比喩として(だっけかな)と、日本企業がITのライバルとしても2度登場。他国名がほとんどでてこないのに3回も出でくるのが不思議な気がした。
画質は、DVD並で、とても粗かった。
愛さえあれば6/13新宿武蔵野館3監督/スサンネ・ビア脚本/アナス・トマス・イェンセン
デンマーク映画。原題は"Den skaldede fris?r"。google翻訳したら「はげ美容院」とでた。ストレートだね。英文タイトルは"Love Is All You Need"。allcinemaのあらすじは「娘の結婚式の前週に乳癌の治療を終えたイーダは、家で夫のライフと若い女が浮気している現場を見てしまう。ライフが家を出てしまったため、イーダは娘の結婚相手であるパトリオットの父が所有するイタリアの別荘へ一人で向かう。彼女はそこでパトリオットの父フィリップと出会い、彼の優しさに心を許すのだった」と短いね。
中年男女のラブコメだ。でもハリウッド的でないところが地味に面白い。ヒロインのイーダががん治療の最中という設定も、ムダに人生を送りたくない感がでている。それになんといっても、登場人物のキャラがそれぞれに濃くて、立っていること。ハリウッド製だと主人公2人にしか焦点が当たらないことが多いんだけど、ここでは家族の面々も強烈に主張している。
イーダは美容師。亭主のライフは店かなにかを経営している。軍隊にいる息子と、結婚することになった娘アストリッドがいる。亭主は事務員と不倫。見つかったときの亭主の言い訳が、堂々としていておかしい。事務員女もサバサバしていて、これまたおかしい。ともにヒステリックにならない程の良さというのが、日本じゃない感じ。
果物商社を経営するフィリップは妻を事故で失い、パトリオットをひとりで育ててきた。そのせいか、仕事ひとすじ。会社の女性が誘っても反応なし。果物の買い付けにしか興味がない感じ。
で、アストリッドとパトリオットは3ヵ月前に知り合い、結婚を決める。式は、フィリップがむかし買ったイタリアの屋敷。本来は農園もあるここに移住するつもりだったけど、妻の死でそれはお流れに。ずっとデンマークで生活していたという設定。ただし、フィリップは英語しか話さないというのが、いささかムリがあるけどね。フィリップを演じるのがピアース・ブロスナンだからなのかもね。
で、動揺したままのイーダは、空港でクルマをぶつけてしまう。その相手がフィリップ…というご都合主義がわざとらしすぎるのが欠点。もうちょい気の利いた偶然はなかったものかね。それでも、神経質なフィリップと大らかなイーダの2人旅はなかなか愉快。とくに、イタリアに着いてからの車中のやりとりはおかしい。会話がいいんだよね。なかなか。
ぞくぞく屋敷に人が集まってくるんだけど、結婚式はいつだ? 的な疑問が湧いてくるんだけど、まあいいか。それにしても、別行動でやってきた亭主のライフが事務員を連れてきちゃういい加減さはなんなんだ! 事務員女は「これわたしのフィアンセ」とライフを紹介する。まだイーダとライフは離婚もしてないのに! バカすぎておかしい。でもって、ここでもライフの行動は大騒ぎにならず、せいぜいが後から合流した息子に殴られて気絶する程度。イーダは冷静そのものだ。
イーダとフィリップ。水と油みたいだけど、次第に興味を持ち合うようになる過程が、なかなか上手く描かれている。全裸で、カツラも外して泳いでいるイーダ。心配して接近するフィリップ。裸をチラチラ…。「見ないでよ」といわれながら、チラチラ…。おいおい、だよな。この裸泳ぎは、映画的には潔斎なのだろう。ライフと事務員のこと、自分の病気のこと。それらから身を清める儀式だ。でも、「あら、この人、わたしのこと心配してくれている」という思いが芽生えたんだろう。次に、町で出会ったとき、カフェで2人が話すんだけど、このときのイーダは、恋する目をしていた。フィリップが話す亡くした妻のこと…。そういうことも話してしまえる相手だ、とフィリップも心を開いている。そんな流れがうまく表現されている。
こんなフィリップに秋波を送ってくるのが、妻の姉妹だったベネディクテ。妄想が激しいらしく、フィリップと関係を迫ろうと一緒懸命なのがオソロシイ。こんなんじゃ離婚されるわな。「もとは私ともつきあっていて、妹(姉?)に奪われたの」なんて皆の前で話しちゃうんだから。このベネディクテの娘が、リストカットとゲロが得意というのがまたユニークな設定。反抗しつつ母親と行動をともにするぐらいだから、心はやさしいんだよ、きっと。最後までそういう存在だったけど、個人的には若い誰かと心を通じるようなことにしてあげてもよかったんじゃないのかな、と。
仲むつまじいアストリッドとパトリオット…だったけど、式の前日にパトリオットの友人がアストリッドとダンスを踊り、あまりにもベタベタしているので嫉妬。ムリやり引きはがしたら、「彼はゲイよ。あなたが好みらしいわ」といわれ、謝りに行くと、いきなりキスされて…。で、翌朝、イーダがアストリッドの部屋に行くと「彼が最近、変。ここ何日かセックスもない」と泣いている。いきなりの展開でちょっと戸惑ってしまったけれど、これは話が拙速すぎたと思う。もともと齟齬が…が描かれず、パトリオットがゲイに目覚めた、だけで結婚式から決別式になってしまう。もうちょい丁寧に、伏線も張った方がよかった。そもそも、パトリオットはアストリッドとセックスしてたんだろ? ここを見事に描いてくれてたら、文句なしだったんだけどね。
てなわけで、結婚式はとりやめ。いったんはいいムードになったイーダとフィリップも、お別れ。
そして数ヵ月後。フィリップがイーダの美容室(ここの共同経営者? 経営者?)の痩せぎすの、皮肉ばっかり言ってるバアサンも、ああいるいる、こんなバアサン、ってな存在感だった)を訪れ、求婚する。「いままでは働きすぎた」と。で、ライフは事務員と別れ(ふられ?)、イーダに花を贈って詫びていた。「でも…」とイーダは考える。このまま、こんなオッサンと晩年を迎えるのは嫌だ、と。でもってイタリアのあの屋敷を訪れる…という、ベタすぎるラストではあるけれど、観客がそうなって欲しいという終わり方なので、文句はない。これで一緒になれなかったら、つまらん話になっちまったことだろう。
・音楽"That's Amore"がいろんなバージョンで歌われる。ベタすぎる快感。
・フィリップの義姉(義妹?)は、普段の会話にアーサー・ミラー(だっけか?)やハーマン・バング(知らんよ、こんな人)の言葉を引用したりする。知的ではあるんだけど、俗物でもあるということだな。他にも、彼女はライフのことを「画家のフロイドみたい」といっている。「フロイドってだれ?」と経理の女。ライフも「知らん」は無教養を示唆している? でも、俺もフロイドなんて知らんよ。
・アストリッドがパトリオットに「今晩してもいいのよ」なんて式の前日に言ってる。まさか式までしないってこと? と思ったら、式の当日の朝に「ここ何日かセックスがない」とか「この結婚は間違いだった」みたいなことを言っていた。そーだよな。ま、このセリフで、2人の心が離れつつあることを示しておきたかったのかも知れない。
・イーダの荷物がコペンハーゲンに止まっちゃってて、荷物が届かない。なのでイーダはフィリップのカードを借りて買い物したらしいが、そんなことできるのか? フツーできないよな、そんなこと。本人が立ち会ってないと。
・クレジットの文字が、ホタルか金色の砂のようにさらさらと舞う。エンドクレジットでは木の葉のようにも見えたが。あれは何なんだろう?
・主演のトリーヌ・ディルホムは山村紅葉みたいに濃い顔立ち。名優らしいけど、頭は剃るし裸にもなる。日本の役者とはえらい違いだ。
恋のロンドン狂騒曲6/17ギンレイホール監督/ウディ・アレン脚本/ウディ・アレン
原題は"You Will Meet a Tall Dark Stranger"。あるサイトに『占い師がたいてい使う言葉で、「あなたは背が高くて、色の浅黒い誰かに会うでしょう」を意味している』とあった。なるほど。allcinemaのあらすじは「ある日突然アンチエイジングに目覚めたアルフィは、40年連れ添った妻ヘレナを捨てて金髪のコールガールに入れ上げる。ショックのヘレナは自殺未遂騒ぎを起こした末、怪しげな占い師にハマってしまう。一方、彼らの一人娘サリーは、処女小説を当てて以降万年スランプの夫ロイに愛想を尽かしていた。そんな中、ギャラリーで働き始めた彼女は、セクシーでモテモテなオーナー、グレッグの虜になってしまう。そして一人自宅で過ごすロイもまた、向かいのアパートに越してきたエキゾチックな美女ディアに夢中になっていくのだが」
隣の芝生は緑、というのか、きっともっといい相手がいるはず、な幻想にとらわれ、みなさん恋をしたがっている。ラストは、そう話はうまくいきませんぜ、というもの。だけど、傑出してユニークな話があるわけでもなく、だからなに? な感じ。寝たりはしなかったけれど、期待外れかな。
いつもながら話が浮世離れしてる。アルフィは投資家で大金持ち。ヘレナもかなりもってる様子。ロイは売れない作家だけど、医学部を出てる。医師の資格はないらしいが。そんなダメ亭主を支えるサリーは、画廊に勤める。結構な審美眼をしているようだ。でも貧乏なのでヘレナの支援で食わせてもらっている。サリーは子供が欲しい。でもロイはつくりたくない様子。仲が悪そうにも見えない。アルフィが売春婦のシャーメインといい仲になるというのはどうなんだ? 金があるんだから、もっとましな女性も相手になってくれただろうに。若いときの経験が足りないのかね。ヘレナが占いにどっぷり…というのは何となく理解できる。で、ロイが恋するのは向かいの窓の娘。これが、ランチに誘ったらついてきて、婚約者がいるってのにロイとわりない仲になるってのは、あり得んだろ。…とまあ、庶民とは縁のない富豪や作家や画商が登場するってのは、話自体がおとぎ話だからなのかね。シェイクスピアも引用されていたけど、よく分からん。
あれこれあって、アルフィはシャーメインに浮気される。彼女は子供ができたといってたけど、ウソだったのかね。ヘレナは、いろいろあったけどオカルト屋を開くというジョナサンと結ばれる。老いらくの恋成就? サリーが勤める画廊のオーナー、グレッグは離婚間近。もしかして彼とといい仲になれるかな…と思っていたら、グレッグは昔の同級生の作家に手を出していた。さらに友人と画廊を開く予定だったけど、資金をあてにしていた母ヘレナは「いま金銭を扱うと悪いことが起きると占い師に言われた」と貸してくれない。多分、資金調達できないんだろうな。ディアは式の直前に婚約解消。ロイと生活し始める。そのロイは、自作の出版を断られて腐っていたんだけど、作家仲間が事故死。たまたま彼の書いた未発表原稿を読んでいて、傑作なので自分のものにしちまえ…と。ところが事故死したのは別の男で、彼は意識不明だけど覚醒の可能性が大きいことが分かり呆然…。アルフィーはヘレナに復縁を迫るが断られる。で、エンド。最初から主人公として登場するヘレナだけが幸せになる、という話。ロイがいちばん悲惨だな。きっとディアにも愛想尽かされるだろう。サリーはなんとかやっていくんだろう。アルフィは健康神話も崩れ、破産して、早死にでもするのかな。「薬よりも夢の方が効く」とかいっていたけど、結局は夢に翻弄されるって話だ。
という結末を見て、『愛さえあれば』を思い出していた。亭主が若い女に夢中。息子は、式の直前に結婚を解消。でも、主人公のオバチャンの恋は成就する。というのが同じではないか。まあ、恋のもつれなんて、どうやっても似たり寄ったりになってしまうものなのかも知れないけどね。
ナオミ・ワッツはきれいなんだけど、かなり崩れてきてるかな。撮影時に42歳だからな。ディアのフリーダ・ピントは美しい。こういう映画にバカ女役はつきものだけれど、昔ならマリリン・モンローあたりがやったのだろうか。こっちではカワイイ色気というより、直接的なエロ女という感じ。もうちょい小悪魔的なキャスティングがよかったかもね、個人的には。
あり得ないなと思ったのは、ロイの盗作。それほど悪い奴に描かれていなかったし、いずれ行き詰まるだろ。だってロイには才能がないんだから、同レベルのものは書けない。じゃあ、そのときどうする? それぐらいのことは考えつくだろ。それに、自分の才能を信じてきたのに、ズルしてまで認められたいとは、思わないと思う。たとえば誰かを見返すため、とかいう理由があるなら別だけど、そんなこともないし。
そうそう。分からないシーンがあった。ロイがディアを見初めるところで、ロイが女性の足を見てやってる場面になってしまう。ほうほう。ジョギングしててロイとディアは知り合うのか、と思ったら、その女性はディアではなくサリーだった。これはディアとサリーの出会いではないか。ん? もう一回、確かめてみたい個所ではある。
建築学概論6/21新宿武蔵野館1監督/イ・ヨンジュ脚本/イ・ヨンジュ
英文タイトルは"An Introduction to Architecture"。allcinemaのあらすじは「結婚を控え、ソウルの建築事務所で忙しい毎日を送る若手建築士のスンミン。ある日、ひとりの美女が家を建ててほしいと名指しで依頼してくる。下っ端のスンミンが戸惑っていると、“私を忘れた?”と美女。彼女は15年前、大学1年生のスンミンが“建築学概論”の授業で出会い一目惚れした相手、ソヨンだった。スンミンの脳裏に彼女と過ごした大学での日々が甦る。それは彼にとって甘く切ない初恋の思い出でもあったのだが」。
そうか。15年前なのか。と、あらすじを読んでなるほど。たしか本編内では触れられていなかったと思うが…。10年前? にしてはスンミンが老けてる。サイトで見たら現在のスンミン役/オム・テウンは38歳。ソヨン役/ハン・ガインは30歳。中間をとったのかな。
初恋の想い出。しかも、次第に並大抵ではないことが分かる。にも係わらず。ソヨンの訪問を受け、「あんた誰?」なスンミンって、そりゃないだろ。たった15年だろ? まあ、15年前を同じ役者が演じられるはずもなく、過去の配役はスンミン役/イ・ジェフン28歳。ソヨン役/スジ18歳なんだけど、顔が全然違うのだ。それだけじゃない。性格も…。じれったいほど奥手なスンミンは、ずけずけと物言う図々しさを、エキセントリックだったソヨンはずけずけと物言うフツーのオバサン化していた。
15年前の恋物語は、ほんとじれったい。スンミンがたんに奥手だったんだろうけど、なんとかしろよ、と言いたいほど。しかも、酔ったソヨンが先輩と一緒にアパートの中へ…という場面を目撃して意気消沈。次に会ったとき、一方的に別れの宣言をしてスンミンの恋は終わる。あほか。なんていうと、「当事者にとっては大変なことだ」とか言われそうだけど、だったらなおさら、ソヨンの顔ぐらい忘れるなよ、といいたい。いっぽうのソヨンは、済州島からでてきた少女で、はかなげに見えながら捨てられた廃墟に勝手に入って行ったりする不思議ちゃんでもある。このエキセントリックさは魅力的。なんだけど、建築学概論を受講したのは、放送部の先輩に憧れて…というのにガックリ。なんだよ、ただのバカ女か。あとからソヨンはスンミンとのことを「あれは私の初恋」と言うのだけれど、違うだろ。その前に放送部の先輩がいたんだろ。
現在のスンミンは、建築事務所の下っ端らしいが、でも大学を卒業して15年なら37歳。自身の作品がないとか新人というレベルじゃないよな。この辺りの整合性も、中途半端だね。初恋の人の顔を忘れ、「私よ」と言われて思い出しても大した驚きもなく、物言いは図々しく、大学生のときのナイーブさはいまいずこ。なキャラはどうなんだ? もうちょい繊細な役者にできなかったのかね。コメディ的な要素を濃くしたかったから? ううむ…だな。
15年間を振り返ると、スンミンはソヨンをすっかり忘れていた。ソヨンは、いちど結婚して別れたけれど、スンミンのことを忘れていなかった。名前を頼りに事務所を調べ、自ら訪問するなんて、たいへんなパワーだ。いまさら関係を…ではなく、いまは何を? ぐらいの興味かも知れないけど、それでも凄い。というか、自分があのとき、なぜ決別宣言を受けなくちゃならなかったのか、知りたくてだったかも知れない。先輩とは何もなかったことを伝えるため、立ったのかも知れない。にしても、現在のスンミンの鈍感さは、やんなるね。
だって事務所の後輩との結婚を控えていたんだぜ…。という展開から、この結婚を解消して、いまやっと結ばれる的なラストを期待していたんだけど、そうはならず。でも、後輩の彼女が実はやな女で…という設定にしてでも、結ばれるかもな期待を匂わせて終わって欲しかった。ま、学生時代の淡い初恋はそのままにしておくのがいい、という意見もあるだろうけどね。でも、それだと2人の現在がバランスとれないよな。事務所でも認められ、結婚もし、母も健在なスンミン。離婚し、父を失って済州島で孤独な人生を選択するソヨン。なんかスッキリしない。これが、初恋を壊した当人のスンミンが不幸になるならいいんだけどね。
小道具がうまく使われている。こんな家に住みたい、とソヨンが書いたメモ。それを基づいてスンミンがつくった立体模型。先輩との光景を目撃し、スンミンが捨ててしまったその模型をソヨンが拾って保管していた…。
ソヨンが貸してくれたCD。でもCDフレーヤーがないスンミン。「初雪の日にあの廃墟で」と約束したので、ソヨンはプレーヤーとCDを廃墟にもってくるのだけれど、スンミンは現れない(先輩との光景を目撃したから…)。しかたなくプレーヤーとCDを置いていく。そして15年後、済州島に移住したソヨンの元に、プレーヤーとCDが送り返されてくる。スンミンは後から訪れていたのだ…。なかなか泣かせる。
のだけれど、だったらなおさら、ソヨンの顔を忘れちゃいかんだろ。スンミン君。そして、プレーヤーとCDがどうなったのか、ソヨンは後から確認には行かなかったのかな…という勘ぐり。
スンミンの母親がいい味を出していた。うら若き娘も母親になるとこうなっちゃうのね、なところもあるけどね。貧乏暮らししながら息子を大学に。スペルが間違っているから、と放り投げたTシャツを、15年後も着ている母親。なかなか泣かせるね。
もうひとり。スンミンの浪人中の友人もいい味だしてた。浪人なのに妙に大人びてたりしてね。あの友人は、いまどうしてるんだろう。ちらっと現在の様子も描いてくれたらよかつたのにね。
G.I.ジョー バック2リベンジ6/21新宿ミラノ2監督/ジョン・M・チュウ脚本/レット・リース、ポール・ワーニック
原題は"G.I. Joe: Retaliation"。Retaliation=復習。allcinemaのあらすじは「世界の平和を守ってきた最強の機密組織“G.I.ジョー”。ところがそんな彼らに対し、米国大統領による冷酷な殲滅指令が発せられ、メンバーが次々と命を奪われる。かろうじて生き残ったメンバーは、ロードブロック、レディ・ジェイらわずか数名。陰謀の裏には、最強暗殺者ストームシャドーの復活により再び勢力を拡大し始めたテロ組織“コブラ”の存在があった。窮地に立たされたロードブロックたちは、最後の切り札として初代G.I.ジョーと呼ばれた伝説の司令官ジョー・コルトンに支援を要請。こうして新たなボスを迎えた新生G.I.ジョーは、世界征服を目論むコブラの陰謀を阻止すべく再び立ち上がるのだった」
「建築学概論」を見た後、台南坦仔麺で昼食を摂り、すぐにミラノ2へ。はなから途中で寝て、次の回をゆっくり…というつもりだった。すでに始まって15分ぐらいたってたからね。ところが、なかなか睡魔が襲ってこない。あれよあれよで総攻撃から大団円へ…という辺りで、やっと眠くなってきた。ほんと、クライマックスで朦朧とするなんてね。
見たのは、 イ・ビョンホンのストームシャドーが水槽から脱出するところかから。火傷を負ったストームシャドーは山で治療し、その間に東京ではスネークアイズとジンクスの場面になる…。がしかし、何が何だかよく分からん。前作は見てるけど、すっかり忘れてるしね。それはいいけど、イ・ビョンホンが妙な日本刀を使い、東京では忍者の格好をした外人2人が登場する。なんで日本人がでてこねえんだ。という疑問が湧いてきてしまう。
その後はドウェイン・ジョンソンのロードブロック、エイドリアンヌ・パリッキのレディ・ジェイ、D・J・コトローナのフリントだっけかな、の3人+スネークアイズとジンクス(もなのか?)がG.I.ジョーのメンバーで、そこに司令官のブルース・ウィリスが加わって悪と戦うという寸法。
この悪の一味だけど、2回目(2度目は1時間分ぐらい見た)の冒頭からしばらくして、前作のあらすじが10秒ぐらいで高速説明されたんだけど、皆目分からず。あの水槽に入っていた2人と、大統領に化けていた奴と、辺りが偉い奴なのかな。なんかよく分からん。分からんけど、ごちゃごちゃアクションがつづくのと、エイドリアンヌ・パリッキのちょっとした色気に惑わされながら見ていた。彼女、遠目には魅力的なんだよね。でもアップになると一気にオバサン顔で頭がわるそーになる。変な女優だ。
しかし、悪の一味の目的が世界征服というのはアナクロすぎるだろ。それって007の時代の遺物だと思うぞ。しかも、核兵器を使用して核保有国を屈服させようというのも、なんかな、である。つまり、悪の一味の一人がアメリカ大統領になりすまし、核保有8ヵ国(米、英、仏、中、ロ、北朝鮮、インド、イスラエル)を招集。そこでチキンレースを仕掛け、各国に自国のミサイルを発射させつつ、最後には自爆させるという手法をとる。でも、発射した以外に核弾頭はたくさんもってると思うんだけどなあ…。で、ロンドンだけは核攻撃を受けるというシーンがあるんだけど、ありゃどうなったんだ? ロンドンは消滅したのか? てなわけで米国=コブラの勝利か、というところにG.I.ジョー+ストームシャドーが乱入してやっつける、という大衆娯楽映画。なんだけど、展開が早すぎ=説明が足りないので、何が何だかよく分からないよ。冒頭のエピソードも、北朝鮮からの亡命者を助けるというだけの話で、だから何。次も、パキスタンの大統領が亡くなって、政情不安定なところにG.I.ジョが乗り込んだら、実はコブラの罠で、G.I.ジョは皆殺し…という展開。ロードブロック、レディ・ジェイ、フリントが生き残り、その作戦に参加しなかったスネークアイズが加入という流れだったかな。これなんかも、なんかどーも、ピンとこないところもあったりする。ある意味では、難しいのかもね。
あとはもう、朦朧としつつ見てたから、よく分からない。ストームシャドーはどういう 役回りなのだ? とか疑問はたくさんあるけど、もういいや。調べるつもりもない。
箱入り息子の恋6/25ヒューマントラストシネマ有楽町1監督/市井昌秀脚本/市井昌秀、田村孝裕
allcinemaの解説は「市役所に勤める35歳の独身男性、天雫健太郎。人付き合いが苦手で、友だちも恋人もはなから諦め、自宅と職場を行き来するだけの退屈な人生を送っていた。そんな健太郎を見かねた両親は、親同士が子どもたちの相手を見つけ合う“代理見合い”に参加する。そこで裕福な今井夫妻と知り合い、その一人娘・奈穂子と正式にお見合いするチャンスを得る。実は奈穂子は、病気のために今ではまったく目が見えなくなっていた。そんな奈穂子と思いがけず生まれて初めての恋に落ちてしまった健太郎。ところが奈穂子の父は、役所勤めの健太郎ごときに大事な娘をあげる気などサラサラなく…」。
几帳面、人嫌い、赤面症、外見に劣等感。大学は人並みに卒業し、市役所に勤務。でも昼は家に戻って食事。カエルを飼育し、ゲームはファイティング一本槍。つくるのは城のプラモ。いちおう社会に適応しているし、頭も悪くない。な天雫健太郎が、たまたま雨の日に出会った今井奈穗子に一目惚れ。親の勧める見合いに出席したら…が発端。しかし、あのとき健太郎が奈穗子の生涯に気づいていたかどうかはわからない。
しかし、奈穗子の父・晃はいくら映画だからといっても、変人にすぎる。悪役に設定するのもバカバカしい。娘が盲人なら、自分たちが死んでも自立できるよう育てるのが親の努め。それを「盲人の娘を託すには経済的にゆとりがなくちゃいけない。東大卒ならいい」なんていう奴はいないだろ。障害者は、持参金をもらってもお断り、が大半だろ。しかも、最後まで父親は反省することがなかった。健太郎を2度も病院送りにしてるのに…。いくら映画の中の悪役でも、バカすぎて笑えもしない。
奈穗子も東都大学を出ている。でも、一人で出歩く様子もない。杖もつかず、どうやって大学に通ったんだ? 当時は弱視だった? 失明が分かった時点で杖の練習、盲導犬の導入、自立の一歩をさせるのが親だろ。あんな父親を登場させるというのは、いくら映画でもくだらなすぎる。
奈穗子が健太郎に好意を寄せるのは、傘の一件があるから分かる。しかし健太郎は奈穗子のどこに惚れたのだろう。外見かね。割れ鍋に綴じ蓋。自分にはこの程度がいいと思ったんだろうか。
盲人女生徒の恋・結婚…。これをきれい事にして描いているわけだが、それでいいのか…。一切の世話ができるのか。子供ができたらどうするのか。互いに年老いて、肉欲もなくなったらそのときどうなる。ぐらいのタブーにふれて欲しかった。障害を越える愛がある、と見せてくれたら感動できたかも知れない。
見合いの後、健太郎が自室のモロモロを破壊する聳動は、なんなんだ? 見合いの席では冷静沈着に正論をぶっていたのに。我慢=抑制が効かないのかね。そういえば、ラスト近く、彼女に会いに行かなくちゃ…というより、13年間無遅刻だったのが人生初の早退を決定する方がプレッシャーだったのかな、な場面でも、役所内で雄叫びを上げていた。こんな性格に設定する必要はないと思う。過剰過ぎ。
さて、母・玲子の考えでつき合いを始めた2人。公園へは玲子が連れてくる。奈穗子は杖もつかない。吉野家に行き、世間を知る(大学生活では友人もできなかったのか?)。で、「好きだ」と言葉にする健太郎。キス。このあたりは肉欲が優先だよな。自分にちょうどいい相手は、全盲の障害者、という図式が見えるんだが、それをどう観客に説得していくのだろう…と思っていたら、初デートで奈穗子の方から「健太郎さんのことをもっと知りたい」とラブホに誘うという、おお、大胆な展開。でも35歳の童貞・健太郎は勃起せず役立たず。…なんだけど、健太郎はずっと自慰で済ませてきたのか。それとも、自慰もせず…なのか?
母・玲子が2人を会わせていたのを2ヵ月も知らず、追跡して別れさせに来る異常な父・晃。こんな亭主と一緒にいる玲子も奈穗子もアホに見える。そもそも、今井家は変だよ。応接室に金ぴか屏風、カップや皿、ワインなんかがずらり並んでる。成り上がりの下品な人品を表そうとしているのかも知れないけど、そんな演出する必要はないと思う。
さてここで健太郎は晃に土下座して交際の了解を求める。それを見て、そんなことやめろ、と思った。そして、土下座するなら奈穗子もだ、と思ったんだが、そうはならず。轢かれそうになった奈穗子の身代わりとなって、健太郎が交通事故で入院! やれやれ。そういえばこの場面で玲子が晃に「知ってるのよ、あなただってこそこそやってるの」と言っていたのは、晃の浮気のことなのかな。
交通事故で健太郎が入院。健太郎の母・フミは奈穗子に「もう会うな」と宣言する。そんな妻に父・寿男が、「子離れできないだけじゃないのか」「子供(健太郎)に甘いだけだ」と諫める。その通りではあるが、テーマを語っちゃっちゃいかんだろという気がしたぞ。その後、寿男はブレーカーを落とし、健太郎がゲームをできなくする。父親の堪忍袋の緒が切れたってことか? よく分からん。
また元の陰気に戻った健太郎。奈穗子がひとりで杖をつき、歩いているのを目撃。観客は、やっと自立し始めたか、と思うわけだが。奈穗子の行き先は、想い出の吉野家。そこで、対面の席で見守りつつ一緒に並丼を食べ、涙するシーンは素晴らしい。が、健太郎が気がつくと奈穗子はいつのまにか勘定を済ませていなくなってる。追いかけたら、なんと父・晃が近くまで送って来てたってのに、がっかり。なんだよ。家から1人で来たんじゃないのか。…しかし、父・晃は吉野家に一人で行くというのを、よく許したな。
で、昼休みから戻ってもやっぱり会いたくなって、人生初の早引けして駆けていく健太郎。でも、奈穗子の家に着いたら夜って、どんだけ遠いんだ。以下は、カエルの如く柱にしがみつき、鳴き声を真似して2階のベランダから奈穗子に助け上げられて…という、どうみてもあり得ない展開。水槽から出ていこうとするカエルとモンタージュするところは、古典的すぎてげんなり。部屋に上がり込み、乳繰り合っていると健太郎勃起! というところに晃と玲子入ってきて、晃が健太郎をボコボコに。こっちは、少しぐらい晃を殴れ、と思ってもそうはせず。またしても晃が健太郎をベランダから放り出す格好で病院送りにしてしまう。なんなんだ。
さて。寿男とフミはゲームびたり。一方病室の健太郎は、点字で手紙を書いている。受けとった奈穗子が喜んで読んでいる…でエンド。おいおい。何も解決してないだろ。晃には心を入れかえてもらわなくちゃダメだろ。たとえば玲子に離婚されちゃうとか。こんな終わり方でいいのか!?
・健太郎が家で食べる昼食のおかずが、アジの開き。横に大根おろしは、変だよな。
・母・フミが格闘ゲームで難敵をやっつけてしまう。笑える。もしかして、日頃からやってた?
・カエルは、井の中の蛙の象徴。分かりやすすぎてつまらない。
・同僚のヤリマン女が面白い。彼女とラブホで童貞喪失…というのもアリではなかったかな…。
・吉野家で、健太郎と同じく奈穗子も食べる前に箸を捧げるという、同じポーズをとるのは、母・玲子のしつけ?
・前半、画調が赤っぽく、コントラストを効かせすぎな感じだった。人物の影が露骨に壁にでたり、ライティングも無神経。あれは意図的なのかね。
ハード・ラッシュ6/26シネマスクエアとうきゅう監督/バルタザール・コルマウクル脚本/アーロン・グジコウスキ
原題は"Contraband"で、「密輸」とモロ。「Hard Rush」は日本だけだけど、どういう意図なんだろう?
allcinemaのあらすじは「かつて“世界一の運び屋”と称されたクリスも、今では愛する家族のために裏稼業から足を洗い、妻と二人の息子とともに幸せな生活を過ごしている。だが義理の弟アンディがコカインの密輸に失敗し、組織から命を狙われる羽目に陥ってしまう。クリスは弟と自分の家族を守るため、かつての仲間を呼び寄せパナマからの偽札密輸計画を決意。だが彼らは組織からも警察からも追われることになり…」
2012年、「テッド」と同時期にこんな映画を撮ってたのね。それにしてもB級臭に満ちた109分だった。カメラがピンを追ったり、ボケたり、画面がザラついていたり。なかなかの安っぽさ。しかも、最初から最後まで忙しない。そのせいもあって、背景や人物がいまいち不明瞭。前半の30分ぐらいはもうちょい余裕をもってクリス&ケイト夫妻、友人のセバスチャン、ダニーとの関係を描くべきだな。そして、義弟アンディと、組織の関係も。でないと話が断片的すぎて、追いつくのがやっと。最初の頃、バーでクリスの横にやってきて話した男なんて、どういう位置づけなのかよく分からなかった。
で、前提だけど。クリスは元運び屋で、今は警報器の設置をしてる。バーの男は「オヤジがムショに入ったからか?」なんて言っていたけど、どうなのだ? というか、クリスは父親、義弟、友人二人も含めて運び屋をやっていた、ということなのだな。で、バーの男は運び屋の元締めのひとり? となると、ケイトも一族が運び屋であることを知ってクリスト一緒になったってわけだ。みんなワルだな。で、クリスは捕まったことがないのかね。
あらすじに「組織から命を狙われる」とあるけど、組織の人物として登場するのはブリックス1人なんだよね。クリスが乗り込んでいった場所では一番偉そうだったけど、ボスじゃないんだよな? まあ、途中で思わぬ黒幕がバレるんだけど、これが呆気ないほど。セバスチャンがブリックスの家に行って、2人が仲間だと言うことが分かるくだりは、衝撃も何もない。もうちょい演出してくれよ。では、ブリックスとバーの男との関係は? 気になるんだよね、あの男。
しかし、セバスチャンが黒幕だったのはいいけど、どういう黒幕なんだろ。ボス? 義弟がドジったときの資金提供者ってこと? いまいち分からない。というか、いまだにセバスチャンやダニーは運び屋家業やってるんだろ? だったら、そんなに意外性はないよね。たまたま前回の資金提供がセバスチャンだった、というだけだし。むしろ、アンディのドジぶりを「ま、いいか」と許せない事情があった、というのなら分かるけど。ブリックスを使ってクリス&ケイトを脅す必要はどこにあったんだ? ぶっちゃけクリスに「実は俺が頼んだ一件で、金が回収できねえとまずいんだ」とか話してもよかったんじゃないか? なんて思うので、友だち面して、クリス&ケイトをいたぶる理由が分からない。やっぱ、その理由を描かないとね。
とかなんとか、他に方法もなく、クリスはダニーと相談して昔の仲間をピックアップし、パナマ行きの船に乗る。狙いはニセ札。ヤクには手を出さない、らしいが、なぜなの? 見つかると重罪だから? 理由も示してくれ。セリフになきゃ、字幕で補えよ。それと、いとも簡単に船員をもぐり込ませることができるのが笑えた。なかなかのザルだよな。船長も、クリスを見て「この野郎、いつの間に乗り込んで」なんて思っているが、だったらさっさと警察に通報すりゃいいのに、掃除夫として使役するだけで満足してしまう。おいおい。
パナマでニセ札を調達するのに時間が要るからと、機械室で細工をする。スクリューがどうたらだっけ? そのせいで船が岸壁に激突しちゃうんだけど、あれは細工のやり過ぎか?
で、パナマで降りてニセ札やに行くが、質が悪い。で、地元のギャングのゴンザリオのところへ行くが、ニセ札を買う金が消えてしまった。これはブリックスから携帯に電話に、「ヤクを買ってこなきゃクリスの子供を殺す」と留守電があったのをアンディが聞いて、気を利かせたから。だけど、勝手に行動するなんてね。クリスに言いにいきゃいいのに。アホだ。
てなわけで、たまたまクリスがゴンザリオに「装甲車なんか止めてやるよ」と軽口を叩いたら「そしたら札はタダでくれてやるよ」と返されたのを思い出し、それを実行に移すことに。っていうか、都合のいい時間に装甲車がパナマの街を通ったもんだ。で、クリストダニーは命がけで装甲車の前に立ちはだかる。ゴンザリオの手下が装甲車から額を取り出し、現代絵画を額から切り取る。お、ジャクソン・ポロックじゃん。と、すぐ気づいたよ。でも警官の反逆にあって手下は全滅。ゴンザリオも撃たれ、ほうほうの体で砦に逃げ帰るんだけど、久しぶりにパナマにやってきたクリスでも分かるような場所にあるのに、警察はなぜこれまで襲撃しなかったのか?
約束通りニセ札はもらう。「病院へ連れていけ」と未練なゴンザリオは途中で死んでしまう。で、なんとか港に引き返し、クルマごとコンテナに。
という間に、セバスチャンは本性を現してケイトを襲うんだけど、なんとまあ、肉欲もあったのね。やれやれ。で、ニセ札は海中に、ヤクは船長の掃除機の中に隠し(これがこの映画のキモらしいが、驚くほどのことはない)、税関を突破。迎えに来ていたブリックスを船長の家に連れていき、兼ねて用意の合い鍵で侵入。でも、警報が鳴って警察は来る船長は起きてくる! の間にクリスはトンズラ。の裏で、セバスチャンは弾みでケイトを気絶させ、でも死んだと勘違いして始末に奔走。工事現場に放り込んで生コンを流させる…。おっと、セバスチャンは工事現場の人だったのか、いまは。というところにクリスが乗り込んできて、かけた携帯が近くで鳴るので驚いて、生コン投入のスイッチを自分で切る。おいおい。そんなこと、なぜできる?
とまあ、こんなわけで一件落着。ニセ札はどっかの業者に400万ドルだか40万ドルだかで売り、ポロックの絵が荷台に転がっているクルマはアンディが安値で競り落とし、2千万ドル。あれまあ。クリスは絵の価値をしってたのね。

 
 

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