2014年1月

麦子さんと1/6テアトル新宿監督/吉田恵輔脚本/吉田恵輔、仁志原了
allcinemaのあらすじは「声優を夢見るアニオタ女子の小岩麦子。幼い頃に母は家を出てしまい、父の死後は、頼りない兄と2人暮らしの日々。そんなある日、母の彩子が突然舞い戻ってきた。顔も覚えていない母との同居に戸惑い、自分たちを捨てた母に心を開くことができない麦子。そして母は、あまりにも唐突にこの世を去ってしまう。彼女は人知れず末期ガンに冒されていた。やがて兄に押しつけられ、母を亡くした実感もないままに納骨のため母の故郷を訪れる麦子。すると町では、若き彩子と瓜二つの麦子の登場で大騒ぎに。なんと彩子は、かつてこの町のアイドルだったのだ。自分たちの青春に思いを馳せ、異様に盛り上がる町の人々に、否応なく振り回される麦子だったが…」
全編、平坦な感じの展開・編集で、いまいち乗れず。音楽がほとんどないのも、影響しているかも。話自体もベタすぎで、セリフも繰り返しが多く、くどい。わざとらしいエピソードとか大胆すぎる省略とか、生理的になんか変。設定も、そりゃあり得ねえだろう、な話。泣かせどころ、のつもりの所も、あざとすぎて笑っちゃうぐらい。こんなんで共感が得られると思ってるのかい?
窓口で職員に話しかけられている麦子(堀北真希)。どうやらタレントと勘違いされているらしい。タクシーに乗ると、運転手(温水洋一)が顔を見てびっくり。よそ見する運転手が、自転車の警官をはねる…が、何事もなく警官は去って行く…って、おいおい。ここはファンタジーの世界か?
遡って。兄・憲男(松田龍平)と住んでいるマンションに母が尋ねてくる。憲男はそれを追い返す…。どうも両親は離婚。2人は父親に育てられたけれど、父は亡くなり兄妹2人暮らしらしい。麦子は母の顔も覚えていない、らしい。2人は母に捨てられた、という思いはあるようだけど、具体的にどうだったかは描かれない。というか、毎月15万円、憲男に渡していたことが分かる。会いに生きたかったけど行けなかった、その償いということだろう。でも、それを麦子に知らせず、遊興費に充てていたらしい…って、母と憲男と、どっちもどっちだろ。
顔も覚えてない、経済的に貧困だった分けでもない、となると麦子が強く母を恨む理由はない。だから麦子が「母親だと思っていない」と言い切る言葉に説得力がない。
母は、「仕事が少なくなって仕送りができなくなるかも知れない。一緒に住めば経済的」という。最初、憲男は拒絶するが、15万のことがあるからなのか、一転して受け入れる…。この論理の飛躍の部分は、映像として見せない。なんかいい加減な展開だ。で、母が越してくると「俺はでてく」と恋人の家に移ってしまう憲男って、どうなんだい? いい加減すぎるだろ。ところで、引っ越しのとき、これから一緒に住む彼女が大型トラックのハンドルを握っていたんだけど、どういう彼女なんだよ。そっちが気になるね。
母はラブホや知人のスナックで働いている。でも、体調が悪そう。というところで、うるさすぎる目覚まし時計が登場する。麦子は、この目覚まし時計を投げつけて壊してしまう…というベタすぎる伏線の仕込みだぜ。
で、おどろくことに、予兆なく麦子が病院へ。え? ここで殺しちゃうのか? どっかで倒れて運ばれるとか、そういう過程はカットなの? すごく違和感ありありな脚本と編集。これって映画的じゃないだろ。もちろん冒頭のタクシー車内で、麦子は母親の遺骨を抱えている。だからトンデモな飛躍ではないけれど、不自然な流れだろ。
というわけで、映画の前提部分がやっと終了し、本論に入る。…のであれば、ここまでをもっと簡潔にやっつければいいだろ。麦子のバイト先の話とか要らないと思うし、憲男との生活や引っ越しも不要。むしろ、もっと母親への気持ちを描くべき。一緒に暮らせなかったことへの忸怩たる思い、不信感、でも15万のことで考えが少し変わったとか、そういう心の動きに迫らなくちゃ。
さて、以降が別世界の物語。村? 町? の50代の人々がみな、母のことを知っているというのは何なのだ? あり得んだろ。で。麦子が訪れたのは、母親の故郷だよな。親に反対され、母・彩子は東京に出て行ったのだから。で、東京で夫になる人と出会い、憲男と麦子を生んだ。が、夫を捨てて…何をしていたのかは分からない。ということで、母の遺骨を母の故郷に持って行った、と。しかし、母の実家や親戚はまったくないのか? でも、市営墓地(?)みたいな所に行くということは、そこに実家の墓が残っていると言うことだろ。では、そこに埋葬するという手筈をとったはずだから、その時点で彩子が死んだ、という話は役場辺りから漏れつたわるのではないのかい? 墓地管理で働いているミチルも、すでに知っていて当然ということになるよなあ。でも、そういう描写はない。
町を歩けば声をかけられ、祭りに行っても騒がれる麦子。あり得ねーだろ、そんなの。ウソくせえ。
で、埋葬許可書が見つからず、憲男に電話したら家にもなくて、再発行って、おいおい。どこに仕舞ったかも忘れちゃうのか? アホか。で、許可書が来るまで泊めてやると言いだすミチルって、何者? と思っていたら、最初は言わなかったけど、生前の彩子と交流もあった、なんてことがポロポロとでてくる。さらに、「声優の学校かあ」なんて、意味なく感じ入ったようなセリフを何度も言ったりする。なんなんだ。
タクシー運転手に誘われれば、2人でボーリングに行く。旅館の息子に誘われればバイクに相乗りで祭りに行く。尻軽だぜ。麦子さん。
ミチルには子供がいるが、離婚後は会ってないらしい。それを知ると、ミチルを飲み屋に呼び出して「なぜ子供に会ってやらない」と突っ込んだりする。おいおい。あんた何様? だよな。
母・彩子と自分、ミチルと、その子供。露骨すぎるアナロジー。旅館の息子が母親を突き飛ばすのを見て、自分が彩子を突き飛ばした記憶が蘇る、というアナロジー。彩子は、両親がもたせてくれた目覚まし時計を、ずっと使いつづけてきた…。その目覚まし時計を壊してしまった罪悪感…。とか、エピソードも分かりやすすぎて奥が浅すぎ。
なんか、母親の愛を知らずに育ったせいで、ちょっと歪んじゃいました。でも、いまは母親を許せる気がします。てな感じで、でも、どこにも説得力がない。『純喫茶磯辺』『さんかく』の、ちょっと不思議で面白い感性をもった印象は、どこにいってしまったのだろう。やれやれ、な感じだぜ。
そうそう。無くなった埋葬許可書は、冒頭でタクシー運転手がはねた警官がもっていた。鼻血をだした警官に麦子が渡したティッシュに入っていたらしいけど、そんなところに埋葬許可書をいれるか? な話だぜ。
かしこい狗は、吠えずに笑う1/9キネカ大森3監督/渡部亮平脚本/渡部亮平
Wikipediaの解説は「ブルドッグのようなイカつい容姿ゆえに蔑まれていた熊田美沙と、チワワのような可愛過ぎる容姿ゆえに妬まれていた清瀬イズミ。共に孤独な2人の女子高生がまるで共鳴するように親密になる。その素朴で幸せな関係が続くかと思われたが、ある事件を機に震撼と悲劇が展開する」。23歳で自作脚本を自主制作で初監督だと。
美沙は、クラスのボスにいじめられてるような雰囲気なんだけど、露骨ないじめは感じられない。ちょっとしたからかい対象というか、つまはじき程度な感じ。女子校のイジメは、なんか、ゆるい感じがして、どーもね。切迫感が感じられない。
そんな美沙に、イズミが接近してくる。なぜか人なつっこい。自分の自転車を「あげるよ」といったり、ちょっと異常が過剰。イズミも同じいじめられる側として美沙に接近してきていた、と思っていたんだけど、突然、怒り出したりして、美沙を支配しようとし始める。
イズミの豹変は、まず踏み切りで。与えた携帯ストラップを美沙が使ってないことへの怒り…。そうやって少しずつ美沙を制圧しにかかる。他に、イズミが万引きした化粧品を美沙に「使いなよ」という。美沙はそれを拒絶する。すると「柿泥棒はいいけど、化粧品の万引きはダメなんだ」というセリフはなかなかグサリとくるね。
あるとき、イズミが美沙を臨時教師の部屋(?)に連れていく。何のためかはよく分からない。共犯意識がもてると思われたのか。美沙は自分の思い通りになる、と踏んだのか?
ところがなんと、臨時教師の部屋には行方不明中のあゆみが洋服ダンスに軟禁されていた。あゆみはいじめる側の生徒だったけれど、あるときイズミはあゆみに反逆して誘拐・監禁したらしい。その先が臨時教師のアパートで、イズミは臨時教師を「恐怖と利益」で操っていると公言する。恐怖は、この状態が発覚すること。利益は、自分のオッパイを揉ませること…? イズミは「こいつが、(軟禁中の)あゆみを犯そうとしていた。とめたら、私も犯そうとした。そういう関係じゃなかったのに」とかいうんだけど、イズミと臨時教師はオッパイ揉み揉ませるだけの関係だったのかな。セックスはしていなかった?
とにかく、いじめられる側だったイズミが、いじめる側だったあゆみや教師を支配下に置いている! それをイズミは美沙に見せつける! 実はイズミとあゆみは、中学時代の仲好し。でも、女子校ではあゆみがイズミをいじめるようになったらしい。他にもクラスにはボスみたいなのがいるけど、彼女とあゆみがどうつるんでいたのかは分からない。コンビニ(?)近くで、その女ボスと他に2人の女子がいたので、この3人はいじめる側? それは、よく分からない。
という状態で、美沙が逆上し、臨時教師を刺してしまうのだけれど、意味はよく分からず。
冒頭から、以上のシーンの間に、スーツ姿の不細工な女性が落ち着かない雰囲気でいる状態がインサートされる。これはどうやら、鑑別所あたりに入れられた美沙と話をしている弁護士か何かだったらしい。どういう意図があってこんな構成にしたのかはよく分からない。とくに効果もあるように思えないし。
で、クレジットの後、授業シーンになる。かつてイズミのいた席に、美沙が座っている。いじめられる側がいじめる側になり…の再生産ということを示唆しているのだろう。分かりやすい。監督は「やった」感があるかもだけど、よくある手法なので、ふーん、な感じ。というか、教師を刺して逮捕され、そんな簡単に出てこられるのか?
・美沙が鏡をたたき割り、右目の瞳が赤くなる場面が2回ほど繰り返して映し出されるのだが、意味がよく分からず。
・警官も何度か登場するんだけど、あれはたんなる狂言回しなのかな。
・美沙とイズミがタバコを吸うシーンがある。美沙はタバコになれている。イズミは初めて吸ったような感じだったけど、あれは本当に吸ったことがなかったからなのか。それとも演技でそうしたのか?
・臨時教師の存在が中途半端かもね。もうちょい役回りを考えてやりたい気がする。
・予算の関係でエキストラが使えなかったのか、モブシーンがあまり生きていないかも。 ・編集タイミングにはテンポとキレがあった。
大脱出1/14新宿ミラノ1監督/ミカエル・ハフストローム脚本/マイルズ・チャップマン、アーネル・ジェスコ(ジェイソン・ケラー)
原題は"Escape Plan"。映画のキャッチフレーズが「“完全”を超えろ そこは、地図にのらない動く要塞。海に浮かぶその監獄はつくった者すら破れない。」というんだけど、完全にネタバレしてるだろ。おい。まあ、読んでなかったのでよかったけど。ははは。
allcinemaのあらすじは「脱獄のスペシャリスト、レイ・ブレスリンは、自ら囚人として刑務所に潜入し、様々な手段で脱獄しては警備の弱点を指摘するセキュリティ・コンサルタントの第一人者。ある日、そんな彼のもとにCIAから民間の極秘刑務所を調べるための脱獄依頼が舞い込む。しかしそれは、彼を陥れる罠だった。ブレスリンがぶち込まれた刑務所は、なんと洋上に浮かぶ巨大タンカー内に造られていた。しかも、ブレスリンの指南書をもとに設計された“墓場”の異名を持つ難攻不落の超ハイテク監獄要塞だった。いよいよ窮地に陥ったかに思われたブレスリンだったが、そんな彼に“墓場”の囚人たちを束ねる屈強な男ロットマイヤーが近づいてきた」
最初にスタローンの脱獄例が披露されるんだけど、トイレで作っていたペーパーの玉は何に使ったんだ? もってたノリみたいのはどっから調達? 暗証番号のキーパッドにかぶせたフィルムは、どこで手に入れたんだっけ? 仲間に画像を介してメモ? 仲間は、どうやってあれを読んだんだ? 監獄の監視カメラの映像は、仲間に見えていたのか? とか、どどどっと疑問だらけ。
まあとにかくスタローンとシュワちゃんの共演だから、細かいことはいいっこなし?
というわけで、刑務所の厳重さをチェックする仕事をしているスタローンが、特別な仕事を仰せつかる。普段なら、監獄の場所は教えられるのだけれど、教えられない。仲間とのコミュニケーションに使うマイク(体内に埋め込む)もほじくり出されてしまう。そうやって、ある監獄に放り込まれるのだけれど、はたして脱獄できるのか? というのが見どころ。
監獄内で、なぜか知らないがシュワちゃんが接触してくる。しかも、いろいろ献身的に世話を焼いてくれる。どころではない。独房に行きたいからというのにつき合って、自身も拷問のような独房に放り込まれる。なんて物好きな奴 >> シュワちゃん
独房にもぐり込むと、床のネジを腐食させればいい、と汗でそれをなし遂げてしまうという漫画のような展開。床板を剥がして出て行ってみれば、そこは洋上に浮かぶタンカーのような監獄だった、ってんだけど、そう驚くようなことではあるまい。揺れないようにしているとの話だけど、そんなのムリだよな。敏感なやつなら分かるだろ、すぐに。
いったん戻ってきて、対策を練るんだけど、味方につけたのが医師。どんな感じだったかについては、もう忘れてしまったよ。
あと、シュワちゃんはなんとかいうテロリストの居所を吐け、とかいって攻められていたけど、なんかあの関係はよく分からなかった。なんとかの部下、という触れ込みだったのかな。てなわけで、なんだかよく分からないまま、仲間を募って脱出計画を実行。2人以外の黒人の囚人は途中で死んでしまったんだよな、たしか。
あとよく分からないのが、脱出情報をどうやって外に発信したかなんだけど、医師がメールしてくれたのかとばっかり思っていた。それでスタローンの仲間がヘリでやってきた、と思ったら違った。やってきたのはシュワちゃんの仲間のテロリストだったのね。
そもそも、スタローンをこの監獄に送り込んだのは、CIA。そのCIAにシュワちゃんの娘が潜入していて、手引きしていた。実はシュワちゃんはテロ組織の部下ではなく、彼自身がテロ組織の親玉だつたという、つまらないオチがついている。つまり、テロ組織の親玉が、スタローンを利用して脱獄した話、なんだよ。いいのか、そんな話で、だよな。
で、やっぱりよく分からないのは、スタローンはどうやって脱出の情報を外部に発信したか、なんだよなあ。医者と会ってたのはスタローンで、シュワちゃんじゃない。シュワちゃんは、どうやって娘とコンタクトを取ったんだ?
あともうひとつ。刑務所の連中は、スタローンの著書を参考に監獄をつくっていた。そのスタローンに脱獄されるのは恥。だから彼らにとってスタローンは邪魔。であるなら、さっさと殺せばいいのに、わざわざ監禁して苦労して監視する理由はなんなんだろう。
そうそう。スタローンを監獄に送る組織のリーダーは、会社を売って別会社の専務かなんかに転職しようとしていた(んだっけかな。そんなようなこと)らしく、勝手にスタローンを売り渡したような状態になっていたらしい。なんか、とってつけたような話だな。
まあ、肉体派2人の共演だから、なんでもありでいいのかな。
サイド・エフェクト1/16ギンレイホール監督/スティーヴン・ソダーバーグ脚本/スコット・Z・バーンズ
原題も"Side Effects"。allcinemaのあらすじは「インサイダー取引の罪を犯した最愛の夫マーティンの収監に心を痛めた若妻エミリー。うつ病に苦しめられた末、ようやくマーティンが出所した矢先に自殺未遂を起こして入院する事態に。そんなエミリーの担当となった精神科医のバンクスは、彼女に新薬を処方し、症状の改善を図る。ところが新薬の副作用で夢遊病を発症したエミリーは、ある時ついに夢遊病の状態で夫を刺殺してしまう。担当医のバンクスは薬を処方した責任を追及され、窮地に追い込まれるが」
あー。見てから20日ぐらい経ってるのか。ずっと感想文を書かないでいて、ふと↑のあらすじをよんで内容を思い出そうとしたけど、ほとんど記憶にない。どういう映像だったか、のイメージも浮かんでこない。とうぜん、展開もほとんど記憶にない。どんな映画だっけ。って、困ったもんだ。
ポスターを見た。あ、少し思い出した。キャサリン・ゼタ=ジョーンズが最初の担当医だったんだ。予告編を見た。もう少し思い出した。の精神科医バンクス(ジュード・ロウ)が、処方の是非で訴えられるんだった。あれは、治験のレベルだったかな。で、日本の場合、そんなことで罪になるのか? なんで? とか疑問をもったんだっけ。
たしかシーバート(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)は製薬企業と結びついていたんだよな。で、どうだったんだっけ…とオチの書いてあるサイトの文章を読みつつ…あー、そうか。エミリー(ルーニー・マーラ)が亭主を刺し殺してしまうんだった。でも、それはクスリの副作用だ、と抗弁。でも実はシーバートはレズってて、副作用のせいで夫を殺したと無実を訴えるんだった。そうだそうだ。で、製薬会社の株が云々という話もあったんだっけか。ほとんど忘れてるよ。というか、ソダーバーグなので話の展開がパッパパッパ早く、しかも、彼の地の法律もあるので「なるほど」とすぐに来ないところもあって、だからちょっとモヤモヤだった部分もあったんだよなと。いいわけ。
ルーニー・マーラは儚い感じの女性で、そういえばラストシーンは再び監禁された精神病院の窓辺がなんかでボーゼンとたたずむ姿ではなかったかな。なんか、ソダーバーグにしては勧善懲悪な感じでアイロニーもこもっていなくて、いまいちピンと来なかったような記憶が…。それにしても、この記憶力のなさはなんなんだ。
ジャッジ!1/17ヒューマントラストシネマ池袋シアター1監督/永井聡脚本/澤本嘉光
allcinemaのあらすじは「一流広告代理店・現通で働く落ちこぼれクリエイターの太田喜一郎。ある日、身勝手な上司・大滝から彼の替え玉となって世界一のテレビCMを決める祭典“サンタモニカ広告祭”の審査員を務めるよう命じられる。そして、現地で夜ごと開かれるパーティにはパートナーの同伴が必須と知り、優秀な同僚・大田ひかりに偽の妻となって同行するよう懇願する。最初は断られるも、ラスベガスが近いことが幸いし、ギャンブル好きのひかりの説得に成功する。こうしてようやく乗り込んだ広告祭では、一癖も二癖もある審査員たちが自社の作品を有利にしようと熾烈な駆け引きを繰り広げていた。そんな中、大滝から“ちくわのCMを入賞させる”という真のミッションを告げられる太田だったが」
製作はフジテレビムービーらしい。テレビ会社がクライアントや代理店を扱って、というより、おちょくって映画をつくった。しかも、監督と脚本は有名CM制作者。こりゃもう内輪の曝露とパロディじゃん。
電通を思わせる現通に、博報堂を思わせる白風堂。お調子者でテキトーなCMディレクター、豊川悦司。下っ端の太田(妻夫木聡)のドジぶりとか、かなり大げさでカリカチャライズされすぎ。なので、始めは、ちょっとな、という感じになった。でも、次第にこの過剰な表現がちょうどいいように思えてくる。フツーにリアルに描いても、広告業界は絵にならない。そもそも監督も脚本も広告屋。要は、おもしろおかしく強調するのは慣れてる連中。寸止めで「あり得ん」「下品」「下らない」というレベルに落ちないよう、でも、ちょうどよく笑えるように計算されている。パロディとか、何かを下敷きにしているところもたくさんあって、発見すると楽しい。
豊川悦司になりすまして審査会場に乗り込み、あれこれ工作しつつ、でも結局自分のうどんCMや、本来の目的だったちくわCMもグランプリにできなかったけど、うどんが海外で大ブレイクし、クビは回避。ツンデレ状態の太田ひかり(北川景子)とも結ばれるし、ハッピーエンディングで楽しい映画に仕上がってる。
ビールのCMをグランプリにしたい審査員は、トヨタのCMをライバル視。でも復活審査で蘇り、最後は自分がつくったCMの応援演説をして失格。トヨタがグランプリを獲る。って、この時点で、この映画もスポンサーべったりだな、と…。そういう描かれ方を不思議に思わないのが実際のスポンサーであるというアイロニーもあるんだと思う。
・自社のCMが賞をとらないと、今後広告は任せない、というクライアント。親子同族で、バカ息子が次代の経営を担うらしいが…。で、この、ちくわCM、むかしの「ちかれたべー」に似てるんだけど。
・「キツネをネコと言え」というエースコックの社長だか広告部長って。エースコックはこんな会社ということで、社名OKによくしたみんだ。
・合コンシーンのビール飲むところは、妻夫木が出てる現実のサッポロのビールCMそのまま!
・トヨタは、CMでグランプリ獲るため、裏工作もする会社という設定で、オーケーしたのだな。しかも、トヨタの社員が、授賞が決まる前に「首相式に出るから」とやってくる予定なんだけど、っていかにもありそうな話。
・丸井のCMに相撲?
・CMコンテストの裏側は、裏工作だらけ。いつも寝てる審査員がいたり、審査員はみないい加減。信頼できっこない! という真実。「順位はつくる」とかいっておった。まさにその通り。
・トヨタの、グランプリになったCMって、見たことあるような・・・。本物? 博報堂が制作したらしいけど。
などなど、いかにも、な誇張がちょうどいい感じで話に収まっていた。
笑えるシーンとしては…
・会社の古参社員(?)に松本伊代がいて、「あのオバサンにも16歳があった」とアイドル時代の写真がでるところ。
・リリー・フランキーが左遷された元売れっ子ディレクターという設定で、鏡という名前で登場するんだけど、モデルは鏡明?
・太田ひかりに裸で部屋を追い出される太田喜一郎。オカマの審査員(タイとフランス?)に追いかけられ、カマキリ拳法で退治…というシーンは笑える。しかも、その後、ちゃんと部屋に入れてもらえたシーンを入れているのは、親切な演出。
・北川景子が「ただいまんもす」「エロガッパ」なんていう死後を口にする。そういうオッサン女だということか。まあ、ギャンブル狂という設定ではあるが。
・太田喜一郎は、ちくわをストローにしたり笛にする ダサっ。でもこれが伏線になっていて、審査委員長をちくわメガネで見て、将来を占う。審査員は、かつて「向かい風も、振り返れば、追い風になる」というCMでグランプリを獲った人物。喜一郎はこのCMを見て広告屋を志したという過去があるので、いっそう深い。審査委員長は「未来もTシャツを着てスタジオにいる」といわれ、某社から副社長で迎え入れられる条件を破棄し、信念に従って広告を審査することになる。なかなかうまい伏線だ。
・思わず津軽弁で仲良くなる妻夫木と鈴木京香って、ベタだけど、おかしい。
でも、ちょっと説明が足りないのが、ひかりの喜一郎に対する態度。ハナから嫌いなのかと思いきや…なんだけど、憎からず思っていたけど…な伏線は入れておいた方が、ラストにつながると思うんだが。ひかりの「人を助けるウソの何がいけないの?」にも、正直を貫き通そうとする喜一郎に惚れた、とかでもいいからね。
ラスト。北川が妻夫木を抱きしめつつ「この賭け、ヤバかった?」みたいなことを言う。ベタすぎるけど、北川のギャンブル好きという伏線が効いているか。
・ペン回しは、ある年齢層の得意技か。
・荒川良々のブラジル人はムリがありすぎ。
オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ1/24新宿武蔵野館2監督/ジム・ジャームッシュ脚本/ジム・ジャームッシュ
原題も"Only Lovers Left Alive"。恋人たちだけが、生きながらえた、みたいな意味なのか? allcinemaのあらすじは「デトロイトのアンダーグラウンド・ミュージック・シーンでカリスマ的な人気を誇る謎に包まれたミュージシャン、アダム。彼の正体は永遠の命を生きる吸血鬼だった。とはいえ、人を襲うようなことはなく、血液も病院で高品質なものを手に入れていた。そんなある日、モロッコのタンジールに暮らす吸血鬼イヴがアダムのもとにやって来る。2人は何世紀も愛し合う恋人同士。久々の再会を喜び、2人で親密な時間を過ごす。ところがそこへ、イヴの妹で問題児のエヴァが突然転がり込み、彼らの運命は静かに狂い出す」
あらすじの通りで、生の血が調達しにくい現在、吸血鬼は病院や医師などのツテを頼って血液を入手し、生きながらえている。「15世紀じゃないんだから」というセリフは、人を襲わず血を手に入れる生活をしている、ということなんだろう。けれど、調達が難しくなって、ついに人間を襲ってしまう、という、それだけの話。にしては、映像がだらだらつづくだけで、ドラマチックがほとんどない。せいぜい知り合いの音楽関係の調達屋イアンを、妹のエヴァがかみ殺してしまう、っていうことぐらい。ほかは、のっぺりな展開で波長が合わず。2、30分目に睡魔に襲われ、10分程度寝た。目覚めて、大丈夫かな、と思ったら、またしても寝てしまった。今日は二度寝してなかったからなあ…。で、どうやら半ば過ぎまで寝ていたようだ。というわけで、最初の2、30分と、後半の1時間しか見ていない。
現在に生きる吸血鬼の生活と困惑、なんだろう。新鮮な血液を研究所や医師に頼るのは分からんでもないんだけど、そんなに血が欲しけりゃ本人が医者か看護婦になればいいじゃん、と思ってしまう。あるいは献血センターか検体検査会社に勤めるとか。そうすりゃ、採りたての血液が手に入るだろうになぜしない。
それに、この手の映画でいつも思うのは、血液ってすぐ凝固しちゃうはずなのに、そういうのは完璧無視なのがどーもね。
妹のエヴァは奔放で、どーも、人間から直接、吸いたいみたい。で、たまたま馬が合った、アダムの知人で音楽家のイアンに噛みついてしまうんだが。それを知ったアダムとイヴが「よくも音楽家なんかと」っていうのがおかしい。エヴァも「ずっと気分が悪くて」とか言ってる。妹エヴァがイアンをがぶりとやって。部屋の中は無茶苦茶…という場面があるけど、アダムとイヴがその音に気づかないほど熟睡していたってことなのかね。で、イワンを簀巻きにしてどっかの工場の水槽にドボンなんだけど、あっという間に骸骨って…。塩酸とか硫酸なのか? しかし、そんなものが所蔵されてる水槽が、気軽には入れるところにあるっていうのが、変すぎだろ。
アダムは音楽家で、シューベルト(?)に楽曲を提供したこともある、とか。どーも、歴史的な曲の大半は、彼が書いたようだ。でも、なんで? だから? な感じではある。
アダムが血液を調達する、どこかの病院の鑑定医みたいな男は、アダムの正体を知っているのか? たぶん知らないよな。でも、いくら金になるからって、はいはいって血を渡すものかいね。アホ過ぎだろ。
タンジールでイヴに血液を提供する老人マーロウは作家のようだ。シェークスビアの絵にナイフが刺さっていたけど、作品を利用されたと言うことなのか? よく分からない。でそのマーロウが血液を調達する相手、の、フランス人医師って、そいつは何者なんだよ。これも金で解決しちゃってるのか? でも、血液だけを求めるような怪しいマーロウの正体を知りたいと思わないってのは、違和感ありすぎ。そのマーロウはついに死期を迎えるらしいんだけど、彼も吸血鬼なのに、なんで死んじゃうんだ? 永遠の命じゃないのか、吸血鬼って。
ところでタンジール、ってどこなんだ? 帰って調べたら、モロッコだと。わかんねーよ、そんなこと。説明しろよ。それと、解説にアダムとイヴは恋人同士とあるけど、字幕では夫婦みたいな感じだったぞ。しかし、なんで別れて住んでるんだ? 恋人同士だから? よく分からない。
・タンジールの酒場で歌っていた女性は、どういう意味があるのだ? それと、どっかのバーに行ったら、アダムとイヴの方を見ている男がいたけど、あれは誰なんだ? 吸血鬼仲間? たしかイアンが試供品のレコードを渡していたけど…。ただの思わせぶりなのか?
・「ゾンビが」「ゾンビだ」ってなセリフがよく出ていたけれど、ゾンビはどういう位置づけなんだ? 吸血鬼とゾンビは対立している社会なのか?
・3人とも手袋をしているのはなぜなんだろうね。
黒執事1/26新宿ミラノ2監督/大谷健太郎、さとうけいいち脚本/黒岩勉
allcinemaのあらすじは「世界が西側勢力と東側勢力に二分された近未来。執事のセバスチャンが仕える主人は、東側の幻蜂伯爵家4代目当主にして巨大企業ファントム社の若き総帥、幻蜂清玄伯爵。しかし本当の名は、汐璃。両親の死後、男として生きる道を選んだ男装の令嬢だった。その幻蜂家には、世界統一を目論む西の女王の密命を帯びて暗躍する“女王の番犬”という裏の顔があった。そんな2人は女王からの指令に従い、大使館員ばかりが狙われた“連続ミイラ化怪死事件”の解決に乗り出すが」
冒頭から映像にキレがある。まるで洋画みたいなライティング。工藤栄一ばりの光の使い方。アクションシーンもカット割りがテンポよく、俯瞰やスローを多用し、スタイリッシュ。これは期待できるか。ワーナー配給も伊達じゃないかもな。…と思ったのはオープニングタイトルまで。あとはフツーの日本映画で、次第に話がややこしくなっていくんだけど、辻褄がいまいちあやふやだし、ご都合主義になっていく。なので、後半はだんだんつまらなくなっていった。とくにラストにかけては話が「?」な感じだらけなので、うーむ、な感じだった。
水島ヒロのセバスチャンは、いい感じ。問題は剛力彩芽(幻蜂清玄こと汐璃)で。演技が下手。テレビの「ビブリア古書堂」のときは暗い背景と清楚な感じを、ゆったりとしゃべることで維持できていた。というか、演技しないでも素のままで存在感が醸し出せた。けれど、ここでは演技してしまっているから、ぶっきらぼうさがまんま出てしまっている。
・セバスチャンは、なんと悪魔らしい。途中で分かったんだけど、おいおい。で、そもそも剛力彩芽はどうやって悪魔と取り引きしたのだ? で、魂をとられたらどうなるのだ? また、悪魔は魂を得てどうなるの?
・剛力彩芽の先祖が外国の貴族で、それが某国にやってきて、また貴族になったと。ふーん。で、それがなぜ西の女王のスパイなんだ? てか、なんで西の女王がミイラ化事件の真相を探れ、なんて命令をだすのか理由がわからない。
・冒頭の立ち回りで、セバスチャンはボタンを落としたらしい。それを刑事が警察保安省の猫磨実篤(岸谷五朗)に見せるんだが、ボタンを落としたことに気づかないセバスチャンってどうなんだ? それと、猫磨が黒幕なんだから、その時点でボタンの持ち主が分かってるわけだろ?
・で、その刑事。セバスチャンの大立ち回りを目撃していたのたやつがいて、一人で12人やっつけた、って猫磨に話すんだけど。目撃者って誰だよ。さらに、その刑事がセバスチャンを参考人で取り調べすることになって、貧弱な部下3人を取調室に残して席を外すって、アホか。
・剛力彩芽は、ミイラ死した外交官の遺体を見て、葉巻とワインのシミから、あるパーティにたどりつく。といっても調べたのはセバスチャンだけど、あまりにも簡単に分かりすぎ。で、その出席者リストまで手に入れている。それを叔母の若槻華恵(優香)に見せるんだが、「知ってる人が何人もいるわ」と軽く言う優香って、おいおいだよな。そんなパーティ、秘密でも何でもないではないか。
・で、さっそくそのパーティに向かう剛力彩芽。同行した優香が、車を降りた剛力に招待状を渡すんだけど、どうやって招待状を手に入れたんだよ。あるいはまた、渡されて始めて封筒の紋章に気づくって…。セバスチャン、調べが甘くないか? あるいは、あえて事前に渡さず、そこで剛力彩芽に気づかせた?
・その紋章は、剛力の両親が殺されたときの、犯人が手にしていた拳銃にもついていて、記憶していた。というバカな話。みられて素性が分かるような紋章を拳銃につけるな。というか、そんな拳銃を犯罪に使うなよ。
・剛力はイプシロン製薬の九条新兵が主催するドラッグパーティに潜入。で、あそこで繰り広げられたのは、伊武雅刀と優香の、人が欲深くなり死んでいくのを楽しむ会なのか? 死にそうだった連中は、死んじゃったのか? 死体はどうすんだ? そもそもパーティごとに出席者がみな死んで、つまりは失踪してしまったら、それだけで大事件になるだろうに。最初の、死んだ大使の事件もその一環らしいが、ではなぜ葉巻にクスリを仕込んで、大々的な事件にする必要性があったんだ? 謎の連続ミイラ死で、九条にどんな効果=得があるのだ?
・そうそう。冒頭で剛力彩芽が持ってた写真って、あれは誰が撮ったんだよ。あの、招待状を渡している写真。どうやって入手したんだ? しかしそれにしても、優香の知り合いもたくさん出席してるようなパーティ、セバスチャンや剛力彩芽が知らない方がおかしくないか?
・優香が九条に接近したのは、若い娘から抽出した若返りのクスリが目的だったよな。その優香が黒幕に会い、黒幕のプロジェクトにまで参加する理由は何なんだ? 九条(伊武雅刀)はの動機もよく分からない。黒幕の手伝いをして、どういう利得があるのだろう。若返りのクスリを闇で、大金持ちにでも売れば儲かるだろうに。さらに、その副産物でできた毒薬を、なぜ黒幕が自由にできるのだ? 黒幕の目論見って、国を支配することなのか?
・そういえば、優香は黒幕と会ってるんだろ。なのに「誰だか分からない」って、変だろ。
・セバスチャンは、イプシロン製薬に簡単に入り込んで情報を収集する。それから、篠崎(宮川一朗太)の経営する商社にも…。なんというセキュリティの甘さよ。いまどきあり得んだろ。
・宮川一朗太の会社で殺されていた連中は、誰なんだ。で、殺していたのは、黒幕の手下? 九条は優香に殺されちゃうんだから、違うよな。というか、なんで優香は九条を殺しちゃうんだ? イプシロンを自分の傘下にするため? 黒幕の命令? で、篠崎の会社でテロが起こったように仕組んでいた、とか優香がいっていたけど、ではなぜシートの上で殺していたんだ? あそこで血が流れては困る理由は何なのだ? で、剛力と一緒にいたあのメイド、なんかあると思っていたけど、やっぱり先祖代々の護衛。って、忍者みたいだな。それにしても、剛力と一緒に逃げりゃいいのに、なぜ戦う。映画の派手さの都合上か?
・さてと。優香が慰霊祭に注目を集めておいて、じつは、毒薬の大量散布しようとしていた、というのは理解できる。けど、何のため? テロを偽装して、どういう得があるんだろう? 黒幕は、あの国を支配しようとしていたのか? 九条と優香を呼んで、どういう取引をしたんだろう。なぜ九条だけ殺したんだろう。優香は、復讐だけ? 伊武雅刀には、どんなメリットが?
・剛力彩芽が優香から解毒剤を分からないように(ムリだと思うけど)もぎ取ったり、セバスチャンが男から解毒剤の瓶を掠め取ったり、都合がよすぎ。
・悪魔のセバスチャンと互角に戦う、優香の執事って…。いくら薬で強化した身体だといってもなあ。
・毒薬で死にそうな剛力に、セバスチャンが飲ませた薬はどうしたんだ? 隠し持っていた? じゃあなぜ出さなかった? 剛力に死んでもらうためか? 互いの口元が赤くなっていたが…。ひょっとして、優香の執事と争う前に、まとめて飲んだ解毒剤が血液に混じっていて、それを飲ませたとか?
・セバスチャンが、剛力の居場所を知ったのは、猫に聞いたというわけか。なんだ、それは。
・ラスト。大量の毒薬が届けられた先は、どこなの? 開けてたのは、岸谷じゃない。次のシーンで手紙に封蝋を押していたのは岸谷の猫磨だから、岸谷に送ったのか。誰が? 何のために? よく分からん場面だ。しかし、岸谷の猫磨は、冒頭でも手紙に封蝋をしている場面があって、こりゃ怪しいと思うよな。黒幕が猫磨でも、ぜんぜん驚かない。
・で、剛力の両親を殺したのは、いったい誰なの? で、なんで剛力は殺されなかったのだ? 殺しちゃった方が簡単だったろうに。
・剛力の家従の志垣太郎は、途中で気づいた。彼と宮川一朗太はセリフがない…。 ・優香って、顔が変だな。正面で笑った顔は見慣れてるんだけど。それ以外の顔が別人に見える。それもブサイクに見える。しかし、役柄とはいう優香は気の毒な設定だな。そもそも剛力の父親は優香と結婚していた。それが事故だかなんだかで子供が死に、離婚。後釜として優香の妹が妻となった…って、ねじれも甚だしい。でも、その恨みが全ての原因だとすると、ううむ、な話だ。
孤独な天使たち1/27ギンレイホール監督/ベルナルド・ベルトルッチ脚本/ベルナルド・ベルトルッチ、ニッコロ・アンマニーティ、 ウンベルト・コンタレッロ、フランチェスカ・マルチャーノ
原題は"Io e te"。「あなたと私」だそーだ。allcinemaのあらすじは「周囲に馴染めず、独りが好きなちょっと変わり者の14歳、ロレンツォ。学校行事のスキー合宿に行くと両親を騙して向かった先は、自分の住むアパルトマンの地下室。彼はそこに食料を持ち込み、寝床や暖房も確保したその秘密の部屋で、好きな本と音楽に浸って一週間を過ごす計画だったのだ。ところがそこに、異母姉のオリヴィアが転がり込んでくる。美しく奔放な上、麻薬中毒でもあるオリヴィアの登場で、のんびり過ごすはずだったロレンツォの地下室生活は思いもよらぬ方向へと転がり始めるが」
小品である。しかし、ベルトリッチも、少しボケたか、な感じ。だって話は、だからどーした、な感じでしかない。ロレンツォがどの程度、学校や家庭、社会に抵抗を感じているのか、よく分からない。せいぜいが単なる反抗期。だって、学校行事のスキー旅行に行かず、自宅の地下室で1週間(5日だっけ?)過ごすだけ。どっか家出するわけでもなく、悪ガキと犯罪行為にふけるわけでもない。心の底では、親に"いい子"であることを見せたい訳で、親の手のひらからは抜け出ていない。たとえば、旅行当日もとりあえずは学校の集合場所に行っているし、帰宅時も同様だった。みょうに律儀というか、正直。そんな少年の1週間を見せてどーなるんだ、な感じで、終わってみても、やっぱり、だからどーした、な感じだった。
しかし、キャラがいい。というか、美少年でなく、あばた面で、いかにも、な感じがいい。そして登場する腹違いの姉オリヴィア。その2人の地下生活という、ある意味で極限生活。そのなかで、ロレンツォは大人の実態を垣間見て、腹違いの姉との連帯感を感じ取る。その様子が、なかなか面白い。オリヴィアもそんな美人ではないし…。2人の存在感が、話のつまらなさを補ってあまりある。
ちょっと変な映像、と思えたのは、両親がなにかを探している様子が、床下から透けて見えているイメージ。これはロレンツォの妄想だろうか。それ以外はいたってフツーな映像。アナロジーとしてアリやアルマジロが登場するのは、あまりにも分かりやすすぎて、ちょっとなあ、という感じ。
しかし、驚くのは、高級マンションの構造だな。高層階の生活空間と別に、物置として利用できる、でも、日本なら100平米ぐらいのマンションに相当するような、風呂付きの部屋がついているのだね。それとも、その部屋も追加で買ったのかも知れないけど。でも、窓の外は街路でガラス窓もない。こんなとこ、誇りっぽくて生活できないだろと思うんだけど…。
オンリー・ゴッド1/30ヒューマントラストシネマ渋谷監督/ニコラス・ウィンディング・レフン脚本/ニコラス・ウィンディング・レフン
原題は"Only God Forgives"。神のみぞ赦し給う、とかいうことか。allcinemaのあらすじは「タイでボクシングクラブを経営しながら闇のビジネスに手を染めていたビリーとジュリアンの兄弟。ある日、兄ビリーが何者かに惨殺され、知らせを受けた母でありギャングの女ボス、クリスタルはジュリアンに復讐を命じる。やがてそんなジュリアンの前に、神に代わって裁きを下す謎の男チャンが現われる」
つまらなかった。あの「ドライヴ」の監督が、なんでこんな退屈極まりない映画を撮るのか、意味が分からん。
最初は、「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ」みたいな感じで、みな無口で、淡々と核心に触れようとしているのかな…と思った。けれど、いつまでたっても淡々と様式的な描き方がつづいて、ドラマが発生しない。ジュリアン役のライアン・ゴズリングも、ほとんどセリフがないし。それに、もっと裏があるとか深い意味があるのではないかと思って見ていたんだけど、どーもそなんなことはないようだ。ええっ? こんなんで最後まで行くのかよ。どっかでドラマチックが待ってないのかよ? 待ってなかったよ。あああああ…。
あの、警察署長みたいな男はなんなんだ。ビリーはロリータ趣味なのか。ジムの選手が勝てなかった腹いせに、売春宿で子供を要求して喧嘩になる。最後は、どっかの行きずりの売春婦を買い、でも、どういうわけか殺してしまう。通報を受けた警察は、殺された売春婦の父親に、「したいようにしろ」とビリーを渡す。その結果のビリーの死だ。眼には眼をの法に則れば、それはそれで納得のいく結論。でも、そうはいかない。ジュリアンは、ビリーを殺した父親を見つけるけれど、彼の言い訳を聞いてしまい、復讐できない。というわけで、母親が乗り込んでくるんだけど、解説にはギャングの女ボスとか書いているけど、そんな説明は映画になかったような…。
たまげたのは、そのギャングの女ボスがクリスティン・スコット・トーマスだったこと。芯が強そうではあるけれど、知的で一本筋が通ってる感じの女優で好きなんだけど、こういうビッチぶりも発揮するんだ、と驚いた。この映画の唯一の見どころは、これかもね。
クリスティン・スコット・トーマスは、ビリーを殺した男を現地の殺し屋(やったのは少年)を介して処分するんだけど、警察署長(?)のチャンの存在を知り、その抹殺を企むんだが、これが上手くいかない。という話が後半のキモなんだけど、結局、それだけなんだよね。がっくり。
このチャンが笑えるのだ。忍者みたいに、背中から刀を抜き出し、これで犯罪者を征伐する。多くは、手首を切り落とす。でも、それは現実ではなくイメージ、というオチが付くんだけど。それはジュリアンの妄想なのか、監督が付与したメッセージなのか、よく分からない。
それにしても、あんな細身の刀はタイにあるのか? あんな背中から抜き出して一刀両断、ができるような刀剣が、ほんとうにタイにあるのか? 日本刀からのイメージなんじゃないのかね。タイにあんな達人がいるイメージは、ないよ。
結局、あれやこれやがチャンには通じず、逆に返り討ち。クリスティン・スコット・トーマスはチャンに首筋をひと突きされて死んでしまう。のはいいんだけど、その現場にあとからジュリアンがやってきて、母親の遺骸を損壊するのは、幼いときから兄ビリーと比較されて育ち、愛されていないと感じていたからなのか。よく分からないけど、そんなことでヤクザになったりしてはいけないよね。結局はこれも、エディプス・コンプレックスで片づけてしまって、いいのかいね。やれやれ。
それにしても、ジュリアンは女を買ってもやることなく、覗き窓みたいな関係でいることに快感を感じていたのだろうか。よくわからない。

 
 

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