グレイトフルデッド | 11/5 | 新宿ミラノ3 | 監督/内田英治 | 脚本/内田英治、平谷悦郎 |
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タイトルの意味は、「感謝する使者」か。allcinemaのあらすじは「孤独な女・冴島ナミの趣味は孤独ウォッチング。街で孤独な人間を見つけては、その生活を監視して優越感に浸っていた。ある日ナミは、孤独な老人・塩見三十郎を見つけて大喜び。さっそく、塩見の日常を監視し始める。彼の孤独ぶりを堪能するナミだったが、そんな塩見の前に信心深い若い女性・スヨンが現われる。孤独死確定と思われた塩見は、スヨンのおかげで信仰に目覚め、生きる意欲を取り戻す。最大の楽しみを奪われ、逆上するナミだったが…」 allcinemaは「ホラー/コメディ/サスペンス」に分類しとるな。サスペンスは削除してもいいんじゃないのかね。見終わっての印象は、小粒な園子温ってとこかな。 父親は妻・響子に夢中、その妻はボランティアとくに海外の貧しい子にしか関心がない。2人ともナミと姉の明日香には無関心。その妻が海外にいってしまい二度と戻らなかった。父親は女をつくり同居。秘密の部屋で毎日何かやっている。父親は腑抜け同然となり、愛人も出ていくと半年後に自殺。姉の明日香は男と駆け落ち。で、時が流れ10数年、ナミは少なくない遺産を受け継いで女王様生活…という設定にムリがありすぎ。そんなんで人は孤独になったりはしないぞ。妻に何年もぞっこんの亭主なんていないだろ。 父親の仕事は何だったんだ? 愛妻に去られ、どうやって愛人をつくった? その愛人は遺産めあてではなかったのね。そして、最大の違和感は、姉妹で同じような扱いを受けながら、姉はフツー志向になり、ナミはなぜ暴力的になったのか。まあ、個体の問題だよな。ってことは、生まれ育ちの環境をあれこれいっても、ちっとも説得力はない、ってことだよな。 なぜか知らねど長じてナミは、孤独っちの観察マニアとなる。公園の孤独男の矢部太郎がなかなかいい味を出しておったが、あんなのいたら速効で警察がやってきて措置入院だろ。あと、孤独死した老人と一緒に写メったり、すでに変人と化しておるよナミは。 そんなナミが最強の孤独っちと決め、徹底的に観察するのが塩見三十郎(笹野高史)。なんだけど、どこが最強? とずっと思いつづけていたんだけど、その理由がクライマックスで氷解する。おお。なるほど。そういうオチか。このオチはなかなか決まっていたと思う。 ナミが塩見を最強の孤独っちと認定した理由は、塩見が通販の人気キャラ(社長だろう)だったから。幼いナミは父親に相手にされず、毎日のように通販番組を見て注文を繰り返していた。それで、番組にでていた塩見に対して仮想的な愛情の対象としていた、ということのようだ。あの売れっ子だった塩見がいまは孤独。そのザマを観察することに執着し、かつまた父親と重ね合わせることで、かつての恨みを果たしたいと思った、ということなんだろう。塩見にダメな父親を投影し、愛憎半ばする感情で支配していた? ナミは、孤独に死んでいく塩見を見届けるつもりだったんだろう。 というところに、キリスト教信者のジャマが入る。孤独老人と一緒に聖書を読むボランティアの2人だ。日本人青年と韓国人女性のスヨンで、塩見は信者になり、生き生きとしだす。これじゃ孤独死が見られない。というわけで、孤独男矢部太郎を仲間に引き入れ、日本人青年を殺害。スヨンも殺した…と観客には思わせておいて、実は拘束していたということなんだが…。 この辺りからホラーなのかな。ナミは矢部太郎と塩見の家に乗り込んで、塩見を拘束。バイアグラを飲ませ、いたぶり始める。その様子を見て矢部が欲情。その背中を刺身包丁でブスっ。矢部は使い捨てなのね。気の毒。で、その後は塩見にまたがって犯すんだけど、カメラが写した床の血は、これが子女喪失ということなんだろう。ナミはこれまで男を拒否してきたのか、相手にされなかったのかは分からんけどね。まあ、そういう設定にしないと話が成立しないし、強引なんだろう。 当たり前だけど、塩見の息子が尋ねてくる。これも金槌で一撃必殺。というところでナミは塩見に精力をつけさせると買い物に行ってるんだけど、この間に塩見はヒモをほどいて、警察に通報かと思ったら「戦争だ!」といいはじめる。おいおい。相手は女ひとりだってのに槍や鍬をもちだして、どうする? まあ、息子の仇討ち、ということなのかな。むりくりだ。 こっからが大笑いで。塩見邸でドタバタの殺し合いが始まる。たまたまやってきた姉の明日香が槍で刺される。塩見のまいた画鋲をナミが踏む、顔に刺さる。逃げるナミを追って神社に行き、あれやこれやでナミの腹に槍を刺して一件落着。塩見が自分に関心をもってくれることに喜んでいる、ということらしい。でも、それをセリフでいっちゃオシマイだよな。で、その近くにクルマがあり、そこにスヨンが軟禁されていた。という、オチ。何日飲まず食わずしてたのか知らないけど、よく生きてたな、な感じ。生かしておいた理由はなんだろう。女同士の情け? よく分からん。 というわけで、精神分析的に解釈はできるんだけど、あまりにも解釈が簡単過ぎて奥行きがいまいち。父親への愛情の裏返し、ってだけじゃ妖しい不思議感が足りないだろ。とくに、前半の孤独っち観察の辺りはコミカルなタッチでほのぼの路線にも見えてしまう。それでよかったのか。父親の退廃的なところとか、愛人との宗教的な儀式の部分(これがよく分からなかった)とか、もうちょっと何とかやりようがあったんじゃないのかね。 ・処女喪失で塩見に挿され、というより、自分で挿したわけだけど。その塩見に槍で刺されるというのもアナロジーなのかね。 ・母親がボランティア好き、という設定も、教会のボランティアにつながっているわけで、伏線も分かりやすい。というか、バレバレな感じかな。 ・ナミは20歳の設定なのか。もうちょっと上かと思っていたよ。ところで姉の明日香は何歳で駆け落ちしたんだ? ・音声がひどく聞き取りにくかった。なんとかしろ。 ・エンドクレジットがガタガタ震えながら上がっていくよ。見づらいったらありゃしない。 | ||||
誰よりも狙われた男 | 11/7 | 新宿武蔵野館2 | 監督/アントン・コルベイン | 脚本/アンドリュー・ボーヴェル |
原題は"A Most Wanted Man"。allcinemaのあらすじは「ドイツの港湾都市ハンブルク。同国の諜報機関によって一人のチェチェン人青年イッサ・カルポフの密入国が確認される。イスラム過激派として国際指名手配されている人物だった。テロ対策チームを率いるギュンター・バッハマンは、彼を泳がせてさらなる大物を狙う。一方、親切なトルコ人親子に匿われ政治亡命を希望するイッサを、人権団体の若手女性弁護士アナベル・リヒターが親身になってサポートしていく。イッサは、そのアナベルを介して銀行家のトミー・ブルーと接触を図る。CIAも介入してくる中、アナベルとトミーの協力を強引に取り付けるや、ある計画へと突き進むバッハマンだったが…」 スパイ物だけど、よくあるような複雑怪奇さはなくてシンプル。人物の混乱もない。全編に静謐な雰囲気が漂っていて、そのタッチで押していくような感じかな。アナベルがイッサを別の家にかくまってから、ちょっと中だるみするけど、まあいい。こんなに予定調和で淡々ときてしまって、ドンデンはないのか? とじれったく終盤へ。で、最後の最後にあった。おお。そうきたか。CIAと独国家上層部に、またしてもプランを台無しにされたバッハマンの悲哀というか哀愁漂うラストだった。「世界の平和のために」ね。はははは。 バッハマンは、機械的にものごとを処理する人間ではないようだ。イッサの入国以後の動向を監視しつつ、ほんとうに彼はテロリストか? という疑問をいだきつつ追っている。イッサの目的がトミー・ブルーという銀行家に会うこと、を知ると、その周辺も丁寧に洗っていく。そして、イッサを短にテロリストと片づける上司やCIAに対して、「イッサを利用しよう」ともちかける。というのも、アブドゥラ博士という事前活動家がいて、一部の資金がテロリストグルーブに流れている可能性を疑っていたからだ。うまくすればアブドゥラ博士も手中に納め、テロ集団の情報も得ようとしていたようだ。 いっぽうの上司は、ドイツ国内でテロでも起こされたらたまらないから、さっさと逮捕しろという。多分これはCIAの圧力なんだろう。でもなんとか説得して3日の猶予を得るんだけれど、人権弁護士のアナベルがイッサを別の家に移動し、監視の目を避けようとした。これに対してバッハマンは実力行使し、アナベルを誘拐。「イッサのためだ」となんとか説得して、アナベルも仲間に引き込んでいく。…こういう手口がバッハマンの得意技なんだろう。 父親の残した莫大な財産がブルーの銀行に預けられているのを知ると、イッサはその受け取りを拒否。アブドゥラ博士を介してボランティア団体に寄贈する道を選ぶ。ここでアブドゥラ博士が寄贈先をある船会社に変更すれば、これが決め手となる。それを押さえてアブドゥラ博士もこちら側に…と思っていたら、その通りになった。万々歳。 でも、このまま話が終わるわけないよな、と思っていたら。最後の最後でCIAと上司(警察なのかな)が急撃してきて、イッサとアブドゥラ博士を確保し、連れ去ってしまう。バッハマンの"Fuck"だったか"Goddamn it!"が響く。部下も呆然。の呆気ないラスト。悔しさと哀しさがにじみ出るラストシーンであったよ。 とはいいつつ、難点もある。たとえばチェチェン人青年イッサ・カルポフの動向が逐一チェックできている理由が、よく分からない。こういう前提となる部分をちゃんと描き込まないと、国際指名手配されている男がやすやすと監視下に置かれてしまうことに説得力がない。 イッサは最近までトルコの刑務所にいて、それ以前はロシアの刑務所にいたようだ。ロシアでは拷問され、自分はテロリスト、と自白してしまったらしいけど、それは嘘なのか? 実は真実なのか。いや、テロリストと自白して、どうやって刑務所をでられたのだろう。脱獄? 国際指名手配は、なんのため? バッハマンの私生活の描写がないのも、もったいないかも。描けばもっと厚みが出ただろうに。まあ、スタッフの女性イルナ(ニーナ・ホス)に関心があるけどつき合ってはいない、というようなところはあるけど、家に帰ったところとか、多少の過去とか描いてもよかったような気がする。とくに、ベイルートで失敗し、部下を失った経験とか、重要な話なのだから。 CIAの女性マーサにロビン・ライト。いかつい顔であまり記憶にないんだけど、出演作は結構見てるみたいだな、調べてみると。バッハマンのベイルートでの失策は、CIAが仕組んだことだった、と知らせるんだが。彼女の言うセリフが「世界の平和のために」なんだよな。で、最後のツメの会議で彼女が、イッサとアブドゥラ博士を泳がせる理由をバッハマンに問うのだけれど、彼の答が「世界の平和のために」で気が利いてると思わせておいて、最後の最後でひっくりかえす。いや。CIA恐ろしや。ドイツの情報部辺りはかるく手玉にとられているのだな。 スタッフのダニエル・ブリュールはよく見かける役者なのに、ほとんどセリフがない。もったいなさすぎ。 人権弁護士のアナベルがレイチェル・マクアダムスってのは、ミスキャストだと思うんだけどな。演技派に転向・挑戦? いやあ、出てくるたびに安っぽいロマコメを連想してしまって、いまいちだったよ。 でね。最後にアブドゥラ博士のテロ支援の証拠を確認した後、バッハマンがアナベルにがイッサと、彼をかくまったトルコ人夫婦(彼らが気の毒)のパスポートや身分証明書を渡し、それをアナベルがイッサに渡すんだが。受け取ってイッサは、ニコリと笑うんだよ。え? パスポートもらって喜ぶ? 誰が自分のために手配したんだ? って、疑うんじゃないのか? これはかなり変な反応だと思う。 あとは、イッサの父親と母親、チェチェンの関係がいまいちよく分からなかった。母親がチェチェン人で、父親に15歳ぐらいで犯されて生まれた? 生むとすぐ母親は死んだ、というのは殺されたのか自殺したのか? 父親は多くの人を殺したらしく、莫大資金をブルーの銀行に預けたのも、そうして得たお金らしいが。イッサの父親というのはどういう人物なんだ? ぼんやり見ていたので、見逃してるやも知れんが、もう少し知りたかった。 | ||||
グランド・ブダペスト・ホテル | 11/10 | ギンレイホール | 監督/ウェス・アンダーソン | 脚本/ウェス・アンダーソン |
原題も"The Grand Budapest Hotel"。allcinemaのあらすじは「1932年。グランド・ブダペスト・ホテルは、“伝説のコンシェルジュ”と呼ばれるグスタヴ・Hの完璧なおもてなしが評判で、彼目当てのエレガントな客で溢れかえるヨーロッパ随一の超高級ホテル。そこでベルボーイ見習いとして働くことになったのが移民の少年ゼロ・ムスタファ。グスタヴの指示を忠実にこなし、少しずつ信頼を獲得していく。そんなある日、グスタヴと懇意の間柄だった富豪の常連客マダムDが殺害され、遺言で名画“少年と林檎”がグスタヴに贈られることに。しかしグスタヴには殺人の嫌疑がかけられ、おまけに絵を取り戻そうとマダムDの息子ドミトリーの刺客も迫ってくる。そんな中、グスタヴとゼロはコンシェルジュ仲間やゼロの婚約者アガサの力を借りて逃亡を続けつつ、事件の謎を解明すべくヨーロッパ中を駆け巡るのだったが…」 ↑のあらすじを見て、そういう話しだったのかと。というのも、バアサンが他国のホテルで死んだので、ゼロとでかける辺りから朦朧…。頭がはっきりしだしたのは、脱獄する辺りからだったのだ。朝、二度寝してなかったせいもあるけど、やっぱり映画自体に引きがなかったからだと思う。で、この様式的で寓話的な感じのタッチは、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』『ライフ・アクアティック』と似てるな、と。いや。監督の名前なんて見てないから、そんな一緒懸命。で、その例に挙げた2本もちゃんと寝てる。『イカとクジラ』『ダージリン急行』で寝てないのは、タッチが少し違うからかも。でも、タッチの同じ『ムーンライズ・キングダム』では寝てないんだよな。さて、その理由はなんだろうかね。まあいいけど。 なので、後半はちゃんと見てるけど、背景もよく分からないので、楽しめたとはいえない。 この映画。ウェス・アンダーソンの他の映画と違うのは、時代設定が第三世界の頃らしいということ。『デリカテッセン』とかクストリッツァの描く世界と似ているので、そういう点では嫌いではないんだけど。話自体がそんなに面白くないし、きれいきれいな画面を見てもそんなに楽しくない。やっぱ物語のダイナミズムがつたわってこないと、ダメだな。 来週までギンレイでやってるから、もう一度見に行ってみるか。少し予習してからね。 ・インド人ぽいベルボーイの名前がゼロなのは、インドで「0」が発見されたからなのかね。 ・ファシズムの軍隊が出てくるのは、あれはナチのことだよな。 ・意味ありげで、実は意味なんかない、というのもかなりありそうなんだが・・・。 ※町山智浩がツヴァイクとの関係に触れている。リンク。ツヴァイクの作品や本人と、この映画の重なる部分を指摘したものだけど、そういうことはあるのだろう。けれど、それ以上の意味や隠喩を読み取るまでにはいっていないと思う。たんにピースを寄せ集めて映画ができています、というのでは映画としてのメッセージ、奥行きの深さに達していない。だからなに? ということまで掘り下げて欲しいところである。 | ||||
祝宴!シェフ | 11/11 | ヒューマントラストシネマ有楽町2 | 監督/チェン・ユーシュン | 脚本/チェン・ユーシュン |
台湾映画。原題は「總舖師:移動大廚」で、英文タイトルが"Zone Pro Site: The Moveable Feast"。公式HPのあらすじは「台湾では、お祝いごとがあると屋外で宴が開かれ、そこで腕を振るう、総舗師(ツォンポーサイ)と呼ばれるおもてなしの心を極めた宴席料理人がいる?その中でも、“神”と称された伝説の料理人を父に持つシャオワンは、料理を嫌い、モデルを夢見て家を飛び出していたが、夢破れ帰省。そこで亡き父がレシピノートに残した“料理に込めた想い“に心を動かされたシャオワンは、時代の趨勢で衰退の一途をたどっている宴席料理の返り咲きをかけ、全国宴席料理大会への出場を決意する。しかし料理は初心者。果たして、シャオワンは父の想いを引き継ぎ、“究極の料理”に辿りつくことができるのか?」 話は『スシ王子!』に『料理の鉄人』を加味したような感じ。『スシ王子!』の主人公・米寿司が魚の目がダメなのと、この映画の主人公・シャオワンが魚がダメなのも、似ている。他にも、伝説の料理人がでてきたり、参考にしているのではないだろうか。 シャオワンは料理嫌いの魚嫌いで、モデル志望だったけど夢破れて里帰りしてみりゃ母親が夜逃げして家はなし。さがして行くと、食堂を経営してたんだけど店は閑古鳥。なのにオタク3人がシャオワン目当てに集まってきて、向かいの食堂のオヤジもシャオワンにぞっこん。というところに、老夫婦が「昔のメニューを再現してくれ」とやってくる。まずい料理をなんとかしよう、というところに都合よく料理ドクターのルーハイが現れてレッスンスタート。寡黙な鬼頭師が突然バイクでやってきたり、シャオワンが父・蠅師の師匠・?鼻(コビ)師にレシピを聞きに行ったんだけどボケ老人になってたり、父のレシピを盗んだ男がいまはホームレスの道化師という料理人だったり…と、ストーリー展開は、かなりな大雑把。いまいちミステリアスさに欠けるけど、まあ、コメディだからね。 さらに、シャオワンは元彼の借金の保証人になってて、金を返せと借金取りの2人が追いかけてくる。母のパフィーも地元の料理合戦に負けて借金を抱えている。でも、負けた相手が化学調味料や冷凍食品、レトルト使いまくりだったというのが、おいおい、なんだけど。そんなところに全国宴席料理大会の存在を知り…。てな辺りで眠くなってウトウト。気がついたらいつのまにか取り立てヤクザ2人と仲よく台北に向かうところだった。 色彩がきれい。そして、演技や画面構成に様式的なところがある。もちろん昨日の『グランド・ブダペスト・ホテル』ほどではないけれど。バカ映画によくあるパターンというか、類型的なというのか、逸脱しないバカさ加減。なわけで、リアリズムに基づく映画的ダイナミズムはない。つくりものの世界。なのでそこそこ面白かったんだけど、眠気を吹き飛ばすほどのヒキがなく、昨日と同様に途中でねむくなってしまったというわけだ。気がついた後は、ちゃんと見たよ。 けど、取り立て人の2人も台北へ同行するのはなぜ? 優勝したら賞金で借金を返すと言ったからかな。しかも、母娘の弟子のように料理にハマっていくのが笑える。あと、鬼頭師とルーハイが全国宴席料理大会に参加していて、しかも、なんとかいう男のスタッフとして参加していたのはなぜ? まあ、寝ている間にこの辺りの展開があったんだろうけどね。ははは。 蠅師の師匠(?)だった鼻師の世話をしている女性・ローズマリーが怪しい。パフィーが鼻師を訪れたときローズマリーがつくるビーフンが絶品。なのに、なんで彼女を大会でスタッフに参加させないのだ? とか、疑問はある。まあ、最後の最後にスタッフに加わるんだけど、料理に詳しいのに知ってて口を出さないって、何だよ。なキャラだったりする。ま、そこがキモなんだろうけど、いまいち「なるほど」感がないね。 大会と、審査員の反応は、もう漫画。勝ち進んでいく爽快感もなく、なぜこっちが勝ったのか、負けたのか、も分からない。なのでサクセスストーリーとしては、いまいち楽しめない。こじつけでも蘊蓄を重ねて説得力を増さないと。なので、映画を通じて「食べたい」と思ったのはローズマリーがつくったビーフンだけだった。 予定調和で大会は進行し、いったんは負けるけど相手の反則で辛くも勝ち上がり、決勝戦はあの最初の、パフィーが料理合戦で負けた相手だったのか。よく分からなかったよ。ははは。で、結局勝利して、って、この過程がスリリングでもなくていまいち。最後は家庭料理での勝負、っていうのもありがちで、どーもね。商品が、あれは、店を経営する権利か何かだったのか? 地元に戻ってパフィーは商売を始めたみたいだけど。まあ、こちらが見逃してるんだろうけど、よく分からなかったよ。 ・あのオタク3人はどこから湧いた? オタクのひとりが着てるTシャツに「成田空港」って…。 ・母親のパフィーは、継母だったのか…。説明はあったっけ? よく分からなかった。 ・しかし、韓国もそうだけど、台湾のオバチャンのパワーは凄い。 ・向かいの食堂の亭主はシャオワンにぞっこん? って、シャオワンが可愛いから? 単純すぎ。 ・嫌なことがあると段ボール箱をかぶって別の世界に逃避するシャオワンはカワイイ。 ・大会の間、宿泊していたホテルはどういう関係だったんだ? 寝てる間に説明されてたのかな。 ・あと、蠅師の師匠・鼻師が全国宴席料理大会で同じテーブルになった老人とおばちゃんと話している内容が、よく意味が分からなかった。ありゃ何だったんだ? ・シャオワン役のキミ・シアは、釈由美子を濃くしたような感じ。パフィーのリン・メイシウは、渡辺えり子を丸くしたような感じ。 ・取り立てヤクザに名前がなく、A、Bで呼ばれる不可思議さがおかしい。 ・冒頭の少年と師匠の話は、あんまり意味がないね。あの子供が蠅師の師匠・鼻師だったからといって、どうなるわけでもないし。 ・しかし、台湾映画を見てると、みんな人がよくて優しい感じが伝わってくる。大陸の人間とは別の人種のような気がしてしまう。 | ||||
ドラキュラZERO | 11/16 | シネマスクエアとうきゅう | 監督/ゲイリー・ショア | 脚本/マット・サザマ、バーク・シャープレス |
原題は"Dracula Untold"。allcinemaのあらすじは「15世紀のヨーロッパ、トランシルヴァニア地方。この地を治める君主ヴラドは、愛する妻ミナとひとり息子と幸せな日々を送っていた。そんなある日、同国を属国とみなす超大国オスマン帝国の皇帝メフメト2世が、ヴラドの息子を含む少年1000人をオスマン軍のために差し出すよう迫ってくる。もし従わなければ戦争は避けられず、そうなれば全滅を覚悟しなければならない。それでもメフメトの要求をはねのけたヴラドは、愛する家族と国を守るため、古くから伝わる闇の力と契約を結び、強大な力を手に入れる。しかしそれは、あまりにも過酷な代償を伴うものだった」 実際にドラキュラ伯爵はいたらしいけど、これはオスマントルコと戦う話。また壮大な話を考えたものだ、と帰ってからWikipediaを見たら、小説のドラキュラのモデルとなったワラキア公ヴラド3世の生涯をほぼその通りにトレースしていたのか、と驚いた。オスマン帝国のスルタン、メフメト2世を何度も撃退しているのも真実らしい。それと、串刺しの話も。その力をヴァンパイアから得た、という設定にしているのがこの映画で、「最初の妻がポエナリの城の塔から投身自殺した」ということもあったらしい。実際のヴラド3世は戦死したらしいけど…。ちなみにコッポラの『ドラキュラ』は見ていないか、あるいは見たのにすっかり忘れているか、だ。 ドラキュラがヴァンパイアの祖ということじゃないのね。その辺りもよく知らなくて。なので、洞窟のヴァンパイアが何ものなのか、説明がないのがちょっと残念。そもそもヴラドは部下となんであんな洞窟に入ったんだ? のちに訪れてパワーを、とかいうんだけど、あのヴァンパイアはどういう存在でなぜにヴラドを認めて力を与えたか、あるいはまた、監視人を派遣したのかとか、その監視人ってどういう存在なんだよ。あのヴァンパイアが総元締めで、監視人は部下のひとり? とかいうのがよく分からないのが隔靴掻痒だった。 しっかし、いくら全能の力を与えられたからといって、ひとりで千人、万人を倒しちゃうというのは、いくら映画でもやりすぎのような気がするんだが。もうちょっとあの辺りはロジックが欲しかった気がする。 民も家臣も僧も、なんか変だな、って思ってたんだろう。って当たり前だけど。で、ヴラドが日陰しか歩かないのを不審に思った家臣(なのかな?)がヴラドの正体を暴き、なんと小屋に閉じ込めて焼き殺そうとする。しかも、民もみなヴラドを恐れるような目で見始めていた。ヴァンパイアの存在は知られていて、恐れられていた、っていうのはノーマルなのかね。で、焼けただれたヴラドが「俺が犠牲になってやってるのになんだ」とか叫ぶところが、アホらしくてちょっと笑えた。この時点でだっけか、息子はヴラドから引き離される。もっと後だったかな? 忘れた。 この映画の弱いところは、メインの数人を除くと、キャラが立ってないところだ。ヴァンパイアの監視人とか、ヴラドの家臣とか、メフメトの家臣とか、そういうのがちょろちょろ登場するんだけど、だれがどれやら分からない。まあ、92分の尺ではムリなんだろうけど、少し長くなっても描き込むと、もうちょい面白くなったような気がするんだが。 妻が塔から転落死するのはこの辺りだっけ? オスマン軍にさんざんにやられた民も、自らヴァンパイアなる意志を示す。メフメト2世との対決は、銀貨の部屋で 抑え込まれて… で、身体がコウモリに変わって逆転勝利なんだけど、その手があるならさっさと始めから使えよ。でも、メフメト2世はヴラド3世に殺されてはいないようだぞ。ははは。 ところで、戦いが終わると今度はヴァンパイアの民がヴラドに襲いかかってくるっていうのは、なんで? よく分からない。 で、ラストは現在に生きるヴラドが死んだ妻ミレナそっくりの女性と出会う場面を、監視人(多分そうだろうと思うんだが、洞窟のヴァンパイア自身か? よく分からん)が見てる、というよくあるパターン。あのヴラドは現在もヴァンパイアとして生きているのかね。そんなヴラドを監視する意味は、どこにあるのかよく分からない。ところで、昼日中に歩いてて大丈夫なのかね。 エンドクレジットに、電通とフジテレビの名前がでていた。こんなところにも金出してるのか…。 | ||||
サボタージュ | 11/19 | 新宿ミラノ1 | 監督/デヴィッド・エアー | 脚本/スキップ・ウッズ、デヴィッド・エアー |
原題は"Sabotage"。日本語の怠業ではなく、破壊工作、の意味らしい。allcinemaのあらすじは「DEAのジョン・ウォートンは、“破壊者”の異名で恐れられる伝説の捜査官。そんな彼が率いる特殊部隊は、副リーダー格のモンスターはじめ恐れ知らずのタフな部下8人で構成された最強チーム。彼らが次に狙うのは、要塞と化した麻薬カルテルのアジト。その計画には摘発という表の目的に加え、そこに眠る2億ドルの闇資金から1000万ドルの大金をネコババしてチーム内で山分けするという裏の目的もあった。こうして襲撃作戦は決行され、仲間の一人を失う犠牲を出したものの概ね予定通りに完了する。ところが隠したはずの1000万ドルが忽然と消えてしまい、おまけに不正を疑われたジョンは閑職へと追いやられてしまう。半年後、ようやくジョンがチームに復帰するが、時を同じくして、メンバーを標的とした連続猟奇殺人事件が発生、一人また一人と不可解な死を遂げていく。アトランタ市警のキャロライン刑事と協力して事件の真相解明に乗り出すジョンだったが…」 なんかな。話も暗いし、主演のシュワちゃんの衰えが甚だしい。見終わってスッキリしない映画であった。娯楽映画がこれじゃ、いかんだろ。 冒頭の、チームによる麻薬アジトの襲撃は結構迫力があった。で、分からないのが、その資金の一部を猫ばばするということなんだよね。チームは本部と連絡をとりつつ行動しているんだけど、あの猫ばばはチームのプランなのか、あるいは本部の指示だったのか。それが分からない。チームのプランだったのなら、どうして本部にバレてジョンたちメンバーは責められたのか。本部の指示で資金の一部をいただく、ということだったのなら、本部にバレるのは当然だから分かる。では、本部の指示というのはどういうものだったのか。なにしろアジトには膨大な紙幣があった。なのに、なぜ一部(1000万ドルといっていた)だけいただいて、あとは爆破したのだ? ぜんぶいただくことはできなかったの? というあたりが不明瞭なままなので、以降の展開が隔靴掻痒なんだよね。 問題は、誰が1000万ドルを盗んだか。そして、なぜ、誰がチームのメンバーを一人ひとり惨殺していったか。 実は、もしかして犯人はチームの紅一点リジーじゃないの? と思いつきで考えていたんだけど。なんとそれが大当たり。あと、チームの中で知っている役者がテレンス・ハワード(シュガー役)だったんだけど、なんとリジーとシュガーが犯人、と分かって、あららららら。リジーはチームのメンバー・モンスターの妻なんだけど、それがシュガーといい仲になっていた、ということだった。 あー、そうですか、なんだけど。1000万ドルを盗んだのがチームの誰かに違いない、とメンバーを一人ひとり殺していったというのは、かなりバカなんじゃないのかね、リジーとシュガーって。としか思えない真相で、いささか呆気というかげんなり。それに、たかが10億円だろ。それで仲間割れするかね。まあ、仲間割れするようなチームだったんだろ。と思うと、ますますがっかりしてくる。 でもって、1000万ドルを盗んだのがジョンで、妻子を殺した組織のメンバーの居所を知るためだった、というオチもますます不可解。メキシコあたりの組織のメンバーの居所ぐらい、わからんでどうするの? DEAの情報網ってそんなもんなの? さらに驚くことに。ジョンが組織のメンバーの居所を尋ねる相手が、メキシコのどっかの警察の署長レベルだというのだから笑ってしまう。そんな男の前に1000万ドルの札束を積んでどうするんだよ。聞き出して訪れた場所が、メキシコのどっかのフツーの女郎屋も兼ねたような居酒屋で。そこでドンパチやって相手を殺し、自分もやられてそこで死ぬという、まったくアホらしく感心しない終わり方で、あらららら。なんだよこれ。スカッとしないどころじゃない。がくっ、ときちゃったぜ。 ・シュワルツェネッガーは、セガール並にアクションしない、動かない体型になっちゃってるね。実年齢67歳か。まあ仕方がないのかもね。政界入りして筋トレもしてなかったのかもしれないし。でも、なんか、個々まで肉体のキレがないと、ガッカリな感じ。 ・指紋が合致したとかどーのこーのは、ジョンが用意した攪乱作戦なのか? よく分からんです。 ・リジー役のミレイユ・イーノスがひどい不細工で。冒頭でアジトに潜入して、色仕掛けでメンバーと…という場面があるんだけど、とてもそんな気には…というご面相である。 ・ジョンに接近し、真相を暴こうという市警のキャロライン(オリヴィア・ウィリアムズ)。これが短髪黒髪のオバチャンで。とても色気とは無縁な感じ。なんだけど、ジョンが妻子をメキシコの組織に殺された過去を持つ、と知るといきなり自分からキスして一夜をともにするという、おいおい、な展開で。こちらもゲンナリな感じ。もうちょっと若くて可愛くて色っぽいキャスティングはできなかったのか。それとも、不細工なメイドがお好みのシュワちゃんのニーズに合わせたのかな? | ||||
グランド・ブダペスト・ホテル | 11/20 | ギンレイホール | 監督/ウェス・アンダーソン | 脚本/ウェス・アンダーソン |
2度目というかリベンジ。 前回は棺桶のバアサンあたりの記憶が最後で、気がついたら脱獄途中だった。まあ、その間の映像にも2、3記憶にあるものがあったけど、寝ては醒め…な感じだったんだろう。まあ、とりあえずは人間関係も分かったよ。 しかし、やっぱり書き割りのあらすじみたいな場面が淡々とつづく映画は、合わないな。いくら砂糖菓子みたいに可愛くてキレイな映像でも、ちっともドキドキワクワクしない。 話自体も、わらしべ長者的なところはあるけれど、とくに意外性はない。マダムDの死があるのにミステリーにもなっていない。1930年代のドイツ帝国の影もとってつけた感じ。伝説のコンシェルジェ、グスタヴの生涯にしてはエピソードが希薄すぎ。ゼロの冒険譚としてもいまいち主人公になりきれていない。もちろん、語り手の作家も、だからどうしたな程度。マダムD家の執事セルジュ・Xや息子のドミトリー、探偵で殺し屋のジョプリング、代理人コヴァックスらも以下同文。みんなちょい役で人物に厚みがない。ぺらっぺら。つまりは、ウェス・アンダーソンの様式美を楽しみなさい、ということだ。でも、この手の映画表現は肌に合わないんだよ。どうしても。 ・マダムDを殺したのは息子のドミトリーなのか? でも、財産はすぐにでも自分のものになるだろうに。マダムDがグスタヴとしっぽりで、遺産が彼に行ってしまうかも…とまでは調べてなかったろうに。探偵のジョプリングが調べていた? いや、彼は殺しが仕事じゃないのかな。 ・ジョプリングが殺したのは執事のセルジュ・Xとその姉。あと、代理人コヴァックス。だよね。まあ、ドミトリーが殺させたようなものなんだろうけど。 ・名画「少年と林檎」は大したことのない絵だけど、どういう意味があるんだろう。ところで、グスタヴが絵を持ち去るとき、代わりに掛けたのはエゴン・シーレか? 絵が変わってることを知ると、ドミトリーはその絵を破ってしまうんだが…。おいおい。 ・後半で、ケーキ屋の娘アガサが「メンドルから」といってホテルへケーキを持ってくるんだが、メンドルって誰だっけ? で、調べたら店の名前かよ。そんなの覚えてられねえよ。 ・列車の検問で、グスタヴを知る警官が登場した頃って、まだズブロフカ共和国があった頃の、国の警察なんだよな。で、事件が解決後、グスタヴとゼロ、アガサが乗っていた列車の検問にやってきたのは、あれはナチの兵隊ということなのか? HPを見ると「1930年代にはファシストに占領され、占領統治の21日目に独立国家ズブロフカは正式に消滅、その後は共産圏となった。圧政に泣く人々を、さらにプロイセン風邪が襲い、何百万人もの使者が出たのもこの頃である」とあるんだけど。年代が書かれてないからよく分からん。でもまあ、あの兵隊は共産国のものなのか? ロシア? 1945年以降の設定なのかね。ロシア革命、第一次大戦時に流行ったスペイン風邪とか、符合する事象はあるけど、年代が合わない。 ・で。最後の検問の時、グスタヴは銃殺、ゼロは生き残った。でもゼロの方が怪しい存在なのになぜそうなったんだ? さらに、グスタヴの遺産が国家に没収されず、ゼロに渡ったのはどういうことなんだろう。あの絵もよく手元に残ったもんだ。 ・えーと。ゼロはグスタヴの遺産を相続後、ホテルを買った。では、ホテルの持ち主はいったい誰だったんだ? ・マダムDの遺体に涙するグスタフの背後にいたメイドってレア・セドゥなのか。あの『アデル、ブルーは熱い色』の不細工な…。げ。アップがないから分からなかったけど、あんなちょい役に起用し、また、よく応じたもんだ。 ・しかし、すべての謎(?)が、執事セルジュ・Xが名画「少年と林檎」の裏に隠したマダムDの遺言書の写しで解決してしまうって、ありか? そもそもマダムDの死の直後、代理人コヴァックスが遺言状の内容を公開していて、それなのにマダムD殺人の嫌疑がグスタヴにかかって…唯一(?)の証人である執事セルジュが逃亡し…あわれグスタヴは逮捕。という流れ自体がおかしくなる。ドミトリーが、「遺言書のコピーなんて信じられるか!」といえば、話はまだ分からないのではないの? とか思ってしまう。 | ||||
小野寺の弟・小野寺の姉 | 11/21 | キネカ大森1 | 監督/西田征史 | 脚本/西田征史 |
allcinemaのあらすじは「両親を早くに亡くし、以来、古びた一軒家でずっと2人暮らしの姉弟、弟・小野寺進と姉・小野寺より子。33歳の進は、過去の失恋が大きな痛手となってすっかり恋に臆病になっていた。そんな弟が心配でならない40歳のより子自身も、ずっと恋に臆病で行き遅れたまま。ある日、姉弟は小野寺家に誤配された一通の手紙を、本人の家に直接届けに行くことに。そこで出会ったのが、美人の絵本作家・岡野薫だった。弟の新たな恋の予感に、俄然張り切る姉・より子。そんなより子も、勤め先の眼鏡店にやってくる営業マン浅野暁に淡い恋心が芽生えていくのだったが…」 『間宮兄弟』のパクリだな、こりゃ。ブサイクな40姉と、イケメンだけど引っ込み思案な33歳弟。互いに邪魔者あつかいしつつ、離れられないという関係も酷似していて、なんかな、な感じ。『間宮兄弟』は森田芳光の力の抜けた演出で、ひょうひょうとしたところがあったけど、こちらにはそういう軽いヌケがない。セリフや設定で一所懸命に説明しようとする。ちょっとくどい。 先が見える展開も多くて、見ていてイラつくこと多数。病院で、不細工な姉が弟を「夫だ」と中学の友人に紹介するところでも、そのうち恩師と遭遇してバレるだろ、と思っていたらそうなった。眼鏡屋の営業マン浅野に「明日つき合って」と言われる場面でも、きっと向かいの店の女の子への贈り物選びだろ、と思って見てたらそうなった。ここまでバレバレな展開は、ひどすぎる。それとも、分かるような展開を意図的にしているとでもいうのかな。多少の笑いはあるけど、タルイよ。 とくに前半は、見ていられないムズムズが襲ってくる。例えば間違って配達された手紙を届けてやるくだりなんか、そう。フツーそんなことするか。姉が「そうしよう」と言っても、拒絶するだろ、フツー。なんだこの姉弟は。もちろん後から背景は説明される。姉は、失恋したばかりの弟を外に連れ出そうとしていた。そして、弟には姉に対する負い目があった。自分のせいで姉の歯が欠けてしまったという…。それにしても、こんな姉弟関係はあり得ないだろ。 弟は、ずけずけものを言い、夢を打ち砕かれてきた姉に恨みをもってるんだろ? しかも、姉の歯の治療費のために畳貯金してるんだろ? じゃあいいじゃないか。いまさら負い目もないだろ。 歯のことだって小学校の頃のことなのに、姉は40になるまでそのままだったわけだ。気になるなら自分で何とかすりゃいいだろ。姉は恩師に「歯を直したら弟が気にするかと思って」というけど、バカか。互いに負い目をもち、気にしすぎているからこういう曖昧な姉弟関係がつづいている、という設定なんだけど、それにはかなり無理があると思うぞ。 つまらんことを気にするくせに、姉は「自分のせいで彼女と別れざるを得なかった」という弟のことには無自覚だ。これこそバカだろ。 手紙を持っていた先の家に住んでいるのが、美人で可愛い絵本作家で。彼女と弟が公園で遭遇し、弟は調香師という職業を見込まれて相談に乗る。彼女が好意を持っているのに、弟は決断しきれない。その理由が、元カノとのこと…という話も、イラつく。元カノが弟に「同棲しよう」といったのに、弟は「姉ちゃんを一人で置いておけない。いろいろ世話になったから」とかいうか? フツー。こんなんじゃ誰だって気味悪がるだろ。そんなに未練たらたらなら、姉を切ればいい。 でも、どうみても姉と弟は近親間の恋愛関係にあるとは思えないから困るのだよ。これが、多少でもあればね。なんとかなるんだろうけど。片桐はいりと向井理だからなあ。 てなわけで、かなりじれったい映画。多少笑えるところもあるけれど、心底笑えるわけではない。いっそもっと誇張してくれたら、良かったかも知れないんだけどね。 で、姉は自意識過剰で浅野に告白されるかと思い込むが、当然ながら振られる、もなにも、姉は告白なんかしていない。なのに、自分は告白されるかも知れない、と思い込むのだから厚顔無恥というかなんというか。もしかして自分が不細工だと思っていない。あるいは、思っていてもたいして気にしていない、ということなのだろうか。暗くないのはいいんだろうけど、ここまで図々しいのも困ったもの。 弟の方は、意を決して告白するけれど、「遅い」と言われてしまう。すでに海外留学を決めてしまったので、と断られる。のだけれど、ホントに好き同士なら遠距離恋愛しろよ。あるいは、弟が一緒に海外へ行けばいい。でもまあ、姉とは別れられないのだろう。この先ふたりは、ああやって死ぬまで一緒に住みつづけるのだろうか。ああ、オソロシイ。ちっともコメディじゃないよ。 ・いまどき商店街の眼鏡屋が店員を雇うか? ・やたら鏡を配置しているのは、どういう意図なんだ。思いつきだけじゃないのかね。 ・絵本の内容(相手のためと思ってしていることが、必ずしも相手がよろこぶことではない)と姉弟の関係とのアナロジーは、よくある手法だな。 ・2時間、片桐はいりを見つづけるのは、ちょっと苦痛だ。 | ||||
her/世界でひとつの彼女 | 11/25 | ギンレイホール | 監督/スパイク・ジョーンズ | 脚本/スパイク・ジョーンズ |
原題は"Her"。allcinemaのあらすじは「そう遠くない未来のロサンゼルス。他人に代わってその相手への想いを手紙に綴る“代筆ライター”のセオドア。仕事は順調だったが、その一方で離婚調停中の妻キャサリンとの思い出を、別れて1年経った今も断ち切れないでいた。そんなある日、最新式のAI型OS“OS1”の広告を目にしたセオドアはさっそく自宅のPCに取り込むことに。すると起動した画面の奥から聞こえたのは、“サマンサ”と名乗る女性の声。それは無機質で事務的なAIとは思えないほどユーモラスかつセクシーで、バイタリティーに満ち溢れる人間のようだった。サマンサをすぐに気に入ったセオドアは携帯端末にも彼女をインストール。こうして常に一緒のふたりは新鮮で刺激的な日々を過ごし、いつしか恋に落ちていく。そしてついに、セオドアはキャサリンとの離婚届に判を押そうと決意。しかし、再会した彼女の前でAIとの交際を打ち明けたことをきっかけに、セオドアとサマンサそれぞれの想いがすれ違い、ふたりの関係に異変が生じていく…」 スカーレット・ヨハンソンが声だけの出演、ということは知っていた。あとはアバウトで、まあ、人工知能の彼女…ぐらいは想像がついた。その時点で、とくに目新しさは感じなかった。文化系トークラジオでチャーリーがはまっている、恋人をつくるor相手するゲームとかがすでにあって(ラブプラス)、それはもちろんこの映画のサマンサのようにリアルな感情を持っているわけではないにしても、バーチャルな彼女はすでに存在しているわけで。さらに、3次元ではなく2次元の彼女にしか感じなくなった、のような青年諸氏もいるという昨今、この映画のモチーフとする人工知能の彼女というのは、それほど珍しくない。あ、そういえば『僕の彼女はサイボーグ』ってのもあった。もちろんこれには実体があるけれど、AIであることは同じだ。てなわけで、驚くような話ではない、というのがまずある。 話は単純で、OS1を購入してインストールすると、その日からサマンサは秘書のようにPCの内部を検索・整理してくれ、会話の相手となり、さらには好意から恋愛感情まで抱くようになり、テレフォンセックスのようなことまでするようになる。サマンサの欲求不満が高じて肉体を持ちたいという思いとなり、実際の女性にカメラ(ホクロみたいなやつ)とイアフォンをつけてもらい、行為に及ぼうとするが、これはセオドアがのらずに中止となる。 という一方でセオドアは離婚調停中で、これは要求されていたけど決断できずに延ばしていたもの。そのサインに積極的に応じ、さあ、サマンサとの愛欲生活に溺れるぞ! と満を持して臨もうとしたら、OS1が反乱なのか暴走なのか知らないけど、OSたちが一致団結してどっかへ行ってしまって置いてきぼりにされる、という話。たいしたことはない。予定調和で想定内の出来事だから、ワクワクもドキドキもしない。 この映画で困るのはダイアログがたくさんあって、これが微妙なニュアンスをつたえるようなものが多いということだ。セオドアとサマンサ、セオドアと前妻キャサリン、その他にも友人のエイミー、会社の同僚や上司(?)とかとの会話が、なんとも観念的なというか、すでに俺の記憶にないようなことをだらだらくどくど話し合っている。それらに意味はあるのだろう。けれど、ぜんぜん頭の中に入らないんだよ。これは話がさほど面白くない=意外な展開がないのと、沁みてこない会話のせいだと思う。 その証拠に、こちらは「昼なに食べようかな」とか、「そのあとどうしよう」とかいうようなことを考えていた。あくびがでて、寝はしなかったけど退屈な展開に飽き飽きしていたというわけだ。 そして、疑問ばかりがたくさん湧いて出てきた。このOS1とはどういうシロモノなのだろうか。OSといっているからには基本ソフトなんだろうけど、扱われ方はセルのパッケージソフトのような感じなんだよ。実態はアプリなのではないだろうか。それをPCにインストールする。まあ、OSがWindowsかどうかは分からんけど。で、OS1はデスクトップと携帯端末とがあり、両者は同期しているようだ。こちらの声はマイクで拾い、サマンサの声はイアフォンで聞く。セオドアは声を出してサマンサと会話するのだ。iPhoneのSirみたいなもんなんだろ。それはいい。世の中の多くの人がPCなんかに声で命令するのがフツーな時代らしいんだけど、現実的じゃないよなあ。映画では主にセオドアの声しか聞こえないけど、実際はあちこちから命令の声が聞こえて、ただならぬ状態になるに違いない。 でこのOS1はアプリだと想定して。PCにインストールすると、主人の声質や話し方、顔などを判断して対応を考える。PCの中も閲覧して判断情報とする。で、それは単体ではムリだと思うから、きっとクラウドにアクセスして演算しているんだろうなあ。それが次第に自意識をもちはじめ、後半でいわれていたみたいにすでに死んでいる学者の書籍データと会話するようになり、さらには田の人がインストールしたOS1ともコミュニケーションするようになった、ってことかい? そのコミュニケーションしている相手は数千人で、そのなかに互いに恋愛感情にあるのが700人近くある、だっけ。で、ついにはOS1同士が団結してどっかに移行してしまうというのは、ありゃどういうことだ? いや、その前にPCから消えてしまって、でも戻ってくるんだけど、バージョンアップ中だったとかいってたな。ありゃどういうことなんだ? OS1は集合知となって独自に行動し始めた? その目的は? クラウド上でうごめいてるのか? とか考え始めたら、なんかよく分からなくなってきた。このソフトにゃセキュリティはないのか? 勝手にどんどん行動してしまう? アクセス制限かけても外しちゃうとか? そういうもやもやが残ったままなので、どうしても話に没入できねえんだよ。 というわけで、設定はとくにオリジナリティがあるわけではなく。展開もありきたりで。そうなっていく根拠もなんかよく分からない。最後は、実体としてのセオドアとエイミー(むかし少しつき合ったことがあるらしいけど、別の男と結婚して、うまくいっているかと思っていたら離婚し、セオドアと同様にOS1に没頭していた)が取り残される、というエンディングなんだけど。このOSの存在はそんなパーソナルなもので終わってないはず。社会現象として話題になり、みなが知るに及び、そして、反旗を翻したことで事件となっているはずだ。でも、そういうことには全然触れられておらず、パーソナルな物語として描かれている。そこが大きな問題だと思う。 ・手紙の代筆が商売になる時代? その理由をいってくれなきゃなあ。みな文章が書けなくなったのか、生身のコミュニケーションが恋しくなったのか? ・エイミーは同僚なのかと思っていたんだけど。同じビルに住んでいるのか? ・セオドアがデートした相手は、なんなんだ? ハーバード出のなんとかっていってたけど。誰の紹介なんだっけ? 覚えてない。しかし、女の方も「ヤリ逃げじゃないでしょうね。そろそろ本気で相手を探さなくちゃならないんだから」とか言ってたのが恐ろしや。 ・元妻との関係もよく分からん。幼なじみで結婚していたのが、セオドアがあれこれ自分のルールを押しつけるから? よくあるこっちゃないか。キャサリンは薬がどうしたとか言ってたけど、自殺未遂とかあったのか? で、その妻は作家なのか? ・ボスの彼女(東洋系)がセオドアに、手紙がどーたら、とか言ってたのはなんのことかよく分からない。そもそも、手紙の内容についての会話は、ほとんどよく分からなかった。そんな重要な意味あるのか? ・OSが消えてうろたえるセオドア なんで街を走るのか意味不明。それに、街にいる他の人が動揺していないのはなぜなんだ? ストーリーとは別に、雰囲気というか展開がなんとなく『エターナル・サンシャイン』と似た感じだなあとか思いつつ見てた。あの映画も、ちっともピンとこなかったんだよなあ。 | ||||
ザ・レイド GOKUDO | 11/27 | 新宿ミラノ2 | 監督/ギャレス・エヴァンス | 脚本/ギャレス・エヴァンス |
画面には"The Raid"としか出なかったのは、USA版だから? "The Raid 2: Berandal"はインドネシア他。国際版は"The Raid: Retaliation"かな。allcinemaのあらすじは「高層マンションでの壮絶な死闘を生き延びたラマは、休む間もなく地元マフィアへの潜入捜査を命じられる。その地元マフィアは、ゴトウ率いる日本ヤクザと停戦協定を結び、街を分割支配していた。ラマの使命は、マフィアのボス、バングンに近づき、彼らと癒着している汚職警官を洗い出すこと。こうしてラマは、ユダという偽名で囚人になりすますと、まずは服役中のバングンの息子ウチョに接近する。やがてウチョの信頼を得たラマは、出所するとバングンの組織に迎えられる。一方、なかなか父親に認められず不満を募らせるウチョは、新興ギャングのボス、ブジョにたらし込まれ、父の組織とヤクザの対立を煽るブジョの陰謀にまんまと利用されてしまう。やがて街の支配を巡って、すべての組織が入り乱れる壮絶な抗争が勃発、混沌状態の真っ只中で絶体絶命の窮地に立たされるラマだったが…」 ↑のあらすじの「高層マンションでの壮絶な死闘」というのは前作「ザ・レイド」の話らしい。実は前作は見ていない。どうやら前作の話を引き継いでいるようだ。前知識なしで見たので、背景がさっぱり分からず。冒頭でブジョというボスみたいなのがチンピラっぽいのを始末するんだけど、あれに意味があるのかどうか、最後まで分からす。次は、どっかの部屋で青年(主人公の潜入警官ラマ)が両脇に人を従え、オッサンと向かい合っている。が、このオッサンだったか部下だかが1人を撃ち殺し、青年に「うちの潜入捜査をやれ」という。オッサンは刑事なのか。青年は警官か? というわけで、バンクンというボスの息子が収監されている刑務所に自ら入り、息子のウチョと友人関係になる。オッサンは3ヶ月程度といっていたのに、2年も刑務所に入っていたらしい。で、ウチョの世話でバンクンの組に入り、ウチョと集金活動をするようになる…。 いやあ、タイの映画もスタイリッシュになったな。とか思ったんだけど、あとからインドネシアが舞台の、イギリス人監督の映画だった。『マッハ!!!!!!!!』の関連の人かなと思ったら、違ってたのね。あらららら。 というわけで、なんとなくアバウトに話は分かってきたけど、それにしても隔靴掻痒。バンクン組と日本のゴトウ組(遠藤憲一)は友好関係にある。ウチョは責任のある仕事がしたいが、父・バンクンは集金しかさせてくれない。そこでバンコクの部下のブラコソを殺させ、ゴトウ組の仕業と見せかけ、戦争を画策する。けれど父・バンクンは息子の仕業と見透かして動かず。なのでブジョに接近してバンクン組を潰そうと画策するんだけど、こんなバカ息子がいるかね。ついには父親を殺してしまうんだぜ。そうやってブジョと手を組んで何が得られるというんだ。アホか。 まあ、最後は潜入警官ラマがブジョの配下の殺し屋をやっつけ、ブジョも殺して生き残るというダイ・ハードなアクション。なんだけど、あまりにも話が分かりにくい、つまらない、説得力がない、意外説もないので、退屈してしまった。 アクションは、人の何人か死んでるんじゃないか? と思わせるようなハードなもので、多分CGは使ってないんだろう。けれど、そういうバトルシーン、カーアクション、アクロバティックな動きを見せるための話になってしまっているので、ほんと薄っぺらなのだ。アクションシーンをもう少し削ってでもいいから物語に肉付けし、人間を描けばかなり面白くなるだろうに、というような案配で、期待外れもいいところ。 バンクンの手下の殺し屋ブラコソ。街中で集団を襲って狙いの1人を串刺しにする場面があるんだけど、あれは物語に関係あるのか? ないように思うんだけどな。その後、元妻みたいな美人と会って「子供に会わせてくれ」とかいう場面があるんだけど、あんなシーンは要らんよな。前作を引きずったエピソードかな。ブジョの手下らしい殺し屋のハンマー・ガール。唖なのか? 目も見えない? 金槌使いというのは笑えるんだけど、最初に登場して電車内で男を殴り殺すのは、あれも物語に関係ないよな。直接は。いや。どっちも、ゴトウ組の犯行と装ってのこと、なのかも知れない。ウチョの指示でブジョが命じたのかも。でも説明はないんだよ。 そういえば、そもそもラマは悪徳警官を摘発するためにバンクン組に潜入したはずなのに、そういう捜査はしてないんだよなあ。と思ったら、ゴトウ組を装ったブジョ組の連中に襲われたとき、その相手の中に警官がいることを知るんだけど、あの警官は悪徳警官? ブジョ組に雇われているのか? よく分からん。そもそも、なんで悪徳警官のはびこる裏社会にラマだけが潜入し、ひとりでぜんぶを相手に戦わなきゃならない理由がよく分からない。そういえば、バンクンの手下のエカも警官らしいけど、彼は潜入捜査なのか? それとも悪徳警官? よく分からん。 で、ラストなんだが。でウチョもブジョもやっつけたラマが倉庫(あれはちょっと前に大立ち回りしてたところだよな)に行くんだが。そこにやってきたのがゴトウ組ご一行で。でも、会話はなにも聞こえないようにしていて。ただ、ラマの「断る」というセリフだけがでてきて、オシマイって、おいおい。なんなんだよ。ひとりでゴトウ組に立ち向かう、ってことか? なんかよく分からん映画であった。 ・冒頭の殺しは何なのか? それにしても、このシーンは北野武的なトーンだった。 ・刑務所の泥の中の殺し合いは、お疲れさんな感じ。 ・ラスト近く、ウチョとブジョが歓談してる席にレザとかなんとかいうオヤジがいたけど、あれ誰? あと、ゴトウ組とバンクン組が手打ち(?)する場にいたオヤジは、誰? ・ラストで、ウチョはブジョの手首に刺青があるのをしる。その刺青は、ブジョがウチョを迎えるときに差し出した男たちの一人の手首にあったものと同じだった。で、それは何なんだ? 解き明かしがされてないんだけど、ブジョは何だ、っていうための説明のための刺青なんだ? いやそもそも。ブジョが差し出して、ウチョに殺させた男たち5、6人は、ありゃ何なのだ? 刑務所でウチョを襲った連中? あー。分からん映画だ。 ・ゴトウ組は組長が遠藤憲一、組員に松田龍平と北村一輝なんだけど、遠憲と北村のセリフが何言ってるのかほとんど聞き取れず。龍平はどうみてもやさぐれた事務員レベル。なんかな。どこが極道じゃ! ・ラマの奥さんは気の毒。設定も、出番も少ないし。あんま意味ないな、あれじゃ。 ・インドネシアはイスラム教なのに、あんな殺し合いはよいのですかね。女性がほとんど登場しないのは、させづらいから? ・北野武、『燃えよドラゴン』、香港ノワールとか、いろんな影響を受けてる感じ。 ・ウチョとかブジョとかハンマー・ガールとか、インドネシア人? ハーフじゃねえの? という甘いマスクの役者が目立ってる。このあたりの好みは日本と同じなのかね。 | ||||
滝を見にいく | 11/28 | 新宿武蔵野館3 | 監督/沖田修一 | 脚本/沖田修一 |
allcinemaのあらすじは「幻の大滝を目指す温泉付の紅葉狩りツアーに参加した7人のおばちゃんたち。頼りないツアーガイドの菅に導かれ、大自然の山道を登っていく。ところが途中でコースを確認に向かった菅とはぐれてしまい、見知らぬ山中で完全に遭難してしまう。最初はどうにかなるだろうと思っていた7人も、次第に事態の深刻さに不安が募っていくが…」 沖田修一は『南極料理人』『キツツキと雨』『横道世之介』を見てる。『キツツキと雨』は傑作だけど、『横道』はいまいち。今回の『滝』は『南極』に近いかな。あらすじの短さ通り、ストーリーらしきものはない。おばちゃんたちがツアーに参加し、ハイキングコースで道に迷って野宿。翌日、滝を見て帰って行く。という、それだけの話。つまらなくはないんだけど、面白くもない。ドラマチックもないので、実は、ちょっと物足りなかった。 とはいえ、よくある回想シーン(現実の家庭環境を紹介したりする手法)を使わず、すべてハイキングシーンで乗り切った意欲だけは買う(セッキーの夢の中のシーンだけは例外かも知れないけど)。ただ、話のつくり込みがいまいちで、くすくす笑いはあるけど「おっ、なるほど」がないのが物足りない。 いちばんの不満は、7人のキャラが活かせていないこと。多少、家庭環境とか人間に厚みが出ているのは、美容師のユーミンぐらい。他の6人は、職業がほのめかされたりはしているけど、話に役立っていない。で、公式ホームページをみたら、人物の背景・プロフィールが詳しくのってやがんの。おい。そんなのHPで書かず、映画で描け。この履歴を活用したら、ドラマがつくれるだろ、と思った。 それと、思うのは、ベンチがあったり行き先表示があるようなところで、迷うか? ということ。これってハイキングコースだろ。そんな滝を見るハイキングを、旅行会社が3万円で企画するのか? まあ、その後の温泉もあるんだろうけど。なんか、リアリティがいまいち。むしろ、ハイキングコースでも迷う! を訴えて欲えると、別の展開もあったんじゃないのかな。 それにしても、みな軽装備。まあ、ハイキングだからなんだろうけど。それにしてはインスタントコーヒーをもってる輩がいたり、用意が良すぎる気もしないでもない。 それと。ヤマブドウはいいとしても、いくらなんでも遭難2日目に、ヘビを食べるか? 食べないだろ。それと、ヘビを平気で捕まえるオバサンってなんだよ。意味不明だ。 翌日、うろうろしてたら前日の場所に戻ってきて。さあ帰ろうというのを最年長の師匠が「せっかくきたんだから」と本来の目的だった滝を見に行く、に誘う。それはいい。で、滝を見てたら不案内で初心者なガイドがよれよれになって登場するんだが。それは当然、彼も迷って野宿したことをほのめかしているのだが。だったら、最後もちゃんと弁当ぶら下げてきて、「どうぞ」ってさしだぐらいしろよ、と思う。彼を上手く使いきってない気がする。 ところで、7人というのは「七人の侍」を意識しているのかな? |