トリプル9 裏切りのコード | 7/1 | ヒューマントラストシネマ渋谷シアター2 | 監督/ジョン・ヒルコート | 脚本/マット・クック |
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原題は“Triple 9”。allcinemaのあらすじは「凶悪犯罪都市アトランタ。ある日、特殊部隊の元兵士や悪徳警官で構成された武装グループによる銀行強盗事件が発生する。グループのリーダー、マイケルは、これを最後にロシアン・マフィアとの関係を絶とうと考えていた。しかし女ボスのイリーナはそれを許さず、彼の息子を人質に新たな要求を突きつけてくる。それは、警戒厳重な国土安全保障省の施設を襲撃するという、あまりにも無謀なミッションだった。追い詰められたマイケルは、警察の緊急コード“トリプル9”を利用する禁断の犯罪計画を練り上げる。それは警官が撃たれた際の符丁で、これが発令されると、街中の警察官はすべてを投げ出してでも現場への急行を最優先しなければならなかった。マイケルたちは、そのわずかな隙を突いて襲撃を成功させようと考えていた。そして、そのために犠牲になってもらう標的として、実直な新人警官クリスに白羽の矢を立てるのだったが…」 武装グループの中に警官が何人かいて、そのグループがまず冒頭で銀行強盗。でも、狙いは金ではなく貸金庫の中味?(何かは分からない)。それを、ロシアマフィアの女親分イリーナに渡すんだけど、国土安全保障省を襲え、という次のミッションを要求される…とな流れなんだけど、そもそもなぜ武装グループがロシアマフィアの言いなりにならなくちゃならないのか、意味不明。グループのメンバーをロシアマフィアに殺され=脅されたり、味方を犠牲にしてまで、なんでなの? ↑あらすじには、「ロシアン・マフィアとの関係を絶とう」とあるけど、それ以前の関係も分からんので、なんだかな。やっぱ、そこはちゃんと描かなきゃダメだろ。 最初の方でちゃんと人物を描いてないから、どういう連中が武装グループなのか、曖昧。顔もちゃんと写らないし。まあ、次第に分かってくるとはいえ、会話の中に名前だけ登場するケースも多くて、それは誰だ? と頭を使うのがやっかい。たとえば、最後の方でマーカスを撃った(?)ルイスというのは、ありゃ誰なんだ? 街のギャングの一味だつたやつか? 顔もでず、次は遠くに死骸としてだけでてくるだけじゃ分からんぞ。 指揮するヤクザな刑事ジェフリーがいるんだが、その甥のクリスも刑事で、クリスが組まされるのがマーカス。このマーカスは武装グループの一員なんだけど、他にもフランコという殺人課の刑事も武装グループのメンバー。でもさ、警察が組織的に動いている最中に武装グループとして国土安全保障省に突入していたり(フランコね)、別のところで工作していたり(マーカスね)とか、できるわけないだろ。 で、さてと。ジェフリーは銀行強盗の犯人を追ってるわけだけど、いつのまにかグループに迫っているのは、どういう捜査なんだ? ひょいひょいと簡単に近づいちゃってるんだけど。で、よーく考えたら、確か、クリスがギャング一味の少年から、身体が赤くなったやつを知ってる女がいる、とかいう言葉を聞き出したのが最初だったかな。それで次のシーンでは、警官が張り込んでて。ベビーカーに麻薬を積んで女に渡した男の部屋を、警官が急襲するんだが。この突入からの場面は結構迫力があって凄いんだけど、よーく考えると、本筋ではなく、ただのエピソードなんだよな。だって、ベビーカーの女の亭主(?)がゲイブという武装グループのメンバーで、ゲイブのしくじりで銀行から逃げるとき札束から(なのか?)赤い噴霧が炸裂し、あわや、ということになったんだった。そのしくじりからゲイブはびびり始め、仲間から邪魔者扱いされるようになっていた。というわけで、ベビーカーの女→ゲイブ。で、そのゲイブが酒場でマーカスに接触したのをクリスが目撃し、ジェフリーに報告してる。これでゲイブが元警官と分かり、残りは1人。で、フランコにたどり着くんだが…って、これじゃ3人だな。あわわ。 あれえ。銀行強盗のときは、バンに2人、乗用車に4人だっけ。マイケルはバンに乗ってたよな。あと、どうだっけ。なんかアバウト。もう一回見ないと、整合性は確認できねえよ。まあいいか。 でまあ、次のミッションを数分でやっつけるのはムリなので、マーカスだったかが、コード999を思いつくんだけど、これは警官殺しで。この無線が入ると全警官が結集するので、時間が稼げる。というわけで、誰を殺すか、とか話していた場面はあったよな。で、誰に決まったのかよく分からんまま、マーカスとクリスが廃墟みたいなところに行き、ここでまたよく分からんことになって。ゲイブがいたんだっけ? で、マーカスはクリスを殺すつもりだったのか、よく分からんのだけど、銃声が錯綜してマーカスが撃たれ。そこから逃げたのがルイスとかで、そのルイスは逃亡中に撃たれた、とかいう連絡がクリスに入るんだったか。で、どうなってんだ? マーカスは本気でクリスを殺すつもりだったのか? マーカスは、あえて自分が撃たれたのか、とも思ったんだけど、よく分からず。でもマーカスは頭に銃弾を喰らっても死にはしなかった。で、このマーカスの999で時間を稼ぎ、マイケルとフランコが国土安全保障省に突入し、なんだかよく分からんものを盗みだし、なんとか逃亡。フランコも撃たれたみたいだったけど、直後に警察の現場に戻っているという不死身さにびっくり。マイケルは、盗んだ物をイリーナに渡して金は受け取る。「息子に」とオモチャを渡すと、そのオモチャが爆発して、イリーナとボディカードは車中爆死。マイケルとフランコが接触し、フランコは無慈悲にマイケルを射殺して金を独り占め。そのフランコとクリスが警察で(?)会い、別々のクルマに乗り込んで…直前、エレベーターでクリスに電話で、最後の1人はフランコと連絡があり…。で、フランコが乗り込んだクルマの後部座席にジェフリーがいて、一発お見舞い。返り血を浴びながら一服する、といところでオシマイなんだけど。ま、ほとんどすべてがご都合主義だな。 ・それまでの、武装グループとロシアマフィアとの関係にあるんだろうけど、なんでロシアマフィアのボスの妻の妹とマイケルが夫婦(?)なんだ? で、その間に生まれた子どもが、ロシアマフィア側に人質にされてるらしいけど、そんなんで影響力・拘束力があるのかいね。他のメンバーが、マイケルに同情する必要もないだろうし。しかも、最後にイリーナを爆殺するなら、さっさと早めに対抗していれば済むだろうに。ま、ムショに入ってねイリーナの旦那のことは気にしなくちゃならんだろうけど。 ・イリーナが、最後にマイケルに会ったとき「犬に犯させるようなもの」とか「妹も猿だと思ってた」とかいうような、黒人差別的なことを露骨に言うんだけど。そういうのって、OKなのか。ううむ…。建て前と現実とのギャップ。 ・ロシアマフィアのドアにイスラエルのマーク? あとから、ユダヤ系ロシア人とかでてきたけど、じゃ、反ロシアか? ・エンドロールにケイト・ウィンスレットの名前があって。これは同名別人だろうと思っていたんだけど。帰ってから調べたら本人だった。イリーナが、ケイト・ウィンスレット?! 別人の顔だよ。 | ||||
嫌な女 | 7/4 | MOVIX亀有シアター7 | 監督/黒木瞳 | 脚本/西田征史 |
allcinemaのあらすじは「法律事務所に勤務する弁護士の石田徹子は、ストレートで司法試験に合格し、29歳で結婚もして、誰もが羨む人生を歩んでいるかに思われた。しかし実態は、仕事にも結婚生活にも満たされず、孤独を噛みしめる日々を送っていた。そんなある日、疎遠だった同い年の従姉・小谷夏子が突然現われ、婚約破棄で慰謝料を請求されたと泣きついてきた。堅物な徹子は、派手好きで奔放な夏子が昔から苦手だった。事情を聞いてみると、案の定夏子のほうに非がありそうだ。彼女は、その美貌と人懐こさで初対面の男でもすぐにその気にさせ、いいように手玉に取ってしまう生来の詐欺師気質。この再会をきっかけに、次から次へとトラブルを招く夏子に振り回され、すっかりツキにも見放されてしまう徹子だったが…」 黒木瞳が初監督だけど、説明ゼリフに説明ナレーション。勘所の悪いつなぎ…と、下手な演出の見本みたいになっていて、冒頭からうんざりしてきた。スタッフに意地悪されてるのか。それとも、ああいう脚本と演出をごり押ししたのか。知らんけど。 そもそも徹子と夏子の本質を理解していない感じで、表面的な“性格”をだらだらと強調するのみ。いったい徹子は、どういう人間なのだ? 周囲に気配りのできない女なのか? でも結婚できたんだから、それなりのところもあったのでは? と思ったりするんだけど、いまいち人物が見えてこない。 夏子にしても、ちょっとハメの外れたいい加減なところがある女、な感じで。計画的な詐欺を働くように見えない。木村佳乃が演じているから、どーみても芯から悪い女には見えず、むしろ歳のわりにはカワイイ女性に見えてしまう。だって、徹子を演ずる吉田羊よりずっとキレイだし。 冒頭の、幼児の頃に、徹子のためにつくられたワンピースを破いてしまうエピソードも、なんかズレてないか? あれって、生真面目と奔放、って対比じゃないよな。たんなる嫉妬だろ。でも、長じて、夏子が嫉妬深いという場面はない。そういう意味でも、一貫性が欠如している。 というところで、実は2人がミスキャストではないかと思ったりする。徹子は光浦靖子あたりでちょうど良くて、夏子は岡本夏生とか島崎和歌子みたいのが似合ってんじゃないのかな。 時間経過も杜撰で。最初の、純朴な農家の男をだましてマンションの名義を…という出来事から、次の出会いと絵画詐欺までの間に結婚して小学生の子供も生んでいることから考えるに、10年以上開いている。それが全然表現されていない。たとえば徹子であれば、次第に亭主との関係が…とか、そういうところで人物が掘り下げられるだろうに、していない。 代わりに、延々と登場するのが弁護士事務所の女性事務員・大宅みゆきなんだけど、そこまで登場させる意味があるのか? まあ、個人的には、みゆき役の永島瑛子は嫌いではないので、登場時間が多いのは不満ではないんだけど、でも、ちょっとしなびちゃった永島映子は、あまり色っぽく写されていない。多分、髪の毛を長くしてるからで、うなじを出すようにまとめあげて、色香を引き出すべきだったと思う。とくに、みゆきが実は病魔に犯されていた、という展開があるのだから、少しは工夫して欲しいものだ。 その永島瑛子が徹子に「あなたは冷たいのではない。人に対して期待しないのだ」とか場面があるんだけど、そういうことをセリフでずらずら言うなよと強く思う。それに、あれだけ説明したとしても、こちらとしては、「ああ、そうなのか」なんて思いはしないのだから。たんに不器用なのか、鈍感なのか、上から目線なのか、とか、そういうのを絵で見せなくちゃ映画じゃないんだよ。 あともうひとつ。病院で先の長くない老人(織本順吉)が、別れた妻にビデオ遺言するところがあって。その録画中に徹子が涙を流して「こんなに心を揺さぶられたことはいままでなかった」とかいうんだけど、どういう人生を送ってきたんだか。でもって、以降、相談者に対する接客態度も丁寧かつ親身になるという場面があったけど、むりむり。40歳過ぎて性格なんて変わらんよ。 それにしても、弁護士としての業務のテキトーさ、その後どうなったのか、に関して投げやりなのは困ったもの。最初の、結婚詐欺にあった農業従事者の件は、本人が取り下げるといったから、あれでオシマイ? だって、「また一緒に暮らしてくれるなら」って条件出してただろ。 絵画詐欺は、ありゃどう解決したのだ? 200万円払ってニセモノの絵を引き取ったのか? であれば、その200万円はどっからもってきた? 病院の老人(織本順吉)の遺言では、弁護士手数料をせしめてるのか? ってことは、老人には遺産があったということか? その辺りにも触れるべきだろ。 病院にいた、内縁の夫(寺田農)の遺産相続は、あれで解決? もしかして、結構な財産を相続し、それで絵を買い戻した、ってことか? そんな夏子の悪徳行為を責めもしないのか? そういう弁護士なのか。なんかな。 あと不思議なのが、夏子の元亭主との関係にまで、徹子と、後輩弁護士の磯崎が関わること。それだけではない。2人は夏子と太田俊輔(絵画詐欺の張本人)との関係や、太田の詐欺行為にまで関わっていく。そんなの、誰からも依頼されてないだろ。なのに、調べたり関わったりするのか? おかしいだろ。 そもそも太田の絵画詐欺は、刑事事件として扱わないのか? たんに太田の結婚式をぶちこわしてオシマイ? それは変だろ。 で、結婚式をぶちこわした夏子は、トランクを引きずり、大阪方面へ次の仕事にでかけてしまうんだけど、それを「あいかわらずね」な感じで見送る徹子って、おいおい。など、スッキリしないところも数多くて。結局、「夏子も本当は悪いヤツじゃない」「夏子に学んで自分も変わった」的なところで仕舞にしちゃうのか? そりゃよくないだろ。 永島瑛子、織本順吉、寺田農、どこにでてたか後から調べて分かった(みゆきの亭主で、亡くなったと連絡を受けて駆けつけた病院で頭を下げる男だった)国広富之…。往年の名脇役勢ぞろい。しかし、竹中直人はまあいいとして、田中麗奈のあの使い方はないだろ。 ・徹子はハイヒールを履いている。ダサイ女が、なぜハイヒール? 意味不明。 | ||||
FAKE | 7/5 | キネカ大森2 | 監督/森達也 | 撮影/森達也、山崎裕 |
日本語字幕付き版。allcinemaの解説は「聴覚障害を持ちながら作曲活動をし、“現代のベートーベン”とメディアで賞賛されるも、音楽家の新垣隆氏が18年間にわたりゴーストライターをしていたと告白、佐村河内守氏は一転してメディアの総バッシングにさらされる。森監督は、謝罪会見後、一切のメディア出演を断り、沈黙を続けていた佐村河内守氏の了解を取り付け、その素顔に迫るべく、彼の自宅に乗り込みカメラを回し始めるが…」 佐村河内の件については、詳しくは知らない。たしか…。「佐村河内は、聾の作曲家として名をなした。数年前に新垣隆が、自分がゴーストをやっていた。そして、佐村河内は実は耳が聞こえる、とバラした。佐村河内は、新垣隆の協力を得たことは認め謝罪した。さらに、全聾ではないことも認めた。しかし、自分も作曲に関わっていて、新村隆との共作である、と主張している…」というようなことかな。違ってるかも知れないけど。 知らなかったのは、後天的な聾者であるということ。神山典士というライターが文春に記事を書いて、話が大きくなったということも知らなかった。あと、家族のことも。現在はまったくテレビは見ないし、この件が発覚した当時もあまり見ていなかった。もちろん週刊誌も読まない。Web情報の見出しぐらいしか見てなかったから。という状態で見たのだけれど、とくに衝撃的なところはなく、ふーん、な感じだった。 森達也は、2人クルーかな。基本は1人で、森が登場するときはスタッフ1名追加、な感じかな。だから、佐村河内のマンション内に長時間居つづけられたのかも。 疑問に思ったのは、佐村河内のしゃべりが一般人と変わらず、アクセントの乱れもまったくないこと。生まれつきの聾ではないので、全聾の人のような聞き取りにくさはないんだろうけど。周囲の声が聞き取れていないというような感じがあまりしない。映画の中に、手話を解さずに応えてしまったようなところはなかったと思うんだけど、見る前に期待していたのはそういうことで。その意味でも、とくに衝撃的な感じがない。 「最後の12分間」が怪しいと、読んだり聞いたりしていた。クレジットの後も映画がつづいて、そこで佐村河内は一度は捨てたキーボードを購入し、ひとり自室で作曲し始める。音楽が完成した佐村河内に森が、「僕にまったく嘘はついていませんか?」的な質問をするんだけど、佐村河内は即答しない。しばらく間があり、応える前に映画が終わった。あの沈黙は何だったんだろう? というところで、怪しいんだろう。 あと、楽譜が読めないとか、キーボードは捨てた、とか言っていたけれど、最後の作曲シーンを見ていると、あれはもう頭の中で音楽が鳴っているとかいうものではないように見える。音程がちゃんと聞こえていて、それを修正し、音量や定位感なんかも完璧に調整しているように見える。まあ、だから森も最後にツッコミを入れたのかな、と。あるいは、佐村河内に密着して取材する中で、もしかしたら“聞こえている”決定的な場面を体験し、確信を得ての質問なのかも知れない。分からんけど。 Wikipediaによると、佐村河内には虚言癖がある、という。それが意図的なものではなく、自然に行われるようなものだと、本人も嘘を言ってるつもりもなくなったりするから、罪悪感も何も関係なくなる。そういうことは、あるかも知れない。分からんけど。 興味深いのは、最初に記事を書いた神山典士に取材を申し込んだら、仕事が忙しいからと断られたということ。さらに、かつてのパートナーの新垣隆にも取材を申し込んだけれど、これは事務所の方から断られたという。なんだそれ、だよな。取材を申し込む前に森は、新垣隆のサイン会にでかけ、自分の正体を明かしてサインをもらっている。このとき新垣は「あ、森さん…。お会いしたいと思っていたんですよ」といい、取材に関しても引き受けるような態度で、友好的に森と握手していた。そのシーンが映っていて、これはなかなか面白いシーン。なんだけど、その新垣隆が取材拒否というのは、何なんだろう? 不利になることがあるから、なんだろうか。 あと、不信感をもったのは共同テレビの出演交渉で、バラエティで漫才コンビが司会する番組に出てくれ、というもの。プロデューサーらしいのとディレクターと、あと若そうなのが2人来てたけど、この若いのの1人が妙な髪型で。チャラい感じがにじみ出てる。プロデューサーは、マジメに取り上げる、いじったりはしない、と明言していたけれど、そんなはずないよな。この出演は断ったんだけど、オンエアを見てる場面があって、派手に佐村河内をおちょくってた。森は、「出演してたら違ったと思いますよ」と言ってたけど、スタンスは同じだよ。話題性、もしや聞こえるのではという引っかけ、そんなものが仕込まれてたに違いない。 他にも日本のテレビ局、海外のマスコミが出演依頼、取材に来てたけど、理路整然と質問をしていたのは海外マスコミ。ああいう理詰めの取材を、日本人はなぜいつもしないのだろう、と思ってしまうほどだ。それはいいとして、こうした訪問客に佐村河内と妻は丁寧に対して、コーヒーと、必ずショートケーキでもてなすのが興味深かった。なぜにケーキ? 佐村河内の嗜好でもうひとつ。食事の前に豆乳を1リットル飲むと言うこと。とても不思議な感じ。 どっか地方の、全聾の人のところに訪問するシーンがあったんだけど。彼は佐村河内を擁護する立場ではあるんだけど。先天的な聾だから、話し方も変だ。では、佐村河内のように後天的に聾になった別の人を登場させ、話し方を比較するというようなことは、なぜしないのかな、と思った。同様の人のしゃべりが健常者と同じなら、佐村河内がああいう具合にしゃべれることに不審はない、という証拠になると思うんだが…。 てな感じで、決定的な何かがあるわけではない。けれど、題名は『FAKE』だから、偽りやニセモノ性があることを森達也は感じていて、それを提示しているのだろうと思うんだが、はたしてどうなんだろ。 奥さんも、長年連れ添ってきたわけで、仕事のことは知らないとは言うけれど、日常生活では知りすぎるほど知っているはずで。聞こえているのかいないのか、知らないはずはないと思うんだけど、映画の中では佐村河内と森達也その他の人との手話通訳に徹している。ある意味で、すごく律儀でマジメ。こんなひとが人を欺くか? にしか見えない。彼女が嘘をついていたとしたら、これはもう凄いことだ。 ところで、佐村河内の家で飼われているネコが頻繁に登場するんだけど。仁木悦子の小説ではないが、横たわる真実を『猫は知っていた』ということなのかな。ネコはまったく鳴かず、大人しくしているだけなんだけど。 | ||||
白鯨との闘い | 7/11 | ギンレイホール | 監督/ロン・ハワード | 脚本/チャールズ・リーヴィット |
allcinemaのあらすじは「1850年、次回作の構想を練る新進作家ハーマン・メルヴィルは、30年前にある捕鯨船を襲った悲劇を取材すべく、その最後の生き残りであるニカーソンを訪ねる。最初は渋っていたニカーソンだったが、やがてその重い口を開き始める??。1819年、新米船員ニカーソンを乗せた捕鯨船エセックス号は、アメリカのナンタケット島を出港する。船長になれると思っていた一等航海士のオーウェンは、経験の浅い名家の息子ジョージにその座を奪われ苛立ちを隠せずにいた。そんな彼らの航海はトラブル続きで、肝心の鯨は一向に捕らえることができず、焦りばかりが募っていく。そんな中、寄港地で有力な情報を聞きつけた一行は、鯨の群れを追って太平洋へと向かうのだったが…」 『白鯨』のネタ元としても知られる19世紀に起きた捕鯨船エセックス号を巡る悲劇の実話の映画化なんだと。『白鯨』が原作かと思ってた。なにせ『白鯨』読んでないもんで…。 実話といいつつ結構フィクションっぽくて。手練れの一等航海士オーウェンと、名家の御曹司というだけで船長になったジョージとの確執が前半で。とくに、嵐の中に帆を張って進むことを強行するジョージvs止めようとするオーウェンとの対立なんか、絵に描いたような話だ。で、もう帰ろうという船長に、オーウェンが「そうはいくか」と反抗し、だらだらしてたらエクアドルだかどっかでクジラの大繁殖地の情報を得てえっちらこ。でも巨大な白鯨の反撃にあって船は沈み…。ボート3艘で生き残りが逃げるが…食糧がなくなり…というところで島影を見つけたけれど、そこには遭難者の白骨死体がごろごろ…。これじゃ助けの船も来んぞ、というわけで2人(?)を残して2艘のボートで脱出するが…。食べ物がなくなり…。死んだ仲間を食べ、さらに、くじ引きで食われるやつを選んで殺して生き延びた…という話であった。 もともと3Dでつくられていて、嵐に翻弄される場面とか白鯨に襲われるところなどは結構な迫力なんだが。いかんせん人間があまり描けていなくて。オーウェン、オーウェンの古い仲間、船長、船長の従兄、新米の二カーソン、黒人船員…ぐらいしか識別できず。しかも黒人船員はたしか2人いて(ではなかったか?)・・・どっちがどっちやら分からなくなる。オーウェンの古い仲間も、しだいに影が薄れ…でも実はちゃんと登場しているのかも知れないけど見分けがつかなくなり・・・。さらに、以上の人物以外の人名も登場してきて(だよな。違うか?)、だれがどれやら分からなくなる始末。 しかも、メルヴィルが50過ぎた(?)現在のニカーソンに取材に行って話を聞き出す、という設定で。では少年ニカーソンが主人公かというと単なる狂言回しで。オーウェンが主人公のような扱いなんだけど、船長もウェイト高くて…な、中途半端なところがいまいち端切れが悪い。 ボート2艘で島を脱出…も、それぞれのメンバーが分かりにくくて。オーウェンと船長は別のボートだったよな。で、ニカーソンはオーウェンと一緒? で、黒人が死に、水葬しようとするのを船長が制止してお食事。なんだけど。ニカーソンはそれを目撃はしてないんだろ? だってそれは、2艘のボートが離れ離れになってからのことだった…よな。で、オーウェンのボートでも、同じこと、あるいはクジで死ぬやつを決める、があったのか? それとも、ニカーソンは船長と一緒だったのか? 離れ離れになったあと、いったんは一緒になるんだけど、あれ? そういえば、もう一艘がどうたらいってたかな? ってことは、島からの脱出は3艘か? ああ、わけが分からなくなってきた。記憶がほとんどない。 てなわけで、船長の乗るボートは船に助けられ、ボートの中には人間の骨がごろごろ…という映像はあった。では、オーウェンはどうやって助かったんだっけ? 船長の後だよな。こっちも人骨ごろごろだったのかな? ああ、分からん。 救出それて後、オーウェンは、「クジラにやられたとか仲間を食べたなんていうと出資者への影響があるから、審問会では座礁したと嘘をつけ」と言われていたけど、出席拒否だっけ? それで島に残してきた仲間のところに戻ると、生きている仲間がいたという・・・おお。そっちも奇跡だな。 いっぽうの船長は、血統的には嘘をついてもいいはずだったけど、すべて正直に告白、という流れで。最初は反目し合っていたオーウェンと船長も、なんとなく既成路線に反発した恰好にはなってるけど、でも、2人が心の底から和解したような感じはないね。 オーウェンはその後、商船の船長になった、らしい。雇われか、船主か知らんが、金はなかっただろうから雇われか? 借金して船を買った? で、船長はどうしたか、知らん。 オーウェンの奥さん役。シャーロット・ライリーが、エラ張ってて、ううむ…な感じ。 船長の従兄は、船長と同じボートなんだけど。誰が食われるかのクジで船長がアタリを引くと、クジのやり直しを主張。それって…他の仲間に失礼だろ! で、船長が拒否すると、従兄は銃で頭を撃って自ら犠牲になるんだが。それを待っていたかのように、みんなでむさぼり食うという…。まあ、それはいいとして。従兄でありながら一般船員として乗り組み、船長を生かす行為に出るというのは、家父長主義と関係があるのか知らん。 最後に、現在のニカーソンがメルヴィルに、「地面から油が出たそうだが…」というのは、なかなか興味深い。ああやって時代が変わっていったんだな、と。 でも、そのニカーソン。食人がトラウマとなって仕事もせずボトルシップをつくる毎日…って、変だよな。少年時のトラウマなら青年期も変で、結婚すらできなかっただろうに。だって、働きもしない亭主、どうすんだよ。不自然。 | ||||
日本で一番悪い奴ら | 7/15 | MOVIX亀有シアター3 | 監督/白石和彌 | 脚本/池上純哉 |
allcinemaのあらすじは「柔道の実力を買われ北海道警察に入り、ほどなく新米刑事となった真面目な青年、諸星要一。しかし正義感はあるものの、本業の捜査現場ではまるで役立たず。そんな諸星に、先輩刑事の村井が“刑事は点数を稼がなければダメ”と諭し、裏社会に飛び込んで協力者となるS(スパイ)をつくれとアドバイスする。言われるままにそれを実践し、やがてSの協力で覚醒剤や拳銃の摘発を重ね、立派な実績を残していく諸星だったが…」 そこそこ面白くて、随所で笑えるところもある。なので、時間つぶしにはなるだろうけど、全体に物語としてのダイナミズムが希薄なんだよな。だらだらと、とくに起伏なく進んで、だんだんワルになっていき、とんでもないことまでしでかして、最後は逮捕。まあ、逮捕は見る前から分かっているので、なんの意外性もない。こうやって何となく終わっても、あまり残らない。 主人公の諸星は、最初は大人しくてマジメっぽい。とはいえ補導歴があるんだから、善良ではないだろうし、後からWikipedia見ると柔道で大学行って、警察への就職も柔道。そもそもがハンパな感じがしないでもない。これが、先輩の悪徳刑事・村井(ピエール瀧)に仕込まれて、というか、ヤクザの黒岩に見込まれ、村井と入れ替わりで悪の道へ…という経緯はテンポもいいし面白い。のだけれど、以後の悪ぶりがずうっと最後まで一本調子で、いまいち単調。やってることもなにもかも、バカじゃないのか? としか思えないのだよな。とはいえ事実をベースにしているのだから、そんなバカな奴がいて、バカなことをやっていた、ということなんだろうけど。 それまで出ていた人物が、どんどん途中で消えていく。最初に諸星をこき使う刑事・栗林。いつのまにか存在が…。悪徳刑事の村井も、黒岩にハメられ逮捕されて以降、出てこない。で、途中から入れ替わるように登場する山辺という元運び屋(ハルシオンをつまみのようにかじってる)男が、諸星の弟分として最後まで登場。あと、黒岩とパキスタン人のラシードか。この周辺の人々も含めて結構出番はあるんだけど、なんかいまいち人間の掘り下げがいまいちかな。 要は、拳銃を挙げろ、という時代背景もあって。諸星はまず違法捜査で一丁。その後は知り合いのヤクザから提出させたり、関東のヤクザから仕入れたり、ロシア人から買ったり…と、いろんな手を使って銃を集めては上司に報告。上司も、道警のため、ということで安いながらも調達資金を諸星に渡し、組織ぐるみで拳銃摘発を仕組んだ、という話で、ずうっと最後までこの調子なので、少し飽きてくる。 で、最後に、大博打。まず、海外から日本のヤクザに覚醒剤を密輸させる。これを見逃して安心させ、次に海外から拳銃を密輸させる。これを摘発して大量の拳銃を挙げよう、というものなんだけど。いくらなんでも覚醒剤の量が多いだろ、ということになって。でも、上司の反対を押し切るようなカタチで覚醒剤を密輸させるんだけど。その量が予定よりもハンパなく多く。しかも、それを、いまはヤクザ組織から足を洗った黒岩が持ち逃げしてしまう。怒ったヤクザ組織に殺されかかるんだけど、「代わりに大麻を」と約束してなんとか治めたけど、拳銃が手に入らない。というわけで、手持ちの拳銃(なんと家にコレクションしてる!)をロシア船に仕込んで事件をでっち上げ、とりあえず摘発。でも、数が少ない! とかいってる間に山辺やパキスタン人とも仲違いして…。とうとう自分も覚醒剤に手を出して・・・。さらには田舎の警察に転勤させられ、地味な生活…。 そこに、上司の1人がやってきて、「山辺に、バラすぞ、と脅されてる」と。それで山辺に会いに行くと、つっけんどんに扱われて。さらには、上司であった次長と部下がやってきて、覚醒剤所持・使用で逮捕。 というところでいちおう諸星の話はオシマイ。おまけのように、脅されてる、と言っていた上司が公衆トイレで首をつり、さらに、山辺は刑務所の中で死亡…。こちらは原因不明な感じ。で、裁判にもなって、諸星はあれやこれや話したけど、結局、上司で起訴・逮捕された者はゼロ。とかいう字幕で終わった。 てなわけで、どこが「日本で一番悪い奴ら」なのかよく分からない。だって、三洋とか東芝とか、昨今の粉飾決算をしてる大企業とやってることは変わらないわけで。組織を守るため、のよくある話ではないか。だれか人に危害を加えるわけでもないし。 ただ、思うのは、諸星はもしかしたら、ずっと、ああした摘発のねつ造も、公共の安全のために役立ってる、とわずかながらでも信じているような節があることだ。だから、バカみたいな話、と思うのだけどね。 しかし、次長と、次長におべっか言ってるやつ(トイレで首をつったやつ)、それと、諸星の直接の上司。この3人が、『踊る大捜査線』の署長、副署長、刑事課長のスリーアミーゴスに見えるんだけど…。 で、事実がベースになっているらしいので帰ってからWikipediaみたら、元ネタの事件の方がなんか面白そうだ。きっと映画的演出とか端折りもない話の方が、リアルなんじゃなかろうか。とくに、この映画だと、諸星は最初、刺青のあるホステスに惚れられ、次に、署内の女性警察官に惚れられ…という女性遍歴してるけど、そんなうまくいくんかいな、と思うし。まあ、女性関係はあったろうけど、あそこまで美人じゃないだろ。 あと、黒岩の覚醒剤持ち逃げ。あんなの、事実なのか? 演出じゃないのか? 知らんけど。それにしても、裁判も含めて、警察のいい加減さがやり玉に挙げられているけれど、こういうのは体質だからしょうがないのかね。司法の独立は、あり得ないのかな、やはり。ま、マジメに摘発してったら、道警から警官が1人もいなくなる、なんてことになるのかも知れないけど。 しかし、分からないのは、山辺の諸星に対する忠誠心かな。ボロクソいわれ、蹴られ、あれこれされても着いていきます的な態度はどこから来てるんだ? パキスタン人の協力は、あれは、金かもしれないけどね。 最初から、テンポよくジプシー音楽が鳴りまくる。でも、ラストはスカパラの歌だった。なんか一貫性がないな。 | ||||
シング・ストリート 未来へのうた | 7/19 | ヒューマントラストシネマ有楽町1 | 監督/ジョン・カーニー | 脚本/ジョン・カーニー |
allcinemaのあらすじは「1985年、大不況にあえぐアイルランドの首都ダブリン。父親の失業で優秀な私立学校から荒れた公立学校への転校を余儀なくされた14歳のコナー。両親はケンカが絶えず、学校でもさっそくイジメの標的に。そんな彼にとって、音楽オタクの兄ブレンダンの解説を聞きながらミュージックビデオ番組を観るのが唯一の楽しみ。すっかりデュラン・デュランの虜になってしまったコナー。ある日、自称モデルの美女ラフィーナと出会い、たちまち一目惚れ。思わず口をついて出た誘い文句は“僕のバンドのビデオに出てくれ”だった。慌ててメンバーを集め、即席のバンドを結成して猛練習を開始するコナーだったが…」 音楽シーンは相変わらず高揚感があって楽しい。だけど、話の方は『ONCE ダブリンの街角で』『はじまりのうた』と比べると、なんか勢いに任せてる感じかな。ラストは、恋人と2人、ダブリンからウェールズ目指して荒海を小さなボートで向かうんだが、むかしの映画ならあんな向こう見ずな冒険感もアリだろうけど、もう時代が違うような気がする。あれじゃ先が思いやられる、というか、挫折して帰ってくるだけだろ。それに、故郷にいろいろほったらかしで残したまま、ってのも気になる。とくに、せっかく集まった音楽仲間を置いてっていいのか? なかでも最初に仲間に引き入れたエイモンは、知恵袋だろ。エイモンなしに音楽はつくれんと思うがな。 さて。1985年が大不況なのか。日本じゃバブル真っ最中だったから、よく分からない。しかし、父親が失業で母親も週3日しか仕事がない。だから長男ブレンダンは大学を中退し、コナーは学校を変わる。妹は、そのまま、なのか? この辺りもよく分からない。大学は、奨学金制度とかないのか? バイトもない? ブレンダンはずっと登場するけど、働きもせずぶらぶらしてるんだが、そういう状態なのか? 両親の仲が悪いようだが。単に経済的な問題じゃなくて、女房の浮気もある、とか。後半で2人は別居するんだけど、妻は彼氏の家に。夫は、1人じゃ家を維持できないから売る、とかいうことになって。ってことは、あのでかい家は持ち家なのか? ローン返済中? 分からん。で、夫はアパートに住むので、子供たちは両親のところを行ったり来たり、ということになるらしい。悲惨。家が売れたら夫婦で折半で、なんとか暮らせるのかな? 女房が浮気、なら亭主の方が有利で、家は折半、じゃなくなるんじゃないのかね。とかも思ったり。 ところで兄貴のブレンダンだけど、ぱっと見がオッサンで。こんなんで大学中退したて? と思えるほど。演じるジャック・レイナーは1992年生まれだから撮影時はまだ23歳!? げ。老けてる…。主人公のコナーは14歳の役かよ。つき合う彼女のラフィーナが1歳上で16歳とかいってなかったか? コナー役のフェルディア・ウォルシュ‐ピーロは2000年生まれ…? 撮影時は15歳?! 大人びてるな。ラフィーナ役のルーシー・ボイントンは1994年生まれだから撮影時21歳。まあ、これは妥当かな。にしても、日本の14〜5歳とは、ずいぶん違う。 「優秀な私立学校から荒れた公立学校へ」ということだけど、それも言われれば、そうか、な感じ。っていうのも、イエズス会の学校からカソリックの学校(だったかな)に移った、というようなことだったから。アイルランドはカソリックの国だったか…? てな案配で、宗教的背景も詳しくないと、すんなり理解できるとは思えんのよね。それにしても、公立学校、とはいっても、学校はカソリックで教師は神父なのに、なんであんなに生徒はチンピラばかりなんだ? 日本の、荒れた公立高校と同じようなもんなのか。 ところで、WikipediaでSynge Street CBSというのがヒットして。Christian Brothers Schoolと説明にある。ワッペンのマークも似てるけど、あれは実在の学校なのか? で、Syngeというのは、学校のある通りの名前みたいだ。それで「シング・ストリート」。ダブル・ミーニング…という説明は、ちょっとしかなくて分かりにくいかも。 転校生だから狙われるけど、最初だけで。それほどしつこくいじめられないのだな。次第にコナーのファッションは派手になっていくんだけど、制止しない。校長がキレるのは、コナーが髪を染めたときだけ。でも、他の教師は何ともいってなかった。なんだこの学校は、な感じ。 ラフィーナの素性も怪しい。父親は交通事故死で母親はうつ病で病院を行ったり来たり、といっていた。看護婦だから病院を行ったり来たり、ってのは冗談だよな。違うか? で、住んでいるところは、あれは施設? 学校は卒業した? 自称モデルだけども何もしてなくて、コナーが転校した学校の前に毎日突っ立ってるって、目立つだろ。なんのために立ってたんだ? でも、学校の生徒は誰も話題にしない…という存在に気がつき、いきなり話しかけ、「バンドやっててビデオを撮るんだ。でてくれないか」と頼み込むとはいい度胸すぎる。それはいいとして、施設に暮らしながら、ラフィーナは毎日なにをやっとるんだ? 彼氏がいて、その彼氏とロンドンに行って一旗あげるのがとりあえずの夢らしく。コナーにも惹かれつつ、でも、後半、彼氏とロンドンに旅立ってしまう…のだけれど、どーもロンドン行きは失敗で、また施設に舞い戻ってきてる。のだけれど、その彼とはロンドンまで行ったのか? コナーには「飛行機の切符も取ってなくて。最後は安宿に置いてきぼり」といっていたけど、安宿というのはダブリンの、ということなのかな。分からない。 話が先に進みすぎた。 兄ブレンダンが愚痴るところがおかしいやら気の毒やら。20歳そこそこでセックスしたくて一緒になっただけ両親の元で、俺がジェット気流のように切り拓いてきた道を、お前は何の苦労もなく歩んできた。たいへんだったのは、俺なんだよ、とかマジギレしてるのは、いたたまれない感じ。それでもいろいろロックの名盤を教えてくれたり、いい先生ではあるんだけど。同じ家に住んでいながら、兄貴の聴いている音楽をいまのいままでよく知らない、あるいは耳に入ってこなかった、っていうのはどう考えても変というかムリがあるだろ。 てなわけで、口から出任せに「バンドのPV撮るんだ。出てよ」「いいよ」となことになって。最初に友だちになった弱虫な感じのダーレンで、彼はマネージャーに。そっからバンド仲間を集め出すコナーが最初に訪ねたのがエイモンで。父親はコピーバンドでどうたらで、いま刑務所? とかいってたっけ? 親の影響でか、いろんな楽器が弾けてしまうのがすごい。ウサギを飼ってるのには何か意味があるのかな。母親がまた愛嬌があっていい。これで、ギター決まり。 次はバンドに黒人がいると格好がいいとかいって黒人の同級生を誘い込み、最初は指先だけでキーボードを操ってたけど、だんだん上手くなっていく。その後は、ポスターを見た2人だっけ? ベースとドラムだったかな。この2人、『スウィングガールズ』のパンクなギター2人に雰囲気が似てて面白い。セリフはほとんど無いんだけど、存在感がある。 メンバーがだんだん上手くなるがテキトーすぎて。コナーもロクに楽器操れなかったのに、いつのまにかアコギを華麗に弾きこなしてたり。まあ、映画だからいいんだけど。わはは。 で、路地でPVの撮影になるんだけど、これまたテキトー過ぎて。あんな撮り方でまともな映像は撮れないだろうに、それはそれ、映画だから。雰囲気が出てればいい、ってな感じで。こうやってコナーとラフィーナが接近していくんだけど、ラフィーナにはつきあってる彼氏がいて、そのうちロンドンに、が夢というのは軽薄すぎるよな。映画だから仕方ないけど。この路上の音楽シーンは、『ONCE ダブリンの街角で』の路上ライブを思い起こさせるな。なかなかいい。 で、学年最後のパーティに出場するとかいう話になるんだっけか。どうやって校長の許可を得たのか知らんけど。いつのまにか、メインの登場バンドになっているのがテキトー過ぎ。まあ、いいけど。 その学年最後のディスコパーティの練習で、ラティーナは来ないんだけど、来たかも知れない映像が映し出される場面があって、それが『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まんまなんだけど、それもまたカッコよかったり。まあ、あれはコナーの期待がイメージ化されたもので、両親は仲よく踊ってキスし、ラティーナの彼氏をブレンダンが追い払うという、都合よすぎるイメージになってるけど。まあ、分かりやすすぎていいかもね。ちょっと高揚するし。 という間に、いじめっ子だったバニーを、ローディとして引っ張り込むという流れもなかなかいい。バニーも、学校じゃチンピラやってるけど、上級生には使いっ走りやらされてる感じだし、家では父親に殴られっぱなしみたいで、労働者階級の低学歴なアンちゃんの様子を描いてくれている。 いつのまにかラフィーナが戻ってきていたのは、パーティの前だっけか、後だったか。彼氏に置いてきぼりにされて、すごすごと帰ってきたらしい…。 てなわけで、パーティ本番。ノリのいい曲で盛り上がり、という流れは定番。で、クライマックスにラフィーナに捧げるバラードを歌うんだっけか。このとき、ラフィーナが入ってきたんだったかな、たしか。忘れたけど。ははは。で、しんみりした雰囲気をはじき飛ばすための曲を最後に。全員がコピーした校長の顔をお面にして、校長批判の歌で大盛り上がり。 で、どういう流れだったかよく覚えてないけど、このときには両親は別居してたんだっけかな。まだ家が売り出し中だったか。でも、両親は同じ寝室で寝てたシーンがあったから、別居前か。でも、ケンカしてて離婚も間近という夫婦が、同じ寝室というのはつらくないのか、とか思ったりして…。 で、コナーはラフィーナをつれてのロンドン行きを決意して。そんな2人だったかコナーだけだったか、を兄貴のブレンダンが親の車でボートまで送っていくのは、自分か果たせなかった夢を弟に、という心意気か。でも、ブレンダンだってまだまだだろ。20歳過ぎてるんだから、親の庇護の元にいる必要は、もうないだろ、と思うんだが。 あのボートは、父親のもの、なんだよな、たしか。な小さなボートでロンドンに向かうんだけど、いきなり巨大な客船に衝突しそうになったり、嵐に襲われたり、これからの2人の未来を象徴するようなラストで。ああ、こりゃ、挫折して舞い戻ってくるんじゃないのか? と思わせる、危うい感じのラストだった。だって金もなければコネもない。そんなんでティーンエージャー2人がダブリンにたどり着いて、なにをするってんだ。乞食か? デモテープがあったとしても、メンバーはダブリンだろ。呼び寄せるのか? そんなんなら、テープを送った方がましだろ。 まあ、映画だからなんでもアリだけど。この無謀さは、いまどきの映画には、ちょっと…な感じがするよな。 ・バンドを組む過程は楽しい。コナーとエイモンはジョンとポールを彷彿とさせて、エイモンがコードを弾き、コナーがそれに旋律をのせていくところとか、ワクワクしてくる。そして、そのカメラが一周するとバンドのメンバーが参加した別の時制の映像になったり。このあたりは監督の得意技だな。 ・とはいえ14、5歳のバンドであそこまで質の高い楽曲をつくれてしまうのは、ご愛敬か。どれもいい曲なんだけど、なんとなく当時のヒット曲に似てるようなところがあって。まあ、だから耳に気持ちがいいんだろうし、当時を表しているんだろうけど、コピー感がぬぐえないところがある。 ・いまから見るとダサイPVを「格好いい」と賞賛しているブレンダン。ああいう時代もあったのね。 ・コナーが兄貴に、ラフィーナの彼氏について話すと、「フィル・コリンズかけてるような奴にロクなやつはいない」とかいうようなことをいうのがおかしい。 ・その兄貴ブレンダンの部屋にフロイトの写真があるんだが…。 ・パーティの演奏が終わった後、帰っていくラフィーナを追って街に出るコナー。の背後に、立ったままゲロしてるやつが写っているんだけど。あれは、卒業パーティで飲み過ぎた生徒、ってことかな。なかなか小技が効いてる。 ・校長はさておいて、コナーを応援しているような教師もいるようなんだけど。その、校長以外の教師をもう少し描いて欲しかった気がする。 | ||||
ジプシーのとき | 7/20 | キネカ大森2 | 監督/エミール・クストリッツァ | 脚本/エミール・クストリッツァ、ゴルダン・ミヒッチ |
allcinemaのあらすじは「旧ユーゴのジプシー村。粗末な祖母の家で足の悪い妹と放蕩者の叔父メルジャンと暮らすペルハンは、美しい娘アズラに恋したが、貧しい彼との結婚に彼女の母は猛反対。ある日、アーメドを頭とするジーダ兄弟が村に帰ってきた。その夜は大パーティ。村一番の金持ちの彼らは悪事をして稼いでいた。メルジャンも彼らのカード賭博のカモにされ借金を背負う。祖母の魔術がアーメドの息子を急病から救ったことで、彼は妹の足を治すことを約束。ペルハンも同行して町の病院に向かった。が、病院に妹を入れると、アーメドは無理やり、ペルハンをイタリアへ連れていき、悪事の手伝いをさせる。が、故郷に久々に帰ると、アズラは妊娠しており、アーメドが条件にした家は建っていず、ペルハンは何も信じられない。が、アズラとは結婚することになる。その夜、新妻は花嫁衣装のまま子供を産み、息絶えた。彼はその子を我が子として受け入れられない。そして、妹を病院に訪ねるが、彼女は行方不明。ペルハンは妹との再会を胸に誓い、イタリアに戻るが…」 これは未見だったので期待したんだけど、後半、イタリアに行ってからのぐだぐだは、なんかちょっと…。音楽も、ファンファーレ・チォカリーアやタラフのジプシー音楽が派手にがんがん鳴り響くというわけでもなく、ううむ…な感じだった。 しかし、見てから2週間もすると、あんまり内容を覚えていないのが哀しい。ははは。 冒頭は、賭に負ける叔父だったかな。ベルハンはお婆ちゃん子で、足の悪い妹ダニラがいる。七面鳥をもらってペットにしてるんだったな。父親はスロベニアの軍人で、母親は死んだ。で、念力が使える。ちょっとだけど。アズラと恋仲になって…。てなところに、ヤクザな金持ちアーメドがどこからかやってきて。お婆ちゃんは、アーメドにダニラを病院につれていって治して貰うよう頼む。これにペルハンも付いていくんだが…。その、どこかは後半でイタリアとわかるんだけど、ぼんやり見てたから気づかなかった。 …というあたりまでは、いかにもクストリッツァな感じの奇想天外さもあって楽しく見たんだけど。この辺りから睡魔が襲ってきて、気がついたらどっかで野営しているようなシーンで。どうもどっかの都市らしい。あとからミラノと分かるんだが。どーもロクな商売をしてなくて。子どもに片輪のフリをして物乞いさせている。さらには、ボスニアに戻って子どもを連れてこい、なんていわれて故郷に戻ってみると、なんとアズラは妊娠してる。アズラの母親には「叔父を怪しめ」とかいわれて、でも、アズラは「ペルハンの子」といいはり、ペルハンは身に覚えがないけど、打算的(どんなだかは忘れた)に結婚を決めてしまう。アーメドは「俺の家の隣にお前の家を建てている」とかいってたけどこれは嘘っぱちで。ミラノにもどる途中だったか、アズラは男の子を産むけど、アズラは死んでしまう。このとき、アズラの身体が宙に浮くので、これは体内の赤ん坊が超能力者で、やっぱりペルハンの子ではないかと思ったんだが、真相はよく分からない。 ペルハンは病院にも行くんだけど、ダニラなんて子どもは知らないと看護婦にいわれ。アーメドの手下だったか、運転手だったかを問い詰めたらどこそこに売ったとかいわれたんだったか、ローマでダニラと邂逅…のシーンはなかなか感動的。足を引きずって物乞いしてたんだよな、やっぱり。 病気をしながらも、いまの女房を棄て、新しい女房を娶ろうというアーメド。その婚礼の場に忍び込んで、ペルハンは超能力を発揮。フェークだかナイフを飛ばしてアーメドを殺害。で、あわてて逃げるんだが、新婦がしつこく追ってきて。その新婦に撃たれてしまう・・・。 で、葬式。すでに息子は歩いていて。ペルハンの目玉に置かれたコインをくすねてしまうんだったかな。悲しむ祖母…。 とまあ、Web上にあったあらすじ頼りにストーリー書いたんだけど、ストーリーよりイメージと音楽と雰囲気の映画かな、やっぱり。でも、後半は暗いというか地味な話で。もちろんそれは『アンダーグラウンド』も同じではあるんだけど、なんか、クストリッツァの映画はハチャメチャ脳天気、っていうイメージがあって。実はそうでもない、と分かって、ちょっとうろたえてるところもあるのだ。でも、『黒猫・白猫』は結構はじけてたよな。たぶん。でもま見直したらみた違うかも知れないけど。 それにしても、父なし子のペルハン、その息子も父なし子となり、母親も死んでしまっていない、という同じ運命をたどるということになって。運命を訴えているのだろうか、よく分からんけど。 ラストシーンは、葬儀に参列した誰かが帰る場面でストップもション、だったかな。さて、ところで、妹ダニラの足は治ったんだっけ? そのままだっけ? ・ペットとして飼っていたつもりの七面鳥が、知らぬ間に料理されてでてくる場面があったな。あれも運命か? ・祖母は、娘に死なれ、息子は甲斐性なしで、孫にも死なれ、素性の不確かなひ孫をこれから育てていくんだろうな。たいへんだ。 ・超能力が使えるなら、もっといろいろ使えばいいのに、とか思ったり。 ・アーメドから後継指名されると、ただの少年からスーツに帽子のシャレ男になって。年上の男たちも顎で使うようになるんだけど、あれはそういう仕組みなのかね。 | ||||
アンダーグラウンド | 7/20 | キネカ大森2 | 監督/エミール・クストリッツァ | 脚本/デュシャン・コバチェヴィッチ、エミール・クストリッツァ |
仏/独/ハンガリー。原題も“Underground”。Yahoo!映画のあらすじは「1941年、ナチスに侵攻されたセルビア。パルチザンのマルコ(ミキ・マノイロヴィッチ)は地下室に弟のイヴァン(スラヴコ・スティマチ)や仲間のクロ(ラザル・リストフスキー)らをかくまい、武器を製造させることにする。英雄となったマルコは地下生活を続ける仲間たちには第2次世界大戦が続いていると思い込ませる一方、新政府の重要人物としてのし上がっていくが…」 劇場で見るのは初めて。テレビ上映で見て衝撃を受け、以降、クストリッツァのファンになった。ジプシー音楽も、こっから興味をもつようになった。とはいえ、今回改めて見て、内容についてほとんど忘れていたこと、あるいは、よく理解していなかったことに気づいた。覚えているのは冒頭のシーン、爆撃される街、地下で過ごす人々、動物園、ラストの護岸から離れていく地面…ぐらいで、そのつながりや背景まではよく理解していなかったかも。とくに、マルコって悪いヤツなんだな、というのは、今回、改めて思ったんだけど、最初見たときはどういう理解をしたのかな。そこそこ理解したけど、忘れてしまったのか、どうなんだろ。 要は、第二次大戦後、チトーによってユーゴスラビアは独立したけど、利権ばかり追い求める腐敗したやつ(マルコ)が混じっていて、かつての同志(クロ)を騙していたわけだな。しかも、マルコは地下の連中に武器を造らせ、それで大儲けしていた。これは、大衆に真実を伝えない圧殺政治、あるいは衆愚政治の譬え話なのかも。けれど、クロもいつか真実を知り、マルコは追放される。 けれどもチトーの死後ユーゴは分裂し、内戦が勃発してクロも参戦。…でも、クロはどの立場なのかな。セルビア? ボスニア? あの国の内戦については不可解すぎてよく分からない。てな状況で、マルコは武器商人として恋人(かつてのクロの恋人)とともに立ち回っていたけど、混乱の中で焼かれて死んでしまう…。白い馬がしきりに登場するのは、なんの象徴なんだろう? 宗教的ななにかかな。 最後は、ウシたちが海から陸に上がってきて。その土地には登場人物がパーティを開いていて、仲よくあるいは敵対しながら杯を重ね、彼らを乗せたまま大地が切り離されて流れていく…。というのは、ここは天国かどうか知らないけど、あの世というわけだな。 というような話を、ファンファーレ・チォカリーアの圧倒的なブラス音でがんがん引っぱっていく。なんなんだ、この映画は、という印象が初見では強くて、それに攪乱されたのかも。ユーゴの歴史、とくに内乱の経緯と過程を知らないと理解は難しいのかも知れないんだが、関する本も読んだけど、複雑怪奇すぎて一筋縄ではいかなかった。というか、読んでるそばから忘れてく感じで。まあ、雰囲気だけでも感じれば良いのかな、と。そういうことにしておこう。楽しいけど暗いし、難しい。 | ||||
ミモザの島に消えた母 | 7/29 | ヒューマントラストシネマ渋谷2 | 監督/フランソワ・ファヴラ | 脚本/フランソワ・ファヴラ |
allcinemaのあらすじは「フランス大西洋の美しい島、ノワールムティエ島。30年前、この島で一人の若い母親が命を落とす。40歳のアントワンは今もなお、その母の死と折り合いをつけられずにいた。仕事も上手くいかず、結婚生活でも破綻を迎えてしまった彼は、改めて母の死と向き合うべく、妹のアガットを伴い、故郷ノワールムティエ島へと向かう。しかし父も祖母も母の死について頑なに口を閉ざそうとする。ますます不信感を募らせるアントワン。そして、気乗りしないアガットを尻目に、執拗に当時のことを調べ始めるのだったが…」 うーん。なんかな。終わってみれば、そんな隠すような秘密じゃないだろ、と思うし。暴き立てて祖母を非難するようなこともないだろ、とも思うんだが。それにだいたい、事故は新聞にも載ったんだろ? 最後の方で、かつての使用人の亭主の方が、事故って水に浸かってる車の写真の印刷物をアントワンに見せるんだけど…。ってことは、最初からWebで調べるとか図書館で昔の新聞を見るとか警察に行くとかすれば、すぐに分かったんじゃ亡いのか? なにを延々と遠回りしてるんだか。さらに、母親死亡当時、アントワンは10歳。なら覚えてるだろ。という感想しかない。 それと、要らぬ展開が結構あって。たとえばアントワンとアガットが乗ったクルマが事故るのは、なーんも本筋に関係ない。アントワンの離婚と別れた妻、その妻と妹アガットが同じ職場、という設定も、本筋にはなーんも関係ない。むしろない方がいいぐらい。たんにストーリーに膨らみを持たせようか、と付け足されたような感じがしてしまう。 それに、ノワールムティエ島の海の中道「パサージュ・デュ・ゴワ」は砂州で、日に2度、満潮で海面下に沈むのも有名な話らしく、知ってる人には母親の死の原因は簡単に予測がつくだろう。ま、こっちは知らなかったけどね。 加えて、母親がレズだった、というオチも、わりと早いうちに想像できてしまって。あ、やっぱり、な感じなんだよな。だから、たいして意外性はなく、なんか、どんどん尻すぼみな感じ。 むしろ目立つのは、アントワンとアガットの兄妹近親相姦的な間柄で。とくに示唆するものはないけど、ずうっとべったりの兄妹の関係は、異様に見える。アントワンには、遺体処理業のアンジェルという恋人ができるんだけど、とってつけたような感じで。おいおい。アントワン。お前はまだ元女房に未練たっぷりだったんじゃないのか? とツッコミを入れたくなる。 で、母親のレズ疑惑だけど。パリに絵を習いに行ってて、そこの指導教師に目をつけられ、迫られ…なことらしい。夫があり、子どもが2人あり、の主婦が、その教師の誘いに応じて家族を棄てる決心をする。教師は、出奔の日時を母親に伝え、ノワールムティエ島のホテルで待っている。それに義母=祖母が感づき、「行けない」という手紙を書き、使用人に持っていかせる。教師はその手紙をみて諦める…。でいいんだっけ? 教師からの手紙を祖母が先に見て、返事は母親に書かせるんだっけか? 祖母自身が書くんだったか、忘れた。 でも母親は諦めきれず、待つ、といわれた時間に間に合うようになのか、すでに時間は過ぎているのに、だったか忘れたけど、母親はクルマに乗り込んででかける。が、すでにパサージュ・デュ・ゴワは水没しかけていて…。という流れで母親が向こう岸で遺体で見つかったことが明かされる。それを知ったアントワンは、クリスマスに祖母と父親を非難。そのおかげで祖母は死んでしまうんだけど、そのことはアントワンに伝えられず、使用人から教えられ、葬儀に行くんだが…。父親は歓迎しないどころか、お前の責任だと非難。でも、それまで「そんなこと調べてどうするの」といっていた妹のアガットも、真相を知ると父親に罵声を浴びせ、死んだ祖母を非難。で、兄アントワンサイドに付くという、なんか無茶苦茶な感じ。 だいたい、祖母は直接手を下してはいないだろ。水没するパサージュ・デュ・ゴワに突っ込んでいったのは、母親の意志。母親は泳げなかったのか? あれは自殺行為。祖母は、息子と孫たちを棄てて恋人の女性の元に出奔する嫁を阻止しようとした、のだろ。結果的に母親=嫁が事故死したけど、そこまで責任を感ずる必要はありやなしや? アントワンとアガットも、父親や自分たちを棄てようとした母親を、そこまでかばう必要があるのか? 棄てられ、レズビアンの恋人(パリでファッションの大御所になってるようだけど)とともに母親が生きていた方がよかった、ということなのか。なんかな、よく理解できんな。 ・母親が、もしかしてレズ? というのは、アントワンの娘がレズ、ではっきりするけど。それ以前に、なんとなく感じていたよ。 ・アントワンの義母、つまり、父親の後添いは、知っていたのか? ・それと、えーと、使用人夫婦は、事件に加担したことで(といっても手紙を配達しただけだけど)心を痛めていたようだけど、それほどのことか? というか、大人はみーーーんな知っていて、知らされなかったのはアントワンとアガットだけ、ってことなのか? ・父親の、過去を暴くな、なにも知らせんぞ、な態度に怒ってるアントワンが、子ども、とくに娘の「?」には強圧的になって応えない態度は、映画の中でも語られていたけど、親のエゴだな。 ・アントワンが調べに行って、検死情報見たいのをもらいにいったのは、あれは、事故って入院したときの病院? 病院は出し渋っていたけど、息子のIDでは情報は提供できないということなのか? でも、粘って手に入れてたけど。 ・クリスマスに、子どもが、「マックがいい!」という、そう決まると「マックサイコー!」なんていうのか? フランスじゃ。 ・妹アガット役のメラニー・ロランは、おっきなメガネをかけてるせいか、鼻の穴がいつもより目立ってる感じ。でも、美しいけど…。 ・豚ダイスになんか意味あるのか? |