2018年2月

ブランカとギター弾き2/5ギンレイホール監督/長谷井宏紀脚本/長谷井宏紀
イタリア映画なのか。原題は“Blanka”。allcinemaのあらすじは「マニラの路上で窃盗や物乞いをしながら暮らしている孤児の少女ブランカ。ある日、孤児を養子に迎えたという人気女優のニュースを見ていた中年男の戯れ言を真に受け、“お母さんをお金で買う”というアイデアを思いつく。さっそく“3万ペソで母親を買います”というビラを街中に配り始め、お金の工面に奔走するブランカ。そんな時、盲目のギター弾き、ピーターと出会う。ピーターから歌でお金を稼ぐ方法を教わり、彼のギターに合わせて歌い出す。するとその歌声はたちまち人々を惹きつけるのだったが…」
Twitterでの感想は「ほとんどドラマがなく退屈。孤児が・・・という、日本なら終戦直後のような話で、国の貧しさは分かるけど、ではどうする? がなくて、あんな終わりかたで果たしていいのか、疑問。侏儒の使用人がいい味だしてた。」というもの。
見始めて、どこの国が舞台なのか「?」状態。フィリピン、かな。にしてはらしくないというか、ギター弾きなんてフィリピンにいるか? キューバかな。でも政治体制が違うから、あんな貧乏人はおらんだろ。どっか中南米? 外見とかはそう見えなくもないけど、言葉がな。そう。言葉が現地語で英語ではないので、さらに「?」だったのだ。で、あとで調べたら舞台はやっぱりフィリピン。でも、らしくない感じ。まあ、最初から字幕で「マニラ 2017」とか出しゃあいいんだよ。
で、話は。日本なら戦後間もなく、が舞台みたいな感じで。親のない捨て子のスリかっぱらいで生きていた少女のお話。なかなかのやり手で、同世代の男の子たちから一目置かれている感じなんだけど、あまりにもがめついので集団で逆襲されたりしてる。まあ、よくある展開か。
でも、他の子供たちがピーターの投げ銭壺から金を盗むのに対して、ブランカは同情心を持って接する。なわけで、友好関係ができあがり、ブランカが呼び込みをしたりするんだけど、警察の追い立てに遭ってしまう。この追い立てがどの程度の強制力を持つのかよく分からないのが、なんだかな、な感じ。
で、警官に「どこそこでやれ」と言われた通りの場所へ2人は移動するんだけど、ブランカの歌を聞いた男が「うちで唄ってくれと」申し出てきて、野宿生活からサヨウナラ。ドレスも買って、店の人気者になる。2人は店の使用人が使っていたへやをあてがわれるんだけど、その使用人は部屋を取られた、と恨むわな。しかも彼は小人なのだ。店主にいいように使われていたけど、部屋すら奪われてしまう。ブランカもピーターも、彼には同情のひとかけらも見せないのは、下層の人間なら当たり前の行為なのかい?
なわけで、小人使用人は一計を案じて売上を盗み出し、それをブランカの部屋に隠した、のかな? それともあの金は、もともとブランカが稼いだ金なのか、よく分からんけど、店主は「子供のくせにこんな大金持ってるのは変だ。せっかく仕事をやったのに盗みか。裏切りやがって」と2人を追い出すんだけど、まあ、小人もブランカもピーターも、みんなお気の毒、な感じ。
追い出された2人。ピーターは街の広場でギター弾きを始めるんだけど、なぜかブランカは別行動、というのがよく分からない。で、年かさの少年とその弟分と知り合いになって、かっぱらいを始めるんだけど、どーも自分に合わない、と感じているらしい。そうかあ? 前の町でも「腹が減ってる。金をくれ」と人を騙したり、財布を盗んだり平気でしてたろうに、と思ってしまう。
ブランカは一方で、「母親、買います」な貼り紙で母親募集していることも、なぜか町の人々に知られている、のだが。それをエサに、知らないオバサンが接近。「いいようにしてやるよ」といわれ、水商売に売られかけるのだけれど、なんとか逃亡。年かさ少年がブランカを狙ったのも、あのオバサン経由だっけか? 忘れたけど。まあ、弟分がブランカに好意的で、なんとか危機は逃れたけどね。でも、オバサンも、ブランカにこだわらず、そこらにいくらでもいる別の娘にすればいいのに、と思ってしまう。ブランカじゃいけない理由は、ないだろ? そんなに美人じゃないし、ブランカ。
というわけで、ほったらかしにしていたピーターの元に戻るんだけど、ここにまたブランカを孤児院に入れようという親切なババアが登場し、ピーターも「それがいい」と修道院に入るんだけど、なぜか逃げ出してしまう。ドレスが着られないから? 自由がないから? よく分からない。逃亡し、ピーターの元にもどってくるところで映画は終わるんだけど、はたしてあれでブランカは仕合わせなのか? ああいう終わり方は、昔からよくあるけど、現実を無視した、理想の夢物語的な感じがしてしまうけどな。
というわけで、どこにも感情移入できないし、感動もない。むしろ、酒場で働く小人の使用人の人間くささがとても印象的だった。彼を主人公にして、同じ物語をつくった方が、意味があるような気がしないでもないがな。
ボブという名の猫 幸せのハイタッチ2/5ギンレイホール監督/ロジャー・スポティスウッド脚本/ティム・ジョン、マリア・ネイション
イギリス映画。原題は“A Street Cat Named Bob”。allcinemaのあらすじは「イギリス、ロンドン。プロのミュージシャンを目指すも、夢破れてホームレスとなった青年ジェームズ。薬物依存からも抜け出せず、父親にも見放されて、その日の食事にも事欠くどん底の日々を送っていた。そんなある日、茶トラの野良猫と出会ったジェームズ。ケガをしていたその猫を、なけなしの金をはたいて助けてあげると、すっかり懐いてジェームズから離れようとしない。野良猫はボブと名付けられ、ジェームズの肩に乗ってどこへでもついていくようになる。すると、これまでストリートで演奏しても誰も立ち止まってくれなかったジェームズの周りに人だかりが出来るようになる。そんな一匹の猫とストリート・ミュージシャンのコンビは、たちまち世間の注目を集めるようになるのだったが…」
Twitterでの感想は「甘えん坊で見栄っ張りで自分勝手なヤク中青年の話だった。なにかというと言い訳ばかりで、こういうやつは嫌いなのでどこにも共感できず。ネコのボブも愛想なしで変なやつ。実話らしいけど、どこがハートウォーミングなんだか。」
ポスターと猫話の先入観から、ほのぼののんびり系かと思ったら、全然違った。ヤク中のファザコン青年が、猫の存在に助けられ、なんとか自立するという話だった。
後半で分かるんだけど、ジェームズは14歳頃からラリってて、父親から見放されたらしい。両親は離婚して、母親の方についていったのか? 母親は亡くなってるんだっけか? 忘れた。で、ロンドンでひとり暮らししてるんだけど、金もなくてアパートもない若年ホームレス。路上パフォーマンスで食べている?
離脱プログラムを受けているらしいけど、仲間に誘われつい一発・・・で主治医に言い訳のし放題。なんだこいつ。なのに主治医はやさしくて、「彼には住まいが必要」と行政に掛け合って、なんとか部屋を確保できるという、なんで? な展開で。そのアパートの近所に住んでたのがベティで、なかなかキュートな動物アレルギーのベジタリアン。住んでいるのは元兄の部屋で、どうも兄はヤク中で死んだらしい。だから、ヤク中が嫌い、といってるのに現状をいわずにつき合って、あとで嫌われるジェームズ。ここでもまた言い訳ばっかりで、やれやれ、な感じ。
てなとき、たまたま迷い込んできた猫のボブが居着いてしまい、最初は追い出そうとしていたんだけど、なんとなく共同生活が始まり、路上パフォーマンスにボブを連れていくと受けまくりで大儲け、話題に、な感じ。そりゃそうだろ。観客の輪ができるのは猫のおかげで、歌じゃないよ。なんだけど、依然として音楽に未練があるらしいのは困った感じ。
というようなだらだら話がつづき、ドラマらしい展開はほとんどないのでいささか退屈である。ボブも、とくに芸をするわけでもなく、愛想もよくなくて、何を考えているのかよく分からないし・・・。あと、こんな猫、いるのか? な疑問が続出なんだよな。だいたい大人の猫が迷い込んできて居着く、あるいは、いったん出ていっても戻ってくる、というのは、ホントかよ、だよね。あちこち何軒かに顔を出しているうちの一軒、なら分かるけど・・・。それと、猫は家につくもので、電車で移動したり肩に乗せておいてのんびりするものではない。まあ、上野の花見なんかで、肩にネコを乗せてたり、枝の上に乗せられてるネコを見たことがあるので、ああいう猫もいるのは分かっているけど、あれは珍しいと思う。はたして、ボブはジェームズのどこが気に入ったのか、深く追求したいところではある。
あと、父親に愛されたくてしょうがないような態度を何度も取るのは、なんか、未練たらしい感じでどうもなあ。本人に“捨てられた”イメージあるのかな。でも、経緯が分からんからなんとも言えない。親としても、ヤク中でへらへら来られたら、縁も切りたくなるだろ、きっと。
まあ、ジェームズの場合は、いろいろラッキーだった、ってことだなあ。本人の努力とは別に、運が導いてくれた感じ。「ハートウォーミング・ストーリー」なんて書いてるのもあるけど、ちっとも心温まる感じはしない。猫がいなければ、ずっと裏切りつづけた可能性大。それに、自分に落ち度があるのが分かっていても、謝る前に言い訳しかしないというのがやな感じ。まあ、西欧人はなかなか謝らないからなあ。
しかし、本を書いて1000万部を売り上げたって? おいおい、な感じだな。2〜30億の売上げか? それにしても、ホームレス仲間で、金を貸してくれとすり寄ってきたやつ、ヤクで意識不明で救急車で連れていかれてたけど、果たして元気になったのか? その後を描いてないから心配だね。
ところで、ベティとはいい仲になるのかと思ったら、そんなことはなかったのね。まあ、実話にベティがいたかどうかは疑わしいけど。
・麻薬離脱のときに、メタドンを服用するのか。ふーん。でも、メタドンでも離脱症状で悩むのね。次第に減らしていくとか、そういうことができるのかどうかは、よく分からずだった。
嘘を愛する女2/6109シネマズ木場シアター6監督/中江和仁脚本/中江和仁、近藤希実
allcinemaのあらすじは「食品メーカーでキャリアウーマンとして活躍する川原由加利は、震災のときに運命的に出会った研究医の小出桔平と同棲5年目を迎えていた。ところがある日、突然現われた警察から、桔平がくも膜下出血で倒れたと告げられる。しかも、彼の運転免許証や医師免許証はすべて偽造されたもので、職業はおろか小出桔平という名前すらも嘘だったことが明らかとなる。ショックを受ける由加利だったが、肝心の桔平は意識を失ったまま病院のベッドで眠りつづけていた。彼は何者で、2人が愛し合った日々も嘘だったのか、由加利はその答えを知りたくて私立探偵の海原匠を頼ることに。やがて彼が書き残した未完の小説が見つかり、その内容を手がかりに、彼の秘密を追って瀬戸内海へと向かう由加利だったが…」
Twitterに書いた感想は「話は面白いのだけれど、展開にあまり意外性がないというか、丁寧すぎるつくりでスピード感が削がれている感じ。吉田鋼太郎とDAIGOの、探偵事務所の2人がいい感じ。」
事実が元になっているらしいけれど、その朝日新聞の記事は簡単なもので。5年連れ添った夫が病気で、でも病院に行こうとしない。勤務先の大学に問い合わせたら、該当者はなし。夫を問い詰めたら、「死ぬしかなかった。本当は生きていたかったんだ」と言い残して死んだ、というもの。結局、素性は分からないままだったらしい。枠組みはいただいて、設定や詳細を描き込んだ感じかな。
誰だったのか? と悩みつつ、夫を思う妻の話かと思ったら、違った。妻の有佳里は、同僚の叔父で探偵をしている海原を頼り、調べるよう依頼する。最初の手がかりは、桔平の家の郵便受けを漁る娘で、海原が探ると喫茶店で働いていて。桔平は客だったらしい。いつもパソコンで小説を書いている桔平に憧れ、ストーカーまがいのことをしていた、らしいんだが。最初に出会ったのは出会い系だとか言ってたな。それと、由加利に「セックスレスでしょ」とも。この娘の存在がいまいちアバウトで、もうちょっと素性を描いても良かったと思う。で、桔平はくだんのパソコンをコインロッカーに隠していることを聞き出し、書きかけの大河小説を発見する。舞台は瀬戸内。小説に登場する燈台。そこに隠したオモチャ。これを頼りに由加利がひとり旅立つが、目撃者をみつけたとかで海原を呼び寄せる。あれやこれやで燈台が特定でき、缶に入ったメタルロボットも発見・・・なんだけど、何10年も波がかぶる岸壁の穴にあんなもんが残ってる訳ないだろ。で、瀬戸内の島に子供時代の痕跡。さらに、目撃情報をたどるが、似て非なる別人で、でも、その別人から広島から警察が来て話を聞かれた、という情報を得て。広島と、パソコンのパスワードである年月日をヒントに調べたら、広島で発生した事件の記事が見つかる。ピンポーン!
というわけで、夫捜しはこう書くと単純なんだけど、演出がムダに丁寧というか、くどい。なので、追求していくスリルやサスペンスがなくて、しかも探偵の海原と由加利は喧嘩ばかりの凸凹コンビで、でも笑えるほどではないのでいささか退屈。このあたり、緊張感とスピード感をもたせた脚本にしたら、見え方も違ったんじゃないのかな。
とはいえ、家庭不和が原因で離婚し、でも、娘との関係をなんとかしたい海原(吉田鋼太郎)と、オタク臭満載の探偵助手木村(DAIGO)の存在感はなかなかで、桔平と由加利の2人に遜色ない、というか、上回る存在感で見せる。
で、分かったのは、桔平は島の出身で、広島で医者をしていて、妻と幼い娘がいたけれど、妻が育児ノイローゼで娘を殺してしまった感じ。自身は、鬱というより精神錯乱で、帰宅した桔平を振り切って路上に走り出て、トラックにはねられた、ということらしい。新聞記事は無理心中、としていたけど。でまあ、桔平は医者なのに、妻の精神状態の異常さを感じていなかったのか? 感じていたなら専門医にみせろよ。あるいは、妻の実家に相談するとか、対処法はあったろうに、というのが気になるところ。
なわけで、家も故郷も捨てて横浜か東京に逃げてきて、由加利と知り合い同棲して5年。由加利は母親に会わせようとしていたのだけれど、そういうことから逃げていた桔平。が、なんで出会い系だったのか、そのあたりの事情は、どうなっていたのか、知りたいところ。セックスレスだったという、最近の様子もね。
なぜなら、由加利は結婚したいと思っていたようで、さらにまた、最後に解き明かされる小説の内容から、桔平は子供を欲しがっていた、というようなことも分かっている。ならば、なぜに出会い系? とは思うよなあ。まあ、由加利も、一度浮気をしたことがある、などと告白していたけど、桔平にもそういう心の離反があったということなのか。知らんけど。
てなわけで、母親と会う約束をした当日、桔平はレストランに現れず、警察がやってきて身元不明であることが由加利に告げられ。ショックの余り、うろたえる、どころか夫の身元捜しに夢中になり、会社の仕事も棒に振り・・・という由加利の気持ちは理解できない。
それにしても、海原との凸凹コンビでも明らかなんだけど、由加利の自分勝手な考えと行動は、やな女、という感じで。こういう女と、よくもまあ5年ももったね、と思ったよ。探偵の海原も、同じことを由加利に言ってたけどね。
くも膜下出血で倒れ、意識がない状態の桔平。その大河小説に登場するのは、亡くなった娘ではなく、由加利との間に授かりたいと思っていた、のではないかという息子で。つまりは、桔平は、由加利との未来を考えていた、という結論。さらに、桔平の指が動いて、意識が戻った、という示唆的な終わり方なんだけど。はたして、それは仕合わせなラストなのか、疑わしい。
だって、担当医は、意識が戻っても脳に障害が・・・というようなことを言っていたわけで。半身不随どころか、寝たきりの可能性も高いわけで。そんな桔平を、はたして由加利は支えていけるのか。おおいに疑問なのであった。
・探偵助手の木村が、ストーカー娘に「あんた、わざとっしょ」と言うのは、何のことだ? よく分からん。
犬猿2/13テアトル新宿監督/吉田恵輔脚本/吉田恵輔
allcinemaのあらすじは「地方都市に暮らす印刷会社の営業マン金山和成は、父親が連帯保証人になって作ってしまった借金をコツコツ返しながら、慎ましい生活を送る真面目な青年。ある日、強盗の罪で服役していた兄の卓司が出所し、和成のアパートに転がり込んでくる。和成とは対照的に、金遣いが荒く、凶暴な卓司にさっそく振り回される和成。一方、和成の仕事先の一つである小さな印刷所にも、同じように対照的な姉妹がいた。親から引き継いだ会社を切り盛りする、仕事はデキるが見た目に難ありの姉・幾野由利亜と、その下で印刷所を手伝う妹・真子。由利亜は、要領が悪く仕事も出来ないのに見た目の良さで周囲からチヤホヤされる真子に苛立ちを募らせる一方、グラビアなど芸能活動もする真子は、ぶくぶく太る姉を小バカにしていた。そんな中、由利亜が秘かに思いを寄せていた和成が、よりによって真子とくっついてしまうのだったが…」
Twitterで書いた感想は「新井浩文を筆頭に、登場人物が存在からして記号的。共感するところはないけど、話は面白い。で分かりやすいし。全体が淡々とし過ぎな感じはあるけど、そこがいい、っていう人もいるだろうな。まあ、人間はそう簡単に変わらんよ。」
暴力的で犯罪者の兄と、その兄を煙たがってつねに陥れようとしている弟。デブでブスで高慢だけど仕事ができる姉と、顔は可愛いけど頭が悪く芸能界志望の妹。という犬猿の仲の兄弟と姉妹が絡み合いながら、話が進む。大きなダイナミズムはなくて、どちらかというとエピソードの積み重ねかな。それなりに小ネタは面白いけど(聞き流すだけの英会話を1年近くやって話せない妹と、大学までの教育でとりあえず電話で外人と話せる姉、とか)、いまいち弾けないのはなぜなんだろう。こんな対立軸を持ち出して、これじゃ喧嘩だろ、というところでパッと画面が切り替わると時間が経過しているとか、あえてなのか、ドラマを外している感じさえする。なので、全体には淡々としていて、話も盛り上がらない。中途半端なテンションで最後まで行く感じかな。

兄の新井浩文=粗暴・犯罪者、弟の窪田正孝=気弱・真面目、姉の江上敬子=デブ・健気、筧美和子=可愛い・アホ・・・というように、役者と配役が本当に記号的で、書き割りのような感じ。展開やオチも見えて安心して見ていられる反面、逸脱がないから物足りない感じもしなくはない。
な、なかで、江上敬子のセリフ廻しがいまいちで、あえてこういうヘタな人を選んだんだとは思うけれど、彼女が登場するとダイナミズムが壊れる感じ。渡辺えりみたいな手練れなデブは、いま、いないのかな。
しかし、話が、さてどうなるのかな、という感じで次のシーンになると、一気に話が進んでるというか、飛んでいる、というシナリオは、いまひとつこちらの読みを外しているから、拍子抜けな感じ。たとえば、兄が出所して、弟のところに寄生していて。そのうち、妙なダイエット薬の商売を始める、といっていて。弟は、そんなのインチキだからやめろよ、といっていて、さてどうなるのかと思いきや、いきなり兄は外車に乗っていて。父親の借金も返してしまっている。えええええっ。そんな簡単に、あんな兄のビジネスを成功させていいのかよ! な感じで、共感なんてできないよ。まあ、最後には、その薬は脱法ドラックと分かって警察に追われるんだけど、本人は「知らなかった」といいはる。嘘だあ。って思うよなあ。でも、実際、知らなかった、というようなオチなんだよな。どうも嘘くさいし、このエピソードも書き割り的だ。
姉の恋物語は、ありきたり。仕事をくれる印刷会社の営業マンにご執心なんだけど、ちゃらい妹にとられてしまう、という、これまた話がステレオタイプ。しかし、フツー、あそこまでしつこく弟君にアタックしないだろ、と思うと、一気に萎えてしまう。まあ、そういう書き割り的で記号的な話なんだよな、と思って見ないといかん感じ。
ぱっぱらな妹も、いい歳をしてタレント事務所に所属して、でも、日頃は実家の下請け印刷屋に働いている、という設定。なんだけど、仕事を発注してくる大手あるいは中規模の印刷屋と、実際に仕事をする橋の下の下請け印刷屋、という関係は、フツーの人に分かるのかなあ。
ちょっと違和感のあるシーンがあったんだが。それは、弟の会社の後輩が、弟のクルマのなかなかエンジンのかからない様子を見て、「人を殺しそうな目、してましたよ」という場面なんだけど。まあ、血は争えない、ということを言おうとしたのかも知れない。でも、じゃあ、弟はそのうち目つきが変わって何かす狂的なことをするのかな? もしかして、兄貴をやっちゃうとか・・・。でも、結局、弟は最後まで和成は暴力は振るわなかった。こういう肩すかし、たくさんあった。
かなり違和感ありなのは、姉が手首を切って自殺未遂、のくだりかな。唐突すぎるだろ。なんで? な感じ。いくら姉妹喧嘩の果てといっても、姉はそんなに繊細には見えなかったしなあ。
てなわけで、弟と別れて事務員になります的な妹と、ほら見なさい的な姉がそのまま行くのかと思ったら口げんかが始まる。いっぽうで、結局収監された兄を弟が面会に行くんだが、最初は殊勝な話しっぷりだった兄がいつのまにか切れだしてこちらも兄弟げんかに。だからまあ、何があっても、関係は変わらない。犬猿の仲、なんだよね、と言いたいんだろうけど、意外性もあんまり無いので、大笑いとまではいかず。小ネタでたまに、くすくすレベルだった。
・兄が刺されたのは、最初の方で、出所後初めて入ったキャバのいかつい店員か? あいつが仲間2人を引き連れてやってきた? 流れとしては、唐突だよなあ。
ベイビー・ドライバー2/14ギンレイホール監督/エドガー・ライト脚本/エドガー・ライト
原題は“Baby Driver”。allcinemaのあらすじは「天才的なドライビング・テクニックを買われ、ギャングのボス、ドクの下で“逃がし屋”として働く青年ベイビー。幼い頃の事故で両親を亡くし、自身もその後遺症で耳鳴りに悩まされている。そのためiPodが手放せず、常にお気に入りのプレイリストを聴き続けていた。すぐにキレる狂暴なバッツはじめコワモテの連中を乗せても顔色一つ変えず、クールにハンドルを握るベイビーは、音楽を聴くことで集中力が研ぎ澄まされ、誰にも止められないクレイジーなドライバーへと変貌するのだった。そんなベイビーが、ウェイトレスのデボラと出会い、恋に落ちる。そして彼女のために、この世界から足を洗おうと決意するベイビーだったが…」
Twitterでの感想は「周囲の人間を不幸にする、マザコン青年の話だった。音楽と画面のスタイリッシュな感じは最初の方だけで、あとはずるずる・・・。まあ、仲間もバカばっかりだから、ああなるのも見えてるしなあ。」
iPodの音楽を聞きながら、スマートに運転して仕事をこなすベイビー。街を歩いてもオシャレで、まるでミュージカルみたい、というのは最初の部分だけで。どんどん暗く、ダサくなっていく。オープニングの銀行泥棒はスマートにこなしたけれど、次の、イカレ黒人のジェイミー・フォックス、ヘンテコなカップルと組んでの仕事で、この3人が平気で殺しをするのに動揺してミスを繰り返す。まあ、なんとかリカバリーして、分け前ももらって仕事の上では「よくやった」な感じに受け取られてるんだけど、そうかあ? な感じ。フツーなら、「殺しに弱い」「気が弱い」というレッテルを貼られて、ボスのケヴィン・スペイシーに睨まれるのが当然の流れだろ、と思うんだけど、そうはならない。これ以降、どんどんドツボにはまっていって、ケヴィン・スペイシーへの借りを返した後で、再度、仕事を要請されると「もうしない」といっていたのに、やってしまう。ダメなメンツ、嫌々ながらの仕事、って、これは失敗しますよ、っていう常套的な流れじゃないか。なので、意外性も何もなくてつまらなくなっていく。
もし、この映画を成長ドラマにするなら、ベイビーは過去のトラウマから抜け出して大人にならなければならないはず。でも、トラウマといっても、かつて同乗していた両親が車内で喧嘩し、運転を誤って両親が死んだ、という記憶にとらわれているだけのもの。たとえば、その事故が自分のせいだったとか、そういう重石があるわけではない。だから、この映画でベイビーは、なにも克服していない。せいぜい、夫婦は仲よくしなくちゃな、程度。
なんだけど、ベイビーは自らのミス、あるいは、気後れのせいで、仲間を何人も殺すことになる。最後の銀行強盗で、裏口に待機していたら、たまたま下見に行ったときに話した窓口の女性とぱったり、で。そこにへんてこカップルとジェイミー・フォックスが逃げてきて、窓口女性をかばおうとして発車が遅れ、怒るジェイミー・フォックスを、自らの意志で殺してしまう、んだよな。前にいたクルマに意図的にぶつけ、積んでいたパイプがジェイミー・フォックスにグサリ、なんだから。
当然警察に追われ、へんてこカップルはマシンガンで応戦し、彼女が死んで。男の方は逃げたけど、あれこれあって、デボラの店で出くわし、たしか殺意を持ってベイビーが撃つんだったよな。それでは死なずに追ってきたけど。で、ケヴィン・スペイシーは、男に跳ねられる、んだっけか? で、その男も最後はビルの上から転落死。ベイビーは刑務所に入ったけど、数年後にでてきて、デボラといい仲に、というエンディングは、ちっとも愉快じゃないだろ。なんでまたウェイトレスと恋仲になるんだよ、な感じだよなあ。まあ、お似合い、ということなのか? いまいち、うーむ、な感じだな。
どうみても、ベイビーは疫病神にしか見えなかったけどなあ。
・ベイビーはケヴィン・スペイシーのブツをどうかしたとかいっていたけど、そのの借りというのが、よく分からなかった。ぼーっとしてたこっちが悪いのかな。
・育ての親がいたけど、ということは、父親も亡くなったんだっけか。母親のイメージはたくさんでるけど、父親は登場しない。これはなぜ? たんなるマザコン?
・3度目の仕事が明日、というとき、一同で武器商人との交渉みたいのに行って。ジェイミー・フォックスは、「おまえら警官だろ」でぶっ放して、銃だけ奪っておさらばなんだけど。あんな危険なことをするジェイミー・フォックスは、アホだろ。というか、ああいう具合に仕事の前に武器を調達、はいつものことなのか? はたまた、相手は警官だ、とケヴィン・スペイシーが話しておけば済むことなのに。なんだかな。話づくりのためにムリやりつくってる感じがしないでもないエピソードだ。 ・ソニー映画、なのに、iPodだらけなのも、うーむ。まあ、いまさらウォークマンでもないけど。いやそのまえに。いまどき旧タイプのiPodか? という疑問。
ウイスキーと2人の花嫁2/19ヒューマントラストシネマ有楽町シアター1監督/ギリーズ・マッキノン脚本/ピーター・マクドゥガル
イギリス映画。原題は“Whisky Galore”。Galoreは、たくさん、の意味。allcinemaのあらすじは「第二次世界大戦中のスコットランドの小さな島、トディー島。戦局が悪化する中、ついに島民が愛してやまないウイスキーの配給が止まってしまう。人々はすっかり元気をなくし、島の郵便局長ジョセフの2人の娘も、恋人との結婚を“ウイスキーなしでは式を挙げられない”と周囲に猛反対されてしまう。そんな中、島の近くで貨物船の座礁事故が発生する。積荷はなんと、ニューヨークに行くはずだった5万ケースものウイスキー。そこで島民は、沈没寸前の船から乗組員と一緒にウイスキーも救出する。するとそこへ、禁制品のウイスキーを回収すべく関税消費税庁が島に乗り込んでくるのだったが…」
Twitterでの感想は「映画にするような話か? もっと盛ってくれ、な感じだった。タイトルは『泥棒島のバカ大尉』ぐらいがちょうどいいかもね。」
『サンタ・ビットリアの秘密』みたいな活劇要素もあるのかなと思ったらさにあらず。単なる村人のドタバタだった。『天使の分け前』のようにつくる側の蘊蓄があるわけでもなく、『ウェイクアップ!ネッド』みたいな、次どうなるの感があるわけでもない。終わってみれば、要は、村人がひとつになって泥棒を働く話だった。しかも、相手はドイツ軍ではなく、母国イギリスと同盟国アメリカ、になるのかな? 要は、ちょろまかしだ。やったね! 感もないし、村人はひたすら飲むだけだから、単なる酔っぱらい。まあ、ジョセフの娘二人の結婚話も絡むけど、女性が鍵を握るわけではない。むしろ「2人の花婿」の方が活躍するぞ。で、最大の敵は島に住む民間人の大尉って、なんだそれ? な話なんだが・・・。
調べたら、リメイク作品なんだな。
大筋は↑のあらすじ通りなんだけど、島内でジャマをするのが謹厳実直なワゲット大尉。部下に、島の教師もしているオッド軍曹。そして、海外から帰ってきて派遣された伍長だっけかな。軍曹はジョセフの長女と恋仲で、伍長は次女と恋仲。あと、亭主の留守(出征かな)にその女房に双子を産ませた男。そして、船に積まれていた赤い箱を狙う謎の男。とか、パーツは面白いんだけど、てんでんバラバラな感じで、有機的に話が盛り上がっていかない。
というか、なぜワゲット大尉をみな畏怖するのか、がよく分からない。というのも、おいおい分かるんだけど、民間人の大尉らしい。民兵か。島にいる兵隊もみんな民兵? 軍曹も? でも、やってきたのか戻ってきたのか、な伍長はれっきとした軍隊に所属してるんだろ? ワゲット大尉も、本島にいるらしい大尉と連絡をとったりと、軍隊とも密な様子。この、民兵の立場と権威をどうとるか、で、話は変わってしまうと思うのだよね。
まあ、このワゲット大尉が単なるトンマに描かれていて。部下2人も島民とぐるになって難破船からウィスキーを持ち出し、酒場で大騒ぎ。なのに、大尉は妻とベッドの中で、「なんか騒がしくないか?」なんていってる。みんなで大尉をどっかに監禁すりゃいいじゃないか、なんてね、思ってしまう。
さらに、関税消費税庁のなんとかいう男が船でやってくるんだけど、これをまた島民一同でまくわけだけど、これも、バカか、というようなコメディで。もうちょい、なるほど感は欲しいよなあ。だいたい、あんなことして見つからないわけがないじゃないか、と。まあ、映画だから仕方ないけど。
で、その後にどうなったのか、よく分からない。沈没船からウィスキーは引き上げられたのか? 島民が奪ったウィスキーは見つかったのか、見つからなかったのか、不問に付すになったのか、とか、よく分からないままに、結婚式の場面になってしまう。なんていい加減。
まあ、この結婚式の話と、皇籍離脱した殿下の恋文(赤い箱に入っていた)の話はつけ足しで、ほとんどウィスキーの件とは関係ないのだった。ところで、恋文を追ってやってきたのは、あれは誰だったの? だれが派遣したんだっけ? というか、赤い箱が心配なら、バイクで島をウロウロしてないで、とっととボートで取りに行け、な話だよなあ。
・ところで、そもそもウィスキー不足というのは、どういうことなんだ? 本島がドイツに空爆されて、それで供給できなくなっていた? よく分からんなあ。
・娘二人の結婚式は、あれは戦後なのか? そういえば、何かの日に結婚式を! とか言ってたっけなあ。さっき見たばっかりなのに、もう忘れてる。
・大尉の部屋の壁に、浮世絵らしいのがかかっていたように見えたんだけど、どうなのかな。
ジュピターズ・ムーン2/20ヒューマントラストシネマ渋谷シアター3監督/コルネル・ムンドルッツォ脚本/カタ・ヴェーベル
ハンガリー/ドイツ映画。原題は“Jupiter holdja”。“Jupiter's Moon”は英文タイトル。allcinemaのあらすじは「医療ミスによる訴訟問題を抱え、病院を追われた医師シュテルン。難民キャンプで働いていた彼のもとにある日、国境警備隊のラズロによる違法な銃撃で重傷を負った難民の青年アリアンが運び込まれる。ほどなくシュテルンはアリアンが重力を操り浮遊する不思議な能力を持ち、傷さえも自力で治癒してしまうことを知る。訴訟のために金を必要としていたシュテルンはそんなアリアンを利用しようと思いつく。一方、違法銃撃を揉み消したいラズロは、口封じのためにアリアンの行方を追っていた…」
Twitterでの感想は「難民話? ん、超能力? あれれ宗教か・・・。読み解くヒントは埋め込まれてるのか知らんが教養がないので分からなかった。『ベルリン・天使の詩』を連想したけど、ストーリー忘れてるので似てるかどうか分からない。」
物語はおおむね↑のあらすじ通りなんだけど。設定や人物の必然性がいまいち説得力がない感じ。超能力をもつアリアンがシリアからの難民でジプシーである理由は? なぜ超能力者が突然誕生し、しかも、結構アバウトな医者と関わりを持つようになる意味は? それがよく分からないので、ストンと腑に落ちない感じ。
とはいえ宗教臭はぷんぷんしていて。難民、エクソダス、ユダヤ(ジプシー)、蘇生、奇跡(浮遊)、治療などなど。やはりアリアンは天使、もしかしてキリストの再来ということなのか? 私欲にまみれたシュテルンはアリアンを利用して稼ぎを始めるけれど、最後にはアリアンを無事に国外に連れだそうと一命を差し出す。まるで使徒のように。読み解く鍵がもしかしたらあちこちに埋め込まれているのかも知れないけれど、キリスト教についてはよく知らんので、確証はないんだけどね。
もし宗教の話だったとしても、それ以上の何かがあるのか? そこまでは分からない。
というわけで、その宗教臭を抜いてしまうと、たんに超能力者を狙う者たちのあたふた劇になってしまって、つまらなくなってくる。狙う理由もしょぼくて。シュテルンは、医療ミスによる訴訟を相手に取り下げてもらうための賄賂づくりなんだよね。難民を逃がしてやるのも、裏金のためで、正義からではない。しかも、医療ミスについても、病院を追われたことで「もう、償っている」と考えているようで、死亡した女性の両親にも、はっきりそういっている。このあたり、日本なら非難囂々だろうし、彼の地でも自分勝手な奴、と思われるだろうな、と。
相当の額を持っていったけれど、相手は訴訟を取り下げてくれない。ということは、もう金は必要ないということで、シュテルンにとってアリアンは必要なくなているはずなんだけど、なぜかアリアンを気遣うようになり、彼の父親がどうなっているかを調べてやったり、死んでいることを確認してつたえてやったりする。で、最後は、国外に出られるよう面倒みると決心したようだけれど、それはシュテルンがアリアンに神を見たからなのか? というところで、やっぱり宗教が・・・。
それと、警備隊のラズロが執拗にアリアンを探す理由が、実はよく分からなかった。そもそも逃げるアリアンを撃ったのはラズロで、病院では「俺が撃たなくても誰かが撃った」とうそぶいていた。それが、シュテルンが残したスマホの映像=アリアンの浮遊シーンを見て、あたふたしだす。おいおい、だよな。そもそもシュテルンがスマホを置き忘れること自体が変だろ。さらに、スマホの浮遊映像見ただけで、自分が撃った相手だ、と分かるのか? その前に、カルテ見てたっけか? まあいい。↑のあらすじでは、口封じのために、となっているけど、そんなこと心配するような男じゃないと思うぞ。それに、ラズロの上司も、はやくなんとかしろ、と急かしていた感じ。あれは、どういう狙いがあったのか。説明されていたような気もするけど、なるほど、というような感じではなかったように思う。もうちょっと、ラズロがアリアンを追う理由をはっきりさせて欲しかった感じ。
シュテルンの恋人の医師も、存在が曖昧。そのうち一緒に住もう、と彼女は思っているらしいんだけど、後半ではなぜかシュテルンの居所をラズロにつたえたりして、なんでなの? な感じ。その理由は説明されていたっけ?
アリアンは、父親が再会場所として指定した東駅へ行きたいのに、シュテルンは稼ぎが先となかなか自由にさせてくれない。ので、ひとりでバスと地下鉄を乗り継いで東駅へ向かう。気づいたシュテルンは同じバスに乗って・・・。駅で、アリアンは自爆犯と交錯するんだけど、あの自爆犯は、冒頭でトラックか船にいた人だっけ? それとも、初めて会うのに超能力で見破った? よく分からない。で、その自爆犯の乗った地下鉄に乗り込むんだけど、シュテルンはホームにおいてきぼり。の直後、爆発で、アリアンはなんとか助かって、浮遊して近くのビルの屋上へ・・・。シュテルンは、犠牲者に祈りを捧げる女性が「天使を見た」とつぶやくのを聞いて屋上を捜し、アリアンを発見。ブタペストホテルに宿泊するんだけど、なぜにそんな高級ホテルに? というか、このあたりではもうシュテルンはアリアンの使徒的存在になっているのかな。最後は追ってきたラズロや部下と撃ち合いになり、シュテルンはラズロに撃たれながらもアリアンを逃がす。といっても、ホテルの高層階のガラスを破って宙に向かうだけだけど。
こういうシーンを見ると、なにも命を賭けて逃がさなくても、本人飛べるんだから、勝手にさせればいいのに、と思っちゃうんだよなあ。
でも、宙に浮くアリアンの周囲に、3機のヘリが・・・。というのは、どういう意味なのだ? さらにまた、それを見上げる人々の片隅で、目隠しして数を数える少年がいて。40を数えて目隠しをやめ、走り出す。そこで、映画は終わるんだけど、これは何を意味しているのだ? これまた、聖書かなんかに、そういうことがあったりするのか? 知らんけど。
・ずっとセルビアが舞台かと思ってた。「川を渡ればヨーロッパ」とか、セルビアという言葉がでてきて、アリアンはシリア人。なので、シリアからセルビアに入国し、その難民なのかと・・・。そしたら後半で、ブタペストホテル、と。ああ、ブタペストか。では、セルビアはヨーロッパじゃないのか? そして、この映画のごこがセルビアで、どっからハンガリー? というか、各国の難民政策の違いとか、分かってないと、アウトラインはつかみづらい。
・シュテルンはアリアンを連れて往診に行くんだけと、最初は温泉に入ったジジイで、最近手術したとか言っていた。その後、ラズロが病院の事務の巨乳から往診先を入手し、温泉(あれ、自宅の風呂か?)に行ったら、患者は「来なくなった」と言われ、次にアパートに行ったら飛び降り自殺・・・。ってことは、自殺したのは温泉オヤジ? としたら、なぜそうなったのか? アリアンの治療の影響なのか? 生きることよりも、召されることの方が仕合わせ、と悟ったとか、そういうこと? よく分からない。
・2人目の、ジプシーを汚いといったガウンの男は何者なのだ? 偉そうだったけど、アリアンは部屋をぐるぐる回してガウン男をやっつけるんだけど、あれもまた治療で金がもらえたのか? うむーむ。
・もう1人は、安楽死を望む老婆で、この願いを聞き入れてあげる、のは理解できる。でも、それ以前のジジイ2人の願いは、何だったんだ?
・しかし、ラズロに追われているのに、平気で街をうろつき、身分証明書をかざし、パトカーのいる近くを歩く。シュテルンはバカか。
・題名の『ジュピターズ・ムーン』だが。木星の月には月があり、塩分のある海があることから生物の可能性が云々・・・と冒頭で言字幕がでていた。その話は、どういう関係あるのだ?
スリー・ビルボード2/21シネ・リーブル池袋シアター1監督/マーティン・マクドナー脚本/マーティン・マクドナー
原題は“Three Billboards Outside Ebbing, Missouri”。allcinemaのあらすじは「アメリカ、ミズーリ州の田舎町エビング。ある日、道路脇に立つ3枚の立て看板に、地元警察への辛辣な抗議メッセージが出現する。それは、娘を殺されたミルドレッド・ヘイズが、7ヵ月たっても一向に進展しない捜査に業を煮やして掲げたものだった。名指しされた署長のウィロビーは困惑しながらも冷静に理解を得ようとする一方、部下のディクソン巡査はミルドレッドへの怒りを露わにする。さらに署長を敬愛する町の人々も広告に憤慨し、掲載を取り止めるようミルドレッドに忠告するのだったが…」
Twitterへの感想は「この映画、コメディにも分類されてるのね。仰々しいつくりの割りに中味はあんまり濃くなくて。差別丸出しのアメリカの田舎町は怖いよ的な後味しかしない。だって頭のおかしなやつばかりしかでてこないんだもん。最後は尻つぼみだし・・・。」
なんとなく重厚に始まる。娘を殺害した犯人を挙げない警察に愛想が尽きて、自宅近くに抗議の屋外広告3連チャン。署長は、「やることはやっている。DNAが合う奴がいない」に対して「すべての男のDNAを採取しろ」と強気のヘイズ。署長は末期の膵臓癌で、しかも、住人からは尊敬されている。警察だけでなく、住人すべてを敵に回しての抗議活動がつづく。というのが本筋で、気持ちは分かるが正直いってヘイズの主張は無理筋。気の毒なのは高校に通う息子だよな。あきれ果てているけれど、好きなようにさせている。あれ、校内の様子が描かれてないけど、フツーだったら針のむしろだろ。登校拒否してもおかしくない。
で、犯人捜しの興味は、後半に持ち越し。署長だったか、新任の黒人署長だったかが、「もしかしたら将来、犯人がどっかのバーで事件の自慢話をして、それがきっかけでみつかることもある」なんて話していて、そういう展開になるので期待したら全然別人、ということになって、話はそのまま終わってしまう。というわけで謎解きの要素はまるでなし。
中盤で、ヘイズの店にやってくる若い男がいて、ヘイズを脅す。なんとなく、バーで事件自慢してた男と似てるんだけど、同一人物? はさておき、その脅し男、は何だったのか? 町の住人でもなさそうだったし。どっから話を仕入れて、何の目的でヘイズを脅したのか。結局分からず。なんだ。意味ないのか。
サブストーリーは、ヘイズの別れた亭主と、その19歳の彼女。といっても、ときどき登場するだけで、本筋とはほとんど関係なし。なぜ別れたのか、も明かされてないし。19歳娘が動物園だか乗馬クラブで働いている、という話も意味なし。というか、ヘイズが犯人捜しに血眼過ぎるのに対して、被害者の父親である元亭主は、ほとんどなにも感じていない様子らしいのが違和感。元女房に同情して「気持ちは分かるけど、広告はやり過ぎだ」とかなだめるわけでもなく、むしろ「なんだあれは」的なのが、変だよなあ。
むしろこの映画で目立つのは、アイダホの田舎の警察の、露骨な黒人差別かな。調べたら何部と中西部で、西部劇の舞台でもあるようだ。それにしてもディクソン巡査の粗暴ぶりはひどいもので、誇張しているんだろうけど、なんだかな。
署長はむしろヘイズに同情的で、気を使ってる。差別についても「署から黒人差別主義者を一掃したら、警官は3人しか残らない。その3人はすべて同性愛差別主義者だ」なんていっている。ほんとうに中西部の警察は、そうなのか。事件そのものもそうだし、ヘイズを脅しに来る男、そして警察・・・。こういう存在が、一番怖い感じ。もちろん、ヘイズに冷たい視線を送る住人もなんだけど、ヘイズもやりすぎなところがあるから、ここはイーブンな感じかな。あの広告で何かが変わるとも思えないし。
ヘイズの味方になるのは、店の従業員の黒人女性。看板を出すのに利用した広告代理店の青年レッド。あと、小人の男。レッドはどうか知らんけど、黒人も小人も、差別される側だな。
前半は、なんとなく重々しい感じで、でも、なかなか話が先に進まない。もやもや。これが、署長の突然の自死。さらに、後任の黒人署長の登場で流れが変わる、と思ったら、そうでもなかった。署長の死は看板のせい、看板をだしたレッドは敵、というわけで警察前の代理店に乗り込んでレッドを殴る蹴る窓から放り出す、のディクソン巡査がクビになった程度で、なんだかな。
その後、住人の誰がやったのか知らないが、看板が燃やされ。仕返しとばかり、ヘイズは警察署に火炎瓶を投擲。たまたま、亡くなった署長からの手紙を受け取りに夜中来ていたディクソンが大やけど、なんだけど。ヘイズは署内に人がいるかどうか何度も電話して確かめた後だったのに、ベルは聞こえなかったのか? イヤホンでもしてたか、ディクソン巡査は。
でその署長のディクソン宛の遺言には、「お前は才能がある。ただし切れるのがよくない。人を愛せ。そうすればいい刑事になれる」と書かれていて。その後の話の展開では人格が変わったのか、ヘイズの娘の事件資料を燃やすまいと持ち出し、犯人捜しに積極的になるんだけど、あんなんで人間、変わらんと思うぞ。
でまあ、火傷から復帰したディクソンが飲んでると隣の席の男が犯罪自慢していて。ディクソンはDNA採取のために喧嘩をふっかけてボロボロになるんだけど、このときは正義の味方に生まれ変わっていて。とりあえず黒人署長には、よくやった的なことを言われていたけど、警官復帰はしてなかったかな。で、いま鑑定中でほぼ確実、とヘイズに明かすんだけど、おまえそんな期待満たせてもしょうがないだろ、と思うんだけど、まあ、正義のヒーローになっちゃってるからなあ。
で結局DNAは合致せず、くだんの男は中東あたりにいたことが分かるんだけど、「あんな自慢話を言うくらいだ。レイプぐらいしてるに違いない」とヘイズを誘い、ヘイズもその気になって、くだんの男のところへ向かう。ディクソンが男の住所まで知ってるのは、警官に復帰していないのだから変だけど、まあいい。で、向かうクルマの中で、「やるか?」と、勇んで来たのはいいけどいまいち逡巡している様子で、ヘイズと、「道道決める」みたいなことをいって、そこで話はブツリと終わっている。妙な間だ。まあ、殺さないんだろうけど。
なんか、怒りのはけ口を探しているだけのような感じかな。ディクソンは田舎の警察で、くすぶってる。黒人が大きな面をしてのさばってるのが気に入らない。警察に刃向かってくるやつも嫌い。ヘイズは、もう、誰でもいいから、犯人らしいやつを退治したい。自分の娘を殺した張本人でなくても、レイプした奴、しそうな奴はみな殺せ、な感じ。こうなるともう、気に入らない奴は殺すぞこら!な自警団の発生というのかな。あいつらやっつけるためなら、とりあえずの仇同士も手を結ぶ的な流れを示唆しているように見える。これは、現在も残る、というか、トランプ政権になって強くなっているアメリカの、黒人や移民への蔑視からくる排外主義への警告のようにも見て取れる。正義を標榜すれば何をしてもいいんだ、みたいなね。
そもそも、この映画はとても変。シリアスな部分が多いけれど、突然、ヘイズが火炎瓶を投げたりするのは、おいおい、な感じ。あるいは、署長と奥さんが、子供を連れてピクニックに行き、子供たちを河辺で遊ばせておく間にどこかでセックスしてるとか。はたまた、小人がヘイズにすり寄ってくるとか。カリカチュアライズされているところがところどころにあって。それで気づいたんだけど、allcinemaでは「ドラマ/サスペンス/コメディ」になってるんだよこの映画。コメディか。へー、な感じ。なぜって、いわゆるブラックな感じもとくにしなかったから。ディクソンの過剰な行動とか、なんだありゃ、とは思っても笑うような感じでもなかったし。シリアスドラマが、ちょっとズレてるかな、な印象だったんだよね。
とはいえ、ブラックな笑いが、とコメントしている向きも結構あって。こちらの感覚がにぶいのかも知れないのだが、まあいいや。
・あの3枚の看板は、もともと1980年の、だっけか? あれ、何の広告?
・ひっくり帰った虫を起こすヘイズ、ヘイズのもとにやってくる鹿、自分を殴ったディクソンが同じ病室にやってきたのに、怒りを抑えてオレンジジュースを差し出すレッド、治療中「住人はみな署長の味方」とつぶやいた歯科医の親指を、歯科ドリルを刺すヘイズ・・・とか、細かなものから長いものまで、示唆するシーンは多い。やさしさの裏側に潜む怒りと暴力、怒りを抑えることの大切さ、とか、いろいろ考えてしまうが。で、それが? とも思ってしまう。
・ヘイズを説得にやってきた神父に、ヘイズはギャングの例をだし、さらに、教会もギャングと同じ、と反論するんだけど、その反論がどーも理解できなかった。なんなんだ、あの理屈は。神父の児童虐待の話をしてるのか?
・署長の奥さんが「吐いた」とかいっていたけど。あれは、どういうことだ? 娘2人を川岸で遊ばせておいて、どっかでセックスしてたのは分かるんだが。奥さんが上になってどーの、と、遺言書にもあったし。もしかして、フェラしすぎて吐いたとか?
・その奥さんが「あなたのナニは凄い」みたいなことをその夜、言うんだっけか。それが小説の中の言葉で、オスカー・ワイルド? 「オスカー・ワイルドか」とかいって、署長は頭を撃って死んでしまう。なんだよこれ。真剣に再調査するつもりはなかったのね、署長。遺書では、妻に面倒をかけたくないから、という理由だったけど、膵臓がんだからって、少し弱すぎやしないか。いまどき、がんで自殺、がどーも納得いかず。
・その奥さん、ずいぶん若いのね。自死の後、ヘイズ宛の遺書をヘイズの店に持ってくるんだけど、結構、でっぷりだったな。こんな彼女も、ヘイズの広告のせいで夫が死んだ、と思っているのが、うーむ、な感じ。
・看板掲載料がない、ということでヘイズはレッドに呼ばれるんだけど。「あなたの支持者らしいメキシコ人が5000ドルもってきた」と代理店の女性社員が金を持ってくるくだりは、小芝居だとは分かったけれど。レッド自分の金を使ってのものだと思っていたのだが、ヘイズ宛の遺書に、自分だ、と書いていて、ふーん、な感じ。署長が広告を応援ね。広言すれば、ヘイズも少し楽になっただろうに。あと、署長の書いた3つの広告コピーがあって、あのコヒーに変わるのかと思ったら、そうはならず。最初の看板の予備の紙を使って、火事の前と同じ物を貼ったのは、ちょっとがっかり。署長のコピーにしたらよかったのに。
・レストランでヘイズが小人と食事するシーンでだっけか? 「来(きた)す」がどーの、というところも、あんまりよく意味が分からず。調べたら、「怒りは怒りを来(きた)す」ものだったらしいけど、元亭主の19歳の相手のペネロープが教えたとかどうとかいってたよなあ。なんなんだ、あれ。
・そのレストランで、元亭主と19歳彼女とバッタリ出くわし、ワインで元亭主を殴るのかと思わせて、何もせず。あれはなんなんだ?
・しかし、小人は気の毒。ヘイズに好意を抱きというか、下心なのかも知れないけれど、火炎瓶のことも黙っててやり、広告貼りも手伝ったのに「あんたとは寝ない」とはっきり言われて。ヘイズもまた差別主義者であった、ということなのかもね。
巫女っちゃけん。2/23新宿武蔵野館3監督/グ・スーヨン(具秀然)脚本/具光然
allcinemaのあらすじは「短大卒業後に就職した会社をすぐに辞めてしまい、今は父が宮司をしている神社で巫女のバイトをしながら就活中の不良娘しわす。神社でボヤ騒ぎや賽銭泥棒など不穏な事件が続いていたある日、境内に隠れていた5歳の少年、健太を捕まえる。しかし一切口を利かない健太をどうすることもできず、神社でしばらく預かることに。世話役を押しつけられた上、健太のあまりの悪ガキぶりにすっかり手を焼くしわすだったが…」
Twitterへの感想は「『書道ガールズ』『あさひなぐ』的青春成長物語かと思ったら、おとぼけ『リンダ リンダ リンダ』風な感じでアップなし画面暗めのヒキばかり。アイドル映画はつくらんぞ的斜に構えたつくりなんだが、でも青臭さはなくて結構いけてる感じ。」
↑という感想通りで。俳句甲子園とか百人一首とか、あの手の、手を変え品を変えした元気はつらつ青春モノかと思っていたんだけど。全編、引きの絵ばかり。広瀬アリスも一番寄ってバストショット。しかも、顔をちゃんと写さない。だから広瀬すずと顔を比べようにも比べられない・・・。アイドル使ってこれかよ、な感じ。『ションベン・ライダー』とまではいかなくても『台風クラブ』ぐらいな感じかな。手持ち長回しはなかったけど。アイドル使ってもアイドル映画にするもんか、な心意気は感じるけど、役者をちゃんと見せてくれよ。とは思った。とくに、同じ巫女仲間の3人。なかの1人は しわす と敵対関係にあるんだから。その他の2人も、やっぱ、フツーに顔が見たいぞ。
とはいえ、見ているうちに、顔はよく判別できなくても、それなりにキャラが立ってくるようになってきて。事務方の男性神職2人は、面白く色づけされている。とくに、カマっぽいしゃべり方をする方ね。他にも、しゃべらない健太、その母親(が、あの巨乳のMEGUMIだったとは気づかず。だって顔がちゃんと見えない・・・)、警官、保護司の女性、 しわす の母親とか、ちゃんと見分けがつくし人柄も見えてくる。このあたりは、しっかりしてる感じ。
話は。ダメ娘がいやいや家業の神社でバイト巫女。前半はやりたくないオーラがゆらゆらと。というだけで、そこそこ持ってしまう。話が転がってくるのは、憎たらしい少年が登場してから。母親に邪魔者扱いされて逃亡し、神社に隠れて盗み食いしてた、というような感じ。そんな健太が賽銭泥棒とか巫女や神職のプリン・サンドイッチを盗むのは分かるけど、ゴミ箱に放火、というのはよく分からんのだけどね。目立ちたい、発見されたい、ということか? さらに、行方不明になって数日経つのに母親が探さない、というのも、そんなのありか? と思うんだが。まあ、映画の都合なんだろうが。
やっと話は転がり始めたけど、ここらへんから少しシリアスになっていく。母親の都合で邪魔者扱いされている健太。このエピソードに、家を捨ててでていった母親の姿がダブっていく しわす。なるほど、な話の構造で、ダメ娘への同情も多少湧いてきたりする、のであるが。母親に捨てられたからといってひねているのも、いささか情けない感じ。父親に「お母さんがでていったのは私のせい?」といっていたりするから、何らかの責任も感じていた、ということか。
さらに、健太の母親に「あんたの母親の顔が見たいわ!」と罵倒されたりしたもんだから、なのか。健太を連れて(なかば誘拐)実母に会いに行くというのが後半のエピソード。なぜ現在の住まいを知っているのか、そこは疑問だけど。で、子供のせいで自分の人生が思い通りにいかないのは嫌だ的なことを言われるんだけど、これまた健太の母親と言ってることが同じで。なんだか、ワガママ勝手な母親が目の敵にされているという、なんか、フェミニストが見たら文句の二つ三つ言ってきそうな内容になっている。いのかな、これで。
健太を殴ったのは しわす ということで警察のやっかいになりかけ、さらに健太の誘拐罪で指名手配されかけ、さらにまた、実母のレストランに健太が火をつけてボヤを出すという、スレスレの状態を突っ走る しわす。まあ、なんとか逮捕されずに事情聴取されただけででてきたようだけど。なんか、このあたりはアバウトに収拾してしまっているのが、ちと物足りないかな。
ラストは、心を入れかえた健太の母と健太が、神社にお詣りに来ていて、しわす が奉納踊りみたいなのを舞っている。そのあと、健太と しわす が、階段の上で話す。なんと、健太は話せた! というようなエンディングだったかな。あんなんで、すべて丸く収まるとも思えんけど。
エンドクレジットの後に、父親にかつがれている しわす の姿。これは、母親が出て行ってしまったときのものか。
というわけで、ツッコミどころは割りとあるけれど、全体としてはクスクス笑いもあったし、健太と しわす という、ともに捨てられた同士の心のふれ合いもなかなかで、渋く見せてくれた。
・黒のゴミ袋が、捨てられた子供の象徴として使われているが、分かりやすすぎ。
・しかし、健太はなぜに暴力的なのか。しわす の手をカッターで切ったり、蹴りを入れたり、はては放火まで。どこで覚えた? 顔の痣。「誰がやったの?」と保護司や警察に聞かれて、指さす相手は殴った相手である母親ではなく、しわす なのはなぜなのだ? 屈折した共感の発露? そして、健太が話をしない理由は? など、疑問はたくさんあるよ。
・しわす のやる気のなさは、なんなんだ? ときどきインサートされる面接の様子はフツーに真面目に見えるんだけど。たんに巫女がいやなだけなのか?
・巫女仲間のライバル女と、チンピラ連中のエピソードは、経緯がまったく分からないので、なんともはやな感じ。唐突すぎるし、なにも感じない。
・父親が時々いう「親は子供を選べない、子供も親を選べない」とかいった話は、よくある感じで、あまりこないけど、まあ、青少年にはつたわりやすい箴言かな。
・健太といえば『傷だらけの天使』のショーケンの息子も健太だったな。あれも半ば捨てられた子供だよなあ。
blank132/26シネ・リーブル池袋シアター1監督/斎藤工脚本/西条みつとし
allcinemaのあらすじは「ギャンブルに溺れて多額の借金を作った末に失踪した父が13年ぶりに見つかる。塗炭の苦しみを味わった母と兄は余命3ヵ月という父を許すことができず、見舞いを拒否し、弟のコウジだけが病院を訪ねる。やがて父はこの世を去り、葬儀には数少ない友人たちが参列して、遺された家族の前で、故人との思い出を語っていくのだったが…」
Twitterでの感想は「いまどき短い70分の映画。暗めの前半から、少しコミカルな後半へ、という展開を予告編で見せられちゃってるからなあ。前知識なしで見たほうが、きっと楽しめたと思う、困った父親の話なんだが、実話ベースらしい。」
というわけで、葬式の場で佐藤二朗が「週、9日マージャン!」とおどける場面が予告にあったので、いつそうなるのかとジワジワ見ておったのだけれど、なかなかそうはならず。フツーならああいう強烈なシーンは本編でも最初の方にあって、展開が変わる意外性に影響を与えないようにしているんだけど、そうなってないのがくやしい。やっぱり映画は先入観なしで見ての面白さが一番。どうせ途中からおちゃらけるんだろ、と見ているのは辛い。しかもなにしろ、前半は父親のダメなところがゾロゾロでてきて、妻や兄弟に面倒をかけ通しなのだから、ずーっと沈鬱な雰囲気が漂っているわけで。精神的によくない。
話は単純で、家族には面倒をかけ通しのダメオヤジだったけど、他人にはいい人だったという真逆な存在だった、というだけのもの。ストーリーらしいモノはなく、ある意味では葬儀場の一場面もの。そこに、弟の回想と、妻の回想が挟まっていく。なぜか兄の回想らしいものは、ほとんどない。これは、兄役の斎藤工が監督もしていることと関係があるのかしら。
他人にとってはいい人だった、といわれてもなあ、な感じで。兄も弟も、斎場では「嫌いだった」というんだけど、その通りだろう。妻に至っては葬儀に出席していない。まあ、喪服を着て近所の公園で少年野球を見ている、ということで、遠くから参加、なのかも知れないが。それにしても400万も借金して。サラ金の取り立てがドアをドンドン叩いている部屋の中で家族が飯を食べるのも、たまらんだろう。家族にそんな思いをさせて、でも、外に行ったら他人の窮乏に見かねて用立ててやったりしているからって、ちっとも凄くはないからね。でも、そういう人だった、というわけで。それがこの映画のすべてだ。そういう人だった、と。なかなか映画的でいい感じ。
・HPでちゃんと予告編を見たら、「失踪して13年」とあって。へー。失踪してたんだ、な感じ。現在の家族の関係が、なんとなくしか描かれてないので、そこが少しモヤモヤ。
・母親は現在も同じアパートにひとり暮らし? 兄は大手代理店勤務。弟は現金輸送車の運転手で、銀行員の妻(なのか?)がいる、と。で思うに、兄はいい給料とってるんだから、母親と一緒に住んでやればいいのに、なんだよな。兄は母親にお金渡してたけど、うーむ、な感じ。弟も、独立してるのかな。弟が住んでやってもいいじゃないか。安アパートは映画の都合か? まあ、好意的に想像すると、兄の「一緒に住もう」に「お前たちの迷惑になるから・・・」と応えるような控え目な母親なのかも。そういえば、母親のアパートに3人そろうのは久しぶり、ともいっていた。なんか、この親子も心がバラバラなのかね。
・「オヤジが癌で余命数ヵ月らしい」と話したのは兄だったか。ではその情報を兄はどうやって入手したのだ? というのが疑問。兄だけ連絡をとっていたのか? むかしの誰かが、兄にだけ伝えたのか。
・参列者は、失踪中の知り合いばかりな感じ。それ以前の友人知人は登場していない。そこも、少し気にかかる。失踪したからには、過去の知り合いとも縁を絶ったということか? でも、遠くに失踪していた、という感じではないよなあ。同じ都内のどっか、みたいな感じで。失踪感は感じられなかったぞ。
・読経後、僧侶が参列者に「みなさん自己紹介を」と促されて佐藤二朗から話し始め、あの調子でおちゃらけて。以後の発言者にもあれこれ絡む展開は、ちとやりすぎかな、な感じもしなくない。過去の暗い思い出から、現在の少し明るい父親像への展開の面白さを狙ってなのかも知れないけど、うーむ。自己紹介する葬儀なんて、聞いたことないし。
・参列者はみな癖のある役者を集めている感じ。それぞれが、父親との関わりを話すところは多少笑いもあったけれど、やっぱり地味に暗いよなあ。
・ところで、なんで失踪したのかね。失踪後、残された家族に借金返済攻撃はなかったのかな。
・妻は、夫の借金を返すべく(?)新聞配達、内職、バー勤めまでしてたようだけど、どこまで役に立ったのかね。というか、よく我慢したね。まあ、離婚するだけの決断力もなかったのか。
・とはいえ、大手代理店に勤めているからには、兄は大学もでたんだろうし。学費は自分で稼いだのかな、兄貴は。
・弟の野球好き。父とのキャッチボールの楽しそうなこと。父がいなくなってからの、なのか、母親とのキャッチボールの物足りなそうな顔。弟の、父と一緒に甲子園に行ったときの感想文とか、まあ、父との対話を表す小道具なんだけど、他にはあまり小道具は登場させてなかったかもね。
・杉作J太郎の名がエンドロールに。気づかなかった。蛭子能収と一緒にでてたマージャン仲間?
・弟の恋人役の松岡茉優って、最近見たよなあ・・・。で、『勝手にふるえてろ』の人か。なーるほど。
・終わって、70分。そんなに短いと思わなかった。まあ、もう一うねりあってもいいかな、とも思うけど。火葬場の蘊蓄で始まって、焼かれるのをまつ兄弟、嫁の3人が座っている様子は、なかなか地味によかった。あんなところの椅子で待ってないけどね、フツー。
・最後に「松本匡人(だったかな?)に捧ぐ」とでていたのは、父親のモデルとなった人なのか。写真もでてたけど。あるHPには「放送作家のはしもとこうじさんの実体験がもとになっている」と書かれていたんだけど。
マンハント2/28109シネマズ木場シアター6監督/ジョン・ウー脚本/ジョン・ウー(?)
原題は“追捕”。英文タイトルは「Manhunt」。allcinemaのあらすじは「酒井社長率いる天神製薬の顧問弁護士ドゥ・チウがある朝目覚めると、ベッドに社長秘書・希子の死体が横たわっていた。何者かの罠と気づき、その場から逃亡を図るドゥ・チウ。大阪府警の敏腕刑事・矢村は、新人の部下・里香を従え、独自の捜査でドゥ・チウの行方を追っていく。しかし捜査を進めるうちに、次第にドゥ・チウ犯人説への違和感を募らせていく矢村だったが…」
Twitterへの感想は「話自体が古くさい上に、東洋人が日本を舞台にドンパチアクションやっても嘘くさすぎ。中国俳優の妙な日本語もほとんどお笑い。主役のチャン・ハンユーは若い頃の竹中直人そっくりで、竹中も警察官ででてるから紛らわしい。」
ジョン・ウーである。話がテンポよく展開、は、するのだけれど。スタイリッシュでもカッコよくも見えない。同じことを白人俳優が欧米を舞台にやったら、きっとなんの不自然さもなく見られるのではないのかな。日本人や中国人が、大阪を舞台にがんばっても、やっぱりイモ臭く見えてしまう。欧米崇拝といわれようと、そう見えてしまうのだからしょうがない。
冒頭から、なんじゃこれ、な違和感。どっかの街の小料理屋にドゥ・チウがやってくる。迎えるのは和服のお内儀と女性従業員。ドゥ・チウの話すたどたどしい日本語。お内儀の、これまたあやうい日本語・・・。なんなんだよ。いい感じの街の小料理屋は、中国人経営か? しかも、ドゥ・チウはむかしよく来ていた、とかなんとか言っている。なんだかな。
と思っていたら、女性2人は暗殺者で、本当のお内儀は猿ぐつわをはめられて・・・。で、やってきたヤクザっぽい一団に、いきなり銃弾を浴びせて・・・。なんじゃこりゃ。驚きはするけど、戸惑いの方が大きい。とくに、お内儀のセリフが口と合ってなくて、アフレコなのか別の声優の声なのか。なんか、カオスじゃ!
なんか、全体に浅いというか薄っぺらな感じ。それぞれに背景は示唆されていても、人物はほとんど描かれていない。
ドゥ・チウの立場がよく分からない。天神製薬の弁護士だったのが、なぜ犯人に仕立て上げられるのか。あれって、酒井・息子が天神秘書にほの字だったのに、ドゥ・チウに誘われて彼の家に行ったのを嫉妬して家に潜入し、秘書を殺した、ということなのか? で、その後にやってきたドゥ・チウも殴り倒してベッドに置いた、と。たしか酒井・息子はドゥ・チウを殴り倒したのは「たまたまだ」といってたよなあ。
で、ドゥ・チウは警察を呼ぶ。やってきた浅野刑事はドゥ・チウを確保し、でも、連行中に殺そうとするんだけど。あれはなんで? 天神・酒井に飼われていたとしても、理由が分からない。
というところからドゥ・チウと矢村の手錠のままの逃走劇となり、矢村はドゥ・チウが犯人ではないと確信するんだが。めまぐるしい追撃はまあいいとして。全体の背景に、新薬が絡んでいる、ということが見えてくる。のだけれど、それとこれとは別だろ、という感じが否めない。
たとえば、冒頭で登場した殺し屋美人の方が、飲み屋で会話を交わしただけでドゥ・チウに惚れてしまい、任務(ドゥ・チウを殺す)が遂行できなかったり。アホか、な話だ。さらに、かつて天神製薬で働いていたけれど殺されてしまった研究者の婚約者がドゥ・チウに接近して無念を晴らすと言ってきたり。偶然も甚だしい。たとえ接点があったとしても、強引すぎるだろ的な疑問にずうっと引きずられる。
それと、暗殺者女2人組と、その仲間がうじゃうじゃいて、ドゥ・チウと、その周辺の人間を殺すために必死こいて撃ちまくる展開は、なんなんだ、と。撃ってもいいけど、必然性が薄すぎるだろ。天神・酒井社長の目的は新薬を完成させるためのコード番号、なんだろ? なら優先すべきは新薬開発者の婚約者から、ヒントを聞き出すことのはず。なのに開発者を殺してしまったのは、アホだろ。ドゥ・チウなんて、ついさっき「自分の弁護は間違っていたかも」と反省しだした人物に過ぎない。殺さずとも、金で口封じだってできるだろうに。というか、ドゥ・チウは弁護士として天神のやってたことを知らなすぎて、アホだろ。
というわけで、ツッコミどころを探していくと、すべてが変なのだよ。そもそも、人間のパワーを最大限に引き出す麻薬のような薬をもし天神が開発したとして、それを販売するのはムリだろ。利益が出て、決算はどう処理するの? という話だ。
水上ボートのチェイスはチープな合成もたくさんあっていまいちだし、カーチェイスやバイクのあれこれも迫力はいまいち。撃ちまくる銃弾は山のようだけど、あんなの意味ないよなあ。天神の研究所に配備されている警備員も研究者も、誰も彼も簡単に殺されていくけど、ああいう死に方は1960年代のアクションだよなあ。簡単に死にすぎ。いまどき、銃声一発で、みな伏せるぞ。
矢村と、新人女性刑事のコンビも、肝心なところで女性刑事は登場しないし。まあ、あれこれすべてにチープ感が漂ってるのだった。
・オリジナルの『君よ憤怒の河を渉れ』はむかし見てるけど、街中を馬が走るということだけしか覚えていない。
・ドゥ・チウ役のチャン・ハンユーは竹中直人に、開発者の婚約者役のチー・ウェイは井川遥に似てるよね、と思いつつ見ていた。

 
 

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