NOPE/ノープ | 9/1 | 109シネマズ木場シアター5 | 監督/ジョーダン・ピール | 脚本/ジョーダン・ピール |
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原題は“Nope”。allcinemaのあらすじは「ロサンジェルス郊外にあるヘイウッド家の牧場では、映画やテレビのために馬の調教を行っていた。しかし半年前に父が亡くなり、息子のOJと娘エメラルドが継いでからは苦しかった経営がさらに悪化していた。そこで元子役のリッキー・“ジュープ”・パクが経営するテーマパークに馬を売り、急場をしのごうとする兄妹。しかしリッキーからの牧場を買い取りたいという申し出には、家業を守りたいOJがためらいを見せる。そんな中、OJから父の死の際に体験した不可解な出来事を打ち明けられたエメラルドは、決定的証拠を捉えたバズり動画の撮影に乗り出すのだったが…。」 Twitterへは「デキの悪いシャマラン(たとえば『サイン』とか)みたいな、小規模な宇宙戦争。面白かったのは、空から降ってきた辺りまでで、あとはひたすら退屈。ときどき笑えるけど。思わせぶりなチンパン君とか直立不動のパンプスとか、どういう関係があるんだ?」 父親の死は、空から得体の知れないモノが落下してのことだ。これは、不穏な空気が迫ってきてる感じがして、なかなかいい。ところがそれ以降は、ほとんどザワザワ感がない。CM撮影での失敗は、たいした意味はない。せいぜい、カメラマンと顔見知りになった、程度? で、馬の調教の仕事がなくなって、馬をテーマパークに売ることになって。で、面白いのが経営者が東洋人(パク)の中年男で、どうみてもカウボーイには見えない、つるつるな顔つきと小太り。で、ここで、かつての人気者だったチンパンジーの部屋が紹介される。子役だった頃、撮影現場でチンパンが切れて、なにか事件を起こしたらしい、しか見せられない。チラと映る様子は、想像力を刺激することもなく、むしろイラつかせる。はいいんだけど、子役だったパクがそんなチンパンに入れ込み、いろいろグッズをコレクションしている理由がよく分からない。 経済的に困窮したOJとエメラルド。そこに、牧場近辺での異常現象。エメラルドは、決定的瞬間を撮影して売れば10万ドルになる! てなわけで監視カメラを買いに行くんだけど、この店員が曲者で。設置は任せろ、あーだこーだいって牧場にまでやってくる。で、兄妹に黙ってリモート監視の設定して…。 では、この間、異常現象は何かというと、雲の合間に見える黒い影とか、電波障害とかその程度。じれったい。眠くなってくる。 てなところに、店員がやってきて(どういう異常を感じたんだっけ? カメラに虫がへばりついてる程度じゃなかったか?)、遠隔監視は悪かった、とかいいつつ、「あの雲が同じままだ」って指摘するんだっけか。でも画面に映る雲はどこも変ではないので(比較するような表現してないので、ぜんぜん観客には異様に見えないんだよ)、はー、そうですか。 とかいってたら異物の飛行が少し多くなってきて。電気が使用できなくなって、監視カメラも暗くなったりする。その程度。ちっとも怖くない。退屈。 その後の展開の順番はよく覚えてないんだけど。 ・テーマパークに物体がやってきて。みなが上空を見つめる。と、人間がオレンジ色のビニールの間に挟まってごにょごにょしてる様子。からっぽの観客席、なんかが映る。このとき、穴の開いた円盤は登場したんだっけか? ・エメラルドが、テーマパークで買ってきた? 馬の人形を牧場に設置する。 ・銀色のヘルメットをかぶった記者が、バイクでやってくる。どの情報を得てやってきたんだっけ? 牧場に入るとバイクが停止し、記者は放り出される。あれはEVバイクなのか? それともガソリン車も動かない? ・OJが、名前だけ知ってる大御所のムービーカメラマンに連絡するが断られる。 ・そのカメラマンがいつのまにか牧場にやってきて、撮影を始めようとする。どういう証拠を見たんだっけ? なんてことが起こり、下部に穴の開いた円盤状の飛行物体が飛び回るようになるのだけれど、こいつはレーダーには映らんのか? 空軍は来ないのか。記者やカメラマンがやってくるならテレビや新聞で話題になって、野次馬もうじゃうじゃ来そうなもんだけど、ドローン少年なんかいなかったよなあ。 てな状況になると、OJや店員も円盤に追われたりなんだかんだあるんだけど。「見てはいけない」「旗が効果的」「風船がいい」とかいう話になっていて、牧場のあちこちに棒状の風船を立てたりするようになる。あるいは、逃げるとき、小旗のつながったのをだしたりするようになる。のだけれど、そういう対抗策は、どっから得たんだっけ? こっちはボーッとしてたから、細かいところ記憶しとらんのだよね。 とはいえ、このあたりから物体との追いつ追われつはあって。撮ることに真摯なカメラマンは丘の上に移動し、物体の口がパクパクめくれるのに対峙しつつ手動でクランクをまわし、吸い込まれていった。んだけど、フィルムも吸われて、破片みたいなのは吐き出されてたか。フィルムなら感光してダメになっちゃうわな。店員は、吸われかけたけど逃げ出してたか。OJは馬の人形が刺さったクルマで近づいたり逃げたり。けど、OJとエメラルドは、決定的瞬間を撮りたかったんだろ? でも、そういうそぶりはあまりしてなかったように思うんだが。 で、最後はどうなったんだっけ。OJは馬で駆けずりまくり(なんのため?)、エメラルドは廃墟と化したテーマパークに入り込む。物体は、円盤の姿からクラゲとイカの合いの子みたいな姿になって空中をふわふわ。OJを吸おうとしてるのか? でも、何のために? エサとして? で、金属は消化できないのか? 知らんけど。冒頭でOJの父親が空から振ってきた破片にやられたのは、未消化の金属なんだろうけど。物体は、糞はしないのか? テーマパークの上を浮遊する物体。地上では、記者のバイクでやってきたエメラルドは(停止する様子が『アキラ』みたいでカッコよかった)、その姿が映るよう大判カメラに写真をとるんだけど、あの、上を向いたカメラは何なのだ? あんなでかいポラロイドはあるのか? 一方でOJは、テーマパークの地上近くに浮いていたカウボーイの風船を解き放ち、上空へ。物体は、カウボーイの目に惹かれたのか、風船を体内に取り込むんだけど、なぜか風船が爆発。それで物体は息絶えちゃうのか!? 風船は、中味がなく空虚だ。でも、だから、なに。 それにしても、物体はそんなに大きくないんだな。で、食われず生きていたOJが砂ぼこりのなかから姿を現す。ポラには、物体がちゃんと写ってた! で、オシマイなんだけど。ああ、退屈だったよ。 で、チンパンジーの話だけど、撮影中に切れて、母親役の女性に暴行し、殺害したのかな(なぜか現場で、女性の靴が不思議に屹立してる。ありゃなんなのだ?)。その様子を、子役だったパクは一部始終を見ていた。らしい。けど、ほかにスタッフもたくさんいただろうに。なぜ止められなかったのか。そういえば、OJの父はCM用に馬も調教していて、重宝されていた様子。でもOJはコミュ障なのか、撮影現場でうまく扱えず、馬が後方を蹴ってクビになったんだった。このエピソードと、チンパンジーの話は、調教師がダメ、というところで共通しているのかもね。でも、だから、なに、だよなあ。 舞台は牧場で、持ち主は黒人。エメラルドは口が達者で、世界最初の映像はマイブリッジの馬の映像(っても、複数カメラの画像を重ねたものだけど)だということを、CM撮影のときムダに強調したりする。でOJはラッキーという名の馬も含め、テーマパークに売るんだけど、ここはウェスタンショーをやっている。そこの馬の人形をエメラルドが買ったか黙って持ってきたか。それが物体によって巻き上げられ、クルマのボンネットに刺さる。そして、最後、電気の使えないエリアで、OJはラッキーにまたがって活躍する。馬は重要な要素なんだろうけど、それがなに? だよなあ。 円盤UFOと呼ばれていたモノの呼称が変わった、てなこともいってたな。だから、なに。まあ、それで。円盤は金属的な一定のカタチをしたものではなく、可塑性を持つ生物だ、ということなのか。そういう解釈があってもいいけど。にしては、なんかなあ。隠れ家が雲のなかで、その雲の形は変わらない。人間を食う、のか? 神隠し的な事象は、こいつのせいだとかいいたいのかね。 そういえば。最初の方で、宇宙人の仮面をかぶった3人がOJを脅すんだけど。隣家の子供が、とかいってたっけ? でその仮面の3人が、テーマパークのウェスタンショーにも登場しかけていたのは、どういう理由なんだ? | ||||
ブレット・トレイン | 9/5 | 109シネマズ木場シアター3 | 監督/デヴィッド・リーチ | 脚本/ザック・オルケウィッツ |
原題は“Bullet Train”。allcinemaのあらすじは「とにかく運の悪い殺し屋レディバグは、依頼人のマリアからブリーフケースを盗むだけの簡単な仕事を請け負い、東京発・京都行の超高速列車“ゆかり号”に乗り込む。難なくケースを奪ってミッションを終え、あとは品川駅で降りるだけのレディバグだったが…。」 Twitterへは「テンポが早すぎて情報が錯綜。ムダに洒落た会話も多くて。傍流の話が遡ったり戻ったり。いったい本筋はどういう話だったんだ? おじさんはついていけない。西洋人好みの日本描写、乗客のいない新幹線。58歳のブラピ。コラージュのような京都。」 少しは期待したんだけど、人物関係が複雑怪奇すぎて頭か追いつかず。どっかで説明はされてると思うけど、結びついて理解する前にどんどん話は進むし、脇道の話に逸れたり、過去の記憶が混じったりで、もうついていけず。見始めてしばらくして、筋を追うのはあきらめた。結果、集中力はなくなって、退屈なになり、眠くなる。やれやれだよなあ。いくら場面場面が派手でも、理屈が分からないんじゃとても楽しめない。 とくに分からないのがエルター(真田広之)と息子の殺し屋キムラ、その息子のワタルの関連で。プリンスがワタルを突き落として病院送りにし、キムラを脅すというのは、どういう効果があるのだ? しかも、プリンスがキムラに「殺せ」といっているホワイト・デスはプリンスの実の父親。いくらホワイト・デスが息子を可愛がり過ぎて、妹のプリンスをないがしろにしたからって、それはあるか? 黒人と白人の双子の殺し屋は、存在はユニークで、ムダ話は面白いけど、なんのために存在してるんだか…。その息子は早々に殺されちゃうし。って、だれに殺されたんだっけ? まあ、その他も以下同文。利害関係とか任務とか、かっちり分かってれば行動も理解できるんだろうけど、危うすぎて「はあ?」なレベルなんだよね。 そもそもの、レディバグのミッションであるアタッシュケースは、あれは双子の所有物だったっけか。でも大事なモノを荷物置き場に放置している段階で、アホか、と思う。のはいいとして、あのケースの中味は、誰のどういうブツだったんだ? いやもう、ごちゃごちゃしてるだけで、ちっとも爽快感も、なるほど感もない。 日本描写は、テキトー過ぎ。ロケとかしてないんじゃないのかな。新幹線の内部も、現実じゃなくて、イメージだね。最初の頃は他の乗客もちらほらいたけど、そのうち外人の殺し屋しかいなくなってしまう。「席を買い占めた」なんてセリフがあったけど、じゃあ、最初の方に乗ってた客はなんなんだ? いくらそういう特別列車でも、駅には停まるし、乗客も乗るだろうに。でも、車内は殺し屋どもがやり放題。たまにでてくる駅員(マシ・オカ)がいるけど、それ以外の時間、なにしてるんだ? 車内販売も同じく。まあ、販売嬢も殺し屋だったらしいけど、普段の乗務員はどうなってるんだ? 東京駅から乗って、品川、静岡、三島? 米原? 京都! って、各駅停車の新幹線なのか? 駅に停まれば乗ってくるのは殺し屋とか、ヤクザだったりする。もう、西洋外人が期待する日本のイメージは、やめてくれ、な感じ。もう、ヤクザと日本刀は要らないよ。アニメキャラもぬいぐるみも要らない。 伊坂幸太郎の原作はもっと地に足が付いた話なんだろう。それに忠実につくったほうが、まだましだったような気がするけどね。 で、ラストも、新幹線が暴走し、脱線! なんじゃこれ。京都の五重塔も変な外観だし。そこに、レディバグに指令を出していた謎の女性(サンドラ・ブロック)も登場するけど、これまたなんで? そうそう。レディバグ(テントウ虫)は、今回の仕事は代理で。本来はカーバーという男のはずだったらしい。そのカーバーがどんなやつなのか、チラリと映るんだけど、ライアン・レイノルズだったな。 | ||||
ブラックボックス:音声分析捜査 | 9/9 | ギンレイホール | 監督/ヤン・ゴズラン | 脚本/ヤン・ゴズラン、 シモン・ムタイルー、ニコラ・ブヴェ=ルヴラル |
原題は“Boite noire”。allcinemaのあらすじは「ヨーロピアン航空の最新型旅客機がアルプスで墜落し、乗員乗客316人全員が死亡する航空機事故が発生する。さっそく航空事故調査局の音声分析官が、フライトレコーダー、通称“ブラックボックス”に残されたコックピットの音声分析に取り掛かることに。しかし通常であれば最も優秀なマチューが責任者のポロックに同行するはずが、何かと孤立する彼は今回の事故調査から外されていた。ところがポロックが謎の失踪を遂げ、マチューが調査を引き継ぐことに。そして、コックピットに男が侵入したという分析結果を発表する。これによりテロの可能性が高まり、事故原因は突き止められたかに思われたのだったが…。」 Twitterへは「2度目。こんどはちゃんと見るつもりが前半少しうとうと…。でも人物関係とか所属組織は頭に入った。けど、分かれば分かったで「?」もまたでてくる。いろいろ詰め込みすぎ、端折りすぎかもね。」「閉館宣告をだしたギンレイで見たんだけど、物見遊山の客はまだいない様子。うじゃうじゃ来られたら迷惑だしな。」 2度目である。前回もやっとしていた人物関係とか、マチューが迫っていく経緯を注視していたんだけど、最初の方でちょっと、うとっ、としてしまったよ。やれやれ。 ・マチューの妻ノエミが、認証組織に属しているのは分かった。けど、組織名は語られてない。公的機関なのかも、よく分からない。 ・マチューとノエミは航空学校の同窓生。あと、ペガサス社のグザヴィエも同窓生。同窓会では、グザヴィエがどういう人物か語られていない。あとから、ペガサス社は航空関係のセキュリティを担う会社らしい。けど、セキュリティとは何か、はほとんど説明がない。 ・アトリアンというのは、航空機製造会社なのか? はっきりそうと説明はされてなかったよなあ。 ・アトリアンとペガサス社は関係があるようなんだけど、どういう関係? 何をどうサポートしているのか。それがよく分からない。 ・冒頭は、墜落前の航空機のなか。アラブ人が立ち上がったりして、ミスリードする映像も。 ・次は、マチューと上司のポロックが、ヘリ墜落映像を検証している。マチューは実地テストの必要を訴えるが、ポロックは必要ない、と却下。忸怩たるマチュー。 ・直後、アトリアンの航空機が墜落。マチューの会社がブラックボックス回収に行くが、上司のポロックはいつもならマチューを同行させるのに、別の社員を連れて行く。さらに落ち込むマチュー。 ・ブラックボックスが飛行機のどこに設置され、どんな姿なのか。回収される様子とか、中味は基板なのか、というようなところは興味深く見た。 ・その後、音声データの分析はポロックが主導したのか。連れて行かれた社員は、なにやってるんだ? な感じ。で、翌日か、翌々日なのか知らんが、ポロックが出社せず、以降、行方不明になる。それで局長は、マチューを担当者に任命。ポロックに同行した同僚と分析を始めるが、同僚はいまいち能力も集中力もない感じ。で、音声を聞くとノイズ混じりで、かすかに「アラーは偉大なり」という声が聞こえる。マチューはテロの可能性と判断し、局長とともに報道発表する。 ・マチューは、出社しなくなった上司ポロックの事務室にあった手紙とメモを見て、ポロックの自宅に行く。ガラスを割って侵入し、地下に録音設備やブラックボックス(なんのために? マチューはとくに調べなかったよなあ)があるのを発見。さらに、PCに、事務所でみつけたパスワードを入力してログイン、するんだったかな。おい。パスワードを手帳にメモっておくかよ。で、この段階で入手したのはクルマのドライブレコーダーの映像で。なかにポロックとグザヴィエが会っている場面が映っていた。 ・この前後に犠牲者の家族から電話で、墜落直前の通話を聞かせてもらう。このあと、いつだったか、ブラックボックスのデータと突き合わせると、機内アナウンスのタイミングが数秒ズレている、とかいうことになるんだったか。でも、マチューの発想はデータ改ざんには行ってなかったよな、たしか。 ・結論につながるヒントは出てるんだけど、マチューはそれらを追及しないんだよな。なんか、変。 ・マチューは、耳がいいらしい。ノイズキャンセリングのイヤホンで、騒音から逃れるほどだ。そんな耳がいいなら、なぜデータの改ざんも見抜けるんじゃないの? と思うんだけど、そうじゃないのかよ。機内アナウンスの時短のズレ、データにかぶったノイズの性質、アラーは偉大なりの音声への違和感とか、そういうのから「改ざんかも?」てな感じで追及していく話にすりゃあよかったんじゃないのかなあ。その方が専門家っぽいと思うんだが。 ・ラスト近くで分かるんだけど、ペガサス社のグザヴィエはポロックに接触し、金と交換で情報提供を要求していた(ドライブレコーダーの証拠動画がある)。のだけれど、この設定はちょっと安易だよな。ポロックって金で転ぶ人なのか? 決定的な弱みを握られいたしかたなく、ぐらいにしないと説得力がないと思うんだが。まあ、何度か協力し、今回はボイスレコーダーの改ざんを要求され、断れなかった、との告白ビデオを残している。しかし、疑問が残る。グザヴィエは、なぜ改ざんを要求したのか? 墜落直後、グザヴィエはボイスレコーダーの情報を知るよしがない。もし知ったのだとしたら、ポロックがまず聞いて、干渉音がハッキングによるものと判断し、これはペガサス社にまずい状況、とグザヴィエに連絡。それでグザヴィエが改ざん指示をした、な流れ出ないとおかしいだろ。ポロックはボイスレコーダー回収直後、行方不明。これは、なぜなのだ? ポロックはデータ改ざんを行っているので、グザヴィエの指示通りと言うことになる。だから行方不明になる必然性がない。考えられるのは、改ざんは間違いと心変わりし、告発しようとしてグザヴィエに殺された? てな流れだけど。ならばオリジナルのボイスレコーダーを自宅池に沈めたり、その位置情報を妙な工作でマチューに知らせる手間は必要ないだろう。はっきりマチューに言うとか、告発ビデオを自分でYouTubeにアップすればいい。とくに、ヘリコプターの動画に位置情報を埋め込むことでデータの更新履歴の日付が新しくなり、それにマチューが気づくはず、みたいな綱渡り的な工作は、バカげてるとしかいいようがない。そもそもポロックは殺されたのか、罪悪感から自殺したのか? も分からずじまい。もやもやするだけだ。 ・ポロックは、マチューを担当にすると改ざんがバレそうだから、マチューの同僚を担当にして事故現場に連れて行った、と告白ビデオで話している。ってことは、墜落直後に、墜落の原因がハッキング=セキュリティの問題、と分かっていたって言うことだよなあ。その情報をポロックはどうやって得たのか? グザヴィエがいち早く察知し、ポロックに指示を出した? では、グザヴィエはどうやって知ったのだ? もしかしてグザヴィエは、セキュリティの脆弱性に気づいていて、違いない、と判断。で、ポロックに指示を出したのか? そんなことあり得るのか? ・マチューの視点から見ると、これまた右往左往。最初はテロリストによるハイジャックと判断し、次はMHDとかいう方向舵コントロールの異常を疑う。これが自動運転のことなのか? しかし、このMHD/方向舵と、ハック、干渉との因果関係は、とくに説明されていない。なので、もやもや。 ・マチューが方向舵とMHDの関連に気づいたのは、パイロットの話からだったかな。定期的な飛行訓練の監督官をしていて、あるパイロットに辛い採点をした。そしたらパイロットに「現実を知らない」と恨まれて。でも、方向舵についての意見を求めたらしぶしぶ話してくれて。ついでに、アトリアンと認証組織の癒着についても示唆を受けた。それで妻ノエミの認証を疑い、ノエミのPCから認証ドキュメントをコピーする。これをもとに、方向舵の現物の引き渡しを求めようとした? でも、ドキュメントの漏出元がノエミのPCと分かり、ノエミは認証組織から解雇。転職先だったアトリアンの職も白紙に…。だったかな。この時点でマチューの異常すぎる執念が見えるね。かつて思い込み疑惑を記者にリークして、それがフェイクだったことが分かった、なんて過去があったことも分かるんだけど、盲目的に突っ走るタイプなのか。カミサンのPDFデータに暗号化されたデータが埋め込まれてるぐらい分かるだろうに。アホか。これでノエミとの関係も悪化してしまう。 ・そもそもノエミはアトリアンに甘い採点をしていたのか否か。結局最後までそれは分からない。のだけれど、ノエミは不正をしていないのならば、失礼な話だよな。はたまたノエミがアトリアンに甘ければ、それは反省すべきではないか。でも、ノエミは反省していないし、最後はアトリアンに対してポロックの告白ビデオを突きつける。では、ノエミは潔白か。ならやっぱりマチューは先走りすぎだったってことだよな。今回の件に関してだけ、たまたま勘が当たった、ってことなんじゃないのかね。 ・この前後に、ノエミはグザヴィエからの食事に誘われ、でも、マチューには内緒にしていた。それを知ってマチューは、さらに疑うんだけど…。これはノエミも亭主をないがしろ、だろ。 ・ノエミに愛想を尽かされ、公園で甥がドローン。事故犠牲者から電話でスマホに出ると、ドローンが勝手な動きを始める。それを見てマチューは、電波干渉による異常な動きの可能性に思い至った、のかな? (この時点で、ノエミの認証採点が甘かった、という疑惑を捨てたのかどうかは分からない) それで記者に連絡して、過去の事例を教えてもらうと…。だったかな。記者から「疑惑追及に熱心なのはいいけど、あんたの情報はデマで、記事にしたけど誤記事になっちゃったじゃない」って、情報提供を断られるのは、この後だっけ? 前だっけ? ・でまあ、記者から過去のハッキング事件の記録を教えてもらう、と。過去にハック男がいて、警告のためだとか言って航空機に侵入。逮捕され、出所後になんとペガサス社に就職し、数ヶ月でクビ、ということか知らされる、だっけか。事務的に経緯だけが知らされるだけなんだよなあ。ハッキング能力を買われてペガサスに行ったけど、使えない奴だったのか。でも、ハック男がペガサスで機密を云々とは言ってなかったな。 ・で。事故の経緯は、ハック男が当該旅客機に乗り、警告のつもりでハッキングした? 干渉音を付与して通話を邪魔した? なんか、ハック男が具体的に何をしたのか、は説明がなかったと思う。機長と副機長が干渉音にたまりかねてヘッドセットを外す。そのときは、自動運転中だったのか? 大気の状態が悪く、でも、いったんは回避したような感じだったけど、うまく飛行できない? で、手動に切り替えようとしたけど切り替えられず、制御不能で墜落、なのかな。で、この一連の経緯を記録したブラックボックスのデータを、ポロックが改ざん(会社で行ったのか? 自宅の地下室でやったのか?)。このとき、尺数が合わず(意図的なのか? 分からんが)、機内アナウンスのタイミングがずれた。この改ざんデータを、ポロックはマチューに解析させた、ってことだよな。それで失踪。この時点でポロックはヘリ墜落映像に、オリジナルのブラックボックスを沈めた池の位置データを埋め込んだ。ポロックは、マチューがヘリ墜落映像の更新履歴に違和感を感じ、調べることを期待していた。ムダに手の込んだ仕掛けだよなあ。↑でも書いたけど、直接言えばいいだろうに。 ・マチューは会社をクビになり(直接の原因は何だっけ? 盗んだノエミのデータを元に調べたけど、結局、異常はなかった、ってことだったかな? で、私物を箱に入れて帰ろうとしたら同僚がなんたらかんたら話しかけてきて、彼に求める情報を渡そうとPCをいじったらヘリ墜落データに不自然な更新履歴があるのを発見。なんだ? と調べたら、新たに位置情報が埋め込まれているのを発見した! って流れか。 ・でもって位置情報に従ってクルマを走らせるとポロックの家の裏につづく道に入るんだが。どんだけでかいんだ! 100m近い道と、船が費用な池があるのかよ! で、池に沈められたオリジナルのブックボックス基板を発見。ポロック邸の地下の機材でデータをDL。さらにポロックの告白ビデオもついてきて。グザヴィエに頼まれ、金に釣られて情報提供してきて、今回は改ざんまでしてしまった、と。で、データとビデオをタブレットから転送(?)してたら追っ手が数人やってきて。なんだけど、この追っ手は誰の手下で、どっからやってきたんだ? グザヴィエの手下? アトリアン航空の手下? (ラストの発表会では、アトリアン航空社長が発表しているところにビデオが流れるので、ターゲットはアトリアンかな、とも思えるのだよね。 ・で、データの転送が危機一髪で終了後、マチューはクルマで逃走。すると、追っ手が来るまで迫ってきて、マチューのクルマの運転がハッキングされた! らしい。勝手に自動運転で、クルマは樹木にクラッシュして、なんとマチューは事故死してしまう! ひぇぇ。なんていう展開だよ。主人公が死んじゃうのか。 ・さて、発表会の当日。壇上にはアトリアンの社長。心地よく話していると、観客はスマホをみてざわつき始める。どうじに、社長の背後のスクリーンに、ポロックの告白ビデオが流れる。そこに、復讐に燃えたノエミの顔が映って、映画は終わるんだけど。いろいろ「?」が多いよなあ。そもそもマチューはブラック・ボックスのデータを、あのとき誰に送ったんだ? ノエミ? でも、仲違いはまだ解消していなかったと思うんだが。しかも、ノエミがアトリアンの認証に手を加えた疑惑は解消されてなかったはずだよな。な関係性で、ノエミに託す? というか、本人がタブレットを持ち帰れればそれで済むはず。その後のカーチェイスと、マチューが追われているというのは映画的な演出だけだしな。それと、ああしたデータやポロックの告白動画を外部に送るというのは問題ではないのか? 本来なら局長に送るのが筋ではないだろうか。 ・とはいえ、ここでマチューは怪しい連中に追われるのだが。そもそも追っ手は、何を契機としてマチューがポロック邸にいることを察知したんだ? 追っ手は、ずっとマチューの行動を監視していた? でも、会社を追われたマチューを追って、どうなるというのだ。 さらに。マチューのクルマがハックされ、樹木に激突してマチューは息絶える。のだけれど、ハックによってクルマに異常な動きをさせたからといって、樹木にぶつけるようにはコントロールできるのか? 追っ手とはずいぶん離れていたようにも思うし。映画的な都合のよい演出が先走ってる感じだ。 ・そこで思うのは、ペガサスのグザヴィエは殺し屋を雇って邪魔者を消していたのか? という問題だ。そもそもの始まりは何なんだろう? 本来は、フツーに航空機のセキュリティを(ソフト的に?)担当していた会社だったはず。それが、セキュリティが、ハック男などによって破られる事態が発生した。フツーならセキュリティ強化するべきところ、グザヴィエはそうしなかった、ということだよな。そうせずに、事故調査会社に情報ねつ造するように働きかけた。金品で。って、人命がかかっている航空機で、そんなことをするか? まあ、日産だの三菱がクルマの製造に関して偽造したり、エアバッグのタカタがリコール未対策だったの前例は現実は、たしかにあったけどね。それで殺人に走るという映画的演出は、あんまリアリティ感じないんだよなあ。 ・ペガサスとアトリアンの関係も、なんか曖昧。むしろこのペガサスの対応状況も、もうちょっと描けばよかったのにね。セキュリティが破られてアトリアンから契約を解除されそうになって。そうすると倒産なので焦り、ハック男を雇ったけど欠陥を指摘されまくってクビにしたとか。で、そのハック男がペガサスを恨んで情報漏洩させようとしたけど、事前に回避。なのでハック男は実力行使に出て、アトリアン航空機に自ら乗ってハッキングをした、とか。 ・では、池に沈めたデータの基板がオリジナルだとして。いったんは回収後、会社でデータをDLしてるはず。ここで初めて機内の出来事を知り、ハッキングによる自動運転装置の異常行動、と判断する。これが分からないようノイズを混入し、「アラーは偉大なり」という言葉も付け加える。そして、ポロックはニセ基板もつくって会社に保管するようにしたのか? 基板には製造番号が入ってないのか? で、ポロックはオリジナルを池に沈め、位置情報をヘリ墜落映像に埋め込み、失踪(自死? 他殺?)した、ということ? ・ときどき登場する黒いクルマはなんなんだ? マチューを追っている? 一度、マチューがその扉を開けると、あれはポロックの死骸なのか、に出くわすんだけど、次の場面は目覚めたマチューで。ってことは、あれは夢でいいんだよな。 ・ノエミはグザヴィエに会社に来るよう誘われてて、後半、食事に誘われる。そこでグザヴィエは、ヘッドセットと干渉音(もだったかな)のことを、話題にする。ノエミは「公になってない筈だけど」とつっこむと、「アトリアンから聞いた」と応える。これでノエミはグザヴィエへの疑惑が湧き、グザヴィエと別れた後「マチューの話に耳を傾けていればよかった」と漏らすのだけど。ヘッドセットを外したことって、そんな重要な要素なの? っていうか、そのことは、その時点で誰が知っていて、誰は知り得ないはずのことなのか? てなわけで、世間的には評判がいいらしいけど、よく見ていくとツッコミどころだらけ、な気がしてしまうのだよね。この映画。 | ||||
グリーンバレット | 9/12 | シネ・リーブル池袋シアター2 | 監督/阪元裕吾 | 脚本/阪元裕吾 |
allcinemaのあらすじは「プロの殺し屋を目指し、京都最強の殺し屋・国岡がインストラクターを務める殺し屋養成合宿に参加した個性あふれる6人の女子が、国岡も手を焼く暴走の果てに、思いもよらない事態に巻き込まれていくさまを、過激なアクションとともに描き出す。」 Twitterへは「殺し屋を目指す6人の少女の特訓物語と、その後のとんでもバトル。(テイストが似てるな、と思ったら『ベイビーわるきゅーれ』の監督か) 見分けのつく少女が3人だけ。もうちょい色分けしてくれよ。荒唐無稽も、突き抜けてないのがもったいない。」 設定はユニーク。日本には殺人連合会のような組織があって、殺し屋団体もそこに属している。そういう殺し屋団体の1つが、組織から離れ、営業を始めようとする。で、そのボスが新たな殺し屋をリクルートしようと、面接することになる。そこに集まったのが6人の少女。ボスは、組織に属さないフリーの殺し屋・国岡に6人を託す。国岡が向かったのは多摩の奥の方な感じのところで、広大な敷地をもつ浜辺のところで。ここで田岡は6人の特訓を開始する。この模様を、カメラマンがドキュメント取材しているという体の話。一方で、組織に属さず無法の人間狩りを繰り返している連中がいて、最後は彼らと対決する…。 のではあるが、6人の少女がオジサンにはよく区別がつかないのだ。たしかに、面接の場面ではそれぞれが自己PRをしている。この段階で目立ったのは、父親が殺人組織のボスで、厳しく育てられた、という礼儀がムダに正しいと、漫才みたいな2人組。片割れがニット帽で、顔に特長があるので分かりやすい。美大には入れず専門でどうの、といっていたのは、誰なんだ? 後々つながらないのよね。他は…。椅子に寝転がってたのがいたな。あれは、髪の部分染めしてた娘か? で、以後、話が進んでも礼儀娘、ニット帽、部分染めの3人以外、区別がなかなかつかず。もっと外見的に違いをだせばいいのに。赤い髪、金髪、短髪、メガネ…。いろいろあるだろうに、礼儀女だけ異様に目立つバランスの悪さ。なので、じれったくてしょうがなかった。 浜辺の土地は広大で、実弾も問題なし、らしい。特訓の講師・国岡はフツーの兄ちゃんで威厳なし。むしろアシスタント役の方がコメディリリーフで、笑わせてくれる。特訓では、礼儀娘が口ほどでなく失敗の連続。部分染めはヒネてるけど腕が立つ。あとはドングリの背比べ、な感じで、その繰り返し。なので飽きる。射撃下手な礼儀娘には、「重火器の方が向いてるんじゃないのか」の声も上がるほどだけど、これはラストへの伏線だけど、ミエミエ過ぎて萎える。 特訓には、死体処理の女が縛られた男を6人連れてきて、娘たちに撃たせるというのもある。おお。だけど、淡々とこなしていくのが、ぜんぜん怖くない。まあ、そういうつくりなんだけど。 卒業試験もあって、でも、よく分からないところも。3人ずつ組になって、現実の人間に対峙していく、というか、ヤクザや前科者(なぜかゴルフ補している)を一方的に殺したりする。あの仮想敵は、どっから連れてきたんだ? で、卒業試験には6人とも不合格。前後して、主催者であるボスが様子を見にやってくるんだけど、呆気なく部分染め(だったかな)に撃たれて死んでしまうのは、なんなの? んで。どういう経緯か忘れたけど、人間狩りの連中がやってきて、これと対決することになる。国岡は「俺は、戦わない」と抜けるのだけれど、6人娘はやる気満々という不可思議展開で。これが、なんと、娘たちの連戦連勝という、実力とは無縁の都合のいいバトルの連続過ぎて、ちょい萎える。もちろん、危機には礼儀娘がマシンガン両脇に抱えて登場するという当然の展開。当然と言えば、抜けたはずの国岡もいつのまにか参加するという、これまたミエミエの展開で、萎える。ホント、意外性も何もない。あ、不思議なのは、この流れの中で、浜辺はまったく姿を見せないこと。逃げてるわけではなさそうだけど、演出の都合かな。 でもって、人間狩りの連中の大半は返り討ちで死んでいくんだけど、頭だけは不死身なのか、6人娘をボコボコに(なぜか撃ち殺さない)。これに対するのが国岡で。素手とナイフで取っ組み合い。簡単にやっつけると宣言したけど難儀して。というところで、6人娘の誰だったかが頭を撃ち殺して、オシマイ。あとは勝利のバーベキューって、おいおい。 国岡もいってたけど、特訓主催者である組織のボスが死んで、金も入らないのに、なんだこの陽気さは。っていうか、まあ、6人娘の活躍を見せるだけの話だから、いいのか。で、思ったのは、AKBあたりののオーディションの勝ち残りの経緯ににてるなあ、だった。 話の枠組みは面白いのだから、ツメをちゃんとすれば、もっと面白くなると思うんだけどなあ。まあ、勢いでつくってそうなところもあるので、ね。 | ||||
地下室のヘンな穴 | 9/13 | ヒューマントラストシネマ有楽町シアター2 | 監督/カンタン・デュピュー | 脚本・撮影・編集/カンタン・デュピュー |
フランス/ベルギー映画。原題は“Incroyable mais vrai”。「嘘のような本当の話」。allcinemaのあらすじは「緑豊かな郊外に建つ一軒家の下見に訪れた中年夫婦のアランとマリー。購入をためらう夫婦に、不動産屋がとっておきの秘密を教える。なんと地下室に“12時間進んで3日若返る穴”があるという。夫婦は半信半疑ながらも屋敷の購入を決断。やがてマリーは、穴に入ることで若さを取り戻せるという奇跡に興奮を抑えられなくなっていくのだったが…。」 Twitterへは「寓話か、バカ映画か。軽い教訓はあるけど。とくに深い意味やメタファーはなさそう。実はあるのか? フランスNo.1ヒットの謳い文句は疑問。ネコがいい。日本の医療も貢献してる?」 ヘンな映画である。設定は↑のあらすじの通り。この時点で現実離れしている。そんな部屋があるなら世界的になるはずで、それを不動産屋が1個人に売る、なんてことはあり得ない。この時点で、話が寓話であるのは明白。 登場するのは、購入したアランとマリーの夫婦。そして、アランの会社の社長のジェラールと、同棲中のジャンヌ。穴についてはマリーだけがご執心で、毎日のように入り、若返りを目指す。目的は、モデルになって活躍したかったという夢を叶えるため。アランは、家を買った時に「穴に入りすぎると副作用がある」という文言をマリーにつたえるが、彼女は耳を貸さない。映画の後半マリーは若返り、どういう手づるでなのかモデルになるけど、あまり売れない…。 ジェラールは、電子的な陰茎に交換した、と自慢する。伸び縮み、大小が自由自在。ジャンヌのためだ、と豪語するけど、映画の中盤で故障。もともと手術を行った日本にやってきて部品交換して、なんとか機能復帰。なれど、次第に不具合が頻出し、発火したり爆発したり。揚げ句、乗っていたクルマも燃えてしまう! (死んではいなかったよな、たしか) まあ、このときにはすでにジャンヌとは別れていて(レズビアンの傾向があったらしい)、女性遍歴の揚げ句に別の女性と結婚していたけれど。 というわけで、教訓的なことはこの2点だけ。女は若返りたがる。男は絶倫を目指す。その実現のためなら、多少の副作用は厭わない。この副作用は、マリーについては、外見は若返るけれど、中は腐ってアリだらけになる。ジェラールについては、故障して発火して命も危険だ、である。 とはいえ、同じ女性であるジャンヌは若返りにはとくに興味がないし(そもそも、2人に穴のことを正確に伝えたんだっけ?)、アランは女遊びはしない。だから、男性一般に、女性一般に、という敷衍はできない。なので、寓話と教訓にしては、いまいち説得力がないのよね。それに、こんな欲望は、むかしから言われていることで、とくに驚くことでもない。 というような話なので、前半の、マリーがリンゴをかじったら中が真っ黒(アリで)というあたりで、少しウトウトしてしまった。 この映画の妙なところは、74分と短いくせに、後半の展開を、まるで予告編みたいに短くエピソードをつないで終わらせてしまっているところだ。アランが、ジャンヌが他の女性とキスしてるのを目撃した直後ぐらいからかな。マリーが頻繁に穴に入って若返り、モデルになるところとか、ジェラールが女遊びを重ねたりチンポが発火するくだりなんかは、もう細切れでパラパラ漫画のようにあらすじ紹介だけ。なんでこんなつくりにしたんだ? うーむ、な感じ。 もしかしたら、フランス人だけに分かる寓意が、あるのかな。知らんけど。 ・地下室の穴は、降りていくと2階に通じている。気になるのは、下から上に登ったら、“12時間戻って3日歳を取る”のかな? ・ジェラールがチンポを再手術するのは、日本らしい。その描写は無機的で不思議なんだけど。フランス人には、日本はセックス手術の先進国に見えているのかな。しかし、最初の手術も日本でしたはずなのに、再手術で「日本語が分からない!」と騒いでいるのは、なんでなの? 通訳ないのか。 ・隣のネコが登場する。何もしないんだけど、なかなかチャーミング。後半は、お墓も登場して、ああ、亡くなったのか…。 ・買った家に廃車として置き去りにされているクルマには、何か意味があるのか? アランは興味がなく、ジェラールは「リストアすればいい」と興味津々だったけど。ジェラールが結婚したとき乗ったクルマは、あれをリストアしたやつだったのか? | ||||
さかなのこ | 9/14 | テアトル新宿 | 監督/沖田修一 | 脚本/沖田修一、前田司郎 |
allcinemaのあらすじは「魚が大好きすぎる小学生のミー坊。他の子とちょっと違うと心配する父親とは対照的に、魚が好きなことを応援し続けてくれる母親に見守られ、のびのびと育っていった。やがて高校生になり、魚好きにはますます磨きがかかり、相変わらずのマイペースで、町の不良たちとも仲良くするなど楽しい毎日を送るミー坊だったが…。」 Twitterへは「監督沖田修一なんだけど、つくりが大雑把。やっつけというか、杜撰でたどたどしい。幼年時代の子役なんて、セリフが半分も聞こえない。なにかを克服する成長譚にもなってないし。全体にお気楽すぎ。いくら「好きにまさるものなし」といわれてもなあ。」「能年玲奈は苦手。セリフは一本調子で演技できないし、素でやってるだけ。ちやほやされてる今はいいんだろうけど、使いどころがないよなあ。」 能年玲奈は苦手。なのでパスしようと思っていたんだけど、妙に評判がいいので行ってみた。観客は、そこそこ入っていて、楽しんでいる様子。でも、やっぱりしっくりこない。のん=能年玲奈主演の、勢いだけでつくってしまっている、いかもの映画だった。沖田修一らしい緻密さ、情緒が感じられたのは、ミー坊が家を出ていったことを知らせる場面(水槽のたくさんある部屋を右にパンしていくとベランダに出て、そこから左にパンしていくと水槽の数が減ったがらんとした部屋になっていて、母親がひとりいる、という時の経緯をみせるところ。あと、ミー坊の東京のアパートの1階にある床屋の亭主と、その妻をみせるところ。亭主はひがな店先で煙草を吸っている。髪結いの亭主だ。妻はかいがいしく働いているようす。それでも夫婦関係はうまくいっている。それくらいだな。あとは、もうテキトーな感じ。 つくりがテキトーなのは、能年玲奈に演技を要求してもムリだから、かもね。だからまあ、この映画もさかなクンの話をベースにしながらも、能年玲奈の1人舞台になっている。良くも悪しくも能年玲奈の映画である。だから、能年玲奈ファンにとってはサイコーの映画だろうけど、映画として見たら際物で、完成度も高くない。まあ、監督も完成度を目指してないんだろうけど。 映画では、親子4人のアパート生活で、勉強もせず魚だけに興味のある女の子の成長話になっている。父親は「少しは勉強しないと将来が」というけれど、放任主義の母親は「勉強とか進学とかどうでもいい。やりたいようにすればいい」と泰然自若である。 Wikipediaを見ると、さかなクンは中3のときカブトガニの人工孵化に成功。高3で『TVチャンピオン』に出演し、5連覇して殿堂入り。水産大を受験したけど叶わず動植物の専門学校へ。卒業後はペットショップで雇われ店長。水族館や寿司屋のバイトもしたそうだ。働いていた寿司屋で店内にイラストを描いたら評判になりイラストレーターの仕事も。さらにテレビのドキュメンタリー番組に出演し、以降、テレビのお仕事も…という流れらしい。ハコフグ帽子は、テレビ番組から「印象が薄い」と言われ、自分で考えついたモノらしい。映画の、チンピラ連中との交流はすべてフィクションかな。 この手の話でチンピラを絡ませるのは常套手段で、いまだに学園ものなんかには必須のキャラだ。大衆ウケを考えて、監督が創作したんだろう。まあ、これで時間もエピソードも稼げるからね。 冒頭は、漁船で取材の場面で。なぜかミー坊は海面を見つめ出す。何かいるのか? と思っていたら海に落ちて、そこから小学生時代の回想に入る。のだけれど、あのときミー坊は海面に何を見たのだ? それが気になってしょうがない。 小学生時代の友人関係が、分かりづらい。セリフで「モモ」がどーのというのはあるけれど、モモって誰? な感じなんだよね。あと、同級生の男の子(あれがヒヨなのか)と、ミー坊の兄貴との区別がつきにくい。夏の海岸でも、一緒にいる男女の小学生が誰なのか、よく分からんところがある。そして、最大の難点は、ミー坊役の少女の発音が悪すぎて、何言ってるのかほとんど分からんのだ。これはどうにかしろよ、監督。といいたい。 しかし、あんな、魚にしか興味のない小学生が、いじめられないのが不思議。異様すぎてだれも近寄らなかったのかな。 なぜか登場する、現実のさかなクン。近所のひとり暮らしのヘンなオジサンとして登場するけど、背景の解説はなし。まあ、原作者へのサービスなのかな。観客へのサービスか。ミー坊がさかなクンの家に行き、夜になっても戻って来ないのでパトカーが来る場面があるけど、あれは誤解が過ぎる。そもそも家族には行き先を伝えているのにパトカーがやってきて、連行してしまう。警官は「任意同行です」といってはいるけど、完全に不審者扱いだ。任意なんだから、拒否してもいいことがつたわっていない。ありゃひどすぎる。 成長譚として、本人の社会不適応さはあるけれど、でも、不幸になったり、道をふさがれたりはしていない。ちょっとしたことではめげないし、人生の岐路的な部分も母親やチンピラに助けられ、ほぼ順風満帆にも見える。なので、物足りないよなあ。自ら切り拓く、というのがあまり見えないから。もちろん自らの能力で認められるというのはあるんだろうけど、それも、偶然の賜物が多いので、ラッキーな人生だなあと思う。 ふと思ったのは、植物学者の牧野富太郎と似てるってことかな。彼も学歴はなかったけど、好き、だけで東大の講師になっている。正統的な研究ではなくて、たんなる博識ということなんだけど。もちろん、さかなクンには、いくつかの研究の実績もあるようだけどね。 | ||||
カモン カモン | 9/17 | ギンレイホール | 監督/マイク・ミルズ | 脚本/マイク・ミルズ |
原題は“C'mon C'mon”。allcinemaのあらすじは「NYでラジオジャーナリストとして働く独身男のジョニー。ある日、LAに暮らす妹のヴィヴに頼まれ、彼女が家を空ける数日間、9歳の息子ジェシーの面倒を見ることに。しかし慣れない子どもとの共同生活に戸惑いを隠せないジョニー。そんな中、ヴィヴの予定がずれ込み、仕事の都合で帰らなければならないジョニーは、ジェシーを連れてNYへと戻るのだったが…。」 Twitterへは「おっさんが、生意気な口をきく甥っ子に翻弄されつつも癒される、というような話で。とくに事件もドラマもなく、ほのぼのと。こういう映画は苦手。なので、少し寝てしまった。」 内容を知らずに見たんだが、退屈だった。モノトーンで、全編淡々としてて、ひっかかりがほとんどない。たられば言ったり、ジェシーは夢想少年らしいところもあるけれど、ジョニーとの会話はムダに哲学的になったりする。ゾーンがどうとか。子供がする話か? まあ、映画だからな。 ヴィヴの用事は、亭主の精神病で。パラノイア的になってしまって医者に連れて行くのも大変。なので預かってくれ、ということだった。それで1週間ぐらいのつもりで、子供インタビュー行脚に連れて行くんだけど…。で、最初の寝落ち。…今度は亭主が行方不明になってしまって。しかたなくジョニーはニューヨークに連れて行く…。あたりで2度目の寝落ち。はっ、と気がついたらタクシーの中で、ジェシーが「お腹痛くてウンコしたい」とごねてるところ。どうやら1人で帰らされることになったのか、飛行場に向かっているところらしい。でもウンコは嘘で、帰りたくないとごねているのだった。 その後も、ジェシーはジョニーと行動を共にし、録音ごっこをしたり、自分1人でインタビューごっこをしたり。脳天気と言えば、そうなんだけど、ジョニーは絶対に怒らないんだよね。家では甘いもの禁止なのに、いろいろ甘いもの与えてるし。たわいのない質問や、年に似合わぬ哲学的な話にも真面目に応えるし。やさしいオジサンだよね。というような様子がだらだら映る。もちろん、どんな話をしたのかは、すっかり忘れた。というか、字幕を読んでても、ちっとも頭に入って来ねえよ。 で、しばらく後に帰るんだけど。亭主はすでに見つかっていて(こちらが寝てる間に発見したのか)、退院して通院でも大丈夫な状態になったとか、そんな感じで、なんとなく終わる。すこしも引っかかるところもなく。すぐに忘れてしまいそうな映画だな。すべて性善説で都合よく、やさしさに包まれたような映画は、つまらない。 ・フツーのカフェで「トイレ貸してくれ」と入っていって、OKと言われる店は、ニューヨークにあるのか? | ||||
ふたつの部屋、ふたりの暮らし | 9/17 | ギンレイホール | 監督/フィリッポ・メネゲッティ | 脚本/フィリッポ・メネゲッティ、マリソン・ボヴォラスミ |
フランス/ルクセンブルク/ベルギー映画。原題は“Deux”。allcinemaのあらすじは「南仏モンペリエのアパルトマン。最上階の向かい合う部屋に暮らすニナとマドレーヌは、長年愛し合ってきた秘密の恋人同士。2人のかねてからの夢は今のアパルトマンを売り払い、ローマに移り住むこと。しかし家族のいるマドレーヌは、ニナとの関係も含め、未だ子どもたちに移住の計画を伝えられずにいた。そんな中、突然マドレーヌが脳卒中で倒れてしまう。話すこともできず、娘に介護されているマドレーヌに、単なる隣人という立場ゆえに近づくことも困難になるニナだったが…。」 Twitterへは「長いレズビアン関係の老女2人。第二の人生を謳歌しようとするも家族が…。鬼気迫る執念が凄い。フランスでも家族に同性愛者がでたら、あんなに動揺して隠すものなのかね。映画によるのかな。」 冒頭で、道路にいる少女が映る。次に、老女が映る。なので、老人家族と、子供たちの家族と、2つの暮らしの話かと思ったら、少女はもう出てこない。ずっとレズ関係の老女2人が中心の映画だった。 少女につづく老女のシーンは、アップが多くてよく分からん感じ。ベッドの顔、踊る2人、イタリアに行こうとか言っている。2人の見分けもつかない。このあたり、もうちょい分かりやすく見せてくれた方が話に入りやすかったかな。マンションの部屋関係も、まだよく分からないし。 マドレーヌは不動産屋を呼んで見積もりを取っている。そこにニナがやってきて、「25万ユーロ」と言われた、とかなんとか。1ユーロ=150円として3750万円か。そんな高くないんだな。 マドレーヌのところに、娘夫婦と孫が訪ねてきて、孫が時計をいじっている。お爺さんの時計だとかいっている。マドレーヌは夫を亡くして時間が経ってないのか? 時間の経過も、よく分からん。 クリーニング屋で、マドレーヌが店の人を呼んでいる。なかなか来ない。と、表通りを見るとニナが例の不動産屋と話している。どうやらマドレーヌは娘夫婦に家を売ることを言えず、話はなかったことになったらしい。「売った金でイタリアに移住するって言ったのに。言えなかったのね」と抗議するが、マドレーヌはうろたえるだけ。このときだったかな。マドレーヌかニナか、どっちだったか不動産屋に(だったか)、「レズがいけないの!」と怒鳴りまくったのは。このあたりで、それまでほのめかしだったのが、はっきりと2人の関係が分かった感じ。 でまあ、このあと調理中にマドレーヌが脳卒中で倒れ。ニナが発見して病院へ…。娘夫婦が必要なものをとりに戻ってきたときニナは部屋にいて。浴室に隠れるんだけど「あら、歯ブラシが2つあるわ」なんて話しているのがおかしい。ニナは遅くまで病院にいるけど、マドレーヌの娘に「帰っていいよ」といわれつつも、立ち去りがたい風…。翌日も面会に行くけど「しゃべれない」といわれて拒否されるけど、間隙を縫って会ったんだったか。もちろん反応はなし。その後、マドレーヌは部屋にもどることになったけど、2人の関係を知らないのだから、娘にとってニナは単なる隣室の人。でもニナは気が気ではない。女の介護士が面倒をみるらしく、娘が去った後、面会を求めるがここでも拒否られてしまう。そこでなんと、夜中に忍び込んで(合鍵があるんだろう)会いに行くという、なんとリスキーなことを! そこまでするか? 翌朝こいと言われたんだから、少し待てばいいだろうに。それができないくらい心配、ということか。 以降は、ニナのせっぱ詰まった心情が行動に表れる連続。毎日のようにマドレーヌの部屋を訪れ、様子伺い。そして、私が面倒をみるから、と介護の押し売り。傍から見たら尋常じゃないな。変人にしか見えないだろ。でも、ニナにとっては、情念のほとばしりなんだろう。凄っ。 介護士は「私の仕事がなくなっちゃう。収入が減ったら困る」というのを、ニナは「私が1日30ユーロ払うから」(だったかな)と説得したり。いくら隣人で知ってるからと言われても、フツーは、はいそうですか、とは言えないよなあ。さらに、娘夫婦がマドレーヌを介護施設に連れて行くとなって、乗せていくクルマがどうとかいうことになると、夜中にそのクルマを叩き壊しにいくんだぜ、ニナは。実力行使か。ひぇー。 いったいこの2人は、どういう愛し合い方なんだろ。 ニナは、マドレーヌの娘に「いつからフランスに?」と聞かれ、「ドイツから。あちこち転々として2年前にこのアパートに越してきた」という。でも、2人が語りあう出会いは、イタリアだった。さらに、マドレーヌの息子が母親(マドレーヌの娘)に指摘した写真は、イタリアの観光旅行のときのもので、マドレーヌとともにニナが映っていた。そして、介護施設に入ってしまって会えなくなってしまったニナが、娘夫婦の家に向かって発する怒声では「20年もつきあっている」だった。となると、20年前のイタリア旅行で出会い、愛し合ってきたのか? でも、ニナがいつから隣室に住み始めたのか? は定かではない。気になるのは、マドレーヌがあのアパートにいつから住んでいるのか、だな。まさかマドレーヌと夫があそこで昔から暮らしていて、娘もあそこで育ち、巣立っていった、とも思えないし…。2人が70歳ぐらいとして、50前後で出会って恋に落ち、他に知られず情熱的に生きて たことに驚き。老いれば肉体的な欠点も目立つだろうに、そういうのはない。だって、倒れた相手を介護しようという衝動が沸き立つのだから。凄。 ニナと比べると、マドレーヌは煮え切らない感じ。2人で約束したイタリア移住、その資金源としてのアパート売却は、娘夫婦に切り出せず。まあ、反対されるから、なんだろうけど、レズビアンであることを娘に告げるのが怖かったのか? 亭主はDV男で、亡くなっていま解放感に満ちていると思っていたけど、娘や孫の顔を見ると、心が揺れるのかしらね。 ところで、ニナの部屋は、持ち家ではなく賃貸なのだろうか。ニナの家を売るという話はでてなかったし。ともに年金暮らしなのかな。そのあたりも気になるところだ。 マドレーヌの病態は、しだいに回復してくる。視点も定まってくる。でも、話せない。表情に乏しい。腕はマヒしてるので字は書けないのかな。でも、介護士がいるところでだったか、テーブルの上のカップを落として意思表示したりする。介護士のいぬまにニナが部屋に侵入したときも、無表情だったけど、思い出の音楽で反応する。と思っていたら介護士が戻ってきて、「なんでいるの?」な反応になったけど。 マドレーヌが部屋から消えて、みんなで探しに行ったら警察から連絡で、公園で見つかるという…。あれは、なぜ公園だったんだろう。ニナとの思い出の場所? 池にハマった子供とも関係あるのかな。 とはいえ、イタリアでの記念写真で母とニナが昔からの友人であることに気づいた娘は、2人がレズビアンであることに気づいたのかな。たびたびのニナの介護押し売り。無断侵入を心配した娘夫婦は、マドレーヌを介護施設に入れてしまう。ニナが自分の部屋にもどると、部屋の中が整然としていて、生活感がないのがちょっと怖ろしい。そうか。いつも2人はマドレーヌの部屋でべったり暮らしていたのか。そういう生活スタイルだったのか。 ニナは娘夫婦の家に行き、ベルを鳴らしても返事がないので「私たちは20年も…」と怒鳴り、さらには窓に石を投げて抗議する。怖ろしや。 虚ろになったニナ。と、電話が鳴って、介護施設からマドレーヌがかけてきたのだ。電話番号を覚えていて、電話もかけられる。でも、しゃべれない。電話口は職員に代わり、「入居者が間違ってかけてしまったようで…」というが、ピンときたニナは施設名を聞き出し、速効で救い出しに行く。おお。と思うけど、一方で手が動かせるようになったのなら、筆談も少しはできるだろうし、娘に説明してもいいんじゃないのかな、とか思ったりもした。 介護施設。ニナはマドレーヌを抱きかかえ、トンズラを図る。その様子を、医師から、血圧も高いしまだ施設にいた方がいい、と説得されている娘が目撃する。 カメラは部屋に入っていく。音がない。もしかして覚悟の自殺しちゃったのして…。そわそわしつつ見ていたら、静かに抱き合って幸せそうにダンスをするふたりが映る。ドンドンと叩かれるドアの音。「いるんでしょ。話をしましょう」と、娘の声。では、やっと娘も、親のレズビアンを認めようという気持ちになったのか、な。というところで映画は終わる。 ・母親がレズビアンであることを知られるのは、フランスではまだまだタブーなんだろうか。LGBTQはもう社会的地位を得ているように思ったんだけど、偏見が根強いのかな。 ・家を売れなかったのは、遺産を娘に与えず遣ってしまうことに後ろめたさがあったのか? ・介護士の息子は、約束の金をよこせ、とニナに迫ってきていた。でも、ニナは応じなかったので、息子はニナの部屋に入り、金を盗んでいった。この反応は、分からなくもない。もらえるはずのものがもらえなかったら、ムカッとするよな。まあ、部屋に侵入して現金を盗んでいくのはやりすぎ、かも知れないけど。ニナも約束の金を払ってないようだし、クルマを壊したことで介護士の立場が怪しくなったり、結果的に施設に入ることになってしまって介護士の仕事を奪ったわけなので、やってることは似たり寄ったりだからなあ。 ・気になる場面が3つあって。まずは冒頭の少女。あれは2人だっけか? 1人だったか。次に、孫(他人?)が川に落としてしまったとき、マドレーヌが棒で拾おうとしたとき一瞬川面にうつる白い影。最後は、マドレーヌ(だと思う)が川に入って、白い服を着た少女を水の中から抱き上げる場面。あれは何なんだ? 過去に、そういう場面に出くわしたということなのか。少女は他人なのか?娘なのか? 孫なのか? まったく分からない。なので、もやもやするのだ。 | ||||
ヘルドッグス | 9/25 | 109シネマズ木場シアター5 | 監督/原田眞人 | 脚本/原田眞人 |
allcinemaのあらすじは「復讐に生きる警察官の兼高昭吾は、その獰猛さゆえに警視庁に目を付けられ、関東最大のヤクザ組織への潜入捜査を命じられてしまう。その目的は警察の弱みを握る組織の若きトップ、十朱から“秘密ファイル”を奪取すること。さっそく警察の調査で相性が最も高いと出た組織一危険なサイコパス男の室岡に接近すると、着実に組織内での地位を高め、ターゲットの十朱へと迫っていく兼高だったが…。」 Twitterへは「ヤクザ組織に潜入捜査の元巡査の大冒険譚なんだけど、ヤクザの対立関係、人物相関が魑魅魍魎。一応、語られてはいるんだけど、ぼそぼそ早口で分からんよ。その上セリフの半分は聞き取れない。英語会話の字幕もあるんだが、読めんだろあれじゃ。」「人物が出たら、名前と組織、肩書きを字幕で。さらに、相関図も画面で見せたら分かりやすいのに。まあ、そういうので流れを削がれたくない、テンポよく勢いで見せたいという魂胆なんだろうけど、ざけんなよ。話が分からんで楽しめるかっての。」「必殺仕事人かよ、ってとこは笑った。」 兼高は元巡査の出月梧郎でガンマニアで、歌舞伎町の交番にいるとき中国マフィアらしいのが歩いているのを目撃し、「あいつら銃を持っている」と上司に告げたが無視され、でも、直後に馴染みの高校生がいるコンビニに強盗が入り、パートと4人の女子高生が射殺された…。その現場に急行し、中国マフィアに対する復讐を決意した。というのは、最後まで見ると分かる。で、その後、マフィア連中を次々に殺していき、最後の1人もやっつけた。という、最後の1人ところが冒頭のアクションになってるわけだ。で、警察に電話して捕まるというのは、復讐が終わったから自首した、ということなんだろう(あのまま逮捕されていたら、ヤクザになってからのように、コンビニ殺害遺族に毎月20万ずつお金を送ることはできなくなるよなあ。お金を送るのは、ヤクザになってガポガポお金が入るようになって思いついたのかね)。でも、官憲に眠らされ、気づくと警視庁の男がいて、彼が兼高をリクルート。ヤクザ組織に潜入してくれ、と。まあ、よくある展開か。 しかし、いくらガンマニアだっていっても、いつあんな格闘技=殺人技などを体得したんだ? また、警察が特定できなかった中国マフィアをどうやって見つけたんだ? さて。警視庁の男は、潜入先の組織と対抗組織との関係をボードで兼高に説明するんだけど、これがボソボソ声の早口で、とても付いていけない。潜入先が東鞘会で、その先代の跡を継いで、本来は継ぐべき男(土岐らしい)ではなく、別の男(十朱らしい)が就任した(なぜだ?)、というのは分かった。でも、対抗組織については、なんとかファミリー(氏家ファミリーらしい)とか、ささっと話すので皆目分からない。さらに、なんとかの混合組織でヘルドッグスがあるとかいう。映画の題名にもなっているので、こいつらが後々出てくるのかと思ったら、出てこないんだよね。変なの。 警視庁の男は、東鞘会のなんとかという男(室岡らしい)と兼高の相性がいいから、タイで接触して仲間になり、潜入しろ、という。この接触については、最後の方でチラッと映るけど、遅いだろ。いきなり廃墟で戯れる兼高と室岡じゃあ、なんのことやら。兼高が技を教えているというところか。このあと、バトルとアクションがあったんだっけか? なんか、もう忘れてるよ。で、どっから連絡があり、夜行くと、何人かが死骸を何体が埋めようとしているところで。そいつらを脅しながら、死骸を埋めさせる…。てな感じで兼高と室岡が組に帰ると、ドアが開かない。のをムリやり開けさせて…。あたりから、話はもうよく分からない。 そもそも、東鞘会の組織がよく分からない。ボスは、ちょい軟弱な顔立ちの十朱は分かった。北村一輝が演じる土岐は幹部らしいけど、トップが集って何かする場面も特にない。だから土岐がどういう位置づけなのか、よく分からない。あと黒マスクの爺さんは、なんなの? あと、いつも土岐のそばにいるオッサンは? (後から秘書の熊沢と分かるけど、ヤクザに秘書がいるのか?) その他もいるけど、組織体系が分からんままなんだよね。いまどきはヤクザも低調で、解散するところが多いというではないか。そういう映画もいくつかある。なのに、東鞘会ってなにやって食ってるんだ? あんながんがん人殺しして、どういう任侠道なんだか。 その後は、ぐちゃぐちゃしてて、なんなの? な展開。名古屋のヤクザ(?)が現れ、土岐と交渉するんだけど、ありゃどういう話なのだ? なぜ十朱が金を提供するんだ? な打合せをどっかのクラブでするんだけど、ホステスの1人が刺客で。それを見抜いた兼高となかなかのバトル。ホステスは、どっかの廃墟みたいなところに連れて行かれ、拷問されるが、依頼元を吐かない。というところに、重火器で武装した一団が乱入し、激しい撃ち合いに…。は、つまらなくはない。けど、あんなヤクザ、いねえだろ。何のためのバトルなんだ? 考えだすと、「。?」ばかりだよ。でその刺客のホステスだけど、あとから名古屋のヤクザが「どんなのが来るかと思ったら、女か」なんて話している。てことは、名古屋のヤクザが十朱を殺し、東鞘会をつぶそうとしたということか。 そういえば、このバトルの裏で、土岐が自分の部下とクルマにいて、発信器がどーのとかいってて。こっちは土岐が裏切って刺客ホステスを放ったのかと、疑問をもっていたぐらいだ。 このバトルのときだっけ? 秘書の熊沢が死んだのは。でその葬儀が大々的で、こんなことするのかよ、ヤクザが、な感じ。この葬儀中にも、土岐が親分である十朱をボコって「しっかりしろ」てきなことを言うんだけど、なんでなの? でも、いちおうケジメだからと、土岐は指を詰めようとするんだけど、これまた、よく分かんないなあ。ほかにも、部下が裏切ったかなんかで、階段から落とされて死んだり。だれかの会話を聞いて、室岡が、兼高が潜入者と知ったり。そういえば、兼高が古巣の歌舞伎町の交番近くに行き、元の同僚に旧名で呼ばれたのを組員がたまたま聞き、そのイニシャルが、コンビニ犠牲者家族に金を送ってる人物のイニシャルと同じ、とかで室岡に素性がバレるんだっけか。いろいろ、兼高も、バカじゃないのか。まー、いろいろあってちんぷんかんぷん。 土岐の愛人の吉佐という女が松岡茉優が演じてるんだけど。可愛い娘役とは違って刺青入りの姐御肌。まあ、似合わなくはないけど。でこの吉佐は兼高に接近してきて、なぜか関係をもつ。でも、あとかわ分かるんだけど、この吉佐も警察の潜入者だった、と。彼女は兼高が潜入者と知ってたんだったけ? ま、いいけど、彼女が兼高と性的関係をもつ目的は、なんなの? だよな。 で、次は兼高と十朱の対決だけど、十朱がかまをかけて兼高に潜入者であることを打ち明けさせ、自分も潜入者だと告白。でも、ヤクザの世界を選んだとか言うようなことをいうんだよな。これまたよく分からんな。潜入者同士には、だれが仲間なのか上司は打ち明けないのか。てか、そもそも、あの警視庁の男が兼高に潜入を命じたのは、東鞘会の崩壊が目的なんだっけ? それは、十朱がいうことを聞かなくなったから? でまあ、兼高と十朱は至近距離で移動しながら撃ち合い、互いに腹部に銃弾を受けるんだけど、十朱は絶命し、兼高はピンピンしてる。のは、防弾チョッキでもつけてたのか? とは説明してなかったけど。でも、どっちかが「顔は狙わなかったんだな」とかいうんだけど、互いにだったよな。ここも、よく分からん展開。 で、こっから復讐がいろいろ始まって。息子を殺されたマッサージのオバサンは、相手(なんだよな。黒マスクの男は。で、黒マスクも、自分がマッサージおばさんの息子を殺したことを相手が知っているとわかってるんだよな? そんな口ぶりだったけど)の黒マスクを、マッサージ中に、必殺仕事人みたいに、ぼんのくぼにグサリ。松岡茉優の吉佐は、愛人としてつき合っていた土岐を注射でブスリ。あれ、なんの毒なんだ? 刺した後に気づかれ、土岐には「お前が兼高とやってることは分かってるんだよ」といわれてたけど、呆気なく死んじゃった。なんかマヌケな最後だなあ。 というところに、室岡がやってきて(だっけか? 別の場所だっけか)、自分の兄貴分である土岐を殺された仕返しをしようとする。室岡は吉佐に銃を向け、兼高は室岡を狙う。ごちゃごちゃいう室岡を、兼高は呆気なく射殺。てな最後だったっけか。 素速い展開と、そこそこのアクションが飽きなかったから最後まで退屈せずに見られたけど、話はあんまりよく分からなかったな。それぞれの思惑とか背景とか、そしてどうなったの因果関係とか、ちゃんと分かればもっと面白く見られたんだろうけど。なんか、ドタバタ騒ぎを見せられただけ、な感じだった。で、あのあと、兼高はヤクザ組織を崩壊させたことで解放され、吉佐となかよく隠遁生活にでもなるのかいな。しらんよ。 ・室岡の馴染みの女の子は、なんなの? レストランで働くのが本職? 「なかに出した?」「おれは玉がない」なんて言ってたけど、去勢してるのか? で、他にもいる仲間は、どうやら殺人者の子供とか、らしい。けど、さらりと言われるだけで。社会的に迫害されただろうに、みな屈託ない感じなのか変。 まあ、130分あっても細かな部分は描けなかったのかも知れないけど、話を理解するには原作マンガでも読まなきゃ駄目ということなのかね。 | ||||
秘密の森の、その向こう | 9/26 | ヒューマントラストシネマ有楽町シアター1 | 監督/セリーヌ・シアマ | 脚本/セリーヌ・シアマ |
フランス映画。原題は“Petite maman”。allcinemaのあらすじは「大好きだった祖母を亡くした8歳の少女ネリーは、両親とともに祖母が住んでいた森の中の一軒家を訪ねる。母は少女時代の思い出が詰まった家の片付けを始めが、やがて心の整理がつかずにネリーと父を残したままどこかへ行ってしまう。そんな中、ネリーはかつて母が遊んだ森を散策し、そこで自分によく似た8歳の少女マリオンと出会う。そして一緒に遊ぶうち、彼女が少女時代の自分の母親だと知るネリーだったが…。」 Twitterへは「思わせぶりなタイトルだけど、原題は“Petite maman”なんだよな。『パンズ・ラビリンス』みたいなファンタジー&耽美的な絵づくりも特になく、淡々とフツーすぎて、ちょい退屈だった。」 養老院で死んでいった祖母に「さようなら」を言えなかったのが心残りの少女ネリー8歳が、あるきっかけでその「さようなら」を直接、祖母に言うことができるようになった、という話である。 祖母が亡くなった。たびたび見舞に来ていたのだろうネリーは、他の入居者たちの部屋を訪れ、「さようなら」といって歩く。でも、祖母には「さようなら」を言えなかった、らしい。祖母の荷物は、トラックで運び出される。それは、ネリーの家に運ばれるのかな? ネリーは両親とともに祖母の家を訪れ、家財道具の整理をする。数年間使われなかったにしてはきれいで、電気も点いたりしている不自然さは、あるけどね。ネリーの母は、家の裏の森に、むかし小屋をつくったという。ネリーはふらふらと森を訪れる。そこで、小屋を作っている少女マリオンと出会う。その少女こそ、かつての母親で、裏の森に入り込むたびに、ネリーは23年前の世界に移動してしまっている、わけだ。けど、穴に落ちるとか臭いを嗅ぐとか雷が落ちるとか画調が変わるとか、そういうイニシエーションのようなものもなく、フツーすぎて、拍子抜けだったりする。裏木戸から森へ行く描写も、フツーなんだよね。 23年前というのは、たぶん、だけどね。途中の、マリオンとの会話の中で、祖母の死に遭遇するのは31歳のとき、というようなセリフがあったので、そういうことだろうと思う。 ネリーがいつマリオンが母親だと気づいたのか。たぶん、祖母の家で見た母親の書き取り帳がマリオンの部屋にもあったのを発見したとき、なのかな。ここでも衝撃的な描写も、驚いた表情もなく、フツーすぎるくらいフツー。ただの同年代の女の子が遊んでるだけ、な描写で。ネリーも、マリオンが母親だと分かった後も、とくべつな感じで接したりしない。なので、どんな話をしていたのか、よく覚えていない。どころか、少し退屈で、うとっとしてしまったのだった。 マリオンは、いま手術しないと、母親のように足が悪くなってしまう、という。そういえば、冒頭で、ネリーが祖母の使っていた杖をもらってもいいか、と母親に聞く場面があった。あの杖は老人ゆえに使っていたわけではなかった、ということなのね。そして、数日後に手術するという。 何日目なのか。覚えていないけれど、ネリーが森から戻ると、父親が「ママは出ていった、とひと言。先に家に戻った、ということかと思っていたんだけど、後半の展開から、夫の元を去ったような雰囲気でもある。このときだったか、その後だったか、始めは鬚だらけだった父親が、きれいさっぱり鬚を剃っていた。どういう意味があるのだろう? 翌日なのか、父親はネリーに「予定より1日早いけど、ママの誕生日だから帰ろう?」という。は、じゃあ母親は家にいるのか? 混乱。 でもネリーは、マリオンの誕生会に呼ばれたので、泊まりに行ってもいいか? と父親に尋ねる。父親の「またいつかね」に対して、ネリーは「またはないの」とネリーは返す。なぜ、もう二度とマリオンとは会えない、と思ったのか。それはよく分からない。 翌日、マリオンは荷物をつめたカバンとともに、母親とともにクルマで病院に行く。ネリーは、マリオンの母親に「さようなら」という。マリーの母親はつまりネリーの祖母だから、ここで「さようなら」を言えたということだ。ところで、マリオンの母親はクルマの右側の席にいる。後部座席だったかな? クルマの運転は誰がしてるんだろう? クルマを呼んだのか? ちょっと気になる。 で、ネリーが家に戻ると、父親はいなくなっていて、母親が戻ってきている。ネリーと母親は、床に座ったまま、もたれ合う。で、映画は終わる。母親は、夫を捨てたわけではなかったのか? 私の読み間違い? よく分からない。というわけで、何気なく映画は終わる。 むかしの母親と出会う、というのはよくある話だよな。SFでもね。で、この手の話を見るたびに、思うことがある。この映画でいうと、8歳のマリオンは、小屋をつくっているときに出会ったネリーという同年齢の少女のことを記憶しとらんのか? ということなのだ。ネリーの母親は、8歳のとき、森の中でネリーに会って、自分の母親(ネリーの祖母)が、自分が31歳のときに亡くなる、ということを知らさせたことを、覚えていないのか? という疑問だ。覚えているのなら、自分の母親(ネリーの祖母)への対し方も特別な物があったはずだし、ネリーに対しても、あのときの少女、という目で見るだろうに。そういう雰囲気はまるでない。なんか、物足りないな。・31歳とともに、23歳という年齢も出てきていたように記憶しているんだけど、なんの年齢かは忘れてしまっている…。 ・ネリーとマリオンは、どうやら双子の少女が演じている。映画のつくりもシンプルというか、素人衆がする淡白さで、しかも少女が登場するせいでなのか、ヤン・シュヴァンクマイエルの『アリス』を連想してしまった。関係はあまりないと思うけど。 | ||||
3つの鍵 | 9/27 | ヒューマントラストシネマ有楽町シアター1 | 監督/ナンニ・モレッティ | 脚本/ナンニ・モレッティ、フェデリカ・ポントレモーリ、ヴァリア・サンテッラ |
イタリア/フランス映画。原題は“Tre piani”。『3階建て」という意味らしい。allcinemaのあらすじは「ローマの高級住宅街。ある夜、アパートの1階に車が衝突し、女性が1人亡くなる交通事故が起きる。運転していたのは3階に住む裁判官夫婦ヴィットリオとドーラの息子アンドレアだった。2階に住む妊婦のモニカは、夫が出張がちのため、初めての出産と育児を誰にも頼れないまま迎えようとしていた。事故で仕事場が破壊されてしまった1階の夫婦ルーチョとサラは、娘を向かいの老人に預かってもらうことに。やがてあることをきっかけに、その老人への疑念を募らせていくルーチョだったが…。」 Twitterへは「一見、奥が深そうな映画だけど。よく考えると、妄想によって身を滅ぼし、家庭を崩壊させる人たちの話だった。しかし、原題の『3階建て』が、なぜ『3つの鍵』になっちゃうんだ。鍵は1つしか出てこないぞ。原題の方が人々の関係も分かりやすいのに。」 1棟のアバルトマンの話なのか。隣室同士は分かったけど、あとは別棟とか近所かと思ってた。題名が、原題から変えているのがよくないな。1階、2階、3階の住人は、よく分からんよ。 ・3階のロベルトは裁判官。妻のドーラも法曹関係? どら息子のアンドレアはアル中で、ある日飲酒運転し、家の近所で女性をはね飛ばし、アパートの1階に突っ込んでしまう。自分のしたことに、まったく気づいていない。さらに父親に「裁判官なんだから、俺を助けろ。知り合いの裁判官に頼め。アルコール検査器の数値をいじれ。親なんだからそのぐらいしろ」と、父親を踏んだり蹴ったり。バカか、この息子。無断外出禁止下にあるのに飲んで喧嘩してまた捕まったり(は、この段階だったか、5年後だったか)。バカは治らないね。この息子、親の自分に対する教育の仕方がどうとか言ってるところあったけど、勝手な妄想だろ。自立できないただのアホだと思う。出所後、行方をくらまし、両親の影響のない生活を始めるけど、それでも屈折した思考は変わってなかった。まあ、そのしばらく後、やっとはね飛ばして死亡させた女性の亭主に連絡したみたいだけど、事故から10年だぜ。こういう素質だと思う。いまは妻がいて赤ん坊もいるけど、自分のしてきたことをちゃんと告げているのか? 将来の家庭内暴力が心配だな。 ・その夜、2階(なのか?)のモニカは身重で、ひとりで病院に向かうところ。亭主のジョルジョは出張中で立ち会えない。人と話していないこと、産後うつなどで、ちょっと精神的に不安定。母親も心を煩って入院中だったりする。このケースは完全にメンタルを病んでの妄想だ。亭主が不在で孤独だから妄想するなんて、一般的ではないからね。これまた素質だろう。そのあまり帰ってこないジョルジョには兄がいて、不動産業で成功しているらしい。でも仲の悪い兄弟で、兄から贈られた赤ん坊のオモチャを、ジョルジョはわざわざ突っ返しに行く。へんな兄弟。 ・1階はルーチョと、妻サラの夫婦。隣室には、年老いた夫婦が住んでいて、ときどき8歳ぐらいの娘を預かってもらっている。ある日、引き取りに行くと、娘が「おじいちゃん、壊れている」という。認知症の様子で、夫婦は、もう預けるのはよそう、と言う。なのに、ルーチョは自分のジム通いのためにまたしても娘を預ける。しっかりしてる婆さんがおらず、認知症爺だけなので不安を感じながらジムに行くと、婆さんから電話で。2人が行方不明、と。結局、ルーチョと娘がよく行く公園にいたんだけど、爺さん帰り道に迷い、それで娘は公園に行ったらしい。こっからルーチョの、娘がイタズラされたんじゃないか妄想が爆発。警察も医師も、心理カウンセラーも「されてる可能性はない」といってるのに、病室で見当識もない爺さんの首を絞め「何をした! 言え!」と責め立てる。異常すぎだろ。妻サラの頼みで隣家の婆さんは訴えないことになったけど、ルーチョは謝りにも行かない。というところに、隣家の孫娘シャルロットがフランスからやってきて。やたらルーチョに頬キスしたりベタベタする。で、おじいちゃんの見舞に行ってるんだけど、お婆ちゃんが何も話してくれない。でも、お婆ちゃんのメールは私が設定したからパスワードも知ってるし、読めるから、してみようかな、なんていう。これを聞いたルーチョは、婆さんがメールで爺さんの悪行について誰かに相談している可能性もあるから読みたいと思い、それがいいとシャルロットに言う。で、シャルロットとともに隣家に入ると、なんといきなり彼女が裸になってルーチョを誘惑。いったんは拒否するけど、私が不細工で足も曲がってるから嫌いなんでしょ! なんて言われてついついやっちゃって。終わってから「初めてだったのか…」とかいってる。でもって、お婆ちゃんのメールを見よう、っていったら、あれは嘘、といわれて、おお…。どうやら小さいころからシャルロットは隣家のルーチョに憧れていたというから、これまた妄想だ。いくら格好いいオッサンが隣家にいたとしても、妻も子もあるオッサンを、このときまだ未成年の娘が誘惑してやっちゃうか? 変だろ、シャルロット。しかも、ルーチョに冷たくされて、お婆ちゃんに事の次第を話してしまうって! アホかこの娘。しばらくして老人は死んで、家から棺が運び出させる。近所の人が集まっている。老婆は、亭主に向かって罵声を浴びせるが、亭主は無言。 てな前提があって、だんだんそれぞれの家族がギクシャクしていく。 で、いきなり5年後。 ・アンドレアはムショを出た。父親のロベルトはアンドレアとの絶縁を宣言していて、妻ドーラに「息子を選ぶか、私を選ぶか、どっちだ」と選択を迫っていた(夫との同居を選んだみたいね)。なので、ドーラはたまに面会に行く程度だけど、アンドレアが面会を拒否していたようだ。迎えに来た母親に、アンドレアは、父親の教育の仕方が裁判みたいな口調であれはないだろ的(だったかな)なことをくだくだ言っていて、自分の素行が悪いのは、両親のせいだ、というように一方的な妄想が激しい感じ。どーしようもねえやつだな。 ・ルーチョとサラは離婚したのか? (娘が、お父さんの家、なんて話していたりする) 離婚(?)しても、家族の交流はある様子。で、ルーチョとシャルロットの件は未成年淫行とかで裁判になっているが、なんと亭主の無罪になった。娘のバレエの発表会。亭主と奥さんは、誇らしげに見ている。奥さんが、控訴するらしいわよ、とルーチョにいうと、席を立って家に戻り、老婆に抗議する、んだったかな。記憶あやふや。 ・モニカの話は、なんかあったっけ? 部屋の中にカラスが見えるとか、ぐらい? あんま記憶にない。妊娠は10年後だったよな? 5年後だったっけ? でもって、さらに10年後 ・モニカは2度目の妊娠で、男の子を産む。が、ある日、夫ジョルジョの兄が他人から集めた金を返さないとかいうことで大ニュースに。またまた、カラスが部屋の中にいる…。なとき、兄がやってきて「1晩だけ泊めてくれ」という。そして、兄弟げんかの原因も聞かされる(あるとき、彼女が裸でベッドで寝ているのを兄がぼーっと見ていて、その様子を弟である亭主が発見し、大げんかになったらしい)。さらに、ベッドで、背後から兄に抱かれる(セックスしてるようではない)。娘もなついて、数日過ごしていると、ある日、娘を学校に送っていったら亭主がいる。兄のことは黙っているのかと思ったら「お兄さんが来ていて」と、話すが、帰ると兄はいない。兄に喧嘩の原因も聞かされた、というと、ジョルジョは「それは以前お前に話したじゃないか」と返される。ああ、完全にモニカの妄想が暴走か…。それでなのか、彼女は、赤ん坊を置いて家を出て行ってしまう。ジョルジョの仕事は大丈夫なのか? ジョルジョと娘、赤ん坊でなんとかしている様子。と、ある日モニカから電話がかかってきて。でも、居場所をいわない。「母といる」とはいうけど、そこはどこかの駅で、電話を切った後のホームには彼女しかいない。列車がやって来ようとしている、のか。こりゃ、投身だろ… ・ルーチョの娘はイタリアに留学する。娘を呼ぶと、隣室にいる。隣の家は売り払ったのか、空っぽ。な、なかに娘がいる。爺さんのことを「私のおじいちゃんみたいなもんだったから」、という。亭主は、まだ疑っていて、「あのときお前は、イタズラされなかったのか?」と、問い詰めるように聞くが、娘は「そんなことされるわけないじゃないの」と応える。その答でルーチョは娘を抱きしめ、ほっとした感じなんだけど。ルーチョの、しつこい疑心暗鬼でどれだけの人が迷惑を蒙ったと思ってるのかね。まあ、反省はせんのだろうけど。しかし、妻のサラは、夫が隣家の孫娘と姦淫したことを強く責めてはいないような感じなのが、なんか不思議。別居か離婚かはしたんだろうけど、憎んではいない様子。 ・アパートの家の前を、一団がダンスしながら通り過ぎていく。祝祭? ジョルジョと娘、幼い息子は、仕事で数日留守にするとかで、娘が家の鍵をルーチョに預ける。タイトルにもある「鍵」は、ここでしか登場せんのだが…。ルーチョと娘は、ジョルジョと子供たちは、一団の通り過ぎているのを眺めている。その様子を見ているかのように、通りを横切っていく笑顔のモニカがアップで映るけれど、これはモニカの霊なのか。 ・ルーチョの前にシャルロットが現れる。彼女はルーチョに「控訴を取り下げたのは私。みんなに反対されたけど。むかしから好きだったの」てなことを健気にいう。つまりは、子供の頃からの妄想が思春期になっても衰えず、ルーチョはその餌食になったと言うことなのかね。 ・夫は亡くなり、息子のアンドレアは行方不明のドーラ。難民のためのバザーに夫の衣服・靴をもっていくと、ケースに書かれた名前に担当のオッサンが反応。しばらくして、家を売ろうとしていたドーラのところにオッサンが訪ねてきて、一緒に行って欲しいところがある、と。素直にしたがって行ってみたら、なんとオッサンの娘とアンドレアが結婚していて、ドーラにとっての孫も生まれたところ。養蜂をしている息子に声をかけると、「せっかく築いた僕の世界を…。会いに来るな」と追い返されてしまう。なんてやつだ。根性がねじ曲がったままなんだなあ。ドーラは肩を落として帰り、息子がはね殺した女性の旦那を訪ね「息子は謝りに来るつもりはないらしいので、私が…(って、10年経って初めてかよ!)」っていうと、旦那は「息子さんが会いたいといってきたが断った(これは、母親が訪ねる前なのか、後なのか、分からんけど)。まだ自分はふんぎりがつかない。以来、息子さんから蜂蜜が送られてくる」という。おやおや。少しは改悛の情を示していたのか。でも、はね殺したお詫びに蜂蜜? とはいえ息子の思いを知ったドーラは、奮発して買ったドレスで再度息子を訪ねる。今度は追い返すこともなく、かすかに口元をゆるませてドーラを見る。というところで、映画は終わる。のだけれど、本当にアンドレアが変わったのか、疑問だよなあ。 |