2023年1月

とべない風船1/16ヒューマントラストシネマ渋谷3監督/宮川博至脚本/宮川博至
allcinemaのあらすじは「瀬戸内海の小さな島で漁師として生きる憲二。彼は数年前の豪雨災害で最愛の妻子を失って以来、心を閉ざし、孤独な日々を送っていた。一方、都会で教師の仕事に挫折し、疎遠だった父に会うため島にやって来た凛子。島の穏やかな時間の中で少しずつ癒されていく彼女は、憲二の壮絶な過去を知り、彼のことが気になっていくのだったが…。」
Twitterへは「ひっそりと公開されてるけど、役者陣は豪華。主人公が過去のトラウマにとらわれすぎてるのが、いまいちウェットすぎなんだけど、それが話のキモになっているからしょうがないのかね。」
最初の方は手がかりが薄くて、家族関係とか背景を類推する時間が多かった。とはいえ次第に分かっては来る。父親と母親は、後年になって島に定住したらしいこと。なので、島に関して凛子には何の思い入れもないこと。いまは母は亡く、父親だけが暮らす島に帰省したのは、教師という仕事に壁を感じ(といっても授業中に落ち着きのない生徒を注意したら父兄に「家ではそんなことありません。教え方がおかしいのでは?」と反論されて凹み、若干鬱になったていどらしいけど)、派遣に転じたけれど契約切れになったから、らしいこと。そんなんで父親に会いに帰るか? っていうか、母親が死んだ時は帰省しなかったのか? とか疑問も湧くけど。
そんな島で出会ったのは足の悪い30半ばの憲二で。謎の過去はわりとあっさり解明。数年前の土砂崩れで妻と息子を失ったトラウマから抜け出せないでいるらしい。これが最後まで引きずられるんだけど、世の中には妻子を事故で失った人は数多くいるわけだし。その記憶がなくなるわけはないけれど、ここまで人をしばるものか? という思いが感じられて、ちょっとついていけない感じがした。
登場するのは、何かを失った人たちで。父親は最愛の妻を失っている。とはいえ、老妻をともなって島に移住し、その最後を看取る選択をしたジジイの父親というのに、リアリティは感じられず。世の中の多くは、奥さんがいなくなってせいせいした、なんて思う亭主もたくさんいるはずなのだから。なんか、ムリやり理想を押しつけられている気がしてしまう。
で、凛子は仕事を失っている。ところで彼女は30代だろうに、つきあっていた男の1人もいなかったのか? もしかして『そばかす』みたいなLGBTqIA+なのか? 知らんけど。
憲二は妻と子を失った。義父は。娘を失って、逆恨みで憲二に冷たくあたる。これも変だよな。だれの責任でもないのに「2人殺しやがって」という神経が分からん。同情するのが筋だろうに。
というような、何かを失った人たちなんだけど、まあ、そういうのが人生なわけで。いつまでもそこから離れられない憲二に、とくに何も感じない。むしろ、さっさと頭をきりかえたらよかろうに、なんだよなあ。
とまあ、不幸をトラウマとして抱える人たちの住む島に、将来の見通しも付きかねた30女がふらりとやってきて、島の人たちとふれ合いつつ癒され、ふたたび教師の仕事に生きがいを見出そうかな、と考えをあらためて東京に戻っていくという話。ありきたりといえばありきたり。それぞれのキャラが誇張されているのは映画だからだろうけど、とくに共感できる人物もおらず。仕事の少ない漁師、病院のない島、若い女や子供のいない島、とか生活環境の、のんびりはしつつもいろいろ限界のあるところだよなあ、という感想しか抱かず。
異様なのは、憲二に対する周囲のやさしさで。まあ、妻子が犠牲になったからというのは分かるけど、引きこもって寡黙になり、傍目にはただの怪しいおっさん。そんな憲二に5歳ぐらいの娘がなついて、ひとりで憲二の家にやってきたりして、おいおい、いまどきそれはアブナイだろ、としか思えない。
・凛子の母のさわ、が憲二のところにやってきて、私が先行って、奥さんと子供が転成しないようにしておくから、どーのこーの言ったという話がよく分からず。
・凛子が家にやってきて、そのあとキャリーケースを新聞紙に乗せ、車輪を掃除する父親の姿が映る。へー。そんな演出、めずらしい。フツー端折るだろ、そんなこと。父は、妻との思い出の残る家の畳を汚されたくなかったのか? いやこれはただの深読み。
・漁師仲間の調子のいい男が、凛子をさして「目もとが涼しい女」というのだけれど、 三浦透子はそういう目はしてないだろ。
・黄色い風船は、妻子が帰ってくるのを待つため、らしい。『幸せの黄色いハンカチ』かよ、と思ったら、その話がでてきた。そんな、映画のエピソードを信じて風船を物干しにつけとくって、どこまでおセンチなオッサンだよ。
・三浦透子は、『そばかす』でも砂浜で座っていたけど、この映画でも砂浜に座ってるな。
・舞台は下蒲刈町らしいけど、地図で見たら道路でつながっているではないか。フェリーしかないというのは演出なのね。
ドリーム・ホース1/17ヒューマントラストシネマ有楽町シアター1監督/ユーロス・リン脚本/ニール・マッケイ
原題は“Dream Horse”。allcinemaのあらすじは「英国ウェールズ地方の小さな村。夫と2人で暮らす動物好きの主婦ジャン。仕事と親の介護だけの単調で満たされない日々を送っていた彼女はある日、馬主経験のあるハワードの話を聞いて競走馬に興味を持つ。そして自分でも競走馬を育てたいと思うようになる。しかしノウハウも資金力もないジャンは、村の人々に出資を募るとともに、ハワードの協力を得て少しずる夢へと近づいていく。そしてついに念願の競走馬となる仔馬“ドリームアライアンス”を手にするジャンだったが…。」
Twitterへは「少額馬主になって夢を追う、ウェールズの村の人々のお話。前半はとくにワクワクせず。中盤以降、予定調和的な展開ではあるけれど見せ場がつづいて面白くなってくる。もうちょい馬の成長物語があるとよかったんだが。」
なんや知らん、そこらで馬がよたよた草を食んでいたりするような村で。ジャンはスーパーの店員。家では犬と一緒に寝ていて、台所にはアヒルもいる。むかしは鳩もやって、賞も獲ったらしい。けどいまは入れ込むモノがなくて、亭主もだらだらしてるし、老父母もヨタヨタしてるし、な状況。夜はバーでも働いてるのか? なとき、店の客でかつて馬主してたけど大失敗した経験のあるオヤジの競馬愛の話を耳にして。自分も馬主になれるかも、とおもいつく。1じゃムリだけど、仲間を集めて週に10ポンド程度(だっけか?)を徴収すれば夢じゃない。てなわけで安い牝馬にめをつけて、仲間を募るポスターをつくり…。な流れなんだけど、淡々と盛り上がりが皆無。とくにドラマもない。ポスターに書いた会合の日時になっても人は集まらず、かと思ったらどんどんやってきて、20人ぐらい集まってしまう。のだけど、話の展開が調子よすぎだろ。挫折なく仲間が集まり、めぼしをつけた種付けも上手く行き、超音波診断で妊娠もわかる。なんか、トントン拍子に行きすぎてちっともワクワクしない。
このトントン拍子だけど、牝馬を買って種付けし、産まれて、調教師の目に留まって…までをさらりと流してるけど、数年はかかってるはずだよな。なのに、その月日が感じられないのも、うーむ。もうちょい仲間たちの期待や対立、ジリジリする様子も描かれてもよかったんじゃないのかね。
少し流れが変わったのは地方競馬に初出馬することになって。仲間たちは浮かれ、大挙して馬主席にのりこんで大騒ぎ。結果は4位だけど、以降、3位、2位あたりをうろちょろし、ついに初勝利あたりかな。やっぱこういう成績がからまないと心が騒がない。このときの賞金が2万6000ポンドだったか。300万超えるぐらいなのかな。仲間が20人いたとしても15万ぐらい? 経費はあるだろうけど。
こうなると、次はどこで挫折を味わうか、に注目で。でも、ちょっと大きなレースの後に腱を損傷するという、お定まりの展開で。その手術に100万ポンドもかかったようす。そんなかかるのか? 見間違い? でも、どうせ復活するんだろうと思ってみていたらその通り。その復活レースで勝利し、映画は終わる。の、のち、字幕で成績がいくつか紹介されて。なんと生涯の配当は、仲間1人について1300万ポンドというから20億円ぐらいになったのか? そんなに? これも、見間違いでなきゃだけど。
前半は単調すぎたけど、後半の、活躍→故障→復活劇はお約束の予定調和だけど、まあ、分かっていても少しはワクワクしてまあまあ。もっとも、馬自体の様子がほとんど映らないので、感情移入できないところもあって、ワクワク度はいまいちだったかも。
出資者仲間の変人たちは、いつも裸になっちまう爺さんが目立つぐらいで、あとはそんなにキャラ立ちしていない。もつたいない。もうちょい色づけすればよかったのに。
・やたらトム・ジョーンズの「デライラ」が歌われて、エンドクレジットでも仲間たちが楽しそうにめいめい歌ってる場面がちょい映りするんだけど。なんなんだ? 浮気された男の話? 気になって調べたら、なんと恋人に裏切られ、逆上してその恋人をナイフで惨殺する内容だった。うわ。知らなかった。こんな歌を何で陽気に歌ってるんだか。
・エンドクレジットの画像で「モーリーンはクレアに会えた」っていう、オバチャンが登場する場面の意味は、なんなんだ?」
非常宣言1/21109シネマズ木場シアター6監督/ハン・ジェリム脚本/ハン・ジェリム
英語タイトルは“Emergency Declaration”。allcinemaのあらすじは「娘とともにハワイへ向かうべくジェヒョクが搭乗したKI501便で、離陸直後に1人の乗客が死亡する。その後も、次々と乗客に異変が起こり機内はパニックに。一方、緊急招集をかけられ妻とのハワイ旅行をキャンセルしたベテラン刑事のク・イノは、飛行機へのバイオテロを予告するネット動画の捜査を開始し、やがて容疑者の男が妻と同じKI501便に搭乗していることを知る。KI501便の異変は男がばら撒いた致死性のウイルスによるものだった。すぐさま国土交通大臣のスッキが対応に乗り出すも、未知のウイルスへの脅威からどこにも緊急着陸の許可が下りず、飛行を続けるタイムリミットが迫るKI501便だったが…。」
Twitterへは「バイオテロの標的にされたハワイ便が右往左往する韓国映画。次第に明らかになる秘密もないし、意外な展開もなし。なのでサスペンス性はいまいち。最後もだらだら予定調和な引っ張りで、ちとだらけた。140分は長すぎ。」
この手の話って謎含みで進行し、実は…な意外な展開があるのがフツーなんだけど、この映画はそういうことはほとんどなくて。始めから怪しいやつが登場し、当然のようにそいつが犯人で、しかも、さっさと本人も感染して死んでしまう。さらに危険な何かをセットしていて、その危機がどんどんせまってきて…というサスペンスも無い。あるのは、観客がパニックになってドタバタと飛行機内をうろうろし、次々に死んでいったりしていることが示唆される程度なのだ。なので、中盤になる前からわりと退屈だった。
そもそも、製薬会社で当該ウィルスを研究していた犯人が、なんだか忘れたけどクビになって(だっけかな)、その恨みで飛行機にウィルスをもちこみ、自分も一緒に全員感染だ! という流れだったような気がする。それで犯人は脇の下にウィルスを入れたカプセルを仕込み(切開して埋め込むなんて、ムリだろ。出血多量で倒れるよ)、機内に持ち込んだ。それは粉末で、トイレの上の方に仕込んで、トイレを利用した人に感染。つぎつぎに広がっていく、というような目論見だったと思う。のだけれど、もうちょっと簡単で現実的なウィルス持ち込みがあったんじゃないのかね。
それと、犯人が怪しい、と早々に気づかれ、取り押さえられたとき、犯人が落としたウィルス入りのガラス管?みたいなのがあったんだけど。あれがさらに悪さを拡大するのかな、と思ったらそんなこともなくて、拍子抜けしたよ。
なので、あとは、乗客やスチュワーデス、パイロットらが次々感染・死亡し、さてどうなるか、という話になるんだが、これは、たまたまこの機にある事故でパイロットを辞めた人物が乗っているということで解決する。最初は娘連れの怪しいおっさんとしてしか描かれないけど、機の副操縦士と顔見知りだったりして、すぐにバレてしまう。で、かつての事故で機は救ったけどクルーの1人が亡くなった。その1人が副操縦士の妻だった、という因縁から仲違い状態。さらに元パイロットは事故後飛行機に乗れなくなっていたんだけれど、娘の病気のために空気のいいハワイに行くということで、ストレスを押して乗っていた、という都合のいい状況を詰め込んだような設定になっていて、いまいち盛り上がらない。なんで娘のためにパニック症候群になるのが分かってて飛行機に乗るかね。という話がひとつのサブストーリー。もうひとつのサブストーリーは、ある刑事の妻が観光目的で飛行機に乗っていて、亭主の刑事は犯人がかつて所属していた製薬会社を調べることになった、というこれまた偶然にも程がある設定で。これで飽きさせないようにしているつもりなのかも知れないけど、偶然もわざとらしすぎてうんざり、なレベルだったりする。
副操縦士の、元パイロットへの逆恨みは解決し、機長死亡後は元パイロットが安全運転。もんだいは燃料で、目的地のハワイ近くまで到達しながら、アメリカ側が着陸拒否。ならばと引き返して成田に着陸しようとしたら、これまた拒否。燃料が、といっている割りに釜山には向かわず、離陸したソウルに向かうのはなんでなの? だったら最初からソウルめざせばいいじゃねえか。燃料問題はなんだったんだ!
そして、問題の殺人ウイルスは、犯人たちが研究中に製薬会社の研究室で効果が高まるように作り込まれていて、速効性が増しているという。それを知った刑事は製薬会社に乗り込むが、ガードマンや社員が立ちはだかって中に入れず、ウイルスの情報も開示されない。と思っていたら、何がきっかけだったか忘れたけれど製薬会社が呆気なくギブアップし、ワクチンがあることが分かる。この情報が機内につたわると、大喝采。はいいんだけど、ワクチンは予防のためにするんであって、かかっちまった患者には意味ないだろ。と思っていたら、いつのまにか、治療薬も完成している、というような字幕になってしまっていて。おいおい、な話だよなあ。それで刑事が妻や客のために自らウィルスを飲んだんだかなんかして罹患し、治療薬を投与してどうなるかの証明をしようとする。で、その結果、回復の傾向が見られた、というのがソウル到着の少し前なんだけど。検索したらソウルからハワイは8時間30分とある。たしか刑事が罹患したのはハワイに着陸拒否された後だったと思うんだが、8時間ぐらいで殺人ウィルスに罹患し、効果的な治療薬を投与したからといって、そんなすぐに効果が分かるものなのかね。
というか、製薬会社はどういう目的でウィルスの培養研究をし、その過程でワクチンや治療薬まで開発していたようだけど、そんなことは現実的なことなのか? なんだかなー。
というわけで、元パイロットやその娘も罹患していたはずだけど、みんな助かりますよ、というような終わり方にしていて、それでいいんかなあ。なんか、話が大雑把すぎて、たんにドタバタやってるだけにしか見えなかったけどね。
エンドロールのつづき1/23シネ・リーブル池袋シアター2監督/パン・ナリン脚本/パン・ナリン
英題は“Last Film Show”。allcinemaのあらすじは「2010年のインド、グジャラート州の田舎町。学校に通いながら、父の店でチャイ売りの手伝いをする9歳の少年サマイ。ある日、いつもは映画を低俗なものとみなしていた父が、特別に家族を映画館に連れていってくれることに。ギャラクシー座という街の映画館で、スクリーンに映し出される初めて見る世界に興奮するサマイ。以来、映画にすっかり心奪われた彼は、学校をさぼってギャラクシー座に忍び込むようになり、やがて映写技師のファザルと出会う。そしてサマイの母が作るおいしいお弁当を気に入ったファザルの提案で、お弁当との交換を条件に、映写室からタダで映画を観られるようになったサマイだったが…。」
Twitterへは「『ニュー・シネマ・パラダイス』に重なるところもあるけど、フィルム愛はこっちが強いかも。原題“Last Film Show”の方が話に合ってる。映画泥棒。カメラ・オブスクラ。美人の母さんのつくる弁当が美味そう。」
父親の映画嫌いはよく分からんけど。初めて見た映画で、スクリーンより映写室の光に魅了される少年は、変だよな。とにかく、映画に魅せられ、映画館に潜り込み、見つかって追い出され、でも映写技師のオッサンと知り合って、母親の弁当を食わせてやる代わりに映写室から映画を見てもいいと言われ、しょっちゅう入り浸り。そのうちフィルムつなぎやロールチェンジ、映写機へのセッティングまで覚えて手伝うようになって、有頂天。はいいんだけど、映画館へは汽車で行かなくちゃならんのに、そうたびたび学校サボって行ってられんと思うけど、そこは映画的演出か。そのうち不要フィルムを拾って(私も拾った思い出があるから、ワクワク感は分かる)光にかざしたり。おなじ駅売り仕事仲間の少年たちと、小屋にこもって投射遊び。汽車の中を暗幕で覆ってカメラ・オブスクラまで発見する。なとき、映画のロールを各地に配送する仕組みを嗅ぎつけ、なんと子供たちで侵入し、ロールごと盗んだりし始めて。映画泥棒かよ。少年たちの映画上映熱はどんどんエスカレート。でも、ロールの背後から光を当ててスクリーンにかざしても線が見えるだけで絵は動かない。映写技師に「シャッターがあってだな」と教わると、廃品を利用して回る羽根をつくっちゃうんだから驚き。だけど映画泥棒が発覚し、すべてをかぶったサマイはどのぐらいか知らんけど刑務所生活。やれやれ、だよな。
このあたりの話は、淡々と、とくに盛り上がりもドラマもなく描かれていて。なので、興味のある話ではあるけれど、地味すぎてちょっと退屈しかねない演出。
しかし、これが2010年の話だというのが、インドだね。時代の波は押し寄せていて、サマイの父は鉄道業者から「もう営業許可は下りない。そもそも軌道が変わってこの駅には列車が止まらなくなる」といわれて愕然。鉄道業者は「バラモンがチャイ屋かよ」と軽蔑の言葉を投げられる。むかしは大規模な牧場主だったらしいけど兄弟に騙されいまの状態に。というのがインドらしいというか。サマイにも「父ちゃん、友だち1人しかいないじゃないか」と言われたり。気の毒すぎるお父ちゃんだ。
でも、「映画をつくりたい」というサマイに教師が、「世の中は、英語が話せて都会にでられる階層と、そうでない階層に分かれる」と明言される。なるほど。いくらカースト上位でも生活レベルとはシンクロしなくなってるということだ。インドも変わりつつある。
なとき映写技師から、急いで来い、と呼ばれていくと、映画館ではフィルム映写機が運び出され、フィルムもトラックにつまれて処理場へ。サマイが見たのは、叩きつぶされ鉄のかたまりになる機械たち。溶かされ、プラスチック原料となって腕輪に変わっていくフィルム…。まあ、このあたりは象徴的なイメージ映像で、実際にサマイが見たはずはないと思うけど。なわけで映写技師は首。映写室にはPCとプロジェクターが置かれている。「俺は英語も読めないし数学もわからん」と嘆く映写技師。時代の流れが一気に押し寄せてるなあ。
映写技師は、サマイの友だちの父親なのか? が駅長だからと駅の荷物係に再就職。はいいんだけど、この駅には列車が停まらんのではないの? と少し気になった。
で、むラストはなぜか知らんけど、父親はサマイが都会にでて映画を学ぶことを許可し、10歳ぐらいの少年は1人で父親の知り合いのところに向かう。友だちたちが居並び、ガラスで光の反射をサマイに投げかけている、場面で映画は終わる。・『ニュー・シネマ・パラダイス』はオッサンと少年の交流話だったけど、この映画の映写技師はサマイの弁当が欲しいだけのやつ。映画の技術に関する好奇心は、こっちのサマイのほうが格段上。とにかくサマイは映画、フィルム、技術、光の魔術に関心がある。監督の経験談がもとらしいけど、『ニュー・シネマ・パラダイス』ほど情緒的ではないよね。その分ドラマが薄いんだけど。
・映画以外で、おおっ、となるのがサマイを愛する美人の母親。なにかっていうとムチで叩く父親とは大違い。まあ、運の悪さが子供に向かってるのかも知れないけど。で、その母親がつくるサマイの弁当が、いくつか登場するけど、これが美味そうなんだよ。もっと見たい気がするほど。
・映画館の入口はチケットを求める客で大混雑。なかはさぞかし…と思ったら、ゆったりしてるのが違和感。
・映画の先人たちへのオマージュで、ラストに世界の映画人魔の名前が登場。日本人では最初に勅使河原宏なのがびっくり。海外では人気なのか。そして小津、黒沢は定番。この3人というのは、少ないのかどうなのか。
グッドバイ、バッドマガジンズ1/24シネ・リーブル池袋シアター1監督/横山翔一脚本/横山翔一、山本健介、宮嶋信光
allcinemaのあらすじは「オシャレなサブカル雑誌に憧れて就職した出版社で、男性向け成人雑誌の編集部に配属され落ち込むヒロインが、周囲の女性たちの一生懸命な姿に刺激を受け、改めて仕事と真剣に向き合い奮闘していく姿を描く。」
Twitterへは「コンビニからも放逐され、ますます売れなくなった紙のエロの末期を看取るようなお話。希望とは裏腹にエロ雑誌編集部に配属された若い娘が、数ヵ月後には新入社員に指図しちゃうまでにスレてるところがおかしい。」
始めはウブで、エロシーンに書き込む過激なネームに四苦八苦してたのが、入社して数ヶ月、ヒゲもじゃの新入社員が下につき、彼に「どういう言葉がエロいですか?」と聞かれ、その場ですらすらネームをテキトーに考えちゃえるぐらいスレまくれてる詩織がなかなか可愛い。とまあ、この時点で詩織に彼氏はおらんし、性体験が豊富かどうか分からんのだが。編集部ではそういう下ネタ言わないし。エロ編集部に配属され、その手の写真や動画を見てもとくに動じないところからすると、経験ありなのか? 知らんけど。突っ込みたくなるな。
営業部に頭が上がらない編集部、それでも新企画(たとえば女性向けエロ雑誌)を立ち上げ抵抗する編集部員たち。「女性向けエロなんて遅いんだよ、もう。タイミングがあるの」といいつつ、局長の命令なんで嫌々作り始めるすれっからしなベテラン編集の沢木。でも結局返本の山で廃刊になり、責任を取って首にさせられる…。
こそこそと使い込みを重ね、1000万ぐらいになったところで発覚し、クビになる河田第3局長。それを発覚したのは ヒゲもじゃ新入社員で、詩織に話すのだけれど完無視される。ってことは、みーんな知ってた、ってことか。やれやれ。まあ、金は、フツーの出版社を立ち上げる予定だったらしいけど。
あと、印象に残ったのは、向井っていう先輩社員と、小太りな編集。元AVのライター ハル。向井の怪しい奥さん、ぐらいか。他にもさっさと辞めて新会社を立ち上げた? のもいたのか。でも、ほとんど記憶にない。あ、あと、サブカル本が廃刊になって3局に回された副編で、ビデオの編集を奇声を上げながらする、だけの登場というオジサンもいたな。
要は、前提として、人物の紹介がちゃんとできてないのだよな。だから、アバウトにしか記憶に残らない。この手の、人物が多い映画では、ちゃんと顔と仕草、エピソードを見せるべきだよ。それが中途半端。もっとテレビ的な見せ方も必要だと思う。
でまあ、女性誌失敗で沢木はクビ。その外の部員もぽつりぽつり辞めていき。詩織の仕事はハードになって、ある日、街中でよろけて…。の次のカットが葬式帰りみたいな様子の数人で、でも、詩織が死んだとはとても思えないのでミスリードは失敗だろ。で、羽賀がどうしたといってたけど、誰なんだ、羽賀って? (調べたら営業だった)。なんで死んだの? よく分からん。営業は、冷酷なやつと、嫌みなオッサンかと思ったら意外とフランクなんやつ、が記憶にあるけど。羽賀はどっちだったんだろ。
その後は、ちょい観念的な話になって。もともと詩織は「なぜ人はセックスをするのか」な疑問を抱いていたらしく、ライターのハルとも話してたんだけど、あんまり面白いエピソードとは言えない。仲がよくなっていった2人かと思っていたら、あるときハルが向井と寝ているということを知り、衝撃を受けたみたいなことになるんだけど。は? どうしてそれが? な感じだよなあ。向井には妻がいて、妻は向井を自分のモノだけにしたいような感じだけど、それ以上の何かがあるようにも見えなくて。向井の妻は、流れからはずっと浮いていたんだが。こっから先が妙な具合になっていき、詩織が向井に「ハルと寝ているのか。妻があるのに」といい、さらに「私とも寝られるか?」と聞いたら向井がキスしてきて、次は2人が行為に及ぶ前辺りなんだけど、詩織の考えがさっぱり分からない。詩織は、セックスには愛があるべき、と考えているのか? エロ雑誌つくってるのに! 浮気はダメ、と思ってるのか? ではなんで向井を誘ったんだ? 意味分からない。と思っていたら、上になっている向井の首筋から鮮血が滴り落ち、なんと背後に向井の妻が包丁をもって立っているという、なんだこりゃな展開。向井の妻は、浮気相手の詩織ではなく、亭主の向井に罰を与える。自分を裏切った報い? それにしても、ラブホなのか知らんけど、向井の妻はずっとタクシーで亭主のクルマを追って、部屋まで入り込んだのか? あれ、向かいの自宅じゃないよな?
で、詩織も辞めて、静岡かどっかの街にいってコンビニ入ったら店員が、元編集の小太りなやつだったりという、どうでもいいエピソードがあり。旅から帰ると独立して新しく何か始めようという沢木の所に寄って意気投合。一緒にやろう。な感じで話は終わるんだけど。もっとエピソードを練り込んでお笑い的要素をふやしてもよかったんじゃなかろうか。
・モザイク消しが漏れてて回収。その後の、編集室で編集部員がAV女優と本番撮影、というエピソード。フツーの編集部員が衆人環視の中、勃起するとも思えんけどなあ。
・この映画もセリフがよく聞こえないところが多くて、それで話の内容がよく分からないところがあったりして、もったいないと思う。
ヒトラーのための虐殺会議1/27ヒューマントラストシネマ有楽町シアター1監督/マッティ・ゲショネック脚本/マグヌス・ファットロット、パウル・モンメルツ
ドイツ映画。原題は“Die Wannseekonferenz”。「ヴァンゼー会議」らしい。allcinemaのあらすじは「1942年1月20日、ドイツ・ベルリンのヴァンゼー湖畔である会議が開催された。国家保安本部長官のラインハルト・ハイドリヒによって招集されたナチス高官たちが議論したテーマは“ユダヤ人問題の最終的解決”。それはヨーロッパ全土にいる1100万人ものユダヤ人の絶滅政策を実行するための具体的な計画を話し合うというものだった」
Twitterへは「アイヒマンの議事録が元らしいけど、だったら「ホロコーストはなかった」なんて主張はでてこないと思うんだが。よくわからん。しかし、ひとつの人種を抹殺する計画を淡々と使命感に満ちて語り合えたのはどういう状況だったんだろう。」
会議が行われる邸宅かレストランみたいな所にぽつりぽつりと参加者が集まってくるところから始まるんだけど、その各人が当時のドイツにおいてどのような位置づけなのか、がよく分からないままなんだよね。でてきた名前で知ってるのはアイヒマンぐらい。アルゼンチンで捕まって裁判が行われて、それをハンナ・アーレントが傍聴して、あれこれあった人だよね。でもまだアイヒマンは書記みたいな立場で、そんなエラくない感じ。その横には記録係の女性がいて、無反応で淡々と筆記している。最初の方で誰かが席順に注文をつけて、まだ到着していない誰かを自分から遠い位置に移動してたりしたんだけど、どういう意味があるのかよくわからん。な感じでしずしずと会議が始まるんだけど、ちょっと疲労もあってか睡魔が襲ってきて目をつむったり開いたり、その間の話はほとんど覚えていない。はっと目が覚めて、そしたら、ソ連から戻ってきた列車を使うのでムダがない、とかなんとか運送の話をしているところだった。以降はちゃんと見た。どのぐらい沈没してたんだろう。思うに、出席者が曖昧なこと、ドラマチックに進行しないこと、なんかも影響したんじゃなかろうか。ドイツ映画だからドイツ人には自明のことかも知れないけど、やっぱり、こいつは誰、とはっきり見せてから会議を始めた方がよかったと思うぞ。
見ていて思ったのは、ずいぶん前からユダヤ人の大量抹殺を計画していたんだなということ。アウシュビッツ収容所も、まだ本格稼働としてないころの話のようだ。で、この会議はいつなんだ? 冒頭に出たのかも知れないけど、記憶にないし。あれ、大戦は1939年からだっけ。なんてあやふやな感じで。↑のあらすじでは1942年か。まだ戦争は2年半ぐらいつづくんだな。戦況はどうだったんだろ。とか思ったり。
いや、そもそもヒトラーの命令はどんなだったんだ? から遡って知りたい気がしてくる。なぜって、参加者たちにとっては大量抹殺は決まったことで、それをどう遂行するか、しか考えていないから。
参加者の中には、ユダヤ人は存在自体犯罪、あの鼻の形を見ただけでむかつく、なんて話す輩もいる。では、ユダヤ人のどこがどうドイツ人とりわけヒトラーに嫌われ、抹殺まで突っ走ったんだ? という疑問が湧いてくる。
以上のような背景と経緯が冒頭であるべきだったんじゃないのかな。漠然としかホロコーストを知らないこちら側としては、ちょっと戸惑ってしまうのである。その上で、当時のドイツの国政、軍部はどう対応しようとしたのか、が明かされると、もっと理解が深まったんじゃないかと思うぞ。
・いちばん目立った参加者は内務省の代表だな。内務大臣? 暴走しがちな参加者に対し現行の法律で対処できるところは、それに従うのが原則と一歩も引かない。なかなかやるじゃないか。と見ていたんだけど、混血児の問題に対して、処分するのではなく断種すれば同じ結論が得られる、と事もなげに言うのには驚いた。なるほどそうきたか。当時としてはゆるい対応だろうけど、現在ではらい病患者などへの対応の過去が非難されている手法だ。いずれにしても抹殺に変わりはない。
・他には、他国のパスポートをもつユダヤ人にはどうするか、と話したり。あるいは、混血に対してはどうするか? も。へー。そこまで考えてやってたのかよ。1/2混血はどうする1/4は? とか、細かく議論していた。
・いっぽうで、ユダヤ人のナチもいる。それはどうする? 有能な技術者が不足する可能性が。とか、生産性の面でも話し合いがあって、暴走タイプの参加者は、総統の決めたことだから従えばいい! 法律なんて糞食らえだ! という連中もいたり。ああ、『日本のいちばん長い日』の御前会議と似てるなあと。
・処分の方法については、銃殺して谷底にうめればいい。いや弾丸が必要だ。なんて話してると、アイヒマンが「ガスなら効率的。列車で収容所にやってきて、処理もユダヤ人に任せ、そのむユダヤ人たちも後に処分する」と計画を話すと、それはいい、となったり。オソロシイ。
・なかには処分=銃殺に嫌悪感を感じる参加者も1名いたりするのだけれど、ガスなら罪悪感も薄いし、いいか、みたいになったりする。つまりは誰も反対する人のない状況で、処分方法を検討するだけの話が、ほんの80年前に、人を殺すことになんの感情も抱かず進められていたのだよね。
・この会議はアイヒマンの議事録に沿って製作されたようだけど、議事録がある時点でホロコーストは存在したことの証しになると思うんだけど、このことについてはあまり知られてなかったような気がするな。
母の聖戦1/30ヒューマントラストシネマ有楽町シアター2監督/テオドラ・アナ・ミハイ脚本/アバクク・アントニオ・デ・ロサリオ、テオドラ・アナ・ミハイ
ベルギー/ルーマニア/メキシコ映画。原題は“La civil”。allcinemaのあらすじは「メキシコ北部の町で暮らすシングルマザーのシエロ。ある日、一人娘のラウラが犯罪組織に誘拐され、どうにか工面した身代気を支払ったものの娘は返ってこなかった。警察に相談しても相手にされず、あまりの理不尽な状況に彼女の怒りは増すばかり。ついに自分の手で娘を取り返すと誓い、身の危険を顧みず自ら犯罪組織の調査に乗り出すシエロだったが…。」
Twitterへは「絶望から追及への前半はかなりヒキがあったんだけど、終盤近くになって「?」な場面から急速に腰砕け。なんだよお。ラストも、なんだよお。それにしてもメキシコ怖い。メキシコ人みな嘘つき。警察役立たず。な後味しか残らんぞ。」
フツーの娘がデートに行くと言いつつ相手と同一行動を取らず、誘拐されてしまう。彼氏は、会えない、と娘に言ったという。娘はひとり、どこに行って、如何様に誘拐されたのか?
覚え書きのために話の展開を思い出しつつ、書いておく。
母親シロエが市内を運転してるとチンピラのクルマに停められ、「娘は誘拐した。どこどこへ10分後に来い」という。おどおどと店に行くとさっきのチンピラ二人が、娘は誘拐した、15万ペソ(1ペソは7円ぐらいらしいので、100万円ちょいか。日本なら方外とは言えないかも)と亭主のクルマ(亭主がクルマを持っていることがよく分かったな)をもらう、という。明後日まで(だったかな?)だ。と言い置いて去って行く。シロエは若い妾と暮らしている別居中の亭主のところに行くが、そんなバカな、と相手にしない。けれど、妾は「通報したり身代金を払わないと娘の命はないかもよ」といい、亭主もしょうがないなあ、な感じで、翌日2万5000ペソの小切手3枚と現金5万ペソ、そして、シロエの8000ペソ併せて13万3000ペソ用意する。足りない分は交渉する、といいつつ、やってきたチンピラに渡す。娘は、墓地の前で解放すると言ったけれど、結局現れない。その後、チンピラからの連絡で「オヤジ(ボスのことらしい)は勝手にまけさせられて怒ってた。おれの取り分がなくなった。あと5万ペソよこせ」と言われて青ざめる。亭主は近所の店主仲間のなんとかドンというオッサンに相談し、ドンも親身に相談に乗ってくれて、店の商品を担保に金を借りる。で、チンピラ(今度は3人に増えてた)に渡すも、またまた娘は戻ってこない。それでと警察に行くも、やる気なし。それではと軍のクルマに直訴で話すが、相談窓口の電話番号を教えてくれるだけ。なとき、テレビで「若い娘の首を切られた死体が道に置き去りにされていた。遺体は葬儀社が保管している」というニュースを見て動揺。さっそく葬儀社に行くと、特別に見せてくれるという。しかし、別人。の代わり、葬儀社の女性から妙な情報。「いま処理している遺体の棺桶はこちらが自前で用意しなくちゃならない。そう脅されている」と。そこでシロエは葬儀社を見張ると、トラックがやって来て、指示しているのは女性。遺体を運び出していく。追跡すると食料品店と肉屋(だったかな)に寄り、最後は赤い屋根の店みたいな所に停まる。その食料品店に寄ると、行方不明の男の子の貼り紙が。聞けば店主の息子だという。連中が寄ったのは、敵対するグループに聞き込みをするからという口実のみかじめ料らしい。シロエは赤い屋根の店の近くで数日張り込み、出入りする連中の写真を撮るシロエ。な夜、シロエの家に銃弾が撃ち込まれ、クルマが燃やされる。脅しだ。近くにいた軍隊のクルマがやってきて、中尉だったかと話すと、対応してくれて人気のないところに連れて行かれる。「自分は最近、この街に赴任してきた。あなたが情報を提供してくれれば、調査しよう。しかし、これは内密に行いたい」と。シロエはOKと返事する。で、件の赤い屋根の店に軍隊が直撃し、リーダーっぽい女2人を拉致、拷問。アジトをきき出し、軍隊が向かうと、もの凄い銃弾が降り注がれる。しかし、多勢に無勢で軍隊が制圧し、誘拐されていた女性も救出。しかし、シロエの娘はおらず。なんだけど、指示してた女2人とここで逮捕した連中がどうなったのかは説明されない。というか、軍隊と警察がどう連携したのかがまったく分からない。中尉は秘密裏に動く、と言っていたのにね。の翌日、亭主ががやってきて、お前とやり直したい、と。妾が出ていってしまったらしい。で、居着いてしまった亭主。話の中で、娘の彼氏が留置されている、という話がでてきて、シロエは初耳。シロエはクルマが焼かれたので、向かいの家の住人に「検事局に行くから」とムリやりクルマを借りて、またしても例の葬儀社の張り込み。なんだけど、以降の移動に使っているクルマは向かいの家のものなのか? そうそう借りられんと思うんだが。で、またまた棺桶が運び出されるので追跡すると、なんと、着いたところにいたのは、亭主の店仲間のなんとかドンと、5万ペソ渡したときにいたチンピラの1人。おやおや。というわけで軍隊に連絡し、ドンの寝込みを襲撃。シロエ自らボコボコ殴り、情報を聞き出そうとするがのらりくらり。どうやら息子の不法滞在(アメリカでの、だろう)でどーたらこーたらと言っていたけど、密入国するのに組織に金を借りたのかな。で、組織の手伝いをしていた感じ。ってことは、シロエの娘が誘拐されたとき相談に乗ってくれ、金の工面まで話に乗ってくれたその時点で、ドンは娘の拉致された先を知っていた、ということなのか。で、ドンの言う場所に行くと、小屋はあって拷問したような跡はあるけど、誰もおらず。「昨日まではいた」とドンは言うけど、あてにならない。さらに、裏に死体が埋まっている」という。中尉が拳銃をむけ、ドンは命乞いをするが、射殺される。家に戻ると、翌日だったか、亭主の元にメールで連絡があり、着いたさきはあの葬儀社で。見せられたのはドンの遺体。亭主は、葬儀は俺に任せろ、というが、冷ややかにみているシロエ。このあとは…。亭主(は、乗り気じゃなかったけど)と2人、ドンを射殺した小屋の裏に行き、怪しいところを掘ってみたら早速出てきた。これは警察に届けたのか、警察が率先して調査を始める。やってきた警官にシロエが聞くと、「DNAを調べる。数ヶ月かかる」といい、犯人追及はするつもりがないらしい。シロエが娘の彼氏に面会に行ったのは、このあたり? もっと前かな。彼氏が言うには「拳銃を持っていただけて逮捕された」と。あんたが手引きして娘を誘拐させたんだろう? には、「いや違う。彼女を探すために敵対する組織に属すること にして、だから、いくらか悪いことはした」って、なんなんだよ、ほんと。このあとは…。記憶があやふやだな。このあたりで、亭主が家を再び出て行ったんだっけか。のあとかな、シロエがまたまた張り込みしてて、その張り込み先は何かの店で。そこへ、花束をもって入って行き、目的の女性にそれを渡す。なんだけど、彼女は誰なんだ? これまでの話で、登場してたっけ? で、店が閉まって、出てきた彼女を追うと、どこかの店のオープンカフェで。動揺したようにシロエは、軍隊に連絡。やってきた軍隊の女性兵士が「中尉は移動した。私たちが出来るのは、逮捕するだけ」といい、実力行使。だれかを逮捕するが、その老母らしいのが「撃ちの息子を! いい子なのに! どうして!」と泣き叫んでいる。ののち、シロエはまたしても刑務所に面会に行くんだけど、最初は娘の彼氏かと思っていたんだけど、どうやら最初に接触してきたチンピラの1人のような感じ。供述調書はとられていて、だからそれに従って追及するけど、のらくら知らぬ存ぜぬで、らちがあかない。それからしばらくたったのか。シロエと亭主は警察に呼ばれ、発掘された1本の胸骨のDNAが娘と一致した、とつたえられる。「あとの骨はどこ?」といっても警官は「これでもうあきらめて。胸骨はあとで送るから」と。で、亭主と2人だけでの埋葬が行われて。その後、家で放心のシロエが家の前にいると、誰かが近づいてくる音。すっと顔を上げるシロエ。やってきたのは、だれだか分からない状態で暗転。映画は終わる。
というわけで、終盤になって、わけの分からん店員に花束を渡したのは何なんだ? 彼女はチンピラ男の彼女なのか? その情報はどうやって得たんだ? 逮捕されたのは、チンピラ? 軍隊はシロエの情報を信じた? はいいけど、なんだよ、突然の中尉の移動って。むちゃくちゃすぎるラストだろ。
話が藪の中なのは、それはいい。亭主の妾も、娘の彼氏も、なんとかドンも、みんな嘘ばかりで怪しい。そもそも金がありそうもないシロエの娘が誘拐される、ということ自体がおかしい。だれかが手引きした、のか? なぜ身代金を手にしながら娘を返さなかったのか? 組織の情報が警察に漏れるから、誘拐したらみな殺すのか? いろいろみんな藪の中すぎ。
・シロエが拳銃を持って何かしようとし、結局やめた場面があったなあ。あれは、どの時点だったっけ?
・『聖戦』というから、最後は機関銃でも手にして悪いやつらをバッタバッタなぎ倒す、を期待してたんだけど、やっぱりそうはならず。でも、こころのどこかでは、最後に娘が見つかって、手引きしたやつが分かる、というスッキリした結末を期待していたのは事実かも。ハリウッド的に。そうならないメキシコ映画。まあ、それがメキシコなんだろう。怖い怖い。

 
 

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