|
* バス通りの人々 * 毎日同じ時間に同じバスに乗っていると、毎日同じ人とバス停で待っていたり、同じ人と乗り合わせたりする。電車でも同じことがあると思います。 私がこの数年間お見かけした幾人かの人たち。いろんな人が行き交いましたが、特に印象深く、また愛嬌溢れる方々をご紹介します。 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
さかさおばけさんは、とっても長くて美しい黒髪の、スタイルばっちりのオリエンタルな美人OL。いつも 女らしいスーツを着てブランドバックを持ち、5cmヒールのシンプルなパンプスを履いておられます。 ただ・・低血圧なのか朝がかなり苦手のようでした。 私がバスに乗ると、いつも後部よりの右側の一人掛け席に座り、すっかり眠りこけています。窓に寄りか かり、アンニュイな雰囲気で時には船を漕いでいます。 あまりに真剣に眠っているので、寄りかかっていた頭はだんだん俯き加減となり、長い黒髪がその美しい 顔を覆ってしまい、前が後ろのようになってしまいます。 その様が、どうも前後ろがさかさまで、子供の頃、夏の肝試しをする時、髪を全部前に下ろして顔を隠し 「おばけだぞ〜」と、やった時のさまに似ているので、私はいつも心の中で「あ〜さかさおばけになって る・・」と思っていました。 彼女は、本来 私と同じ駅で降りるのが正しいようなのですが、何度となく寝過ごし乗り過ごしていまし た。先にバスを降りた私は、走り去るバスの後ろ姿に、「あ〜あ大丈夫かなぁ・・」とつぶやくのでした。 よほど私も起こしてあげようか・・と思ったりしたのですが、見知らぬ人間を起こすのもなんだか気恥ず かしく、きっと驚くよね・・と、そのままそっとしておりました。 そうこうしているうち、彼女とお目にかからない日が続いています・・・きっとバスに乗ることをやめて しまったのでしょう・・・座ると寝ちゃうもんなぁ・・やっぱりね。 もしかしたら、時間帯を変えたのかも。もしかしたら仕事を変えたのかも。とも思いましたが、私には 「バス」という交通機関をやめたような気がします。 ちょっと寂しいような。仲間が一人減ったような。爆睡してるのが見られなくて、それも残念なような。 もう会えないかなぁ。
|
|
フランケンさんを語るのは、もう何回目だろう。ライブでは何回かお話させてもらっております。 フランケンと言うのは、ちょっと失礼ではあるのですが、今から思えば、どちらかというと「のっぽさん」 っぽいのですが。 フランケンさんにお会いしたのは、2年続けての「夏」です。 フランケンさんは、いつも定位置。 バスの乗り口横にあたるバスの左側後部車輪上の席。 ここに足をきゅっとおりまげて、なんとか座ってい ます。なんとか、というのはつまりですね、背がすごく高そうで足も長くて、ようやく座席に納まっている っていう感じなんです。それが普通のサラリーマンなら特に意識しないのですが、違うんだなぁ。薄いベー ジュのチノパンに薄いピンクの開襟コットンシャツ。そして頭には何故か、少しグレーがかった薄いモスグ リーンのチューリップハット。年齢30代後半!?肩までの髪を後ろでくくってる。(観察しすぎ!?) 目立つでしょう。いくら地味な服を着てても、その帽子は(笑)やっぱり。 朝の、まだ通勤時間帯にその格好です。カバンは持っていません。う〜ん、何してる人なんだろ・・・? 夏のある時期、毎日お見かけしました。毎日シャツの色が変わります。でも、どれも渋めの薄いピンク・ オレンジ・グリーン・チェックなどです。下はいつもチノパン。そしていつも頭にはチューリップハット。 バスを降りる時、立ち上がったら天井に頭がつかえそうで、屈んで降りて行きます。大きな体を左右にゆ さゆさと揺らしながら。その後ろ姿は、「怪物くん」のマンガに出てくる「フランケン」の歩き方を彷彿 とさせました。2メートルくらいあるんかな・・もしかして。 バスを降りたら、新幹線の駅近くの川沿いの道を、すた すた すた すた すた と歩いて行きます。こんな ところに会社とか事務所とか、あったっけ?と私は思います。この格好で行ける職業とはさて、なんだろ う・・。夏しか会わないというのも妙です。季節労働者じゃあるまいに。なぜだ〜。しかも時々降りる駅が 違う。なぜだ?!。 実は、その後一度だけ秋の夕方、お見かけしました。 茶色のワラビーにベージュのコールテンパンツ。オックスフォード風コットンシャツに茶系のフィールド ジャケット。そして頭には、やっぱり! 帽子がありました。 ニットだったけど。
|
|
それは或る日の朝のこと。いつもより混んだバスの前方より話し声がしておりました。 後ろの方に座っていた私は、半分居眠りをしながらバスに揺られて、気がつけば駅前のバス停に到着して いました。乗客の多くが降りていった車内はガランとして、お年寄りと数人のサラリーピープルが座るだけ でした。バス停からバスが動き出し、走り始めたところで私は再び目をつむり、眠りの体制に入ったのです が、何やら話し声が聞こえてきました。 比較的若そうな二人が、やけに盛り上がって話しているのです。 「〜そうやろ!ほんでな、・・・」「〜いや、そやけどな・・・」「〜ほんであいつがな、・・・」 よく聞き取れないのですが、そんな風に漫才の掛け合いのようにテンポよく話は進んでいるようでした。 でも・・・そんな二人組座ってたっけ・・・? ふと気になって目を開けました。前方を見て「?」 二人で並んで座っている人もいなければ、立っている人もいません。 声の主を捜しました。 あ、バスの一番前の左側。前がよく見えて楽しいあの席に、30歳くらいの男の人が座っています。 白っぽいセーターを着て髪を短くそろえた人が窓を見ながらしゃべっています。 どうやらこの人のよう でした。 完璧なる演じ分け。時々指さしながら話していました。 う〜ん、これは芝居の稽古ではない。断じて、ない。・・・・・やっぱりこの世の中、病んでいるのか なぁ。と思ったのですが、でもなぁ。彼はとりあえず、すっごく楽しそうで盛り上がっているんですよね。
結局、彼は私と同じバス停で降りて行きました。その日以来、3度か4度ほどお見かけしましたが、その 後は、あまり大きな声では話していませんでした。黙っていることも多かったように思います。 姿を見なくなって久しい或る日。 銀行へお使いに出た私は、銀行のそばで彼に遭遇しました。 ブルーの縦縞のパジャマを着て、道に立っていました。 そこは病院の前でした。 内心、「よかった」と思いました。 治療が必要だったと思います。 本来なら働き盛りの年齢。 彼のように病んでしまったサラリーピープルは、かなりいるのじゃないかな。 みんな無理をして働いて いるのじゃないかな。 目には見えない多くの人が、一瞬頭の中を通り過ぎたような気がしました。
|
|
時々会うおばちゃんがいます。とっても小柄で身軽そうです。 おばちゃんは、最近すっかり見かけなくなったウエストポーチをしていて、かならずズボンをはいて ジャンパーみたいなのを着ています。それから、町中ではまず見ることのない、農作業用というかゴルフの キャディーさん用みたいな藁で編んだ、つばの広い日除け帽をかぶっているのです。頭のてっぺんが無いタ イプの物で、後ろが少しクロスしていて、申し訳程度に茶色のバイヤステープのリボンがついています。 とりあえず、つばが広すぎて前髪と後ろ髪は見えるのですが、おばちゃんの顔はギリギリのところで見えま せん。う〜む、なんだか怪しい・・・何者? 毎日会うわけではないのです。同じバス停で降ります。後をつけて見たい気分にもなるのですが、それを してしまえば、私がかなり怪しい。さすがに出来ません。 ある朝、空気の入れ換えをしようと事務所の窓を開けに行きました。バス通りが見渡せる窓です。 ぼんやりと向かいにある駐車場に目をやりました。おや?あの帽子は・・まさに!おばちゃんです。 あ〜朝からすっきりした。おばちゃんのお仕事は、パーキングの精算機をチェックする仕事のようです。 なるほど、理解できます。系列のパーキングからパーキングへの移動。夏場は特に日焼けが気になります。 腰のウエストポーチも、取られてはいけない大切なお仕事グッズが入っていたのです。ふむふむ納得。 で、何が「おさる」なのかって? おばちゃんには何の落ち度もないのです。が、しかし。あの帽子は 良くない。後ろからみるとね、マントヒヒなんです、どう見ても。帽子のつばの開き具合が丁度、それっ ぽいんです。もしくは、すごい耳の大きい「ウッキ〜」っていいそうな小猿。 振り向いたら、そこには猿の顔があるとしか思えない・・・でも、微妙なかぶり具合のせいで顔はどうも 見えないのでした。う〜ん絶妙。 そんなわけで私は心の中で彼女の事を「おさるのおばちゃん」と命名 し、バスに乗っていると「あ、今日もおさるのおばちゃんおるな〜」と楽しみにしておりました。 その後、一回だけ帽子をかぶっていないおばちゃんに遭遇しました。と、いうか帽子をかぶっていない と分からないので、今まで気がつかなかっただけなのかもしれません。 思わず、おばちゃんの肩を叩いて声をかけてしまいそうになりました。「おばちゃん、かわいいやん!」 いや、ほんまにかわいかったんです。かわいらしい50代後半と思えるおばちゃんでした。 やっぱり、あの帽子はよした方がいい。でも仕事に徹するなら、やっぱりあの帽子かなぁ。 あ〜おばちゃんも働いているなぁ、と思うと少し元気がでたのです。
|
|
「耳」という器官が気になるようになったのは、いつ頃だったろう。思い返せば、もう10年程前のことになるかもしれません。その時のことは、長くなりそうなので、また今度お話したいと思います。 さて、耳のおっちゃんとは。あえて「耳の」というからには、耳に特徴があるわけです。つまり、大変立派な耳をされておられるんです。おっきいんです。どちらかといえば、上の方は尖り気味で奥行きのある、両脇に「咲いた!」という感じなのです。 おっちゃんは、身長 約170cm、超細身、推定年齢57歳、色黒、細長瓜顔頬骨尖り気味、目・鼻・口の雰囲気は、う〜ん・・・というか身体全体から醸し出される雰囲気は、ゲゲゲの鬼太郎に出てくる、ねずみ男さん風なのです(おっちゃん、ごめん!)。 おっちゃんは、よくバス中央辺りの窓際席に座っておられるのですが、この席は私の定位置の真正面にあたり・・・すなわち視線は・・・自然と前方にあるおっちゃんの後頭部に注がれるわけです。 ここで、おっちゃんの頭の毛が薄くなってたりとかしたら、そちらに意識が向いていたかもしれませんが、ちなみにおっちゃんの髪はふさふさで・・・幅の狭い細い頭の横には、あ〜立派な耳がシャキ〜ンと立っているではありませんか。 思わず、「すごい。立派!」と心の中でつぶやき、まじまじと見つめておりました矢先。 おっちゃんはただものではありませんでした。「ハッッッ」と振り向いたのです。目が合ってしまいました。 あ〜バツ悪い〜。もろバレやん・・・急いで窓に視線をそらしたけど、ぜ〜んぜん意味無し。それから、何回か振り向くので・・・・目をつぶって眠ることにしました。あ〜あ。 それから後の日々は、何気なくおっちゃんのおる方向を見るだけでも、おっちゃんが振り向いたりするので、意識しておっちゃんを見ないようにしていました・・・。あ〜なんでこんなに意識せないかんの。 あとで気がついたのですが、やっぱりおっちゃんは、自分の耳の大きさを気にしてたのかな〜と。もしかしたら子供の頃とか、結構いじめられたりしていたのかもしれんなぁ〜とか思ったら、すごい悪いことしてしまったなぁと反省したり。でも・・・あれは思わず目がいくよ、きっと。 おっちゃんが座っている隣の席が空いた時に、勇気をだして、隣に座ったことがあります。(隣だったら耳を見なくて済むしね)最寄りのバス停でおっちゃんが降りる際(窓際に座っているので)「すいません、降りますんで」と言ったその声は、やさしい細い声でした。おっちゃんの人とナリが見えるような気がしました。 ほんま、おっちゃんごめんね。でも耳、やっぱり立派やで。自慢の耳になるといいのにな。
|
|
朝の通勤時間に着物を着て出勤してる人を見かけたら、思わず「何者?」と思いませんか? 呉服関係の仕事か、はたまた高級料亭の女将さんか、「や」のつく自由業の関係の方か。さてはて。 1回位なら、まぁそんなこともあるかなぁ〜で済ませるのですが、度々見るとなると、なんか流せないんだなぁ。気になってしょうがないんだよなぁ。 年の頃は39歳、身長165cm位、体重58kg位? 比較的肉厚のナイスバディに長〜くて真っ黒な髪をくるっとアップにした、真っ白なうなじが綺麗〜〜。完璧なお化粧の切れ長の目がまた色っぽい〜〜。ある時は、黒地に赤や黄色などで小さな柄が入った粋な着物、またある時は落ち着いた赤い生地に花の絵がはいったような艶やかな着物。いつも何故か中振り袖で、襟はぐっと後ろに引いていて、まぁホントに人目をひく粋なお姉さんであります。 その艶やかさに、ちょっぴり不釣り合いな感もある高そうな黒い皮の大きな書類カバンを手に、いつも元町にある同じバス停で降りていかれます。やっぱり仕事人だわなぁ・・・とその華麗な後ろ姿を見送る私。 ちょっと後をつけて行きたくなるような、魅力溢れる大人の女という感じでしょうか。イメージとしては昔のCMであったような気がする「マダム・ヤン」みたいなチャイナドレスも似合いそうな感じの。いろいろ思いめぐらしてみた彼女の実体はさて? 私の超想像ではですね。〜〜彼女は、自分が始めた着物の着付け教室を、だんだん規模を大きくしていって今ではその筋では有名な(笑)凄腕社長で、海外にも進出していて〜社長ばかりが集まるようなパーティで知り合った、これまたその筋では有名な貿易をやっている香港在住の華僑の社長と結婚して〜今では名字も「楊(ヤン)」となり〜〜初心忘れず、無駄金使わず、渋滞する町中へはバスで通勤するんやでぇ〜〜今日も事務の若い女の子をビシビシ躾けるでぇ〜〜夢は大統領になるかもしれんヒラリー夫人の着付けやでぇ〜〜みたいな。 きっと当たってないやろな(笑)
|
|
おじいちゃんの推定年齢は73歳。身長150cm 体重60Kg 小柄でちょっぴり背中がカーブになってきていて、白髪の髪を短く揃えている。ちょっぴりかわいくてつぶらな瞳。色白でほっぺたがいつもピンク色をしていて、ちょこちょこっと歩く。かなり、りす系。 おじいちゃんはね、足下がちょっとおぼつかない感じがするんだけど、元気なんだなぁ。通勤客がどさっと降りていく駅前のバス停からいつも乗ってくる。品のいい、さっぱりしたおしゃれなカジュアルウエアに身を包み、頭にはいつもコールテンのチロリアンハット。おばぁちゃんが作ったの?という感じの手作りっぽい手提げ布かばんを持って。杖代わりのこうもりがさを持って。 おじいちゃんは、バスに乗り込むとき、よっこらしょっていう感じで一段一段ステップを上がってきます。その際、何か言ってるんだけど、すごくハイトーン&スモールボイスなので、いまひとつわからなかったんだな。 おじいちゃんは駅前のバス停から4つ目の百貨店の前を通り過ぎたオフィス街のバス停でおりる。で、またすたすたとどこかへと歩いて行く。 まぁ失礼ながら、この朝っぱらから彼は一体どこへ行くんだろう・・・と目をやってしまう。辺りは未だ開店していない商店街とオフィス街。銀行も馬券売場も未だ開いてないし、行き先は結局わからないのだけど・・。 おじいちゃんが、バスでつぶやくように言ってる言葉をようやく聞き取ったら、「どこいこ〜」って。 ん!まてまて。「どこいこ〜」って、おじいちゃん。それって今から「どこいこ〜」っていう意味?それともバスの中の空いている座席のどこに座ろうかな?っていう「どこいこ〜」なの? 聞いてみたいけど聞けな〜い・・・。どっちの意味だろなぁ。 お念仏のように、バスに乗る時はかならず言っていた。すごい時は、バスの乗り口手前、3歩あたりから言ってたの。バスの後ろの座席に座っていたので、よく聞こえたんだな。さすがに私もびっくりした。そこの時点から言うか〜??って。 でもしかし。バスに乗る前から言うということは、やっぱり座席の「どこいこ〜」じゃなくて、これから行く先を「どこいこ〜」なのか!? う〜む、こんな朝から「どこいこ〜」なんて、かなり暇を持て余しているのか。それとも、まさか徘徊!? どうでもいい私の心配を後目に、おじいちゃんは、すたすたと降りて行く。今日も元気だ・・。 おじいちゃん、どこに行ってたんだろう。今はバスの路線も変わってしまったから、どうしてるかなぁ。ちゃんと地下鉄に乗って出かけているかしら。いつものチロリアンハットをかぶって。 |
|
みんなが電車に乗り換える大きな駅前のバス停から、いつも乗ってくる40歳代のおじさん。たぶん恐らく〜サラリーマンだとは思うんだけど・・いつもとてもカジュアルな服装で。記憶にあるのはコーデュロイの茶色のパンツ。ポロシャツにジャケット。靴はたぶんスエードのひも靴で。髪はぴっちりとはしていないラフな七三分け。すこ〜し白髪まじりの。背丈は172cmという感じの中肉中背の年相応にお腹が出てきた感じの。表情は。すごくおとなしい感じの人で。少しうつむき加減で。どちらかと言えば明るいというよりは暗めの表情をしていて。服装もカジュアルに決めてる、というよりはほんの少しくたびれた感じで。 その方は一つだけかばんを手にして、それを大事そうに持って、空いている席に座る。 かばんは。明らかに、お弁当が入っていると見える小さなトートバッグ。白地に紺色の、2段重ねのお弁当がきっちり入るくらいの一番小さなサイズのトートバッグ。それだけを彼は持っている。 最初はね。かわいらしい人やなぁって思ったんだよ。男の人がお弁当だけ持って、それを大事そうに持っていて。なんかすっごい愛妻弁当って感じで。ギンガムチェックのお弁当包みなんかがちらっと見えたりして。でも。そういうのってどうだろうなぁ。お弁当だけ持っていけばいい職場ってどんなところだろう。世代としてはバリバリ前線で働いている感じだけど、とてもそんな風には見えないんだな。どちらかと言えばリタイアしたような感じなんだな。あの年齢で最早第二の人生を歩んでいる感じなんだな。 でも、それもアリかなぁ。みんながみんな同じことしなくてもいいんだよな。バリバリ働かなくっても、ぼちぼち働いてもいいんだよな。 ただ少し明るくなさそうな表情だけが、ほんのすこし気になった。あのおじさん、いまはどうしてるかなぁ。いまは地下鉄に乗っているかしら。いまもお弁当持っているかな。 |
|
よく分からない女の人が一人。いつも同じ時間のバスに乗っている。OLというには、やけにラフな服装で。いつもジーンズを履いていて、靴は皮のローヒールの四角いつま先のものを履いている。夏はTシャツと素足にサンダル。大抵、ぼんやり窓を眺めているか寝ている。表情はどちらかと言えば暗めで、時々ため息なんかついていたりして。髪は茶髪のストレートで身長は150cmという感じの細身。たまに起きては、まわりをじっと見たり。眠っているのか寝たふりをしているのか定かでない。 彼女はいつも同じバス停から乗ってきて、百貨店があるバス停よりまだ先の、海沿いのオフィス街に近いバス停で降りていく。 職業は。年齢は。 ミレニアムの年が終わった、まだ寒い頃から姿を見なくなった。どこへいったんだろう。転職したのかな。事務所がどこかへ移ったとか。派遣社員で派遣先が変わったとか。バイト先が変わったとか。 かれこれ5年くらい、ずっと同じ時間のバスに必ず乗っていたのに。 どこかで元気にしていればいいけど。 |