エイプマン・テリーの「人間になりたい」Vol.3
〜ワナダイズ特集に寄せて〜
さて、皆さんこんにちは。エイプマンです。僕が初めてワナダイズを聴いたのは、4〜5年前によく行っていたクラブ・イベントでの「You & Me Song」です。完全に後追いだったわけですが、初めて聴いたときの興 奮はまだ忘れられません。素晴らしいメロディーと高揚感のあるサウンドにKOされました。一気にワナダイズ・ファンになり、CDを購入しました。CDシングルで買った「Might Be Stars」をhide(X JAPAN)好きの弟に「めちゃくちゃ良い曲だから聴け!!」と言って聴かせたのを覚えています。弟は「良いね」と言って聴いていました。僕の好きなアルバムは1stの「The Wannadies」ですね。もちろん、You & Me Songの入ってる「be a girl」も「バグジー・ミー」も良く聴きましたが、1stのストリングスのメランコリックな旋律とソフトなサウンド・プロダクションが胸を締め付けられずにはいられません。「Together」と「Heaven」の2曲は僕にとって奇跡的な名曲ですな。改めて聞き直してみましたが当時が思い出されて、なんだかせつないですな。

〜キンクスのYou & Me Song〜
さて、僕ははPop iT!に参加する前にいくつかイベントをやっていたことがあるのですが、そこで必ず「You & Me Song」をかけていました。今の僕の選曲からは考えられないことかもしれませんが、当時は大好きで、大好きで、来ているお客さんとの一体感もこの曲は抜群だったです。 ところで「You & Me Song」というのは僕の大好きなキンクスにとっても重要なタームなので、その話を。(またキンクスの話かよと言わないで下さいね)。デビュー当時、まだ、まだスターダムには、ほど遠いバンドだったキンクス。ブレイクするためにどうしたら良いか。当時のマネージャーのラリー・ペイジはレイ・デイヴィスにアドバイスした。「君たちはYou & Me Songを書かなくちゃ」と。要するに歌詞に「君(You)」と「僕(Me)」が出てくる、子供達に分かりやすい曲を書いた方が伝わりやすいというわけである。というわけで、キンクスは「You Still Want Me」という曲を2枚目のシングルとしてリリースする(B面はYou Do Something To Me)。ヒット性十分のポップな曲だと思うが、当時は127枚しか売れなかったという。127枚って凄い数字だが、この曲、今回のPop iT!テープに収録したので、当時の「君と僕の歌」を聴いてみてね。その後あの有名なギターリフ(ガガガガガ)に導かれた「You Really Got Me」を3枚目のシングルとしてリリースし大ブレイク。一躍スター・バンドの仲 間入りを果たす(そういえば、これもいわゆる「You & Me Song」である)。その後の彼らの活躍はご存じの通り。「You & Me Song」がバンドの大きな転機をもたらした、というのは言い過ぎかも知れないが、一つの要素にはなったのかもしれない。

〜今月のテープ収録曲。テーマはベル・アンド・セバスチャンの断片的なイメージ〜
さて、今月のテープ収録曲であるが、今回イメージしたのは、ベル・アンド・セバスチャンである。ワナダイズを意識した選曲はイベント本編でのプレイで聴いて下さい、ということで、唯一、出る度にシングルも全てチェックする現在のバンド、ベル・アンド・セバスチャンの新譜が出たので、ベルセバ好きな人に聴いてもらいたい60年代や70年代の楽曲をいくつかピック・アップしました(1曲目のみ、上述のようにワナダイズの「You & Me Song」と関係して選曲したので例外)勿論ワナダイズ好きな人にもおすすめします。ベルセバというバンド、マジで引き出しの多いバンドだと思う。70年代シンガーソングライターの爽やかなかおりを匂わせつつも、シド・バレットやニック・ドレイクがそうだったように、なんだか浮き世離れした狂った部分を内側に感じる。彼らのレコードには、ロックのみならず、ジャズ、ノーザン・ソウル、ブリティッシュ・トラッド、フォーク、といった様々な要素が脈々と受け継がれたものが現在進行形で存在する。僕には、とても一筋縄では語れないが、僕の大好きな、60年代や70年代の刺激が彼らのレコードから感じられるのである。先頃リリースされた新作アルバム「私の中の悪魔」とシングル「Legal Man」も素晴らしい。シングルは最近よくクラブでもプレイされているダンス・チューンで、まるで、60年代の良質ポップスだ。フィル・スペクターがプロデュースしていてもおかしくない。アルバムに横たわる、ひんやりとしていてどこか陰のある世界観はブリティッシュ・ポップ特有のものだと思う。長く愛聴するだろう。

 というわけで、今回のテープ収録曲です。

1. The Kinks "You Still Want Me"
キンクスのセカンド・シングル。当時の売り上げは127枚。You & Me Songである。

2. Nick Drake "Hazey Jane II"
最もベルセバを感じるアーティスト。メディアでも共通点を指摘されていた英国のシンガーソングライター。憂鬱で孤独な感覚というのは、人間誰しも共通する感覚なのかも知れないが、それをここまで突き詰めて表現する人はあまりいないのでは。痛々しくも美しい、3枚のアルバムを残し、抗鬱剤の摂取過多で26歳で夭折した。ここに収録した曲は比較的明快な曲。2ndアルバム「ブライター・レイター」収録。

3. Julie Driscoll "A New Awakening"
去年ベルセバの人たちが主催したフェスティバル「ボウリー・ウィークエンダー」のフライヤーにはこのジュリー・ドリスコールというR&B/Jazz Rockシンガーの写真が使われていた。というわけで、英国ジャズ・ロック・シーンで唯一無二の存在感を誇るこの人のソロ・アルバム「1969」から。僕がPop iT!でもよくプレイする、ジャズ・ロック超名曲「インディアン・ロープ・マン」をブライアン・オーガーとトリニティーの素晴らしい演奏をバックに歌っているのもこの人。ここまで、声と楽器演奏が対等に迫り来るものはなかなかないでは。

4. Fairpot Convention "Farewell, Farewell"
ベルセバの持つアコースティックな質感が好きな人に是非聴いてもらいたいバンドです。ベルセバには、このフェアポート・コンヴェンションの様な、ブリティッシュ・トラッド・ロックの影を感じずにはいられません。テープに入れるには地味な曲かも知れませんが、たまには、ということで 。先月取り上げたアメリカのバーズとはまたちがった、英国のフォークとロックの融合を様々な要素と共に作り上げたのはまさしくこのバンド。今は亡きサンディー・デニーという人が歌っているのだが、この人の存在感も上記ジュリー・ドリスコールに負けてません。4作目「リージ・アンド・リーフ」から。ちなみに、前述のニック・ドレイクのバックもこのバンドの人たちが固めていました。

5.The Kinks "Sitting In The Midday Sun"
最後はまた、キンクスです(ごめんね。好きなんだ)ベルセバにもワナダイズにも多大なる影響を与えている(と僕は思う)バンドだし、この曲は全てのPop iT!リスナーに聴いてもらいたい名曲です。このメロディーはどうだろう!!「ひなたぼっこが俺の趣味」という秀逸な邦題がついています。「こんなに天気の良い日に、なんでみんな仕事なんかするんだろうね。俺には財産も何もないけど誇りってもんがあるよ」と歌うこの曲、悲喜こもごもな歌詞も泣けてきます。最近雨続きなんで、収録しました。

じゃ、今月のエイプマンはここまで。また来月お会いしましょうね。(Terry)

〜Pop iT! Freezine Vol.29より〜

エイプマン・テリーの「人間になりたい」Vol.2


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