エイプマン・テリーの「人間になりたい」Vol.6
皆さん、こんにちは。エイプマンです。

さて、すっかり涼しくなってきて、すっかり秋ですね。今回は前回も予告したとおりのサマー・オブ・ラブ前後の時代のレコードに ついて少し書きたいと思います。20世紀最後の秋に「ロックが夏だった時代」を振り返るのも、またオツなものだと思います。マンチェやブリット・ポップの直接的先祖ということで、今回は英国のレコードのみを取り上げました。

 ◇The Beatles / Revolver(1966年作品)◇
現代のポップ・ミュージックに与え続けている影響を考えた場合このアルバムの果たした役割はサージェント・ペパーズよりも直接的だと考えたので、これを取り上げました。ビートルズがスタジオでの実験を本格的に押し進めた最初のアルバムで、ステージでの再現が不可能な段階まで行き着いてしまったそうです。実際アルバム発売直後のツアーでは、この中から1曲も演奏されなかったそうです。「タックスマン」「アンド・ユア・バード・キャン・シング」「ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア」など名曲揃いですが、何と言っても極めつけはドラッグ・カルチャーにはまっていたと言われるジョンが「チベット死者の書」という本をモチーフに作った「トゥモロウ・ネヴァー・ノウズ」。30年以上も前の作品とは思えない斬新なビートとそこに乗っかるサイケデリックなサウンド・エフェクト。ケミカル・ブラザーズがこの曲を彷彿とさせる「セッティング・サン」を作ったように、古びていくどころか、さらに新しい魅力を身につけているように思います。この曲が現在のクラブ・シーンに与えた影響は当時のシーンに与えたのと同様、限りなく大きいと思います。この後、コンサート活動を一切やめたビートルズはさらに音楽的実験を加速していきます。そして、金字塔「サージェント・ペパーズ」を世に送り出すわけです。

 ◇Pink Floyd / The Piper At The Gates Of Dawn◇
さて、上記Revolverが発売された頃、アンダーグラウンドの世界で話題をかっさらっていのはデビュー前のピンク・フロイドです。 当時の最先端カルチャーである、サイケデリックの発信地であった「UFOクラブ」における定期的ギグで、すれすれの天才シド・バレ ット率いるフロイドは「ペインテッド・サウンド」つまり、音で空間に絵を描くというコンセプトのもと、ライティングを活かしたギグを重ねていきました。そんな中リリースされたこのアルバム。サウンド的には、シド・バレットの破綻しそうな精神状況を反映してか、多分に躁鬱的ではありますが、キンクスに通じるようなおとぎ話的な曲も、エコーをかけまくったギターとオルガンが暴れまくる曲も一様にポップなメロディーでなかなか親しみやすい作品ではあります。後者の様な曲は特にステレオラブみたいなバンドを好きな人にもおすすめです。ピストルズ等のパンク世代には敵視されたフロイドですが、この頃の彼らにはパンクに通じる感覚もあると思います。B面の1曲目に収録された「星空のドライブ」が特に圧巻。インストの長尺曲ですが、まさしく音が空間に絵を描いている感覚(この辺はマイ・ブラッディー・バレンタインやソニック・ユースなんか好きな人が聴いても面白いかも)。まさに、サマー・オブ・ラブ・ロンドンのサウンドトラックでは。

 ◇The Hollies / Butterfly◇
サージェント・ペパーズというアルバムが当時のロックシーンに投げかけた衝撃はすさまじいものだったらしく、この時期、サージェント・ペパーズ・シンドロームと言われたほど、影響を受けた名作がごっそり生まれた。ホリーズのこの作品もそのうちの一つと言われている。確かにシタールやタブラなどのインド楽器、クラシカルな雰囲気、サイケデリックなエフェクトをかけたサウンドづくり。サージェントな要素はこれでもかと言うほど盛り込まれているが、この作品をサージェント・フォロアーの数多くから際立たせる理由は、その美しいメロディーとハーモニーだと思います。おそらく、このアルバムを全て、簡素なアレンジに作り替えてもそのメロディーが心に響くと思います。個人的にはビーチ・ボーイズの「ペット・サウンズ」に匹敵する美しさを持つ作品ではないかと思います。この素晴らしい作品を作り上げた中心メンバーグレアム・ナッシュはこのアルバムが売れなかったことにより、方向性の違いを感じ脱退し、アメリカに向かい、C,S,N & Yで世界的な活躍をします。昨年も素晴らしいアルバムをリリースしました。

 ◇The Rolling Stones / Their Satanic Majesties Request◇
ストーンズからのサージェントへの返答と言われたこの作品は、ストーンズ・ファンの間では、評価が低いと言われていますが、90 年代のUKのバンドをチェックしている人にはとても親しみやすいアルバムだと思います。シタール、メロトロン、テープ逆回転、 サウンド・コラージュなどなど、これでもかというほどに、サイケな要素がてんこ盛りだが、ホリーズのそれとはちがうストーンズらしさというのは、思わずマラカスをシェイクしてしまう、独特のリズムなのでしょう。だからこそダンサブルなマンチェの時代に 「She's A Rainbow」がカバーされたのだし、「2000光年の彼方」を聴いていると、何となくローゼスやシャーラタンズやハッピー マンデーズを聴いている感覚と共通する何かを感じるのかもしれません。この作品から「Beggar's Banquet」「Let it bleed」等を聴いていると、いつまでたっても消えることのないUKのロックにおけるストーンズの大きな、大きな存在を実感します。

◇The Zombies / Odessey & Oracle◇
  ロッド・アージェントとクリス・ホワイトという優れたソングライターとコリン・ブランストーンという憂いを帯びた素晴らしいボ ーカルがたまらない、ゾンビーズの超名作!ホリーズのバタフライと双璧をなす、ブリティッシュ・ソフト・サイケの金字塔!駄曲一切なしのメロディーをコリン・ブランストーンが歌うのだから胸が締め付けられずにはいられません。反則です。サイケとは言っ ても、前述の作品とくらべ、一番サイケ的アレンジは抑え目。美しい鍵盤の響きが直接的に伝わってきます。皮肉な物で、当初本国イギリスでは全く受け入れられず、アメリカで発売されヒットした頃にはバンドは解散していました。本国アメリカでは受け入れられず、イギリスで受けたビーチボーイズのペットサウンズと全く逆のパターンですが、不思議な物です。ボーカルの声が似ていると 言われるタヒチ80のアルバムを買った人は全員買って下さい!と言っても言い過ぎではないと思います。

 ◇Traffic / Mr.Fantasy◇
スペンサー・デイヴィス・グループで15歳の頃からロンドンの音楽シーンを彩り続けていた天才スティーヴ・ウィンウッド率いるトラフィック。デイヴ・メイソン、ジム・キャパルディなど素晴らしいミュージシャン/ソングライターと共に作り上げた作品。こちらもサイケ時代のモードをふんだんにちりばめているが、スティーヴィーのソウル/R&Bの素養と強力なリズムセクションが織りなすサウンドは他とは一線を画し、サイケデリックでありつつグルーヴィー!ところどころプライマル・スクリームとの共通性を感じます。プライマルの4枚目の見開きジャケットの中の雰囲気はこの作品のジャケットの雰囲気と良く似ているし、プロデューサーのジミー・ミラーはプライマルの「Movin' on up」をプロデュースしています。プライマルが好きでマニのベースプレイが好きな人におすすすめしたい作品です。最新の再発CDにはアルバム未収だった、シタール・サイケ・ポップの名曲「Paper Sun」が入っているので、そちらをお勧めします。

まだまだ素晴らしい作品はあるのですが、今回はこの6作品です。物足りない方もいるかもしれませんが、興味がある人は是非聴いてみて下さいね!

というわけで、また来月まで、お元気で!!

〜Pop iT! Freezine Vol.32より〜


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