vol.10 「継続の重さ」(2000/04/27)

「継続は力なり」という言葉がある。
ぼくにとっては、あまり魅力のある言葉ではなかった。何だか人目につかずにコツコツと同じ ことをやるといった暗いイメージがあったのだ。
それよりも、「革新」や「斬新」という言葉が持つイメージの方を好んでいた。
「アホのひとつ覚えみたいに、おんなじことを何年間も続けとれるかい!」、「続けるだけな らアホでもできる」という気持ちがあったのだ。若気のいたりとでも言おうか。

ところが、最近になって「続けることこそが大事だ」と、考え方が180度変わった。
それに、単なるアホでは続けられないことも知った。

ぼくがいくつか運営しているコミュニティの中のひとつに"浪人会"というものがある。
仲間とともに始めて今年で14年目になる。当初から、どんな会にしたいのか、思い描いてい るイメージはあった。もちろん、イメージはその時々で、ぼやけたりくっきりしたりしながら 更新されていくわけだが、目指す方向は当初から変わっていない。
最近になって、ようやく思い描いていたイメージに近づきつつある手応えを感じている。枠を 越えていろんな人たちが応援、協力してくれるようになったのだ。
感慨深げに過去の14年間を振り返ってみる余裕もできてきた。
毎月会報を発行をしているのだが、この14年間、いつも締め切りに追われているようでもあ った。書き手を発掘することもけっこう大変だ。資金の心配も頭から離れない。何よりも当初 は、誰からも反応がなかったことがつらかった。
こんな状況の中、いつも「もうやめようかな。これで終わりかな」と思いながら、けっこう歯 をくいしばって続けてきたような部分もある。今もそうかもしれない。

そうやって、14年間も続けてきて得たものはいったい何なのか。コミュニティの運営ノウハ ウか? 根性か? そんな安っぽいものではない。実は、「信頼」の一点に尽きる。最近、「信 頼」の臨界点を越えた感触を得ている。この臨界点を越えるために14年間かかったわけだ。

話は変わるが、ぼくの妻は引っ越し好きだ。引っ越しそのものが好きというよりも、要は飽き っぽいのだ。飽きれば引っ越し虫が騒ぎ出す。今のマンションに引っ越したのも、暇つぶしの ようなものであった。
最近、またまた引っ越し虫が騒ぎ出したようだが、今度は、二の足を踏んでいるようだ。
というのも、今のところに越してきて5年が経つが、5年間で培った人とのつながりは何物にも 代え難い、と感じているからのようだ。
ご近所付き合いと簡単に言うが、スーパーに行けばレジのおばちゃんが話し掛けてくれ、コンビ ニに行けば店員さんが子供雑誌の付録をくれる。散歩をすれば誰かが声をかけてくれ、マンショ ン内では原始的物々交換が成り立っている関係は、この5年間の彼女なりの努力の賜物であろう。
5年という歳月は、近所の人たちとの「信頼」を少しずつ少しずつ積み上げた歳月でもある。

またまた話は変わるが、つぶれる会社というのは、創設後、3年以内というケースが多いらしい。 もちろん例外もあるが、会社を起こして3年もちこたえれば、第1ステップは何とかクリアーし たと言われている。
この3年という歳月に何の意味があるのか。ぼくなりの解釈では、周囲から信頼を得るための最 低期間ではなかろうか、と考えている。
資金繰りが苦しくても、逃げ出したくても、何とか3年頑張れば、「信頼」というものがわずか ずつでも後押しをしてくれるようになるのではないだろうか。
会社経営の経験はないが、3年間、持ちこたえるということは、それだけで尊敬に値すると、今 のぼくは思う。

さて、話は戻って「継続は力なり」。
続けるためには、創意や工夫、さらには自分が納得できる意義を見出すことが必要だ。そうやっ て、コツコツと続けることによってしか「信頼」は得られない。「継続こそが力」なのだと思う 。

それぞれの人が歩き続けた道というのは、けっこう重いものかもしれない。

(三浦伸也)

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