■ vol.11 「隙間」(2000/05/17)
ゴールデン・ウィーク中に、ご近所仲間とバーベキューパーティをやった。バーベキューといっ
ても、マンション内の駐車場の車を移動してもらい、あいた空間に、七輪やバーベキューコンロ
を持ち出しての、えせアウトドアではあるが…。
今回は、おとなも子供も合わせて、7家族26名の参加である。これに加えて、ぼくの少林寺拳
法の仲間たちが3名駆けつけてくれた。彼らの参加はいい刺激となり、普段、子供の話しかしな
いお父さん同士で、仕事の話をはじめ、いろんな話ができた。
さて、この少林寺仲間とご近所仲間は、今回が初の顔合わせであった。こういう場合、招待した
側としては、楽しんでくれているかどうかが気にかかる。輪に入りきれずにポツンとしていない
か、食事は足りているか、やることもなく手持ちぶさたになっていないか、などと気にしてしま
うのだ。
が、少林寺仲間3名に関しては、そんな心配はまったく不要であった。最初に、みんなに紹介を
しただけで、あとは自分で勝手に居場所を見つけて、初対面であるご近所の方々と談笑したりし
ていた。それも、話題が合う特定の人とだけではなく、いろんな人と話をしているのだ。
おまけに、子供たちの相手もするわ、クジ引き大会の進行助手もやるわ、料理の手伝いもするわ、
コーヒーをふるまってくれるわ…、何だかぼくの存在感の方が薄かったような気がする。
そんな彼らを見ていて、「うまく隙間に入り込んでいるなあ」と感心していた。
この"隙間"については、いろいろと思うところがある。
ぼくが、"隙間"を意識したのは、2年ほど前に外資系企業からの誘いを受け、転職した時期だ。
転職に際して、自分にはこれといった専門分野がないがやっていけるだろうか、という不安はあ
ったが、それ以上に、ゼロからビジネスを創造するということを一生のうちに一度は経験してみ
たいという思いの方が強かった。
いざ、フタを空けてみると、不安は的中。周りは専門家ばかり。研究者、コンピュータ技術者、
弁理士、おまけに英語が飛び交う。そんな中で、自分に何ができるのか、不安に苛まれる時期が
続いた。
不安に苛まれながらも、専門家の意見と現実との間には隙間があり、また、専門家同士の間にも、
隙間があることには気がついていた。しかし、ぼく自身がこの隙間を埋める役に回るには抵抗が
あった。何だか雑用係のような感じがしていたのだ。
依然、ぼくは自分に何ができるのか、自分にはどんな特異な能力があるのか、あるいはないのか。
そんなことばかりを考えながらも、専門分野を持たないぼくが唯一できる、隙間を埋める作業を
渋々やってはいた。あくまで渋々、である。
ところが、ある時、もうひとつのことに気がついた。"隙間"を埋めない限りは何も起きないし、
何も動かないということが。
例えば、研究者からはアイデアが出る。でも、誰が実行するのか。予算がとれれば技術者を雇え
る。でも、誰がその技術者を探すのか。
人と人の隙間はもっと面倒だ。会議で決まったことでも、総論賛成・各論反対で、各自はなかな
か動こうとはしない。それぞれを個別に説得して回るのも、隙間を埋める作業のひとつだ。
また、必ずしも正論が通らないのが世の常だが、決定事項に従いながらも、何とか正論に近づけ
るように、タイミングをはかりながら、働きかけることも隙間を埋めることであろう。
要は、これまでは、隙間を埋めても埋めなくても、大勢に影響はないと思っていたのだが、隙間
を埋めない限りは、物事は進んではいかないということに気がついたわけだ。人と人との間には
、必ず隙間があり、しかも人は単体では何もできないという前提に立てば、隙間を埋める作業は
必須となる。
そんなことに気がついてからは、胸を張って隙間を埋める作業をやっている。これらの作業は、
形として見えづらいので、なかなか評価されにくいが、「この隙間を埋めない限りは進まないぞ
」という自負がぼくを支えている。
"隙間"、仕事上だけではなく、いたるところにある。
冒頭で紹介したバーベキューパーティに参加したご近所のお父さん同士は、普段、お互いに「〇
〇君のお父さん」という立場で接しているので、興味はあっても仕事の話などはほとんどしない。
これが隙間なのだ。少林寺仲間3名が、見事にこの隙間を埋めてくれたおかげで、お父さん同士
は、仕事の話をはじめ、いろいろな話ができたわけである。
人が存在するところ、必ず"隙間"はできる。
この"隙間"を埋めることは、けっこう大事なことのような気がするのだが、これはぼくが専門分
野をもっていないが故の言い訳だろうか…。
(三浦伸也)
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