■ vol.26 「畑の出逢い」(2001/08/21)

8/14から8/16までの2泊3日で、小諸で行なわれた少林寺拳法の合宿に家族全員で参加してきました。
この合宿は、e-技術研究会というホームページを主宰する明竜さんの企画によるもので、ネット上で少林寺拳法について様々な角度から研究し、数ヵ月に1回程度の割合で、実際の練習会を行なっています。
今回はその合宿版です。
むちゃくちゃおもしろかったですぞ。
合宿の詳しいレポートは、 e-技術研究会のホームページ をご覧下さい。

この合宿の2日目の午後に、オプショナル・ツアーがありました。
ぼくと明竜さんの共通の友人である伊藤さんの畑に行って、生のとうもろこしをかじろう、というツアーです。
今回は、この「生のとうもろこしをかじろうツアー」についてのレポートです。

伊藤さんの畑は八ヶ岳。小諸からは、地図で見ると目と鼻の先です。
ところが、クネクネ道のノロノロ運転で2時間もかかってしまいました。
現実は常にこういうものですな。

畑に着くと、伊藤一家が待ちかねた風情で迎えてくれました。
我々は、幼児から子供、そして若者から中年まで、幅広い年齢層のズッコケ集団です。
このズッコケ集団が、嬉嬉として畑にのぼったら、途端に雨。
でも、大丈夫。我々はタープも用意していれば、テントの用意もあります。
ところが、用意はしていても、タープもテントも組み立てるのは初めて。
説明書を見てモタモタしている間に雨はあがってしまいました。
伊藤家の女性陣の「じゃあ、これ下に敷こう」の一言で、タープの屋根はシートに早変わり。
結果はどうあれ、お役に立てて幸いです。

生のとうもろこしをかじる前に、この日の主役の登場。
伊藤家の三女・祥(さち)ちゃんです。
祥ちゃんは、障害を持っています。
出産時のトラブルが原因(医療ミスの可能性大)で、医者からは「5歳まで生きられたら勲章ものですよ」とまで言われるほどの症状でした。
今、祥ちゃんは23歳。
祥ちゃん自身はもちろんのこと、伊藤家の人々の力が、この奇跡を起こしたのでしょう。

その祥ちゃんがお母さんに手をひかれて畑にあがってきました。
正直言って、ぼくも含め、みんなどういう反応をしたらいいのか、ちょっと戸惑い気味。声をかけていいのかな? そっとしとくのがいいのかな? などと各々が考えている様子。
でも、そんな戸惑いも束の間。
伊藤家の自己紹介、そして、我々の自己紹介が終えると、それぞれが自分のペースで畑での一時を楽しみました。

生のとうもろこしは絶品でした。
フルーツのように甘くてジューシーで。
こんな経験、ほんとに初めて。
来月、2歳になる双子の坊主たちも、むしゃぶりついて離さない。うまいものをよく知っている。
焚き火も存分にしました。
焚き火が好きなぼくのために、伊藤さんが数日前から薪を集めておいてくれたんです。
たくさんあったあの薪を、伊藤さんひとりで、集めては運んでくれたんでしょう。
感謝の気持ちを込めて、焚き火を楽しみました。
腹が減れば、伊藤さんの奥さんが、朝から作ってくれた、たくさんの食べ物をつまんでは、また、畑に戻るといった具合に、みんなマイペース。
祥ちゃんも屋根になりそこなったシートの上でマイペース。

そして、ぼくが、畑をあちこちしていると、散歩をしようと、伊藤さんに手をひかれた祥ちゃんとバッタリ。
祥ちゃんは、おもむろに右手を差し出してきました。
握手が好きだというのは聞いていたので、「これがあの握手だな」と思い、こちらも右手を差し出すと、柔らかい手でそっと握手をしてくれ、おまけに、何だか抱きつくような素振りまで。
そのまま手をつないで、数メートルほど散歩。
どうやらお眼鏡にかなったかな。

と思っていたら、びっくりすることが起きたんです。
祥ちゃんは、ぼくの手を自分の肩に回したんです。
実は、ぼくは、半月板をケガしていて、まだかなりひどいびっこをひいていたんですが、そんなぼくを助けてくれようと思ったんでしょう。
これには本当にびっくり。
伊藤さんは、「これじゃあ、どっちが介護者かわからんなあ。」と言って笑っています。

肩を貸してくれたお礼に、畑の回りをグルリと一緒に散歩。
畑に戻ると、ちょうど、我が家の双子とバッタリ。
祥ちゃんは、いつものように双子たちに手を差し出して握手をしようとし、双子は固まりながらも、握手をしてもらっていました。
このシーンはぼくの胸の焼き付いています。
伊藤さんには失礼な言い方だけど、祥ちゃんの知能は、双子たちよりも、何年か上くらいかな、などと推し量っていたんです。
ところが、あの握手のシーンは、これまで23年間、死にものぐるいで生きてきた者の風格が間違いなくあった。
「あんたたち、よく来てくれたわね」
と言っているようでした。
ぼくには確かにそう聞こえたんです。

さあ、楽しい畑の一時も、あっという間です。
いつまでも手を振ってくれる伊藤家の人たちをバックミラーで見ながら、畑を後にしました。

宿に戻ってからも、生のとうもろこしはやっぱり甘い。
伊藤家の優しさや愛情がしみ込んでいるのではなかろうか。
ものの例えではない。
証明なんてできないけれど、確かにそういうことってあると思うんです。
そういえば、以前に、畑のことについて伊藤さんに聞いた時、「命を育てているんですよ」と言っていた…。
伊藤さんが言うと、重いよな、この言葉。

オプショナル・ツアーにしては、とっても濃かったぞ。


(三浦伸也)

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