"金的カップ開発"の巻

現在、少林寺拳法の練習で使われている二重構造の金的カップ、フェイスガード、胴などは、実は、有志による乱捕り研究の中で生まれたものなんです。

当時、本部職員数名と、乱捕りの好きな拳士が集まって、週に1回、研究会をしていたんです。
少林寺拳法e-技術研究会の明竜さんも、そのメンバーでした。

メンバーの中には、女性拳士もいました。
女性拳士の乱捕りの戦術は、もっぱら待機構と乱構からの、目打ちと金的による反撃です。
攻者は、男性陣の役割なんです。

当時は、防具はまだ開発されていなかったので、顔面はスーパーセーフを使っていました。
金的は、既存の一重の金的カップ。
で、目打ちはまだいいんです。
問題は、金的なんです。
既存の金的カップだと効く、効く。
道場のあちこちで、男性陣はのたうち回っているんです。

で、ある拳士が、たまりかねて、金的カップをもうひとつつけたんです。
これが具合がいい。
これ幸いにと、みんなが二重につけ始めて、試行錯誤を繰り返すことになりました。
そこで、二重は二重でも、外側はピッタリ密着せずに、少し遊びがある方がより具合がいいことも発見しました。

こうなると、あれこれとアイデアが出てくるものです。
「金的に入った時に音が出るようになるとええんちゃうか」
「カスタネットがええで」
「キンタネットというネーミングで売り出しましょう」
なんていう意見が続々と飛び出し、東急ハンズであれこれと買い物をしました。

いざ、カスタネットを金的につけてやってみたのですが、フットワークをつけて飛び跳ねるたびに、「カチ、カチ、カチ」と。
これでは、金的を入れられて鳴ったのか、自分で鳴らしているのかわかりません。
キンタネットは企画倒れに終わりました。

しかし、この二重構造による衝撃力緩和の発見は、その後の防具開発の柱となりました。
その後の、胴やフェースガードの開発コンセプトも、すべてのこの二重構造が柱となっています。

それにしても、ものを創っていくプロセスというのはおもしろいですね。
キンタネットは、冗談ではなく、けっこう真剣な議論だったんですから。

フェースガードの開発は、顔面の防具だけに、実験はかなり過酷でしたね。
これは、いずれどこかでお話ししましょう。