vol.13 特別寄稿「オーダーメイドのシェフにお任せ練習」

あっという間道場では、月に1回程度の割合で練習会を行っている。
参加者は、マチマチだ。
経験もマチマチだから、実力もマチマチだ。
さらに、モチベーションもマチマチというのがおもしろい。
当然といえば、当然なのだが。

だから、参加者が大勢の場合は難しいが、極力、相手が何を求めているかに合わせたオーダーメイドのメニューを組む。
しかも、提供したいメニューと、それが可能かどうかといった環境とを考え合わせた、その時限りの「シェフにお任せメニュー」となる。

例えば、今回の練習では、柔道場が借りれず、剣道場でやることになった。
板張りの道場では、柔法は受身をとるのが痛い。
あっという間道場では、痛いことはやらない。
で、剛法をやることにした。

朝、お手製の即席パンチングミットを作ろうと思ったが、寝坊して時間がない。
ありあわせの防具でやるしかない。
参加者は男性が半数以上。
攻撃的な突き蹴りもやりたいだろう、と思い、防具で攻撃の練習。
でも、すぐにやめた。
あまり、ノッてないからだ。
男性であっても、ある程度の年齢の人は、攻撃にはあまり興味ないようだ。
相手が気にいらないことは押し付けない。

で、守者として当てさせる練習に移行。
攻撃をよける場合と、「さあ来なさい」という気持ちで攻撃を当てさせる場合の、心理的な違いを体験してもらった。
攻撃をよけようとすると、体は緊張するが、「さあ来なさい」と当てさせると、自然体でいられる。
これは、好評。

参加者の中には、女性もいる。嫁はんだ。
嫁はんを対象に、目打ち、金的を反撃とした戦術をさらっとやる。
嫁はんは、蹴りでの反撃をやってみたいといっていたが、これだけでは乱捕りにつながらない。
で、ひょっとしたら興味を持つかも、と思い、目打ち、金的の戦術を提示してみた。
まずは、この戦術で乱捕りをやってみせて、それに至るための法形を説明。
興味を持ったようなのか、真剣な顔で練習している。

中年男性組は、2人で組になって、あれこれやっている。
上達論から言えば、初心者二人での練習は、あまり誉められたものではない。
でも、これでいいのだ。
2人であれこれやっているのが楽しいから、やっているのだ。
この人たちは、何も一流の使い手を目指しているわけではない。
まずは、楽しんでもらえればそれでいい。

今回は、黒帯の学生拳士も参加。
ぼくの相手をしてもらうことによって、彼が何を求めているかを探る。
目打ち、金的の、一連の戦術には、興味を示したよう。
でも、彼には、他の戦術も披露した上で、一番、自分に合ったものを自分で選ぶのがいいだろう。

そうこうしていると、黒帯の彼から、柔法乱捕りについての質問。
「しっかりと掴まれてしまったらどうするのか。」
説明の前に、やってみせる。
で、一連の説明。
ちょこっとだけ攻者役になる。
ヒントがあれば、彼は自分で考えるだけの力を持っていると見た。
だから、ちょこっとだけなのだ。

こんな感じで、あっという間道場での練習は、オーダーメイドを心掛けている。
ぼく自身も、参加者のリクエストに応えて、新しいことを試さざるを得なくなる場合もある。
だから、教えながらでも成長できると思うのだ。
このオーダーメイドのシェフにお任せ練習、なかなか緊張感があってよろしい。