vol.19 「悪たれコンビと元祖悪たれコンビ」

スギちゃんちの息子タカ、小学2年生と、我が家の長男ガク、小学1年生。
2人は会った瞬間、スパークしてしまった。
それきり彼らは、合宿の最後まで、タガが外れるとかハメをはずすとか、そんななまやさしいものではない「フッ飛びぶり」だった。
2人で遊びまくって走り回って、菰野の森の野猿状態。

だいたい、家にいればいつも「かあちゃん、かあちゃん」とまとわりついてくるガクだが、合宿中、私はほとんど彼の姿を見かけなかった。
夜、翌日の着替えを出しておくと、6時前には勝手に起き出して、勝手に着替え、勝手に川やら森やらに行ってしまっていた。
で、1日中、2人して勝手にどこかで遊んでいた(らしい)。
なので、食事の用意ができたとか、道場に移動するとかいう時には、森に向かって「ガク〜! ガ〜ク!」と大声で呼ばねばならぬ。
すると、大ロッジからひょこっと出てきたりして、いつ、どこで何をしているのか、私には全然、ガクの行動がつかめていなかった。

彼が私のいる場所にいたのは、川で魚のつかみ取りをしてたとか、炊事場で割り箸を使って魚の内臓を取り出してたとか。
要は、ガクの興味のあることをやってる時に限られていた。
で、夜はタカと一緒に布団に転がるや、2人で大口開けて寝てしまう。
それきり朝まで、周りで何が起きても、チラとも目を開けない。
たぶん、菰野の大自然を最も遊び倒したのは、彼ら2人だろう。
そして、いつしか彼らは参加者に、"悪たれコンビ"という名誉ある称号(?)を与えられていた。

そんな彼らに、勝るとも劣らない「野生児」を、私は知っている。
タカの父スギちゃんと、ガクの父しんちゃん…うちのダンナだわね。
ダンナ、たまたま初日に温泉へ入れなかった。
で、夜になり、キャンプ場で、遅れて到着したしんたろ君と一緒に、川へ水浴びに行った。
真っ暗闇の中、2人で川に入ったら、もう夢中。
翌日、今度はちゃんと温泉に入ったのに、夜中、「川へ行こう」と言い出した。
またスギちゃんも「お、ええね」と嬉しそうに応えるんだ、これが。
もちろん、私も「行く!」と。
すると、ダンナ「アホウ!真っ暗やねんぞ!」。
アホはどっちやねん。
悪いが、かつて私は、明大の探検部と一緒に、鍾乳洞の奥を探検したことがあるのだよ。
その時、一点の光も入らない"真の闇"というものを経験しておるのだ。
それに比べたら、たいがいの地上の闇は闇ではないのさ。
第一、 この「アホ」の言い方が、気に食わない。
いかにも、自分達だけの楽しみを女に邪魔されてたまるかアッカンベー、って言い方だ。
なので、言ってやった。
「どうせ真っ暗で、あんたらのチンチンなんて見えへんねんからええやね!」

そういうわけで、元祖悪たれコンビは、さらに、もうりいさんも誘い、川へ下って行った。
私も行った。そしてフミちゃんも「水が冷たいのに、入るんか。アホちゃうか、ほんま」と言いながら、ちゃんとつきあってくれるのである。

この夜は、川近くのコテージの照明がついてたので、前夜より若干明るかったようだ。
ダンナ「明るいやね」と、文句ブーブー。
それでも、大きい白っぽい石が、ぼんやり見える程度。
下に石があると思って足を伸ばしたら空を切った、なんてことは、当たり前にあることだった。
私など、ほとんど地面にお尻をこするようにかがみ、両手で木の根っこや地面をまさぐりながら、下りたのである。

川に着くや、スギちゃん、もうりいさんとダンナはぱ〜っと服を脱ぎ、すっぽんぽんでじゃばじゃば川に入っていった。
「ひゃあ、冷たい。ああ、気持ちええ、うおお、ええなぁ!」
と奇声を発していたのが、気づくと静かになっている。
よくよく目をこらしてみたら、3人は水死体のように、ぷか〜っと川に浮いていた。
なんちゅうか。言葉もないやね、こっちにしてみたら。
再び這うような格好で上に上がると、ちょうどHIROさんの奥様に出会った。
川に行っていたと言うと、「え? 真っ暗だったんじゃない?」と。
なので、「うん。だから気をつけて行った」と答えると、「気をつけて行ったって…」と絶句された。
そうだよな〜。
やっぱり、夜中に、真っ暗な中を、懐中電灯も持たずに川まで下りていって、しかも、素っ裸で冷たい水の中に入るなんて、あんまりやらないよな。

でも、私はうらやましかったよ、平気で裸になって入れる彼らが。
本当は、私だって、やってみたかったんだ。
でも、いくら真っ暗でも、さすがにそこまではできなかった。
川まで同行するのが精一杯だった。
う〜ん、悔しい。
女に生まれたことに舌打ちした、合宿2日目の夜だった。