「6歳臼歯は歯の王様だ」(第5回・第6回)
この教室は、前の4回よりも内容を一ランクアップして設定し、これまでに1回でも参加したことのある
人全員に案内を出しました。
実施にあたたり、雑誌「歯科衛生士」で報告された「科学的な齲蝕予防への提言・カリエスリスクの判定
と対応」(1)、(3)およびMエイコ−発行の「カリエスリスクの判定のてびき」(3)を活用させても
らいました。サリバテストを当院で始めて実施するので、実施マニュアルを書いて手順を勉強したり準備を
しました。
チェック項目が多いので、大勢の参加者に対して待ち時間を少なくし、確実に項目を消化するため、親子
5人ずつを1班とし、これを4グル−プ編成にして進行しました。過去何回かの経験があるので、進行は極
めて円滑になってきました。
1 講演会
医学博士大野勝弘先生(当診療所勤務歯科医師)から「カリエスリスク」についての講演で、スウェーデ
ンでは妊婦に徹底したブラッシングや栄養指導を行って、子どものむし歯を激減させているということ、子
どもの口の中がむし歯になりやすい体質かどうかを検査して、むし歯の予防プログラムを作っていると聞い
て、これからの予防歯科の進め方を知りました。
2 カリエスチェックとシ−ラント対象者チェック
個別総合診断のためのカリエスチェックおよびシ−ラント対象者チェック(部位溝深第1大臼歯の確認)
を行いました。
3 カリエスリスク調査と歯のレ−ダ−チャ−ト
プラ−クの量・ミュ−タンス菌の数・ 唾液の緩衝能・唾液の質・裂溝の形・フッ素塗布の経験・むし歯の
経験・母親のむし歯の経験・子どもの飲食回数のデ−タを取り、これを基に、母親に子どもの歯のレ−ダ−
チャ−トを作ってもらいました(図13、14)。
図13 M君のカリエスリスク調査表
図14 M君の歯のレ−ダ−チャ−ト
4 個別総合判定
これは歯科衛生士の腕の見せ所です。第5回で出そろった子どものデ−タからその子の口腔の特徴を把握
し、これからの歯の健康について指導するのです。歯科衛生士ごとに子どもの担当を決め、一人ひとりにつ
いて指導内容を検討し、その後、全員の勉強会で討論しました。
ここで、個別指導の事例を紹介します。
事例1(鈴木歯科衛生士)
サリバテストと検診の結果をよく把握することで、家庭でも食習慣が幼児期のカリエスに大きく関与して
いることを改めて実感しました。
私が個別で対応したM君(5歳、図13・14)は、カリエスチェックでは口腔内のミュ−タンス菌の数、
唾液緩衝能、唾液の質ともにロ−リスクと恵まれており、定期的なフッ素塗布、母親の仕上げ磨きも定着し
ています。それにもかわらず、現在15本の処置歯がありました。そこで、家庭の食事内容について尋ねる
と、甘い物が大好きで、家で間食としてチョコレ−トでコ−ティングされた菓子類を多く食べ、全体として
チョコレ−トの摂取量が非常に多いことがわかりました。これまでの食習慣をこのまま続ければ、第1大臼
歯萌出中にカリエスができてしまうのではないかと思われました。
これからの口腔の健康にとって、シュガ−コントロ−ルがいかに必要かを指導し、フッ化第一スズ製剤を使
用して、ミュ−タンス菌による齲蝕を低下させることを強調しました。特に齲蝕予防で、定期的なリコ−ル
とPMTCで監視していく必要を痛感しました。残念ながら通院困難ということでしたので、今後不安の残る
患者さんでした。
事例2(柴田歯科衛生士)
T君(5歳)はプラ−クの量はハイリスクでしたが、母親の仕上げ磨きは毎日2回行われており、子ども
の歯に対する関心は高いことがわかりました。たまたま当教室へ出席するため、昼食後の歯磨きができてい
なかったということで、本当はそれほどハイリスクではないと考えました。T君は食事の量が少なく、体型
も小柄で細身ですので、母親は3回の食事以外に、チョコパンなどの間食を与えていました。私は間食の回
数、内容、時間の見直しと、歯磨きの指導に焦点を絞りました。母親は歯並びも心配していました。顎の発
育や、唾液をよく出すために、よく噛むことを勧めました。大好きなカレ−ライスも普通の料理方法では噛
む回数が減るので、ある雑誌で知った「具を大きくすると噛む回数が増えるのでよい」ことも説明しました。
T君は当医院の患者さんなので、3ヶ月ごとのリコ−ルでTBIなどを進めています。デ−タだけでなくよく話
を聞くことが大事だと思いました。

