外見によって命名される鬼


・披髪鬼

群衆の前で奉先殿の沓形(しゃちほこのようなもの)が突然落下して披髪鬼になり、泣きながら宮殿を出ていった。すると周后の宮中から突然。
「天子様のお出まし」という声がした。それで身なりを整えてうかがうと、皇帝の車の列のように厳粛であったが、近くに来ると年老いた女性で、年老いた神官が
「この方は太后でございます、神宗をお生みになったかたです。」と言った。ここにいう披髪鬼が神宗の生母の化身であったことは明らかである。披頭散髪であるので披髪鬼と命名されたのである。

・破面鬼

徐候嗣が、
「愚鈍を廃して聡明を立て、法律は優れていたのに、宰相に才能がなかったので今日のようなことになったのだ。」というや、東昏候は瓶を徐候嗣の顔に投げつけて、
「お前を破面鬼にしてやる」と言った。破面鬼とは顔が傷だらけで血だらけの鬼に他ならない。

・長面鬼

ある裁縫師が夜なべ仕事をしていると、急に腹が痛くなったのですぐ便所に行った。人がいないのを確かめてから入ったが、しばらくすると腹痛が治まったので頭をもたげて一息入れていると、穴の右側にも人がいるのが目に入った。顔の長さが数尺もあり、不気味で恐ろしかった。裁縫師はびっくり仰天してズボンを引っ張り上げながら狂ったように走って出た。家に向かう途中前方から人がやって来たが、その様子を見ると便所に行くところの様なので、
「いま便所に行って来たところですが、顔の長さが数尺もある悪鬼に出会いました。便所に行けば-きっと怖い思いをするでしょう。」と教えてあげた。
「わたしを見たのですか。」
裁縫師が灯を上げて見ると、その人の顔の長さは前よりいっそう長かった。裁縫師は肝を冷やし、気を失って倒れてしまった。

そのほかにも、外見によって分類されるものとして、大頭鬼、小面鬼、長鬼、独足鬼、無頭鬼などいろいろな鬼がいくらでもいる。


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