職能によって命名される鬼


・判冥鬼

大体判官と同じで、鬼界で鬼を管理する官司である。冥界の判冥鬼は十人で、そのうち二人は女である。

・掠剰鬼

商人の不浄の金を略奪する鬼。
民楚という老僧は、商人の章と親しく付き合っていて、章が死ぬと祭壇を設けて数カ月も読経していたが、ある日、市場で章に出会った。民楚は、
「きみは死んだはずなのに、どうしてここに姿を現したのかね」と聞いた。
「微罪なのにまだ放免にならず、いま掠剰鬼として揚州に派遣されて来ているのです。」
「掠剰鬼とはなにかね。」
「役人や商人の稼ぎには節度があるべきで、それをこえて得たものはわたしが掠めてもかまわないのです。いま、この世にはわたしのような者が多勢おります。」
そして路上の人を指さして
「某々もそうです。」と言った。しばらくして老人が通りかかると、
「あの老人もそうです。」と指さした。呼び寄せて話をしていたが、まもなくするとその老人は姿を消してしまった。民楚は章と一緒に歩いていったが、花を売っている女に出会うと、章は、
「この女も鬼です。売っている花も鬼が使う花で、この世では役に立ちません。」と言った。そしてその花を買い、民楚に渡して
「この花を見て笑う者はみな鬼です。」と言い、別れを告げて立ち去った。その花は赤くて香ばしかったが、非常に重かった。そして途中でその花を見て笑う者は少なくなかった。
寺の北門まで来ると、急に鬼の花を手にしていることに不吉なものを感じ、花を堀に投げ捨てると、水がはね上がる音がした。あとで見に行くと、それは死人の手であった。

・算命先生鬼

生前に算命先生であった鬼。鬼に化したのちも、運勢を占う能力には変わりがない。

・討債鬼

人に化身して金を借りている人の所に行き、勝手気ままに金を使って没落させたり破産させたりして。討債(借金の取り立て)という目的を遂げる。

・勾魂鬼

人の魂を奪うことを仕事にしている鬼。
蘇州に余という闘蟋蟀(コオロギを戦わせる遊び)が好きな男が、ある秋の日、鉢を持って封門外に捕りに出かけたところ、戻ってくるのがすっかり遅くなり、すでに城門が閉まっていた。非常に怖いけれども名案も思い浮かばず、門の周囲をうろうろしていると、そこに青い服を着た男が二人やって来て、余に笑いかけ、
「こんな遅くなって家に帰れるのですか。わたしどもの家はあまり遠くないから、泊まっていきませんか。」と言った。
余は大喜びで二人について行った。二人の家に着くと、玄関の扉は二枚とも大きく開いていた。余が腰を下ろすと、青い服を着た二人がそれぞれ酒と乾し肉を持ってきて、一緒に飲んだり食べたりし始めたが、病人のうめき声や大勢の人の騒ぎ声がかすかに聞こえてくるので、余がその理由を聞くと、
「隣家の病人の容体が急を告げているのです。」と答えた。
しばらくして四時を過ぎると、二人はひそひそと話をしてから、
「そろそろいいでしょう。」と言い、靴の中から文書を取り出すと、
「この紙に息を吹きかけて下さい。」と言った。余は訳が分からなかったが笑いながら言われたとおりにした。すると二人は、足を屋根に掛けて舞い上がり、身の丈が一丈余りもあり、手には鶏のような爪が生えていた。びっくりして問い質そうとしたが、二人の姿は消え失せ、壁の外で泣き声がしきりにするだけなので、やっと人でなく勾魂鬼に出会ったことに気付いた。
飲んだり食べたりしたものは、みな死者の家のものであったので、盗人と思われて捕らえられたが、余が事情をつぶさに説明し、蟋蟀の入っている鉢を指さして、
「盗みをするのに、どうしてこんな余計なものを持ってくるものか。」と言い、なんとか難を逃れることが出来た。

この他にも夜巡鬼、宅鬼などがいる。


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