PC's BAR 第4回
「課長、ISDNでHTMLがOCNなんですぅ!」

Sorry, Only in Japanese.

 いまや大流行のISDN。インターネットならISDNとばかりに、通常のアナログ電話回線をISDNにしている個人ユーザが激増。TAの品薄状態が続いていたとか、回線工事が順番待ちだとか、もう「大人気」の状態。そこにOCN(Open Computer Network)なんてものが聞こえ始めて、いまやデータ通信の世界は大混乱。でもちょっと聞いてみたいんだけど、そんなアルファベットの嵐の中で、だれも混乱していないの?
ISDN

デジタル回線って、ほんとにピポパのことだと思ってる人って、多いようですよ。いや、マジで。レーザーディスクの音はデジタルだけど、映像はアナログだってことも、あまり知られてないようですね。
■酒場にて聞く
■困惑の用語
「おーい、イマガワくーん、ここここ」
「めずらしいっすねえ、課長がこんなとこに寄るなんて」
「ほれ、そりゃ、イマガワくんのお教えを乞うとなりゃ、この程度はしなきゃ、ねね」
「別に、たいしたことは知りませんよ、わたしだって」
「まま、そう言わず、ささ。ビールでいいよね」
「あ、どうも、いただきまあす。ぷはあ」
「というわけでね、でね、イマガワくん」
「何が『というわけ』なんすか」
「またまた、知ってんでしょ? こんどの異動のこと」
「部長昇進っていうやつでしょう」
「それそれそれそれ」
「それが?」
「ほれ、インターネット。ボクも、やっとかないと、やばいんだよね」
「へ? 課長、会社で使ってるじゃないっスか、そんなの」
「ま、そーなんだけど、ほらほら、同じ昇進であのイソベのばかも部長になるんだよね」
「あ、そーなんスか。じゃ、インターネット関係は問題ないんじゃないですか」
「なーに言ってんの。ボクがイソベのばかに頭下げられると思うぅ?」
「そっかあ。ま、そりゃそうですよねえ」
「でねでね、自宅の機械にもインターネット入れようと思ってね」
「インターネット入れる……っていうか、インターネット始めるってことっスね」
「それそれそれそれ」
「あー、ぜーんぜんノープロブレムじゃないっすか。課長のマシンってこないだ買ったやつですよねえ。そんだったら、ちゃっちゃっちゃーっで、すぐにつながると思いますよ」
「そっかなあ。今の機械だって、結局、暑中見舞いの印刷できなかったからなあ……なんか、ムズカシイんでしょう、インターネットつなぐのって?」
「そんなこたないと思いますよ」
「でねでね、ま、インターネットつなぐのは、なんとかなるとしてだな、ホームページってやつをね、始めたいんだよね」
「課長がっスかあ?」
「わるい?」
「いえ、ぜんぜん。でも、ナニやるんすか?」
「何って、ほら、ボク前から、趣味で城のプラモいっぱい作ってるから、そんなのの写真とか載っけようかなあ……なんて」
「あー、いいんじゃないすか」
「で、プロバイダは、選んだんだけど、ISDNの方がいいのかなあ、なんて思って」
「ISDNって、会社名じゃないすよ。デジタル通信サービスのことです」
「あ、そーなの。でも、うちの電話、ピポパだよ」
「いや、課長、それはデジタル回線じゃないんすよ」
「あ、そーなの。そんで、ISDNって、どうすりゃいいの?」
「NTTで契約するんですよ」
「NTTは、INSネット64でしょ?」
「いや、だあぁら、それが、ISDNですって。そんで、課長、TAは買ったんですか?」
「いいや。なにそれ?」
「つなぐやつですよ」
「だって、うちの機械は、ぜえんぶ入ってるモデム内蔵のだもん」
「いや、だあああぁら、ISDNは、TAが必要なんです」
「あ、そ。で、それって、いくらぐらいするの?」
「DSU内蔵でも、4〜5万ってとこじゃないっすかねえ。もっと下がってたかな」
「ちょっちょっ、ちょっと待ってね。NTTのINSは、……えーと、ISDNだと、そのTAにDSUは付いてないの?」
「あのね、課長。INSネット64はNTTのISDNサービスで、そのためにはTAとDSUが必要で、DSUをNTTからレンタルか買取るかしないのなら、DSU内蔵のTAが必要なんです」
「…………」
「なんか、混乱しました? 課長、ねえ」
拡張子:

DOSの時代から、Win3.1の時代まで、ファイル名は、8.3といって、「8文字+ピリオド+3文字の拡張子」という決まりごとがあった。Windows 95になってからは、この制限がとれたので、野放図に長いファイル名も付けられるようになったが(それでも制限はある)、個人的には、いまだに8.3のルールを遵守している。「まるで尺貫法にこだわる大工の棟梁のようだ」と言われても、ここだけはなんとなく譲れない。それに、認識しやすいからといって、いちいち長いファイル名を付けるのが、面倒で仕方ないのだ。でも、正直に告白すると、ときどき、長いファイル名を付けていることもあります。はい。
■アルファベット略号は
■すでにもう満席?
 実は、ネットワークの話ではない。
 前々から、気になっていたことが顕在化しつつあるこの状況に対する話だ。
 たとえば、最近よく聞くようになった用語は、WWW、URL、FTP等々のインターネット用語。これに加えて、ISDN、OCN、DVD、なんていうのがハヤリの単語といったところだろうか。そう、ISDN以外は、ぜんぶ3文字のアルファベット。
 3文字のアルファベット……何か思い出しませんか? そう、言わずと知れた、ファイルの拡張子である。
 略号とはいえ、ほとんど暗号の世界に突入しつつあるこの拡張子。TXTやDOC、BMPやEXEなどというのはもうおなじみ。DLLやDRVというのも、なんことやらわからないまでも、「なんとなくソフトを動かすのに必要なヤツ」ぐらいの認識はあると思う。
 そんなのじきに満杯になってしまって、困らないのかしら?……というのが、前々からの懸念だった。「なにをバカなことを」と思われるかもしれないが、実際、ファイルの拡張子を付ける際にちょっと困ったことはあったし、ついこの前まで、DOCというのが、ワードのファイルなのか、単なるテキストデータのドキュメント・ファイルなのか、行ったり来たりのトラブルめいた話があったこともある。
 Windows 95になっても、データファイルとプログラムとの関連付けのために用いられるのは、この「たった」3文字の拡張子である。試みにファイルの拡張子を変更してみればいい。すると「拡張子を変更すると、ファイルが使えなくなるかもしれません。変更しますか?」という半ば脅迫めいたメッセージが表示される。
 だって、アルファベットたった3文字! いつか絶対にバッティングする。いや、すでに数多くの拡張子がバッティングしているのであった。それを拡張子に限らず、すべての略号にまで広げれば、はなはだしい量の略号バッティングが発生しているだろう。
 ATMなんて、ワタシが考えているATMと、DTPユーザが考えているATMでは、まったく異なるATMであろう。また、COMと言われて古くからのDOSユーザなら、「あの」COMファイルを思い出すだろうし、インターネット関連の先端プログラマなら、もうひとつ別のCOMを考えるだろう。もう、むちゃくちゃなのである。
 まあ、これはあたりまえの話であって、アルファベット3文字の並びを考えると、大文字小文字を区別しなければ、そのパタンは、26の3乗、つまり17,576種類「しか」存在しないのだ。この中で、意味を表現するのに適当なものを選んでいけば、自ずと略号のバッティングは発生する。「17,576種類」と聞くと多そうな感じがするかもしれないが、これはかなり少ない値だ。
Four-letter Words:

普通「フォーレター・ワーズ」と言うと、 四文字の卑猥な単音節語のことを言います。
■Do You Like
■Four Letter Words?
 そこで登場したのが、アルファベット4文字略号である。あー、前言撤回。そんなことはありません。ほんとうは、そんな理由で4文字になったのではない。省略する際に、その方が意味を通じさせやすいから4文字になっているだけのこと。
 しかし、これまでは、もしも用語を略号化して表現せねばならない状況下になった場合、なんとかして3文字に納まらないだろうかと思案していたと思う。また、Win95環境になってそんな制約もほとんどなくなったからか、へーちゃらで4文字略号が使われるようになったのは事実だ。
 インターネットを利用している人ならわかるだろうが、そのウェブページ・ファイルの拡張子は、HTMLかHTMがほとんどだ。で、例の暗号のようなURLの頭にあるのが、HTTPであるのは、もうご存知の通り。もともと、UNIX文化を土台に広まったインターネットであるから、こういう省略した用語を使うのはウルトラ得意技のひとつなのである。
 さらに、さまざまな4文字略号も増加してきている。VHSの前にSの1文字が付いたときは、かなりやばいなあと思ったが、どうも人類の認識能力が高まっているせいか(冗談)、その後も4文字略号は増加の一途をたどる。前にも例に出したが、ブランド名ならDKNYだし、新スタートレック(Star Trek : The Next Generation)は、STNG。コンピュータ関係で言えば、今年の話題には、JAVAとSOHOなんていうのもある。
 ちなみに、26の4乗は、456,976。これだけあれば、困ることはないだろうとか思うには思うのだが、どこか、ふと不安がよぎることもある。だからといって、26の5乗、11,881,376もあれば安心だろうとか、そういう話ではないんですけどね。
4文字:

MSFT、AAPL、というのが何のことかご存知ですか? 実はこれは、アメリカの証券市場におけるマイクロソフト社とアップル・コンピュータ社の略号なのです。4文字のアルファベット略号は、ここでかなりの数が「消費」されていますから、4文字で命名の際にはバッティングしないように確認しておいた方がいいですよ。杞憂ながら、念のため。
■アルファベットに
■泥酔する
「かちょー、かちょー、きいてるう?」
「ああ、ああ、聞いてるよお、モチのロン。HTTPのHTMLだっけ? イマガワくん」
「……うーーん、ま、いいか。そんなのは、どうでもいいです。いつかじきにおぼえますから」
「いやいや、じきにじゃ困るんだよなあ、ボクとしても」
「やってるうちに、おぼえたくなくても、おぼえちゃいますって」
「そーかなあ」
「そーですよお」
「だってだってね、録画予約だって、まだおぼえられないんだよ」
「それはそれで、ちょっと問題だと思いますけど……、これとは別の話です」
「なんか、コンピュータとかインターネットって、そういうアルファベットばっかりで、それだけでも、ボクみたいな初心者には、壁になってるような気がするなあ」
「別にコンピュータに限った話じゃないんじゃないッスか? ほら、PHSとか、ABSとか、普通に使われているのも、アルファベットが多いじゃないですか、最近」
「そーだねえ。でも、なんでまたそういう省略をやるのかなあ」
「省略しないとうっとうしくて仕方ないからでしょ」
「でも、わかりにくいじゃない」
「でも、使いにくいでしょ?」
「でも、わかんなきゃ使えないよ」
「でも、わかったって仕方ないと思ってんじゃないすか?」
「だれが?」
「その用語の名付け親」
「……そうか」
「そうですよ、それにほら、こないだウチの社長が自分の肩書きを、CEOにしようとしたとか、しないとかいう話があったじゃないすか」
「ああ、ああ、あったあった」
「あんなの、ぜーったいホントの意味なんてわかっちゃいませんよ」
「だろうねえ」
「意味なんて、わかんなくたっていいんですよ、たぶん」
「そうかねえ……あ、社長で思い出した」
「は?」
「いやほら、なんたらネットワークに入るとか使うとか、社長が今朝、言っててね」
「OCNですか」
「それそれ。で、それって何のことなの、イマガワくん?」

■来年流行る
■略号は何?
 この符丁のごときアルファベットの略号が、ちょっとした壁になっていることはわかる。だからといって、すべての用語を日本語で表記するなんてことは、不可能だ。世界が小さく小さくなってきているいま、むしろどこでも使える略号は、便利で使いやすい。
 それに、なんといっても、コンピュータ文化というのは、もともとが、海の向こうからやってきたものである。証拠は一目瞭然。机の上にあるはずのキイボードのキイトップには、アルファベットが堂々と並んでいるではないか。ひらがなだってあるという意見もあるだろうが、それはあくまでもオマケに過ぎない。
 海の向こうからのものなのだから、アルファベット略号を使うのは、ごくごく当然の話。その方が入力だって簡単だし、視認識性も高い。グローバル・マーケットにも対応できる。
 そして、3文字コトバになれた現在、だんだんと4文字コトバが増えようとしている。普通に考えると、あまりにもおぼえにくいだろうと懸念し、命名の段階で3文字を採用しそうなのだが、3文字コトバが増えてしまった今、少々おぼえにくいのを突破して、それで記憶してもらえるとその浸透力は、3文字の比ではない。
 ISDNが流行ったのは、そんな風に、どうも4文字だったからのように思えて仕方ないのだ。もちろん、3文字が流行らないと言っているわけではない。ただ、単なるアルファベット3文字は、「どこかで見たことがあるようなコトバ」として扱われ、強烈に記憶に残ることが少なくなるのではないか。
 だからというわけではないが、OCNも、OCNTとかDOCNとか(特に意味はないが)、4文字にした方が、どことなく流行りそうな気がする。「そんなことは余計な世話だ」と言われそうだし、OCNはOCNで、すでにほとんど成功を約束されているようなものだから、ま、これでいいんだろうな。それに、「しかし、PHSだって、TRFだって3文字だ」と言われれば返す言葉がないのだが、とりあえず、「SMAPがある」と答えておこう。
 それはともかくとして、来年に向けて商品開発を担当しておられる方、アルファベット4文字商品なんて、どうですかね?
(FMV Family No.4, 1996 / SOFTBANK Corp.)