2000年11月
| 11月29日(水) しずかちゃんがやってきた と言っても、のびたくんの彼女でも、キムタクの彼女でもない。 亀井静香政調会長である。 氏は、私たちがどれほど恵まれない施設で研究にいそしんでいるか、視察に来たのだ。 政治家のセンセイが来る、というのはけっこうな一大事で、前前日から、大学の事務方のえらい人が下調べに来る。 亀井氏をご案内するルートを決めるのだが、なまじなデートコースの下見よりも気合いが入っている。 さていよいよ当日。 朝からM教授はスーツにネクタイ。 ふだんの、白衣腕まくり姿からは見ちがえるようだ。 午後、4年生のA君が、窓から外を見て 「すげー、黒塗りの車が来てる」 と言うので、見てみたらそのとおり。えらそうな車が何台も縦列駐車している。 「今、下のK研究室にいるらしいよ」 などと、次々と入ってくる情報。 わが研究室に、こんなにも優秀な隠密がいたとは。水戸黄門もびっくりである。 さて、いよいよ大名行列がやってきた。 一番最初に来たのはテレビクルー。 続いて、スーツを着た偉そうな人、人、人。 亀井氏は、M教授の部屋にて短い対談をしているらしい。 で、やっとご尊顔を拝せるか、と思いきや、またスーツ&バッジのおじさまの集団。 院生部屋の入り口で、まだかまだかと首を伸ばしていたら、 間近なところで、聞きおぼえのある声がした。 「ここは何をする部屋ですか」 亀井氏だ。思ったより小さい。 「学生や院生が勉強をする部屋です」 などと、皆でお答えもうしあげる。 「何人くらいで使っているの?」 「6人です」 「えっ、ここで6人?」 ざわめきが走る。センセイ方は、ふだん、どんな広いスペースに居住していらっしゃるのだろう。 亀井氏は大きな声で言う。 「そうですか。大変でしょうが、もう少しがまんしてくださいね」 私はすかさずおうかがいした。 「どれくらいでしょう?」 どっと沸いた。 「いや、私が来た以上はちゃんとやりますから。待っていてください」 苦笑いしつつ亀井氏は去った。 あとでM教授が、「よくやった」とほめてくださった。 「どれくらい?」のツッコミは、総長も大喜びであったらしい。 亀井殿、『ちゃんとやる』発言、一大学院生はしっかとおぼえておりますぞ。 理学部2号館の改装と予算アップは、どうぞ在任中にお願いいたします。 11月28日(火) 緑と久保田 今週後半から学会に出かけるみなさんの壮行会をする。 技官のKさんが買ってきてくれたおいしいお酒「緑」と「久保田」。 つまみのメインはみそ田楽。 「緑」はほんとに、うっすらと緑がかっていて、見た目もきれい。 女の子好みのお酒のチョイスには天才的なKさん、今回も大成功。 口当たりがよくて、甘ったるくなくて、すっきりしていて、どんどんだまされて飲んでしまう。 「久保田」にうつるころから、お客さま激増。 外の寒さをものともせず、盛り上がった内分泌学研究室でした。 ------- 本日の細胞 みな順調に育っている。 ひと安心。 本日の川原嬢 人体で、潜伏睾丸を試してはいけません。 11月27日(月) 時ならぬピクニック いつもお昼を買いに行くお弁当屋さんで、今日の日替わりA弁当が、なんと松茸ご飯! それを知った私たちは、お弁当戦線に万全を期すべく、11時半にGo. 8人前のお弁当をぶじ注文し、お店の前でできあがるのを待っていると、 次から次へとお客さんがやってくる。 植物の某先生もすばやくA弁当を注文しつつ、私たちを不安げに見ている。 ・・・買い占めたりはしてないのに。 余裕でお弁当戦線に勝利した私たちは、松茸ゲットとお天気の良さに気分をよくし、 「よし、外で食べよう!」 という合意に達した。 高いところが大好きな私は屋上を提案し、助手の先生2名を含む8人が、理学部2号館屋上でのピクニックとしゃれこんだ。 空はどこまでも青く、日射しは暖かく、かわいい白セキレイが寄ってくる。 お弁当はおいしく、適度にくだらない会話をかわし、 (「ここにビアガーデンをつくろう」とか) これで缶ビールがあったらなあ、という欲望と戦いつつ、晩秋のランチを楽しんだ。 -------- 本日の掃除機 培養室でも使える掃除機を買うべく、カタログを見て比較検討。 排気の出ないタイプがほしいのだが、どれも似たり寄ったり。 排気レス&コードレスという両方の長所を兼ね備えたものがないのがくやしい。 助手のM先生と4年生のKさんとカタログを見ているうちに、 いつのまにか便利な家電談義になる。 ・・・食器洗い機、ほしいなあ。 11月26日(日) キムタク結婚 ということで世紀末である。 工藤静香に赤ちゃんができたそうで、これ以上の説得力はない。 できちゃった結婚だけは、頭が悪そうだから避けてほしかったのになあ。 この上、もしも福山雅治までが結婚したら、私は世をはかなんで、山にこもるだろう。 そんな日は、永遠に来ないように願いたい。 *** ** *** 今日は、朝からいいお天気。 調子に乗ってカーテンを洗い、ふとんを干し、掃除機をかけ、 風呂場まで洗ってしまった。 ベランダから遠くに見えるサンシャイン60が、ぼんやりと霞んでいた。 あたたかな一日だった。 池袋はあいかわらずすごい人出。 ビックカメラに集まる人々を見ていると、不況なんてほんとかしら、と思ってしまう。 研究室で細胞の世話をし、さぼっていたお勉強を若干。 Eくん、Kさんも休日出勤。 今年の4年生は勤勉だ。 ---------- 本日の細胞 チョーさんは、薬剤を増やしたにも関わらず、たいへんな元気である。 広いディッシュ(シャーレのこと)にお引っ越し。 すくすく、のびのび育ってほしい。 チョーさんにかまけるあまり、コスりんの植え継ぎを忘れていた。 あわてて、新しい、栄養たっぷりの培地にうつす。 どうも不遇なコスりん。 私が悪いのだけど。ごめんね。 11月25日(土) 日記第2弾 夕飯の買い物に行ってきた。 いつのまにか、ハウスものではない、ほんとのだいだい色のみかんが山積みになっている。 八百屋さんの店先で、ゆで栗がおいしそうな湯気とともに売られていた。 おなかのすいているときに買い物に行くのはよくない。 ついつい、余計なものを買ってしまう。ヨーグルトとか。 帰り道は、いつもと違う道を通ってお散歩。 新しい家が建っている場所があって、前はなんだったかな、と考えたけど、どうしても思い出せない。 さて、今夜はぎょうざとビールだ。 ・・・その前に、ヨーグルト、食べちゃおうかな。 11月25日(土) FTPがうまくいかなくて更新が遅れました 昨日は大きなイベントが2つもあった。 ひとつめ。 野中研より、大きなウサギを2匹もいただき、供試。 麻酔を過剰量打とうと思ったが、体重がわからない。 (はかりがふりきれてしまうため) 助手のMさんはそのウサギを抱いて、「軽い、軽い」と言う。 「だいたい2キロくらいかな」 ・・・大ウソである。麻酔がちっともきかない。 結局エーテルでねむらせたのだが、あとで別のはかりではかったところ、ほぼ4キロあった。 息子さんがすっかり大きくなったからであろうか、 Mさんの感覚が、やや鈍っているとみた。 Special thanks to: せいたさん ふたつめ。 芸大の奏楽堂に、レクイエム2連発を聴きに行く。 一曲は三善晃(という人。はずかしながら、昨日まで知らなかった)。 もう一曲はモーツァルト。 たいてい、最初は一生懸命聴いて、途中でうとうとして、 Sanctusでびっくりして目が覚める、というのがパターンなのだが、昨日は一睡もしないで聴く。 隣に愉快なおばさんがいた。 「開演5分前です」というアナウンスで、まず時計をたしかめる。 それはわかる。 さて、いよいよ開演となり、指揮者が棒を振り上げた瞬間、 また時計をたしかめた。 ・・・なぜタイムキーパー? ------- 本日の細胞 遺伝子を導入したチョーさんは、とても元気に生きている。 薬剤の量を増やした。 明日かあさって、広いシャーレに移して、のびのび育ってもらおう。 本日の物欲 iBookの重さが3キロであることを知る。 ウサギより軽いわけだ。 ますますほしくなる。 11月21日(火) 名曲喫茶 本郷三丁目の駅前には、「麦」という名曲喫茶がある。 むかーしむかし、父と母が"おでいと"に使っていたという、いわくつきのお店だ。 タイムスリップしたような雰囲気と、音楽と、いつまでいても叱られない気楽さが好きで、私もよく行く。 濃いめのコーヒーもおいしい。 先日、テレビを見ていたら、渋谷の道玄坂上の名曲喫茶が紹介されていた。 「だんだん来る人が少なくなったのです」 と、気むずかしそうなマスターが言っていた。 どうしてでしょうか、という問いに、彼は答えた。 「やっぱり、ビートルズがもてはやされだしてからでしょうね。若い人たちが、クラシックを聴かなくなりました」 ・・・ビートルズが原因? やはり、名曲喫茶では、どこかで時がとまっている。 ビートルズのアルバム「One」が発売された。名曲ぞろいだ。 すでに、古典となりつつあるビートルズ。 クラシックの敵とは思えないのだけど。 「麦」でコーヒーを飲みながら本を読んだり、友人と長いおしゃべりをしたりする時間が好きだ。 っていうか、立派なエスケープなんだけど。 今日の内容は、先生方にはご内密に。 --------- 本日の会議 助手のMさんが、大量にスキーのパンフレットを持ってくる。 午後のお茶の時間に、みんなでそれを見ながら、スキー会議。 今年の春、うまれて初めてスキーというものをした私としては、ぜひぜひ、またやってみたい。 足手まといになることが予測されるので、今のうちからみなさんの機嫌を取っておこう。 本日のお買い物 文献管理ソフト「EndNote」を購入。 これは便利だ。 Medlineで検索して、タイトルと著者とアブストラクトをそのまま持ってきて、かんたんにリファレンスをつくれる。 なんたるちあ、さんたるちあである。 データベースをつくると、とても仕事をしたような気になる。 まるで論文を書き上げたかのような充実感。 いやいや、こんなバーチャルな達成感にひたっていないで、がんばろう。 明日から。 11月20日(月) 安全運転ができなくなるとき 細胞の培養は、車の運転に似ている。 注意力が必要で、でも緊張しすぎてはダメで、長く作業していると、手と足だけが惰性で動き、ふいに意識が飛んだりする。 細胞の培養は、もちろん、とてもクリーンなところでやる。 細胞が育ちやすい環境は、雑菌・カビにとってもよろこばしい環境だから、こまったちゃんが混じらないように、細心の注意を払って、「無菌操作」というのを行う。 (こまったちゃんが混じることをcontamination、略してコンタミという) 作業は、クリーンベンチと言って、こんなところの中でやる。 ガラス戸の下から手を突っ込んで、クリーンな環境を保つわけだ。 細胞の培地(液体)はガラスびんに入っている。 このびんの開閉にも、えらく神経を使う。 ふたを開けるときは、まずガスバーナーでふたをあぶり、ふたを開けたら、今度はびんの口をさらにあぶり、またふたをあぶって、軽く口にかぶせておく。 この口のところが、いちばんコンタミしやすいからだ。 細胞の培地をかえたり、あたらしく培地をつくったり、と、延々、無菌操作を続けていると、だんだん意識がモーローとしてくる。 びんの口をあぶる操作などは、あまりによくやるから、ほとんど無意識に手が動く。 ガスバーナーのスイッチは足で操作するが、単調な"ガチャン、ガチャン"という点火の音を聞いていると、ますますぼーっとなる。 さあ! ここだ。 A細胞用の培地をB細胞に与えてしまったり、思わず滅菌操作がいいかげんになってしまったりするのは、まさに、この瞬間である。 注意1秒、ケガ一生。 培地がちょっとくらい違っても、細胞はけっこう育ってくれる。 しかし、コンタミはおそろしい。 培地を吸い上げようとしたピペットの先が、 "カツン"とびんの口にさわったことを見逃して、(あるいは、まあいいや、と無視して)汚れたピペットで培地を吸ったがために、次の日、真っ白に雑菌のふえたシャーレとびんを見るなんざ、もっともおそろしい。 慣れたときの油断・疲れ・ねむけが大敵なのは、運転といっしょだ、と思うゆえんである。 ・・・実はみんな「俺はけっこう無菌操作はうまい」と心の中で思っているのも、運転といっしょかもしれない。 というわけで、 ---------- 本日の細胞 チョーさんはそこそこ生きている。 あと三日くらいすると、完全に薬剤が効いて、遺伝子の入ったチョーさんだけが生き残ってくれるはず。 がんばれ〜。 先週の金曜から、新しい細胞を飼いはじめた。 COS−1細胞といって、サルの腎臓の細胞だ。 愛称は、コスりん。 じょうぶなやつらなので大丈夫だろう、と手を抜いてチョーさんとおなじ培地を与えたら、どんどん死んでしまった。 あわてて、最適な培地にかえる。 ごめんねコスりん、元気に育ってね。 本日のSSKさん よく素性のわからない人と、とても親しげに話をした後で、 「あの人誰だっけ」と聞きに・・・ もうじき36回目のバースデーだというのに。 ひどい風邪声。 おだいじに。 11月17日(金) ボジョレーを買いに。 さて週末。 週末といえば、お酒。 お酒といえば、この時期はもちろん、ボジョレー・ヌーボーでしょう! 初物は寿命をのばすと言うし、第一、酒は百薬の長である。 とか何とか言いつつ、池袋東武・プラザ館のワイン売場へ。 しかしプラザ館1Fの天井を飾る金色のビラビラは・・・何? 今って七夕? でも、間から雪だるまやサンタがのぞいているところを見ると、 クリスマスなんだろうな、きっと。 おばちゃんたちも、口を開けて見上げている。 そりゃそうだろう。なかなかショッキングなインテリアだ。 ワイン売場にでかでかと「ボジョレー解禁」の看板。しかし、ひところのフィーバーほどの熱気はない。 山のようにワインが並んでいる。ずいぶん種類があるのに驚いた。 店のおばちゃんに聞くと、16・7種類あるとのこと。製造元やナントカが違うんだそうだが、よくわかんない。 百聞は一献にしかず、というわけで、お楽しみの試飲♪ プアーな表現をお許しいただきたい。 味の濃いやつ・薄いやつ、 酸味の強いの・弱いの、 と、けっこう違いがある。 (酵母の系統が違うのだろうな、やっぱり) 新酒だからか、すごく複雑な味わいっていうのはない。 あんまり軽いのはものたりないし、酸っぱいのはつらい。 頼りなくはないけどさわやかで、口当たりがよいものをえらぶ。 というわけで、今日買ったのは「JOSEPH DROUHIN」というメーカー(?)のもの。 なんだかフランスっぽくない名前だ。 2000って書いてあるのがうれしいなあ。 ラベルとっとこうっと。 みなさま、よい週末を。 --------- 本日の細胞: どうも心もとないのだが、入る細胞には遺伝子が入ったとみなして、 お薬によるセレクションをかけることにする。 目的の遺伝子といっしょに、ある薬剤耐性の遺伝子も入れたので、ぶじに遺伝子が入った細胞は、その薬剤をかけても生き残る。 不幸にして遺伝子の入らなかった細胞は、薬剤によって死んでしまう。 かわいそうだが、しかたない。 この上は、一個でも多くのチョーさんが生き残ってくれることを願う。 本日の新製品: おニューのオートクレーブ装置(高圧滅菌の機械)が到着。業者の人がいろいろ整備してくれている。 今後の活躍がとても楽しみだ。 今までの古いオートクレーブで、イモをふかして食べた人がいた。 ・・・そりゃ、ま、圧力釜にはちがいないけどさ・・・ あたしゃやだよ、培地のにおいがしそうで。 11月16日(木) 寒い日 昨日の日記が聞こえたのかどうか、今日はとても寒い一日でした。 電車のシートの暖房が、とてもうれしい季節になりました。 ・・・総武線のシートが、暖かいをとおりこして、熱いくらいだった。 今日は、フェローの先生がふたりもお休み。 英語のO先生と二人きりで、さみしいフェロー室でした。 生徒の来ない空き時間に、お茶を飲みながらよもやま話をしました。 受験生気質の性差について、etc.。 女の子は、実にコンスタントにがんばり、男の子は要領が悪い。 どうしてなんでしょうねえ、と言ったら、 「そりゃ、男の子は気が散るんですよ、いろいろと」 そうなんですか?>男子諸君 --------- 本日の細胞: リン酸カルシウムの沈殿の量が少なすぎたようだ。 大きい固まりは、いっぱいできたんだけどなあ。 大きすぎて、細胞は取り込めないだろう。 ・・・やり直しだ。 ごめんねチョーさん。 また痛い思いをさせます。 元気で体調を整えてちょうだい。 11月15日(水) 今年の秋 キャンパスの紅葉・黄葉が、なにかヘン。 妙に暖かいせいか、木々の葉の色づきかたが、あまり美しくない。 毎年、赤や黄色にあざやかに染まる葉も、なさけない茶色になって、 枝にしがみついている。 銀杏は青々としているし、なんとなく落ちつかない晩秋。 ---------- 本日の細胞: 12:00 朝、見てみたら、元気に増えつつある。対数増殖期というやつだ。 これからちょっと、イタイことをしなければならないが、このぶんなら耐えられるだろう。 がんばれチョーさん。(CHO細胞という細胞株なのです) 18:50 チョーさんに、痛い思いをさせてしまった。 遺伝子を導入したのだ。 リン酸カルシウムの固まりにDNAをからませて、細胞にくっつけると、細胞はそれを取り込む。 赤剥けの肌にざらざらの石をくっつけられるようなもので、 さぞ痛かっただろう。もう少しの辛抱だからね。 でも、たくさん遺伝子を発現してね♪ 本日の小泉さん: ぐうぜんにも、私とお揃いのファッション(黒のタートルとジーパン)。 わー、おそろいねー、と盛り上がる。 「あ、でもYukkoさんのはグレーですよね」 ・・・これはね、何度も洗ううちにね、深みのあるグレーになったの。 もとは黒だったの・・・ 11月14日(火) 君たち男の子♪ 重役出勤してしまった。 東上線に乗り込んだら、J北高校生(男子校)の集団がみっちりとつまっていて、たいへんに男の子くさい。 脱いだくつしたを丸めて手に持っているやつもいる。 うーむ、と思ったが、彼らは感心に座席には座らずにいるため、オバさんはよろこんで、若者たちを横目にどっかと腰を下ろした。 なにかのテストが終わったのだろうか、開放感に満ちあふれて、ぴーちくぱーちくおしゃべりをしている。 高校1年生と見た。 「なんだよお前、そんなの着信見たらわかるだろ」 「どこで見んだよ」 「知らねーのお前、ここだよ、ここ」 携帯電話をいじくって遊んでいる。 ちらりと見たら、その4人のかたまりでは、4人ともが携帯を持っている。 しかも、ひとりはN502it。 おねいさんより上位機種。生意気である。 だが、その集団内で、リアルタイムでメールのやりとりをしているあたりがかわいい。 むこうの集団では、マンガを読んでいたり、ゲームボーイをしていたり。 健全で安上がりな、とても好ましい姿だ。 こちらの集団で、なにやら話が変わっている。 A:「俺さー、ゆうべ親とけんかしてさー」 B:「けんかなんかすんなよお前。めんどくせーじゃん」 A:「あんなにキレたの1年ぶりくらいだぜ」 B:「もっと大人になれよお前。俺、親とけんかなんかしねーぞ」 なぜ男の子は、二言目にはオマエオマエとつけるのだろうか。 A:「だってお前の親、すげーやさしそうじゃん」 B:「そうか?」 どこで見たのだろう。授業参観か? そりゃやさしい顔もするだろう。 A:「うちの親、すげー意地悪そうに見えただろ」 B:「んなことねーよお前。お前の親、美人じゃん。 俺の親なんてすげーブスだぜ。思わなかった?」 『親』というのは『母ちゃん』のことであったか。 しかし、かーちゃんの容貌を云々するのが「大人」の態度だろうか。 大騒ぎしつつ、彼らは池袋のカラオケ屋に向かった。 ・・・金持ってるなあ。 でも、お勉強もしようね、と、おねいさんは心の中で呼びかけたのだった。 Go! Go! --------- 本日の細胞: 明日、少々過酷な試練を与えなければならない。 心なしか育ちがよくないのだが・・・ 明日には生き生きと元気を取り戻しますように。 今日はあたたかくして(ま、いつも37度だけど)、ゆっくりおやすみ。 本日のけいちゃん: 「軽井沢シンドローム」、すごい勢いで読んでいるねえ。 11月13日(月) 寝不足とアメフラシ 今日は研究室のセミナーで、論文抄読。 ゆうべの睡眠時間はナポレオンより少ない。 ねむい。 今日読んだのは、アメフラシのGnRHの生理作用についての論文。 GnRHは、私が研究しているホルモンだ。 アメフラシと言えば、なつかしの臨海実習。 泊まりがけで、海の生物を用いた実験・観察をする、楽しい実習である。 アメフラシは雌雄同体である。 私たちが合宿の飲み会明けで、ねむい目をこすりつつ水槽をのぞくと、やつらは何頭も一列につながって、交尾している。 順ぐりに精子を与えっこしているわけだ。 それをひきはがし、麻酔を打ってさばき、神経節をとりだして、活動電位を測る。ひとでなしのしわざである。 麻酔を打たれたアメフラシ。 これはほとんど、スライムである。 しらふのアメフラシですら、"でろーん"というイメージがある。 しかし、ねむりこけたアメフラシにくらべれば、はるかにきりっとしている。 いかに泥酔したとしても、しらふのアメフラシレベルにとどめたい。 さて、アメフラシは、血清にも血球にもGnRHを持っている。 しかも、それぞれの性質が違うらしい。何をしているのだ、そんなところで。 その上、排卵促進ホルモンを分泌する神経細胞に、GnRHはダイレクトに働くという。 アメフラシ、おそるべし。 ラジオイムノアッセイについての勉強が足りず。反省。 ------- 本日の細胞: ゆうべ植え継いだひとたち・・・元気に増えている。のびのび育ってほしい。 本日の大腸菌: 冷蔵庫に寝かせておいた、貴重な大腸菌のプレートにカビが! これだから真菌はきらいだ。水虫の親戚のくせに、生意気。 あわてて別のプレートに、コロニーのお引っ越しをする。 11月12日(日) 恐るべし、紫外線 幼いころの私は、冬季限定で色白の美少女だった。 人より早く日に焼け、人より早くその色が抜ける。 どうもここ数年、冬になっても、なかなか色が白くならない。 さては、これが「トシ」というやつか? と私は悩んでいた。 ところが、この秋のはじめに、助手のM先生が実験中の私に声をかけた。 「そんなことしてると、ガングロになっちゃうよ」 私はいったい何をしていたか。 DNAを精製していたのである。 さまざまな長さのDNAがいっしょくたになった溶液から、長さ別にDNAを分けたいときは、寒天でつくったゼリーを使う。 (寒天-アガロース-でつくったゲルなので、アガロースゲル、もしくは単にゲルと呼ぶ) このゲルの片方の端にDNAを乗せ、電圧をかけると、DNAは負の電荷を帯びているから、プラス極に移動することになる。 アガロースはご存じのとおり、繊維の固まりだ。 したがって、大きなDNAほど、この繊維の網の目にひっかかりやすいため、移動するのに時間がかかり、小さなDNAはスイスイとプラス極側へ移動する。 というわけで、DNAを大きさ別に分けることができるのだ。 こんなかんじ。 下側がプラス極なので、下に見えるバンドの方が小さいDNA。 このDNAは、紫外線を当てると光る物質で染めてある。 したがって、上の写真で見て、一番大きなDNAを取り出したいな〜と思ったら、ゲルに紫外線を当てたまま、その部分だけを切り出す、という操作をしなくてはいけない。 M先生が私に注意したのは、まさにこの操作をしているときであった。 紫外線はなにかと有害なので、アクリルでできた防護マスクがある。 私は、めんどくさがって、そのマスクをしていなかったのだ。 眼鏡をかけていれば目は保護されるよね〜、どーせ一瞬だしいいや〜、と思っていた私。 しかし、その一瞬に浴びる紫外線の量は、予想以上に多いと聞き、 (鼻の頭の皮がむけたという人もいた) 以来、きちんとマスクをつけ、手袋をするように心がけた。 すると! なんと最近、私は色白になってきたのだ。 ちょっと色味の明るいファンデーションを秋口に買っていたのだが、最近、肌との色の差がなくなったのに気づいた。心なしか、ノリもよい。 これは喜ぶべきことだが、昨年ホワイトニング化粧品につぎこんだお金を思うと、やや胸が痛む。 色を白くしようと努力する一方で、ガンガンに紫外線を浴びて、その努力を打ち砕いていたなんて・・・なんておバカな私。 11月11日(土) ねつ造 今週は、実にニュースに事欠かない一週間でした。 アメリカ大統領選挙に、遺跡ねつ造に、重信房子逮捕に。 科学者のハシクレとして、やはり気になるのが、例のねつ造事件です。 ふしぎでしかたないのは、考古学という学界の、チェック機構の甘さ。 何人もの人で、検証に検証を重ねる、ということはないのか。 出てきた結果に疑問を持ったら、とことん議論するということはないのか。 だって、石器の年代なんて、成分分析をしたら、一発でわかるものではないの? と、素人ながら、思ってしまいます。 科学の対象になるものは、「再現可能」なものである、とよく言われます。 遺跡の発見は、再現可能ではないのかな。だからむつかしいのかな。 ここからは踏みこむのがむつかしい領域になりますが、 ねつ造する学者の心について。 「こうあったらいいのに」と思われる、自分にとっての真理をねつ造してしまう。 いつのまにか、願望に引きずられてしまう自分がいる。 日常でも、よく起こりうる心理と思われるだけに、なにか人ごとではない、笑えない事件でした。 11月9日(木) 美食の日 今日のお昼は、指導教官のP助教授に「びふてき」をおごっていただく。 ほんとうは「びーる」もほしかったな〜と思っていたら、ラボの一部の人々が、「びーる」つきのランチをとっていたことが発覚。 しかし、「びふてき」はやはり、心を豊かにする。 ゆとりで、あら、そう?と言える私。 必要に迫られて、今度イタリアで開かれる学会の事務局にメールを出す。 当然のことながら、英語だ。 いきなり、一行目からつまずく。 「Dear ○○」しか、出だしのレパートリーがない。 (女子高生時代によく書いたし。「Dear ななちゃん」とか) 事務局宛だと、どうすればよいのだろう。「御中」に当たることばはないのか? あわててネットで検索して、 「Dear Sirs:」という言い方を見つける。 いいのだろう。「なんだとぉ〜」と怒られる言い方でもあるまい。 K塾で3時間、めいっぱい受験生の面倒を見る。 フェローという個人指導専門の講師なのだが、ほとんど「なんでも相談室」である。 実にいろいろな質問が来る。 「シーラカンスってなんですか?」 (・・・そんなことシーラカンス・・・とは言えない) 「今日の授業で、先生がなんか言ってたんで、とりあえずノートとってきたんですけど、何が言いたかったのかわからないんです。教えてください」 (おーい、その先生に聞け〜。っていうか寝ながらノートとったろ。読めないぞ) 「発生って結局どういうことなんですか?」 (結局って・・・) 「俺、将来なんになったらいいっすかね〜」 (それこそ、そんなことシーラカンスだぁ〜) そういった質問に、眉ひとつ動かさず、にこやかに答える。 お給料をもらっても許されるだろう。 さて、夕ご飯は、なんと鯛である。 なんの脈絡もなく、鯛の煮付け。おいしかった。とりあえず、めでたい。 「どっちの料理ショー」を見ていたら、シュークリームが食べたくなった。 これを食べたら、究極の美食の日だなあ。 今日もまた、よい一日でありました。 11月8日(水) 千駄ヶ谷の金田一耕助 年上の友人と、横溝正史について話していたら、彼女が興味深いことを言った。 「私、千駄ヶ谷で、どうみても金田一耕助っていう人を見たの」 彼女の目撃談によれば、 『格好は土木作業員風、小柄で細身でくせ毛』 そして、憂い顔がどう見ても、彼女の金田一像にマッチしていたというのだ。 彼女は2年前まで勤め先が千駄ヶ谷にあった。 そして、朝の通勤電車で、その金田一氏を見かけて「おぉっ!?」と思い、次の日、ビクタースタジオの方から坂を上ってくるところにすれちがい、「おぉぉっ!!」と思ったそうなのだ。 「ぜったい探偵業に違いない、って今でも信じてるんだけど」 ヨコミゾ風な人(おばあさんとか)はしばしば見かけるけど、これぞ金田一っていう人はそうそういない。 私の勤め先であるK塾という予備校が、実は千駄ヶ谷にある。 そのK塾の隣には、なんと、探偵事務所(会社?)がある。 そのことを彼女に話したら、「知らなかった〜」とやや興奮していた。 さあ、かの金田一氏は、探偵か? 探偵でないか? 2年たった今でも、あのへんにいるだろうか。 まったく違うかっこうをしていたら、間違いないだろう。 折しも、明日はK塾の出講日。 サラリーマン風の金田一とすれちがうかもしれない。 もしかしたら、K塾の講師にまぎれこんで・・・? みなさん、金田一氏を見かけたら、どうぞご一報を。 11月7日(火) 霜取り雑感 今週は、研究室の実験用冷凍庫の霜取り週間。 霜取りは、一大事業である。 研究室の構成員は、各自ひとつずつ、冷凍庫の棚をもらい、そこに試薬やサンプルなど、凍結保存すべきものをしまっておく。 したがって、霜取りの際は、自分の棚に入っているものをビニール袋にまとめ、別の冷凍庫に移さなければいけない。 他人の棚に間借りをするわけだから、荷物はコンパクトにまとめる必要がある。 これがたいへんなのだ。 研究室生活も長くなると、試薬やサンプルはどんどん増える。 これは液体を入れる「チューブ」という。 長さ4cmほどのちっちゃい代物であるが、とにかくこいつが増殖する。 水に溶けたさまざまなDNAや、試薬を小分けにしたものなど、今回調べてみたら、200本近くあった。 紙製のラック(紙箱に穴を開けてチューブを立てられるようにした清貧グッズ)に一見、無秩序に並べてあるため(本人だけがその秩序を理解している)、それらをビニール袋に詰めて移動するとなると、バラけてたいへんなことになるおそれがある。そうなったら、元にもどすのは神経衰弱よりたいへんだ。 毎シーズン、霜取りの際に頭を悩ますところである。 しかし! 今年のわが研究室には、若干の金銭的ゆとりがある。 なんと、ふた付きの、しかもプラスチック製のチューブラックが山のように購入されたのだ。 私は嬉々として、チューブの整理に着手した。 ・・・が。 きちんと秩序を理解しているつもりだった、それらチューブたちが、実は真に無秩序に存在していることがわかったのだ。 ずっと昔にとったサンプルで、すでに今後の実験には使わないのにとっておいたもの(PCR productとか)。 なぜかあちこちから見つかる、同じ種類の試薬(薄めたプライマーとか)。 番号しか打っていない、身元不明のチューブ(プラスミドとか)。 しばしボーゼンとしていたら、「Yukkoが整理整頓をしている」というのでわらわらと人が見物にやってきた。 ・・・せっかく人のいない部屋に持ち込んでやっていたのに。 見せ物ではないぞ、こら、と言っても聞かばこそ。 「なんでこういうもの取っておくかな〜」 「そーそー、これが増えるんだよね〜」 などと、てんでに勝手なことを言ったあげく、「あ、いいもの持ってるじゃありませんか。いらないんだったらくださいよ」 ほとんどフリーマーケット状態になってしまった。 なんとか整理を終え、すべての試薬とサンプルがシステマティックに収まった。 ビニール袋詰めなど屁のかっぱ。 とても有能な研究者になった気分である。 次は、勉強机の霜取りをせねば。 11月6日(月) 週明けから泣き 以前、所属していた研究室から、当時の上司、S氏がみえる。 開口一番、 「私はひじょーに、機嫌が悪い」 あわてて椅子をお出しし、ほこりなど払う。 正座はちょっと無理なので、とりあえず座り直してみる。 さて、おそるおそるS氏の顔を見上げると、 やおら、懐から一枚の紙を取り出し、彼は読み上げた。 「I am sorry to inform you....」 先は読めた。 卒業研究の内容を、ある雑誌に投稿していたのだが、載せられない、と突き返されたのだ。 ちきしょー、と言いながら、レフェリー(論文の内容を審査する人)のコメントを読む。 ひとりめ(白星判定): 「This is a clearly written and experimentally sound paper.」 (「とっても明晰に書けていて、実験もしっかりしたよい論文である」) どうしてこういうふうにみんな書けないのだ? と、ぶつくさ言いながら読み進む師弟。 ふたりめ(黒星判定): 「It's interesting, but I am frustrated by some aspects of the study.」 (「おもしろい研究だが、私はいくつかの面で失望した」) frustrated! 口の利きかたを知らねーのか、こいつは。 と、だんだん口の悪くなる師弟。 で、本来ならば、三人目のレフェリーがいるはずなのだが、 そいつはいっこうにコメントをよこさないらしい。 で、雑誌側はしびれをきらして、1対1で「No」の判定を下したというわけ。 あーあ。でもまたがんばるぞ! 11月3日(金) 文化の日 少々二日酔い気味で登校。 本郷通りで、「スポーツ報知」が小旗をくばっていた。 ジャイアンツの優勝パレードが、こんな江戸のはずれまで来るのか、と思ったら、ちがった。駅伝だった。 テレビに映りたいなー、と思ったけど、私には旗をくれなかったので、すねて2号館にこもる。 なんでおじさんに旗をあげて、妙齢の私にはくれないのよ〜。 そこはかとなくすりよったのに。 ------- 4年生のE氏に習って、細胞を起こす。 ほほう。細胞培養とは作業場の整理整頓が大切なものであったか、と感心していたら、Eくんに 「これで性格改善ができるかもしれませんよ」 と言われてしまった。 ふん。 やってやろうじゃないのさ。 という決意とともに今日は帰ろう。 みなさま、よい週末を。 |
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