体感音響研究所

ボディソニック効果の探求
目次
第3章 ボディソニック・システムの応用施工例
第4章 期待される体感音響振動の応用





第5章 音楽療法について 健康科学の視点から

序章 情報を持つ体感音響振動こそがボディソニック効果の正体である
第1章 音楽療法とボディソニックの効果
第2章 ボディソニックはなぜ音楽療法に効果があるのだろう

ボディソニックの技術開発
ボディソニックの研究


  bodysonic laboratory




第4章 期待される体感音響振動の応用


第1節 酒類・食品分野への応用     
音楽振動を付与したワインの醸造  

 

   1.先行している医療分野などでの音楽振動の応用とハードウエア   2.酒類、食品などに音楽を聴かせる
   3.音楽振動を付与したワインの醸造(音楽振動醸造) '89年産葡萄  4.音楽振動とワイン醸造の効果メカニズム
   5.瓶詰済みワインへの音楽振動付与効果(音楽振動熟成)      6.音楽振動の物理的特性
   7.応用例(飲酒空間での応用など)                8.褥瘡発生回避効果への示唆

 

 

1993年 Muramatsu Planning  

はじめに

 

4KLタンク用音楽振動付与ユニット例 

 ボディソニックトランスデューサ(電気−機械振動変換器)によって「音楽振動を付与したワイン」を、1989年に 山梨県工業技術センターのワインセンターで 試験醸造を行い、好結果を得ることができた1)2)。醸造過程で得られたデータを示し、その効果メカニズムを検討する。
 また、普通に醸造・瓶詰めされたワインを、振動トランスデューサを取り付けたワインラックに載せて音楽振動を付与した音楽振動熟成ワインが、ワインアドバイザから高い官能評価を得ることができた。音楽を「情報を持った振動エネルギー」として捉え、その物理特性と効果を他の振動エネルギーと比較考察して、食品全般にわたる応用の可能性を示唆する新しいテクノロジーを示す。

1.先行している医療分野などでの音楽振動の応用とハードウエア

 糸川英夫博士のボーンコンダクション理論6)7)によれば、楽器を演奏する人は、楽器を持つ手、身体を通して直接「振動」が伝わり聴覚系伝播されるが、音楽の中で聴く人に真の恍惚感を与えるのは、直接伝わる「振動」、ボーンコンダクションである、としている。
 また、ルネッサンス期の記録によれば、坐骨神経痛の患者の患部の上で楽器を演奏させ、直接患部に曲の「振動」を与え、疼痛を軽減させる治療が行われたという。
 これらの指摘は、音楽の直接的な「振動エネルギー」が生理的、生物学的なものに作用することを物語っている。

 音は、聴覚を持つものに対しては有効な「情報」の伝達手段であるが 「振動エネルギー」の伝達手段としては不適当である。音響インピーダンスの低い空気からの振動を、音響インピーダンスの高い液体や個体に振動エネルギーを伝達させようとすれば、インピーダンス・ミスマッチングによりエネルギーが反射し損失が大きくなってしまう。振動トランスデューサで音楽振動を付与する重要性がここにある。

1960     

 筆者は、1960年代から70年代にかけて、壁、天井、床面など振動可能な板面を直接振動させ、壁や天井全体から音響再生をする、エコニック、サウンド・トランスデューサ3)GTボ−ドスピーカ4)などを開発、製品化した。

各種ボディソニック用トランスデューサ

写真1 振動トランスデューサ各種 

 このトランスデューサは、電気−機械振動変換器であり、本来の音響再生の他、大学研究室などで特殊な研究用として使われるなど、思いがけないような分野で様々な実験や応用を促した。
 ここに述べる音楽振動を付与したワインの醸造もトランスデューサの技術によるものである。写真1に各種振動トランスデューサの例を示す。
 動作原理は動電形で、オーディオ帯域用として最適であり、音楽信号を忠実に振動エネルギーに変換する。
 近年、音楽療法に応用されて注目されている体感音響装置(ボディソニック)の開発に当っても、重要な基本技術となった5)6)。写真2,3に示す ボディソニックは、音楽の主として低音成分を振動トランスデューサによって体感音響振動7)に変え、身体に体感させながら音楽を聴くリスニングシステムである。
 音と同時に体感音響振動を体感させながら音楽を聴くこととによって、音楽の重低音感、リズム感などが強調され、心理的、生理的効果を及ぼし音楽の持つ感動や陶酔感、恍惚感を深める8)。また低音振動の快さがリラクセーション効果を高める。

 これらの効果から音楽療法への応用がなされ心療内科領域9)、老人医学領域10)、末期医療領域、人工透析11)、献血12)、手術13)、歯科領域14) など医学分野で多くの臨床報告があり注目されている。



写真2 ボディソニック・リフレッシュ1
      音楽療法で多数使用されている。

 褥瘡への効果などは、音楽振動が細胞レベルで直接的に生理的効果を及ぼしているようにも思われる。

 細胞レベル、分子レベルでの効果メカニズムは、ここで述べるワインの醸造に見られる、食品分野での利用とも関連するものであろう。
 また学習の効果を高めることも期待され、語学学習用15) として応用されるなど、多岐に及んでいる。


写真3 ボディソニック・ベッドパット(医療用)
     人工透析、手術の術前術後、末期医療など
     多くの領域で音楽療法用として使用されている。

2.酒類、食品などに音楽を聴かせる

●ムード的なものからテクノロジーへ

 最近、音楽を聴かせて造った酒や食品が話題になりマスコミでも取り上げられている。乳牛に音楽を聴かせると乳が良く出るようになる話(農林水産省畜産試験場の実験では2〜3%の増量が認められている)もあるが相手が動物の場合は聴覚機能も大脳もあるので、その可能性は感覚的にも理解できる。
 しかし聴覚機能のない食品などに音楽を聴かせると効果があるなどの試みは、そのイメージの良さのみが先行し、多分にムード的なものの域を出ないきらいがあった。
 酒類や酵母菌、パンや野菜に聴覚があるわけではないし、音楽美学を理解する訳でもない。従って音楽を聴かせても音楽本来の意味ではあまり効果がないと考えるのが、科学的な一般的立場だろう。
 しかし「音楽を聴かせて」というイメージの良さ、神秘的魅力による商品価値の向上は「食品」という商品にとって重要な要素でもある。
 これらを考慮して、ワインの醸造過程で、スピーカによって音楽を聴かせるのではなく、醸造タンクにトランスデューサを取り付け、音楽を物理的な振動エネルギーに変換して醸造中のワインに音楽振動を付与する方式により好結果を得ることができた。

●酒類、食品にも理解できる音楽の聴かせ方

 聴覚機能も大脳もない酒や食品に、人間と同じやり方で音楽を聴かせても駄目である。つまり、酒類や食品にも分かる音楽の聴かせ方が必要である。それには少し視点を変えて、音楽を「情報を持った振動エネルギー」として捉えると様々なことが見えてくる。スピーカによって音波として聴かせるのではなく、音楽を振動トランスデューサ(電気−機械振動変換器)によって音楽を振動に変換し、音楽振動を付与するのである。振動であれば水の分子構造や機能、酵母菌の活動にも様々な影響を及ぼすことが考えられる。
 音楽には、情緒情報とも呼ぶべきものが含まれている。だから曲が変われば情報が変わる。物理的に分析しても、曲によって「周波数スペクトル」や「ゆらぎ」など物理的パラメータが異なることも知られている。従って音楽が変われば及ぼす効果も変わってくる可能性がある。イメージも効果も、バイブレータなどの単なる物理的振動とは大きな違いがある。
 振動といっても、ステンレス製の醸造タンクに振動トランスデューサを取り付けて音楽振動を付与していることから、醸造タンク自体が一種のスピーカとなり、雰囲気のある音楽が聴こえる。また、タンクに触れば音楽の振動が手に伝わってきて、音楽が酒・食品に及ぼしている効果が感覚的にも実感できる(図1)

  

         酒や食品には聴覚機能がないので
         スピーカで音楽を聴かせても、効果
         はない。また、うるさい程の音を出し
         ても振動はあまり伝わらない。

  
  

トランスデューサで音楽振動を付与すると
酵母菌の活動が活発になる。水分子が小
さくなり、疑似熟成効果で味も良くなる。
醗酵タンク全体が残響スピーカとなり、魅
力的な雰囲気を醸し出す。

         図1 スピーカで音楽を聴かせたものと、振動トランスデューサで
             音楽振動を付与したものとの比較


 この方法が、理論的にも感覚的にも雰囲気的にも、酒や食品に音楽を聴かせるのに最もふさわしい方法であることが実感できる。

●酒類、食品などに音楽を聴かせる技術 [振動のテクノロジー]

 音は、聴覚を持つものに対しては有効な「情報」の伝達手段であるが、「振動」の伝達手段としては適当とは言い難い。空気は音響インピーダンスが低く、音を介して液体や固体に振動エネルギーを伝達するには、インピーダンス・ミスマッチによる損失が大きい。このことは周波数が高くなるほど著しい。そのうえ、音は拡散性が高く、多くは目的外の所に拡散し損失となってしまう。
 スピーカによって音を出し、空気振動を介して酒や食品などに振動を与えようとすれば、雰囲気も何もぶち壊してしまうような過大な音を出しても、なお十分な効果を出し得ないであろう。図1に示すように、トランスデューサで音楽振動を付与する重要性がここにある。

3.音楽振動を付与したワインの醸造(音楽振動醸造) '89年産葡萄

●音楽振動を付与したものと、しないものとの比較醸造

 山梨県工業技術センターのワインセンターで200リットル発酵タンク2基を使い、一方のタンクに振動トランスデューサを取り付け音楽振動を与え、もう一方のタンクには付けずに、発酵の比較実験を行った。比較を明確にするため、同じ葡萄から搾った同一の果汁を2分し、発酵も同一の部屋で行い、温度などの条件も同じになるようにした(図2、図3)。
 発酵中は温度と、光を利用した屈折計示度計で1日おきに糖度を比較したところ、いずれも音楽振動を与えた音楽振動醸造の方が糖度が低く、糖のアルコールへの転化率が 2.5%も上昇していることが分かった。発酵に要する日数も2日間も短縮された。瓶詰して半年寝かせた後、試飲、官能テストをしたところ以下のような評価を得た。

 1.辛口(ドライ)の白ワインである。
 2.香りがたかく芳醇である。
 3.白ワインにて語られる黄金色がよくでて
   いる。
 4.のどごしが、すっきりしている。
 5.気品のある味と香りである。
 6.音楽を聴いて醸造されたという ロマンチッ
   ク なストーリー性がある。



 

図2 醸造タンクへ振動トランスデューサ
    の取り付け状況図

   工程図
白ワイン醸造工程図
               図3 白ワイン酒醸造工程図

 

●使用した音楽について

 醸造に使用した音楽は藤原俊男作曲のワイン醸造用音楽「ワインの子守歌」である。この曲は全曲30分の大曲であり、醸造に適するよう比較的ゆったりしていながら、音楽振動の物理的効果を考えて周波数帯域も広くなるように考えられたシンセサイザによる作品である。そして水のイメージ、神秘的魅力と変化に富んだ作品である。

●音楽振動の音響効果について

 ステンレス板製の醸造タンクに振動トランスデューサを取り付けて音楽振動を付与していることから、醸造タンク自体が一種の残響スピーカとなり、近付くと、とても神秘的な、ワイン醸造にふさわしい魅力的な雰囲気をかもしだす音楽が聴こえる。
 理論的にも雰囲気的にもこの方式がワインに音楽を聴かせるにふさわしい方法と言えよう。ワイン醸造データを 表1 に示す。

 

表1 音楽振動醸造ワイン 諸元  

 

 1.試験醸造槽

 200リットル  600mmD×780H
 (音楽振動付与も、なしも同容量)

 2.原料葡萄

 甲州種 200Kg (約150リットル)

 3.醸造期間

 12日

 4.使用酵母

 Saccharomices cerevisie W-3

 5.トランスデューサ

 SC-8032 ×4 BODYSONIC

 6.増幅器

 SRA-2400 ローランド

 7.テープデッキ

 RS-B57R テクニクス

 8.使用ソフト

 NUS ART CREATION C
 ODYSSEY STUDIO tm
 Composer T, FUZIHARA

 9.音楽振動付与時間

 30分演奏、30分休止の繰り返し

 10.プロデュース

 NUS ART CREATION C

 11.技術研究

 ボデイソニック(株)研究開発センター

 12.研究・試験醸造

 山梨県工業技術センター・ワインセンター

 

4.音楽振動とワイン醸造の効果メカニズム

 従来、こうしたものに「スピーカによって音楽を聴かせる」という試みは理論的裏付けに欠けるものであったが、今回の醸造は「振動トランスデューサによって音楽を振動エネルギーに変換し、物理的な音楽振動を付与する音楽振動醸造」の方法により、ワインのメッカ、山梨県の公的機関が科学的に行い明確なデータを得たもので、その意義は大きい。ではなぜこの様な好結果が得られたのか、醸造過程で得られたデータを見ながら考察する。
 表2の糖度の変化のデータは、発酵時間の経過と共に音楽振動付与の方が糖度が下がりアルコールへの転化率の高いことを示している。
 温度変化のデータは、発酵が最も盛んに行われていると思われる発酵を始めて5日目前後では、発酵中のワインが、音楽振動無しのものは室温に比べ3℃ぐらい高くなるが、音楽振動を付与したものは4℃ぐらい高くなっている。これは音楽振動を付与した音楽振動醸造の方がより活発に酵母が働いて発酵が盛んに行われていると考えられる。

 

表2 醸造中の測定データ

 

 糖度変化

 

 89年 月/日

  10/31

 11/ 2

 11/ 4

 11/ 6

 11/ 7

  11/10

 振動付与

 21.5

 21.0

 15.8

 12.6

 11.0

 7.8

 振動なし

 21.5

 21.0

 16.2

 13.0

 11.6

 8.4

 

 温度変化

 

 89年 月/日

  10/31

 11/ 2

 11/ 4

 11/ 6

 11/ 7

  11/10

 振動付与

 14.0

 16.0

 19.0

 18.5

 19.0

 18.0

 振動なし

 14.0

 15.5

 18.0

 17.5

 18.5

 18.0

 室  温

 14.0

 15.0

 15.0

 15.0

 17.0

 16.0

 

 表3のデータで、比重は振動付与が 0.997、振動無しが 1.002で振動付与の方が軽い。アルコール度数は振動付与が 12.56、振動無しが 11.56で振動付与の方が高い。Extは振動付与が3.43、振動無しが4.48で振動付与の方が低く、糖のアルコールへの転化率の高いことを示す(Extは糖、酸、グリセロール、鉄、灰分、苦みなどの成分で、Ext値から2〜3を引いたものが糖で、数値が大きいもの程甘い)。発酵時間は、振動付与が10日で振動無しの12日より2日間短縮されている。
 これらのデータは、いずれも音楽振動を付与した音楽振動醸造の方が酵母菌が活発に働き、発酵が効率的に行われたことを示している。また、試飲、官能評価の「辛口(ドライ)の白ワインである」と云う表現とよく一致しているデータと言える。
 17O-NMR(核磁気共鳴)分光法による水の状態測定では、振動付与が 87.56Hz、振動無しが 92.06Hz で振動付与の方が水分子が小さくなっていることを示し(周波数が低い方が分子が小さい)、音楽振動を付与したものの方が熟成が進んでいると考えられる。このことが試飲、官能評価の「香りがたかく芳醇である」「のどごしが、すっきりしている」「気品のある味と香りである」などの味覚表現になって表れたと考えられ、測定データと官能評価が良く 一致している。この他、目視的にはワイン発酵時の「湧き」が音楽振動付与したものと、しないもので動き方や、動きの早さが異なり、音楽振動を付与した音楽振動醸造の方が動きが早かった。

 

表3 醸造後の測定データ

 

 比重 Ext アルコール 発酵時間(測定 '89年11月)

 

 測定項目

 比重

 Exit

 アルコール

 発酵時間

 水分子の
 大きさ

 振動付与

 0.997

 3.43

 12.56

 10日間

 87.56Hz

 振動なし

 1.002

 4.48

 11.56

 12日間

 92.06Hz

 

   注:分子の大きさの測定は日本電子 JNM-EX270使用
     測定年月 '91年5月9日 測定温度20℃(温度制御測定)

 

 以上のことから次のような仮説を立てた。音楽振動により水の分子集団が小さくなると分子運動が活発になり、活性化された状態になる。水の密度が高まって分子間に入り込んでいる空気が少なくなり、嫌気性の酵母菌の活動が活発になる。音楽振動が酵母菌の細胞分裂を促進することも考えられる。これらによって糖のアルコールへの転化率を高め発酵期間を短縮した。音楽振動が生体に及ぼす音楽療法に於ける生理、生化学的効果は微生物、細胞、分子にも及ぶことが想像される。また、振動による疑似熟成の効果と、水の分子集団が小さくなったことによって味を良くしたと考えられる。

 

 尚 '89年に引続き'90年産葡萄による醸造は、発酵タンクの大きさを3倍の 600リットルにして音楽振動醸造を行ったが、ほぼ同様の結果を得ている。

5.瓶詰済みワインへの音楽振動付与効果(音楽振動熟成)

 普通に醸造、瓶詰めされたワインを、下に示す図4のワインラックに載せて、ラックに振動トランスデューサを取り付け、音楽振動を付与した音楽振動熟成ワインが、ワインアドバイザから高い官能評価を得ることができた。同種、同銘柄のワインを音楽振動付与と、無しを比較した評価リポートの主要部を原文のまま下記に示す。

 

 

表4 音楽振動熟成 ワインアドバイザー 7名による総合評価リポート


音とワイン

ワインは、数千種、数万種類あるが「育ち方」は人間と一緒である。赤ん坊は、非常にデリケートで
 慎重に愛情をもって育てないと、すぐに病気にかかる。ワインも同様で、この時点の成長が将来性を
 見極める大きな要素となりうる。

幼年期・青年期の人間の成長が、人格を決定づけると言っても過言ではない。ワインについても、こ
 の時代の生育が、性格、性質を決定するだろう。

音楽振動を付与したワインティスティング

 ワインアドバイザーが青年前後のワインを対象に「音の振動とワイン」をテストした。

 

ワインティスティングの条件

全員に、全く予備知識と先入観を与えない。

比較するワインは、同銘柄を同条件の温度・湿度でテストする。

比較するワインは上述の如く、青年期のフレッシュで性質的に素直なタイプをコレクションした。

ワインラックに振動トランスデューサーを取り付け、1週間、モーツァルトの曲で振動を与えた。

赤ワイン

 外 観:色の変化は見られない。

 香 り:大変重要な部分で、空気に触れた時、アロマが少し違っていた。酸味も少しとれ、ブドウの
     香りが少し強く感じられた。

 味  :熱成香(ブーケ)と果実のもつ甘味、フルーティさが感じられる。まろやかな感じ、酸味の
     カドがとれ、バランスが良くなった様子で、スムースに飲める感じがした。

白ワイン

 外 観:赤ワインと同様殆ど変化なし。

 香 り:多分、瓶のうちで少し熟成したと思われて、アロマがクリヤーになりつつある。

 味  :トゲトゲした酸味が少しとれ、ブーケとアロマがバランスよくなり、口当りのよい感じで咽
     ごしがよいという表現がぴったりである。はっきりした酸がバランスよく調和されていた。

 

 青年のワインは、本当に素直で、音を与えたワインは短期間のうちで瓶の中で熟成して酸味・渋み・苦みのバランスがよくなったというのが感想である。赤ワインより、白ワインの方が、クリアーに特色が出て、専門的な表現をするならば、樽香・果実風味・鋼の硬さ、ハッカ・青りんご・ジャスミンの花・アーモンドの香りなどはっきり感じられた。総合的にうまく熟成して、ブドウの香り・味がはっきり出てきている、という感想である。

 


資料提供 (株)日食    

 

 
 超音波振動は周波数が高いので途中の伝達経路、棚と瓶との接触面でエネルギーが吸収されてしまい届かない。音楽振動は周波数が低いので棚などのラフな構造のものでも容易に振動伝達ができるので有利。
 普通に醸造・瓶詰めされたワインを、ワインラックに載せて、ラックに振動トランスデューサを取付け音楽振動を付与したワインが、ワインアドバイザから高い官能評価を得ることができた。

 

  図4 ワインなどの熟成棚


6.音楽振動の物理的特性

 音楽は倍音関係で構成される「楽音」によって、旋律、和声、リズムなど、振動エネルギーとして見ると多くの可能性と特色を持っている。最近は1/fゆらぎ理論からのアプローチも注目されている。音楽を振動エネルギーとして捉え、他の振動エネルギーと比較考察する。

●音楽振動と音響(空気)振動

 音、すなわち空気振動は「振動エネルギー」の伝達手段としては不適当である。空気は音響インピーダンスが低く、液体や個体である酒や食品に振動エネルギーを伝達するには、インピーダンス・ミスマッチによる損失が大きい。このことは周波数が高くなるほど著しい。そのうえ、音は拡散性が高く、多くは目的外のところに拡散し損失となってしまう。
 スピーカによって音を出し、空気振動を介して酒や食品などに振動を与えようとすれば、雰囲気も何もぶち壊してしまうような過大な音を出しても、なお十分な効果を出し得ないであろう。振動トランスデューサで音楽振動を付与する重要性がここにある。

●音楽振動と超音波振動

 振動エネルギーを与える方法として超音波が多くの成果を挙げていることはよく知られている。しかし周波数が高いために図4に示すような柵に載せた瓶詰されたワインを熟成させるような場面では、途中で振動が吸収されてしまい目的のワインに届かない。柵と瓶との接触面での吸収も大きい。
 これに対してオーディオ帯域である音楽振動は周波数が低いので柵などのラフな構造のものでも容易に振動伝達ができる。この特性はワインの熟成やさまざまな食品などに振動を付与する場合たいへん有利になる。このことは前記ワインアドバイザによる評価で実証済みである。

●音楽振動と単一周波数振動

 単に振動を与えるだけのことであれば振動モータなどによるのが最も簡単で誰もが思い付く方法である。しかしこうして得られる振動は周波数も振幅も一定なものしか得られない。また低い周波数のみで高い周波数は発生困難である。特定の周波数のみでは目的の効果が出ないかも知れない。第5図に示すように一定の周波数で柵などを駆動すると分割振動による定在波が起り振動の腹は大きく振動するが、節では振動しないことになりムラができる。一方「音楽振動」は時々刻々と周波数も振幅も変化する。このため振動の腹も節も時々刻々と動き一定時間後には広い範囲にわたりムラのない効果を及ぼすことができる。複雑な振動特性を持つ対象物にも広い範囲にわたって対応して効果を発揮する。

 

単一周波数振動 一定の周波数で棚などを振動すると分割振動による定在波が起り、振動の腹は大きく振動するが、節では振動しないことになりムラができる。


図5 音楽振動と単一周波数振動の比較

音楽周波数振動 「音楽振動」は時々刻々と周波数も振幅も変化する。このため振動の原も節も時々刻々と動き、一定時間後には広い範囲にわたりムラのない効果を及ぼすことができる。複雑な振動特性を持つ対象物にも、広い範囲にわたって対応して効果を発揮する。

●1/fゆらぎ振動と連続波振動

 船で運んだ酒はうまい。船乗り達は船長用の酒樽を舳先にくくりつけて航海した。酒がうまくなったのは波によって揺らされた結果と考えられる。波はある周期性を持ちながらときに大きく、小さく、速く、遅く揺らぐ。酒樽は1/fゆらぎ特性を持った揺れかたをしている。酒は振動によって疑似熟成され味もまろやかになる。
 水の分子集団を小さくしたり、聴覚機能のない植物や菌類、非生物などを対象とする信号源として、発振器などの出力はレベル的にも周波数的にも変化のない連続波である。
 一方、音楽は時々刻々と周波数もレベルも変化する1/fゆらぎ的傾向を持つ揺らぎ波である。舳先にくくりつけた酒樽が1/fゆらぎで揺れていることは先に述べた。人間の細胞も、水の分子も1/fゆらぎ現象があることが認められている。変化のない刺激は時間の経過とともに刺激の効果が弱まる。
 一方、適度な変化を伴った刺激は刺激の鮮度が保たれる16)。 使用する振動刺激として音楽を使用することは意義があると考えられる。

●微弱な振動エネルギー

 従来、振動と言えば大きなエネルギーによるドラスティックな効果を追うものが主であった。しかしこうした大きなエネルギーでは逆効果になってしまうような領域が存在し、微弱なエネルギーによってこそ効果が得られる領域があることが分かってきた。ここで取り上げている問題もそうした領域に属するものである。

7.応用例(飲酒空間での応用など)

 音楽振動が分子レベルで効果を及ぼし、酒類の醸造、熟成の他、発酵、熟成を必要とする食品の品質向上にも役立つ技術を紹介した。こうしたことから、さまざまな応用の可能性が考えられるが、それらについての記述は別の機会にゆずる。
 日本酒、焼酎などには既に実際に応用され、醸造メーカーで量産化がされている。

 飲酒空間での利用として、バー、スナックなどに於けるボトル棚やラックにトランスデューサを取り付け音楽振動を付与することが考えられる。
 そうした所には大概カラオケが有るので、音楽信号はそれを利用する。但しカラオケの伴奏のみで振動させ、マイクからの歌は除く(これは電気的に可能)。下手な歌の振動によって酒がまずくなっては困るからである。これは「下手な唄を歌うと糠味噌が腐る」という古い言い習わしがあるからである…など話題としても楽しい。
 こうしたものの個人用として試作したのが写真4に示すボトル台である。台の裏側にはトランスデューサが取り付けられている。


 実験したところでは、日本酒、ウイスキー、ワインなどいろいろな酒が、音楽振動を与えて3日もすると素人でも分かる程に味が変り、まろやかになる。
 酒の味などたいして分かりもしないのに、酒談義から音楽談義まで、知ったかぶりの能書きを垂れながら飲み比べをするのが楽しい。
 音楽振動はテクノロジーとしての可能性ばかりでなく、イメージの良さ、神秘的魅力も相俟って、飲酒空間での話題、楽しさも増し酒を旨くする。



写真4 音楽振動を付与するボトル台
     台の下に振動トランスデューサが取り付けられている。

褥瘡発生の回避効果     

 

8.褥瘡発生回避効果への示唆

 

 以上に述べた音楽振動醸造、音楽振動熟成の経験から、体感音響装置による褥瘡発生の回避効果に対する示唆があるように思うので、そのことについてふれたい。
 岩谷らの報告18)によれば、主として癌末期患者のトータルペインの緩和、QOLの向上を目的として、体感音響装置(ベッドパットタイプ)による音楽療法を導入し、22例に実施したが、1例も褥瘡の発生がなかったという。末期医療という、体動の制限・抑制が持続した期間から見て、当然、仙骨部などに発生することが予想された褥瘡が全く認められなかったと報告しており、非常に注目される。
 褥瘡は長期間寝ていることによる圧迫やうっ血など、血液の流れが悪くなることにより起こるので、血液の状態とも深い関係があると思われる。人体は約70%が水分であり、血液は更に水分のパーセンテージが高い。水分のパーセンテージが高い点ではワインも同様である。
 音楽振動を付与したワインの醸造が、水の分子レベルで作用していることを伺わせるデータが得られていることは、血液にも何らかの効果を及ぼすことが予想される。音楽振動を付与する体感音響装置による受容的音楽療法の、褥瘡発生回避の効果機序に対して何らかの示唆をするものがあるのではないかと感じている。
 門外漢の素人考えであると、失笑と叱責を受けることは承知の上で、敢えて記した。



    写真5 特製ベッドパットタイプ・医療用体感音響装置
        末期医療、ストーマケアなど、外科領域の術前
        術後に使用され、痛みの緩和、便秘の改善、
        褥瘡の回避など注目される効果が得られた。

引用文献

18)岩谷房子、池田典次:末期患者に対する音楽療法の試み −特にボディソニックベッドパットの応用−
  日本バイオミュージック学会誌 1994,6月 Vol.11, P29-P38

おわりに

 音楽振動はイメージの良さ、神秘的魅力と共に、科学的にも、テクノロジーとしても多くの可能性があり、商業化の価値は高いと考えられる。
 音楽振動を付与したワインの醸造に於ける発酵過程での効果と、普通に醸造されて瓶詰めされたワインへの音楽振動付与による熟成への効果は、音楽振動が分子レベルで効果を及ぼし、食品の品質向上に役立つ新しいテクノロジーと言えよう。
 音楽振動を付与していることから、醸造タンク自体が一種の残響スピーカとなり、近付くと神秘的な響きの音楽が聴こえ、見学者の多い工場などではデモンストレーション効果、イメージアップ効果も大きいと考えられる。

【謝辞】

 音楽振動を付与したワインの醸造は、山梨県商工振興課デザイン企画担当主事・仲田道弘氏、山梨県工業技術センター食品醸造部長・小沢俊治氏、県関係者、山梨県工業技術センター・ワインセンターの方々の、多大の努力と熱意による成果である。このプロジェクトを発案、プロデュースし、ワイン醸造用音楽「ワインの子守歌」を作曲したヌースアートクリエイション・藤原俊男氏の発想なくしては音楽ワインは生まれなかった。プロジェクト実施にあたり、シスイン・喜田氏、阿部氏の協力を得た。
 瓶詰済みワインへの音楽振動付与とワインアドバイザによる官能評価は、(株)日食・ワインアドバイザの方々、関係者の方々の尽力によるものであり、貴重なリポートの提供を受けた。評価実験の推進は、特販・入江氏による。説明図や応用例の表現は研セ・藤井敏明氏の手による。
 水の理論は日本電子(株)主任研究員・松下氏にご教示を受け、松下氏の文献から引用をさせて頂いた。また、山梨県工業技術センター・ワインセンター研究員・荻野敏氏にはワイン醸造のご教示と貴重な資料の提供を受けた。リポートをまとめるにあたっては人間と歴史社代表・佐々木氏からご教示を受けた。皆様に心から厚くお礼申し上げる。

参考文献

1)小松 明:音、音楽を科学する −音楽振動を付与したワインの醸造から−
  日本バイオミュージック研究会誌 1990,12.Vol.5 P46-54
2)小松 明:音楽振動の食品分野への利用の可能性を探る
  「食品と開発」1991年1月号 P44-49
3)小松 明:壁全体が音源となる新しいSP エコニック、サウンド・トランスデューサー
  「無線と実験」1970年1月号 P136-139
4)小松 明:壁自体が音源となる、4チャンネル音場再生に適したボードスピーカについて
  「無線と実験」 1971年3月号 P123-128
5)小松 明:ヘッドホンとの併用で重低音を体験できる、ボディソニック MODEL-24
  オーディオクッション/ディスコターボとは? ラジオ技術誌 1978年4月号 P268-270
6)糸川英夫、小松 明、佐々木久夫:音楽と健康(7) ボーンコンダクション
  音楽は「骨」で聴くのがベストだ 「毎日ライフ」 1991年2月号 P130-134
7)小松 明:身体で聴く音響装置、ボディソニック・システム、
  日本オーディオ協会誌 (JAS JOURNAL) 1981, Vol,21 No.6, P54-60
8)小松 明:ボディソニック・システム
  日本バイオミュージック研究会誌 1987 Vol.1 P93-104. 1988 Vol.2 P76-82.
9)牧野真理子、坪井康次、中野弘二、筒井末春:うつ状態に音楽療法的接近を試みた1例
  日本バイオミュージック研究会誌 1987,Vol.1, P61-66
10)田中多聞:老人痴呆の映像・音響療法、ボディソニック・ルーム・テラピー
  CURRENT THERAPY  1987,Vol.5,No.10, P107-111
11)表 文恵、田島佳代、吉永徳江、浦出節子、原田美恵子、西村明子、尾副節子、
  下田俊文、春木谷マキ子、黒畑 功、豊中啓尹子:血液透析中における音楽療法の試み
  大阪透析研究会会誌 1990,9月,8巻2号 P173-177
12)大国典子、小林芳夫、松本一夫、富田忠夫、小川敏彦:成分献血における音楽の心理的効果について
   −体感音響装置を使用して− 日本血液事業学会 第13回(熊本)1989,10月, P75.
13)村山正子、小熊由美、梅垣いつみ:意識下で手術を受ける患者へのボディソニックの導入
  −不安の軽減と安楽を考える− 日本看護学会、第20回、成人看護(青森)1989, P199-202
14)土屋友幸、山田ゆかり、黒須一夫:歯科用体感音響装置の小児への応用効果(2)
  内部行動変化 第25回日本小児歯科学会 1987,6月
15)増田喜治、小松 明:Enhanced Perception of Rhythm Through Vibrotactile
  Sensations:Body Sonic Apparatus for Learning Prosody.
  9th World Congress of Applied Linguistics AILA 90 GREECE Apr.1990,Vol.5, P541
16)小杉幸夫、高橋考夫、鈴木晴夫、鈴 木真人、高倉公明、池辺潤、武者利光:
  1/fゆらぎのリズムを持つ電気刺激による叙痛について、
  電子通信学会技報 MBE80-59,33-40 1980
17)小松 明:《最近の技術》 音楽振動の食品分野への利用の可能性
  日本食品機械研究会 食品加工技術 1991,Vol.11,NO.4,P179-P189
18)岩谷房子、池田典次:末期患者に対する音楽療法の試み −特にボディソニックベッドパ
  ットの応用− 日本バイオミュージック学会誌 1994,6月 Vol.11, P29-P38

 

第2節 語学学習への応用    

 

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 03.6.23


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