体感音響研究所


体感言語教育
LLAテーマ別分科会









ボディソニックの技術開発
ボディソニックの研究
ボディソニック効果の探求

 

  bodysonic laboratory


 語学ラボラトリー学会(LLA) 第35回全国研究大会 1995年 7月23-24日 中京大学 名古屋学舎


  テーマ別分科会:体感言語教育の開く可能性

 

振動機器を活用した音声聴取と発音指導 


パネリスト:木村政康 (拓殖大学) 

  (Web 05.4.17)  


 

 言調聴覚論(Verbo-Tonal System)の原理によれば、言語音は一種の緊張として知覚される。すなわち人間の脳は、調音時の調音器官の緊張・弛緩、緊張の部位感覚などにより、ブロソディや個別音をそれぞれ弁別し、正しい言語音の生成(再生)を実現している。
 言調聴覚論があげている 「身体は音声の伝達体かつ受容体である」 または 「音声は身体全体から発せられる」 という考えから見れば、音声は振動として聴覚だけでなく身体を通して知覚される。この考え方に基づき、上智大学聴覚言語障害研究センターでは、ボディソニック社の振動機器を併用して、聴覚障害児(者)および日本語学習者の発音指導を行っている。
 振動機器の使用法は、ボディソニック・アンブ(BA‐50MX)に、手に持ち使用する小型クッション(MX‐1)と腰掛け用クッションドライバー(JC-1)を接続し、マイクまたはライン入力により音声を振動として伝達し、的確に体感できるよう指導することである。
 聴覚障害児(者)の音声指導では、JC‐1の代わりに、トランスデューサの付いた振動板に乗り、全身で振動を体感させることが多い。また使用目的により、全周波数域の振動または低周波数域(600Hz または 300Hz以下)の振動に切り替え指導している。

 

   言語リハビリテーション用 ボディソニック・システム JX-1

         ボディソニック・クッション JC-1    手持ち形ボディソニック MX-1    ボディソニックアンプ BA-50MX

                                           マイク

 

         写真1 言語リハビリテーション用 ボディソニック・システム JX-1

 

 当初、上智大学聴覚言語障害研究センターでは、SUVAG(言調聴覚論の原理に基づき製作された電子フィルター)の振動子を活用して、聴覚障害児のことばの聴き取りと発音矯正を行ってきた。SUVAGは一般に入手が困難であり、家庭学習ができ安価で丈夫であること、また、幼児が身体全体で言葉を聴き取れるような機器が必要になった。
 そこでボディソニック振動機器が製作され、言調聴覚論の原理に基づく指導技術と併用し聴取訓練、発音矯正するに至っている。外国人日本語学習者に対しても、振動機器を導入し発音指導を行っているが、これは聴覚障害児の音声指導における振動機器の有効性を踏まえた結果である。

 次に、振動機器を活用した指導手順を簡単に述べると、
 
  1.床振動(振動板)を用い身体全体で言葉の聴き取りを行う。
  2.身体の各部所(手の平、足、膝など)で言葉の聴き取りを行う。
  3.最後に指の先で言葉(プロソディや個別音)の弁別を行う。

 手順の2、3 では MX クッションまたは、SUVAG の振動子を用いるが、活用法は、各自の聴力、振動に対する感覚、年齢、性格などにより異なる。 以上、主に聴覚障害児(者)の発音指導に関して述べたが、日本語教育、外国語教育でも基本的な活用法は同じである。

 筆者は、現在、上智大学聴覚言語障害研究センターおよび拓殖大学で、振動機器を活用した日本語の発音指導を行っているが、その指導内容は次のとおりである。
 まず、VTアンブ(ソニー製)の Low Pass Filter を用いて日本語のリズム、イントネーション、語アクセントといったプロソディ聴取と発音訓練を行う。プロソディ聴取が苦手で、個別音の弁別を自己矯正できない学習者に対しては、空気伝導により聴覚を刺激するだけでなく、ボディソニックの振動機器を用い、振動感覚を敏感にさせる必要がある。
 まず、学生に腰掛け用クッションの上に座ってもらい、手にはハンディクッションを持たせる。マイクを通した筆者の発音を聴き取り、繰り返す。この時、学習者はマイクを通して自分の声を振動としてフィードバックする。
 拓殖大学の場合、留学生クラスは17名編成である。振動機器(システムJX-1)が1台のみのため、一度に全員を指導訓練することは不可能であり、授業時間の関係上、振動機器を使用できないこともある。時間に余裕がある場合は、クラス全員個別に振動機器を使用し、できる限り振動感覚を活用した指導を心がけている。

 次に、言語音が振動としてどのように体感されるのかについて述べたい。これは筆者が指導の際、学生各自に質問して得た結果である。例として、日本語学習者にとり最も聴取、生成の難しい日本語の特殊音素(促音、長音、撥音)、そして無声子音、有声子音をあげたい。
 まず、促音は直音(短音)に比べ緊張度が高い。振動感覚では促音部を強く、または鋭く感じること、そして直後に来る間が体感される。長音では、振動の持続感と振動部位の広がりが体感される。撥音では、全体に重い感覚を持つ。無声子音では振動は短く、強く(鋭く)、体感する部位が狭い。それに対し、有声子音の知覚では振動は長く、少し弱め(鈍く重たい)、体感する部位が広い。

 このように、我々の身体が、個別音を異なった振動として知覚していることが理解できる。振動感覚を高めることにより、「言語のらしさ」 を特徴づけるブロソディや個別音の聴取、生成がより容易になるのは、前述したとおり、人間の脳が、音声を単に耳のみで聴取するのではなく、身体全体で音声を振動として知覚するといったグローバルな聴き取り方をしているからであると考えられる。
 今後、より効果的な音声指導を目指すためには、学習者がブロソディ要素や各母音、各子音を振動としてどのように知覚するのか、より詳細なデータが必要である、また、振動感覚を鋭敏にする方法を見いだすことが、これからの課題と言える。振動機器を用いて振動を体感できても、振動と音声との有機的な関係を認知しない限り、学習者が自己矯正できるまでには至らないであろう。

 

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