体感音響研究所


ボディソニックの
技術開発、製品例












ボディソニックの技術開発
ボディソニックの研究
第1章2節 体感音響振動の効果

 

  bodysonic laboratory



ヘッドホンとの併用で重低音を体験できる     

 

ボディソニック クッション MODEL24   

 

ボディソニック(株)研究開発部 小松 明  

1978年4月 ラジオ技術5)  


ボディソニック MODEL24 ボディソニッククッション1.ヘッドホン再生のおもしろさ

 最近、非常に優れた特性のヘッドホンがつぎつぎに製品化されたり、バイノーラル録音再生の優れた音場再現性が注目されて、ヘッドホン再生が重視されるようになりました。

 注意深く設計されたヘッドホンの音質は、スピーカシステムをしのぐものがあります。それもそのはず、振動板は厚さもミクロンオーダ、重さもミリグラムオーダと非常に軽く、スピーカシステムのそれと比べるとケタ違いの軽質量です。この為、トランジェント特性はたいへん優れています。また、1発のドライバユニットで全帯域をカバーできるので位相特性が良いことです。
 トランジェント特性と位相特性が良いということは、波形再現性が良いということになります。バースト波、方形波などを再生して、その波形再現性を見ると、スピーカシステムではずいぶん波形がくずれてしまうのに対し、ヘッドホンはかなり原波形に近いものを再現してくれます。スピーカシステムでは埋もれてしまうような細かい音まで、ヘッドホンはみごとに拾い上げ再現してくれます。その解像度の良さは、スピーカシステムを上回るものがあります。

 ところが、このように特性の良いヘッドホンも実際の生の音やスピーカシステムの音に比べると、かなり不自然で異質な音であることは否定できず、ヘッドホンの音には馴れを要するような面があります。
 例えば、かなり音量を上げているはずなのに迫力が出てこなかったり、周波数特性の上では、スピーカーシステムよりずっと低域までフラットにのびているヘッドホンなのに、なぜか低音らしい低音が出ないような、重低音という感じとは隔たりを感じさせるといった現象です。どうも自然の音とはやや異質といわざるを得ません。

2.重低音は体で感じるもの?!

 音も150 Hz ぐらいから下になると、周波数が低くなるほど、体で振動を感じる比重が増してきます。よく腹に響くような低音”といわれますが、この言葉はそのへんの事情をよく物語っています。
 重低音域では“音圧”として空気振動を体で感じているのです。そんなとき(重低音が出ているとき)注意して床や囲りの物に手を触れて見ると、音圧によって振動しているのが分かります。
 重低音の音圧は、床や囲りの物体をも振動させるほどのものなので、人体は当然この影響を受けることになります。
 実際にオルガンの演奏を聴いているとき、聴覚限界付近、あるいは聴覚限界を越えたペダルトーン(最低音は16Hz)が聴える、いや聴えるように感じるのは体が振動を感じているからでしょう。そして体で感じた重低音振動は音楽構成上、和声学的にそのハーモニツクスの関係にある中音にも大きな影響をあたえ、音楽の効果を高めています。
 それであればこそ、耳では聴えないような超低音まで出せるように、オルガンは作られているといえます。
 さて、ここでもう一度、ヘッドホン再生をふりかえってみましょう。ヘッドホンの特性は、周波数特性にせよ、過渡特性にせよ、あくまでも耳の鼓膜におこる振動だけにかぎられるということです。体で感じる振動要素は、すべてネグレクトされてしまうということです。これでは、音の感じ方が不自然で異質なものに感じるのも、むべなるかなということになります。先ほどのオルガンの例でいえば、ペダルトーンの重低音振動はまったく感じられないことになります。
 オルガンの場合ほど極端でなくても一般に重低音は、鼓膜の振動だけでは表現できず、鼓膜の振動と体感振動が重なったとき、はじめて真の重低音として感じられるということです。
 そしてこの体感振動は、たんに重低音再生に不可欠であるだけでなく、音楽再生においては和声学的にそのハーモニックス関係にある中音域楽器や、ボーカルの音の感じ方にも大きく関係するということです。
 なぜならば、音楽はベースの音をファンダメンタルとして、他の楽器やボーカルの音程はベースの整数次のハーモニックスに位置するようにふり当てられ、構成されているからです。ジャズでもクラシックでも、ドレミファの音階を使った音楽はすべて和声学を根幹として作られているからです。ヘッドホンの“何か物足りない”感じは正にここにあるといえます。
 ヘッドホンはその特性がいかに優れていても、体感振動はすべてカットされてしまいます。これでは真の重低音再生ができないばかりか、音楽再生においては中音まで不自然ということになります。
 そこで、どうしてもヘッドホン再生においては、重低音の体感振動を加える必要が生じるわけです。こうして生れたのが、重低音振動再生を実現するボディソニッククッション・ディスコターボです。

第1表 ボディソニック MODEL24 の主要規格

3.ボディソニック MODEL24 の構成は?

 重低音振動を再生し、これを人体に与える方式としては、
 
  1)空気を介在させて音圧を与える
  2)床そのものを振動させる
  3)イスを振動させる
  4)座ブトンやクッションのようなものを振動させる
  5)その他
 
 などがあります。1)はスピーカそのものです。2)は振動可能な適当な床があることが条件で一般的といえません。3)はボディソニック・ミュージックチェアとしてすでに製品化されています。
4)は本題のボディソニッククッションで、イスほど大きくならないこと、コストも比較的安くできること、手軽に使えて人体のどの部分にでも自由に振動を与えられるので良い効果が得られるなどの大きな特長があります。
 ボディソニッククッション・ディスコターボは、駆動アンプ部と、振動を発生し身体に振動を伝えるクッション部とから構成されています。

3.1 駆動アンプ部

 LとRの信号を混合するミクシング回路、レベル調整、そして150 Hz 以下の低音域のみを取り出す fc150Hz オクターブ 24dBのアクティブ・ローパスフィルタと、必要な利得と電力を得るための増幅部などより構成されています。駆動アンプにはボディソニッククッションを2台まで接続、駆動できます。

3.2 クッション部

 クッション部は 第1図 に示す構造で、振動を発生するドライバユニット取付部、可擦性振動板、クッション・ウレタンフォ―ム、布カバーなどより構成されています。ドライバユニツトは、低音域の電気信号から重低音振動に変換する心臓部です。
 構造はマグネット、ヨークよりなる磁気回路に、ムービング・コイルを配した動電形変換器ですが、前面ダンパ、後面ダンパなどがある特殊構造です。おなじみのスピーカユニットとは、いささか違ったデュアル・ダンパ・センタ・セッティング方式で特別に開発されたものです。その構造を第2図に示します。
 振動板は、クッションとしての使用感の良さを得るための適度な可捲性と、振動伝達特性を両立させなければならず、技術的に非常にむずかしい所ですが、材質を選ぶこととサンドイッチ構造の開発によって目的の性能を得ています。第3図に示す振動変位特性からもわかるとおり、重低音振動再生にふさわしく、20 Hz 以下まで特性がのひています。


    

第1図 ボディソニッククッションの構造図

 


第2図 ドライバユニットの構造


第3図 ボディソニッククッションの周波数特性
     (150Hz以下を再生する)

  

第4図 ボディソニック クッション MODEL24 の接続図

4.どんな音楽にどのような効果があるか

 ディスコターボのつなぎ方は第4図のとおりですが、アダプタをメインアンプのスピーカ端子につなぐコンデンサ・ヘッドホンを使う場合は、ヘッドホンのアダプタとデイスコターボの駆動アンプを並列にしてメインアンプのスピーカ瑞子に接続すればOKです。
 こうしてつないでも、本機の駆動アンプは、入カインピーダンスが高いので、メインアンプ等への影響の心配は皆無です。
 ボディソニッククッションは、小形で背あてタイプのSクッションと、大形でそのうえに座れるLクッションがあります。ボディソニッククッションは、座ったり、腰、背、脇腹、足、足の裏などに当てると効果があります。その他、抱きかかえるのもなかなかの効果がありす。
 どこにするかは個人差や好みにもよりましょうし、場合によっては音楽の種類によって当てる部位を変えるなども良いでしょう。SクッションとLクッションを同時に使うといっそう効果的です。

 振動の強さは、駆動アンプのツマミで調整しますが、弱めにセットする方が自然で、音とのつながりが良く効果的です。
 ヘツドホンで音を聴きながら、振動の強さをセロから段々上げていくと低音が充実し、重低音感が出てきて最適点が分かります。耳の良い人は、低音の充実はもちろん中音までが生き生きとしてくるのを感じてビックリすることでしょう。こんなときは、クッションには手でさわるだけでも音の感じがガラリと変るほどです。人間の感覚の不思議さ、絶妙さ、スバラシさには感嘆させられます。
 使用するヘッドホンは低域特性のフラットにのびているものほど効果が出ます。なぜなら、重低音は、鼓膜振動と、体感振動が重なったとき、はじめて出るものなのですから、どちらが欠けても十分な効果は出にくいわけです。
 紙数がないのでほんのザッとですが最後に試聴感を書いてみましょう。

●歌謡曲、ポピュラ−

 エレキベースの音がなんとも快く響きます。バンドの編成が大きい方が、効果があるようで歌手の声まで生き生きと聴えてきます。
 

●ジャズ

 ベースがゴキゲンに歌い、バスドラの迫力が増して、すぐ目の前で演奏しているようです。
 

●クラシック

 弦楽合奏、交響曲、オルガン等々、効果があります。クラシックではコントラバスも弓で弾く持続的な音なので、音と振動がとてもよくつながり重低音感がよく出ます。そして低音楽器から高音楽器まで、和声学的に充実した音の配列になっているため、重低音のハーモニックス関係にある中音楽器の音が充実してくるように感じられます。
 

●ロック、ソウル

 ヘッドホンの音量を上げ、クッションの振動も強めにするとロックやソウルの本領ともいえるエネルギッシュなサウンドが全身をつらぬきます。“ディスコターボ”の名前どおり、まさに本領発揮でヘッドホンだけでは絶対に得られない効果です。
 

●バイノーラル録音

 これはもっとも適したソースで、ヘッドホン、ボディソニッククッション、バイノーラルレコードの組み合せは、考えられ得る最高の組合せと効果といえるでしょう。特にドキュメンタリものはたいへんな効果で、テイチクレコードの「バイノーラルヘの招待(GM-1101)」は抜群の効果です。代々木駅のホームで電車を待ち、山手線に乗り込んで新宿駅で降りる場面がダミーヘッドで録音されています。
 これをボディソニックで再生すると、電車がホームに近づいてくるところで、電車の音より先に近づいてくる山手線の振動を感じ、まもなく電車の響きとともにホ−ムにすべり込んでくる電車の音が迫真の臨場感で再現されます。そして電車に乗ってからのリアリティーがすばらしく、電車が走りだすと、ゴットンゴットンという響きとともに本当に体がゆさぶられるのです。
 私の実験室がある建物の前には西武線が走っていますが、訪ねて来た人にこのレコードを聴かせると、西武線の電車の音と勘違いする人が出るほどでした。あまりにもリアリティーが高く、建物の前を走っている西武線の音なのか、バイノーラルレコードで再生している山手線の音なのか混乱をしてしまうほどの臨場感だったのです。

 以上、ボディソニッククッション/ディスコターボについて説明しましたが、その効果などを文章のみで伝えることは困難です。「百聞は一見に如かず」ならぬ「百聞は一感に如かず」です。秋葉原などで体感してみてください。

【注】 この原稿は1978年に書かれたものです。    
ラジオ技術 1978年4月号        

【参考文献】

1)小松 明:壁全体が音源となる新しいSP、エコニック・サウンドトランスデューサー
  無線と実験誌 1970,1月号, P136-139
2)小松 明:壁自体が音源となる 4チャンネル音場再生に適したボードスピーカについて
  無線と実験誌 1971, 3月号, P123-128
3)小松 明:面音源を実現させた新しい振動ユニット、エコニック・サウンドトランスデューサ
  の特徴と性能 ラジオ技術誌 1970,4月号, P251-254
4)小松 明:音作りの新しい可能性を示す 全面的に改良された GTボードスピーカ
  ラジオ技術、1971年3月、P265〜269.
5)小松 明:ヘッドホンとの併用で重低音を体験できるオーディオクッション・ディスコターボとは?
  ラジオ技術、l978年4月、P268〜270.



         【注】 この記事の ボディソニッククッション が振動素子として使用している 第2図に示す
            ドライバユニットは、無線と実験2) 1971年3月号と、ラジオ技術4) 1971年3月号に
            発表・掲載された GTボードスピーカ です。


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