体感音響研究所


ボディソニックの
技術開発、製品例












ボディソニックの技術開発
ボディソニックの研究
第1章2節 体感音響振動の効果

 

  bodysonic laboratory


 

ボディソニック・システム(その1)
 
理論的・技術的背景、心理的・生理的作用と効果など

 

ボディソニック株式会社 小松 明  

 

1987年3月 日本バイオミュージック研究会誌11)  

 

ボディソニック リフレッシュ1

緒 言

 ボディソニックを受容的音楽療法に使用する研究が行なわれ、その効果が認められはじめてきた。そして日本バイオミュージック研究会においても、しばしば取上げられるようになりはじめた。
 しかしその一方で、ボディソニックは新しく開発されたものであることから、まだ、あまりよく知られていなかったり、誤解されている面があるようにも思える。また、音響学的高忠実度原音再生の立場からの疑問符の投げかけもある。
 こうした現状に鑑み、ボディソニックの理論的背景、技術的背景1)、開発と発展の経過、心理的・生理的な作用効果、受容的音楽療法に使用されているシステムの紹介、新しく開発された技術とその可能性についてもふれ、ボディソニックの受容的音楽療法などへの応用の参考資料にしたい。

1.聴覚と体感音響振動

 人間の聴覚器官が耳であることは、いうまでもないが、音の知覚が耳だけでなく、身体全体で感じとっているものであることは多くの文献でも指摘されている。特に低音域では周波数が低くなる程、耳で聴くよりも体で感じとっている比率が高くなると云われている。
 HiFiファンであれば、低音域に於けるスピーカーシステムの箱鳴り、床鳴り、壁鳴り、……等々を押えることがリスニングルームの音作りの一歩となっていることは、よく知られているところである。
 これを裏がえせば、低音域の音響エネルギーは、それがあたった面や物を振動させる性質が顕著であることの表れであるといえよう。大太鼓の音が腹に響くのは低音域音響エネルギーが人間の身体を振動させているのである。
 大太鼓はかなり極端な例と云えるが、このような音響エネルギーに曝されている人間は、当然この影響を受けることとなり、微妙をきわめる人間の感覚は、これを音響情報の重要な一部分としながら、総合的な音響知覚が行われる。
 このことは、先に述べた太鼓のように、それと意識されるものから、ほとんど意識されず無意識の中に感じとっているものまで、多くのものがある。しかし、いずれも最終的には耳からの情報と重なって「音」として聴こえるのであって、体で感じている情報の多くはあまり意識されず、聴覚の“縁の下の力持ち」的な役割をはたす。
 この低音域音響エネルギーは、人間の体に“音圧」として感じられるだけでなく、しばしば、大地や床面等を伝ってくる振動を伴うものがある。例えば、電車やSLの走る音、爆発音、強くドアを閉める音、ロックコンサートなどに於ける大音響などいろいろあるが、この振動感さえも音の情報の一部となり、最終的に“音」として知覚される。
 これら音圧が体を振動させて感じる振動感や床面や大地を伝って感じとられる振動感を、それと意識されるものから、無意識の中に感じとっているものまで含めて、これを 体感音響振動 と呼ぶことにする。

2.体感音響振動心理

 楽器の演奏者は自らの演奏行為(アクション)に対して得られる音(リアクション)を聴きながら、ピッチ、強弱、音色などをコントロールする。そしてリアクションは音だけでなく、さまざまなものを伴う。
 例えばリード楽器(木管)では、リードの振動が歯や顎に伝わり楽器によっては顔中がくすぐったく感じる程であったり、リップリード楽器(金管)では、唇が麻痺したようにさえなる。弦楽器では楽器の胴から体感音響振動が伝り、弓から手にもリアクションがある。打楽器でも大きなリアクションがある。これら、音と共に音に同調して得られるリアクションは、演奏者にとって非常に重要で、もしリアクションによるフィードバックがなかったら、演奏は困難となるばかりか、フラストレーションを伴なう。
 アコースティックな楽器(管、弦、打楽器など)では、音量の割に大きな体感音響振動的なリアクションが得られるが、音をスピーカによって出す電子楽器では、音量が大きい割に体感音響振動的リアクションが少ない。
 このため、スピーカから音を出す電子楽器や電気楽器による音響は、演奏者が十分なリアクションを得たい欲求から大きな音を出すことにもなる。ロック音楽などその最たるものといえる。聴衆が要求する以上に、演奏者自身が、大きな音を要求するのである。それは自分のアクション(演奏)に対して得られるリアクションは、音楽的、生理的快感が大きいからである。この快感によって音楽にのってきて熱演ともなる。エレクトロニクスの進歩は、演奏者の要求に応えられる性能を獲得し、音量の増大はますますエスカレートしている。
 カラオケ騒音問題があとをたたないのも、このリアクションの快感によるものであろう。マイクロホンなどに頼らず、朗々たる発声のベルカント唱法であれば、それだけで充分な音楽的、生理的リアクションの快感を得られるが、貧弱な声をひたすらマイクロホンの力に頼ることになりやすいカラオケに於ては、スピーカの音量増大だけが、体感音響振動リアクションを得る手段となり、これによって音楽的、生理的快感、陶酔感を求めることになり、騒音問題となるのであろう。
 体感音響振動リアクションは、演奏者でなくても、演奏する姿を間近に見ながら音楽を聴いている場合には非常に快よく感じられ、音楽の感動や陶酔感を高める。その快さは官能的でさえある。
 体感音響振動は、一般的に周波数が低くなる程、聴く部分よりも身体で感じとる部分の方が大きくなるともいわれている。また、体感音響振動は“縁の下の力持ち”なるが故に、人間の本能的な感性や音識下の世界にも影響を及ぼす側面があるように感じられる。
 音楽の場合では、重低音感、リズム感、エネルギー感、陶酔感、恍惚感などの心理的快感・生理的快感をもたらして人間の官能にも訴える一方、ある種の音に対しては、不安感、緊張感、恐怖感などを倍加する。
 耳から聴いている音は、意識的、論理的な面に訴えるウエイトが高いのに対し、体感音響振動は、より情緒的、本能的な面に作用し、何か人間の根源的なものに訴えてくるように感じられる。

3.体感音響振動の欠落した音響再生

 最近は音質の良いヘッドホンが製品化され普及している。たいへん音の良いヘッドホンでも、妙に軽い超自然的な音に感じられたり、十分低い音まで再生されているにもかかわらず、重低音感の不足を感じたりする。
 また、自分で電子楽器を演奏して、これをヘッドホンでモニタすると、まるで感じが出ない。その不自然さは如何ともし難いもので、どうしてもスピーカによるモニタを必要とする。これは明らかに何か重要な音響情報が欠落していると考えられる。
 「耳」には音響エネルギーを与えながら身体(全体)には音響エネルギーを与えていないことによる体感音響振動の欠落である。この欠落を補おうとして、ヘッドホン受聴者は無意識の中に、普段聴く音よりも音量を過大にし難聴などの問題もおこっている(音を大きくする原因は他にもあるが)。
 そこで、後述するボディソニックシステムにより体感音響振動を付加すると、ヘッドホンの音がガラリと変り、自然感や重低音感が出で中音域の音まで生き生きとしてくる2)

4.体感音響振動を積極的に取り入れた音響再生
  ボディソニックシステム

 聴覚に及ぼす体感音響振動の重要性や効果はすでに述べたが、この重要性に着目した実験は、かなり以前から行われており、ウーハーによって床やソファーを振動させる試みなども行われていた3)4)
 筆者は、1960年代から70年代にかけて、壁、天井、床面など、振動可能な板面を直接振動させ、壁や天井全体から音響再生をする、エコニック、サウンド・トランスデューサ5)GTボ−ドスピーカ6)などを開発、製品化した。このトランスデューサは、動電形の電気−機械振動変換器であり、本来の音響再生の他、大学研究室などで特殊な研究用として使われるなど、思いがけないような分野で様々な実験や応用を促した。そして、ボディソニックの開発に当っても重要な基本技術となった。
 このように体感音響振動を取り入れる思想やテクノロジーは、割合はやくから開発されていた。こうした流れの中で、具体的にボディソニックを製品化する重要なきっかけとなったのは、1972年、糸川英夫博士による「現在のステレオにはボーンコンダクションが欠けている」との提言7)(糸川博士の提言参照)があったことによる。そしてパイオニア(株)の創業者・松本望氏は その最も強力な推進者となった。

糸川英夫博士の提言

   糸川英夫博士の提言(ボーンコンダクション理論)

 楽器を演奏する人は、弦楽器でも、管楽器でも、二つの音を聴いている。ひとつは空気中を伝わって来る「音波」である。ステレオはこの世界を追う。もう一つのチャンネルは、ボーンコンダクションとよばれ、楽器をもつ手、抱えている身体を通して、直接振動として伝わり、骨を通り、聴覚系伝播されるものである。現代のオーディオ、ステレオ、すべてに欠けているのは、このもう一つの「音」のチャンネルなのである。
 音楽の中で、聴く人に真の恍惚感を与えるのは、このボーンコンダクションの方である。バイオリニストが、あごに楽器を抱えて、陶然と自分の弾く音に浸っているのは、あごの骨に、バイオリンの表裏板から、じかに伝わる振動音、ボーンコンダクションの音を聴いているためである。ピアニストの場合でも指先、足、腰から、ピアノの音をボーンコンダクションで聴いている
 古典音楽がヨーロッパで発展したのは、貴族社会の中の、小さい室内であって、チャンバーミュージック(室内楽)という名がつけられた通りである。部屋の大きさは、このボーンコンダクションの範囲でつくられていた。楽器の振動が床板を伝わり、イスの足を通して、イスに座っている人の腰にまで減衰しないで、伝達するゾーンである。
 音楽が大衆化し、大ホールが現れたときに、こちらは棄てられた。空気中を伝わる「音波」だけの音楽になった。そして、エレクトロニクスのテクノロジーが生まれ、レコード、オーディオが登場した時にも「音波」だけの音楽になりきり、ボーンコンダクションは忘却の世界に置き去られた。
 ディスコや、ディスコティックで、物凄い音響を出し、ドラムがけたはずれの音を出すようになったのは、若い人達が本能的に、ボーンコンダクションを現代に復活させようというひとつの試みである。
 ボーンコンダクションはそれに気がつけば、エレクトロニックスとテクノロジーを使って再現は可能である。このシステムを欠いている現代のオーディオは、どんなに高価なものであっても音楽をきく装置として欠陥商品といえる。ボーンコンダクションをステレオに付けるべきである。

 ・糸川英夫博士

  わが国、ロケット工学の先駆者であり 権威であり、チェリストとしても知られる。
  話題の小惑星「イトカワ」は、糸川英夫博士の名に由来する。

 

 こうして1976年、最初の製品“ボディソニック・ミュージックチェア”が送り出された8)。この製品は “演奏経験のある人” からは高い評価を得ることが出来た半面、音楽のスタンスをレコード再生のみに置く “HiFiマニア” や “オーディオマニア” には不評であった。
 ひたすら音響的物理特性の高忠実度のみを追う “HiFiマニア”にとって、体感音響振動を付加することなど、理解の外であり、邪道としか映らなっかったことは想像に難くない。
 一方 “演奏経験のある人”は演奏に伴なう体感音響振動リアクションを、ほとんど本能的と言っていい程の感覚で感じ取って、それを高く評価した。
 “音”に対する感じ方でも、両者にはかなり違いがあるようである。“HiFiマニア”にとっては、いったん演奏された音は唯一絶対の原音で、これをいかに寸分たがわず忠実に再生するかが重要課題である。一方“演奏者”は、演奏された音に対し、本当はもっとつややかな音にしたかったとか、陰影のある音にしたかった、この楽器ではこんな音だけれども、別の楽器ならもっと良い音が出せたのに……などと思い、それが唯一絶対ではなく、もっと創造的柔軟性を持ちながら捉えている。
 これらの違いから、両者のボディソニックミュージックチェアの評価は大きく分かれたが、当時は音響的物理特性の高忠実度再生論全盛の時代で、HiFiマニアの発言力がモノを云ったので、前記ボディソニックミュージックチェアは、商業的にたいへんな受難の道を歩かねばならないことになった。
 しかしボディソニックの研究開発はその後も休むことなく続けられ、椅子形の他、クッションやシート状のもの、床全体を駆動し、床全体から体感音響振動を発生する床方式、車載用、ベット形式など、様々な形態、用途の製品が生み出されていった。

 技術的な面でも、様々な開発がなされ、最も基本的なハードウェアである振動トランスデューサ(電気−機械振動変換器)も、非常に小形なものから、大形で強力高性能のものまで、いろいろな種類のものが多数開発設計され、各種用途に対応出来る様になった。

 

ボディソニック用トランスデューサ各種

 さまざまな形状、サイズがあり、用途によって使い分けられる。



●床駆動用ボディソニック・トランスデューサ  SC-8032

 エアロビクススタジオなどに多用されている床駆動用強力形トランスデューサ。ディスコなどにも使用されている(写真左)。


ボディソニック・アンプ群    

 また、トランスデューサを駆動する電気系も、単にトランスデューサにオーディオ信号を印加すれば良いと云うものではなく、いろいろな信号処理のテクニックを必要とする。
 それは、トランスデューサの性能、振動系の性能に対応し、人間の体感音響振動心理、生理に適合したものでなければならない。ところが、ボディソニックは、世界初の製品であり、参考となる資料や文献はほとんど無く、ひたすら実験と試行錯誤の繰返しであった。


   ●ボディソニック用AMP各種 業務用大規模システムの
        大型アンプから、個人ユース、カーユースのものまで
        種々なものがある。(写真右)

ボディソニック信号処理用専用IC

 



●ボディソニック信号処理用専用IC各種
 各種用途向けにいろいろなハイブリッドICが開発されている(写真左)。

 





   ●映画用 人声識別プロセッサ ドキュメンタリー音と人声(台詞
       など)を識別処理する特殊なアナログコンピュータ(写真右)。

 

車載用ボディソニック  

 メーカ

 車  種

 生産年

 ホンダ

 シティ

 '82年〜

 日 産

 フェアレディZ
(アメリカ向け)

 '83年〜

 トヨタ

 ターセル
 コルサ
 カローラ2

 '84年〜

 ダイハツ

 シャレード

 '84年〜

 マツダ

 ロードスター

 '85年〜

 トランスデューサの開発は、その性能を引出す振動系の開発を必要とし、それに見合った電気駆動系の開発を必要とする。それは、人間の振動心理、生理に新たな経験とインパクトを与え、それが新たなアイディアを生み、電気駆動系にフィードバックされて新しい信号処理技術が出来ると、それが振動系の改良をうながし……と、まるでいたちごっこのような試行錯誤と開発の繰返しの中で、電気駆動系の信号処理技術が開発され各種用途向けの専用ICも多数開発された。

 そして現在では各種用途に合わせた多数のボディソニックアンプが製品化されている。応用・適用分野も、パイオニアより発売されているコンシュマユースをはじめ、ホンダ・シティ、ニッサン、ダイハツ、トヨタ から 車載用ボディソニック9) が OEM 生産された。
 映画館、美容サロン、エアロビクススタジオ、カフェバー、ホテル、ライブハウス、ディスコなどへの数多い業務用ボディソニックの採用がある。
 イベント関係では、各種催事会場、ファッションショー、地震体験館、各種パノラマ、などをはじめ、ポートピア(神戸博)川鉄地球館、つくば科学万博'85・NEC館映像ホールなどの大規模なボディソニックシステムが採用され好評を博している。
 エアロビクスでは床面全体をボディソニックにして 体に直接 音楽のリズム感を与えることによって、ライブ感を高め、音楽の能動的効果が高まり好評で、多数のスタジオに採用されている10)。そして最近は、音楽療法への効果が注目され、健康、医療分野 での応用が期待されている。

5.ボディソニックの効果

5.1 音楽鑑賞用としての効果

 音楽を音源とした場合のボディソニックの効果は以下に列記するようなものとなるが、音楽の分野が異なると、その効果の期待点にも微妙な違いがある。

A.重低音感

 低音振動を体に与えるのであるから、重視されるべき効果であることは当然であり、すべての音楽に共通する効果であるが、主としてクラシック音楽などを聴いている人達が重視し期待している傾向が見られるようである。音楽分野とは関係ないが、音質、音響効果に関心の高いHiFiマニアが重視する効果である。

B.リズム感

 リズムが明確な音楽を好む人が関心が高い。モダンジャズなどを主として聴いている人達が重視し、その効果への期待感も強い。シンコペーティックなリズム、スリリングなリズムなど、リズムがジャズに於ける重要な要素なので当然かも知れない。ベースの音、パーカッションの音など、直接体に振動としてたたき込まれる感じでもあり効果もある。この分野の音楽を聴いている人達はリズム感に、より多くの神経を集中しているせいか、重低音感などには、ほとんど関心を示さないように見受けられる。

C.エネルギー感

 ロックなどを聴いている人達が重視する効果である。圧倒的な大音響エネルギー感はロックにとって重要な要素で、ロック音楽を小音量で静かに聴いたのでは、ロックの良さは味わうべくもないであろう。体に強い衝撃感を与えるバスドラムや、強烈なベースの音を体感音響振動として体に与えることにより、強烈なリズム感とエネルギー感が再現され、ロックの真髄にふれる感がある。ボディソニックを設置したディスコが効果を上げるのは、その一例とも云えよう。

D.陶酔感、恍惚感

 あらゆる分野の音楽に共通する効果であるが、ポピュラー音楽などに於て、この面が多いように思える。特にエレキベースの音は何とも快く響き、快いリズム感と共に、たいへんリラックスした気分になる。音楽には、もともと陶酔感や恍惚感があるものだが、ボディソニックによってこれが深められ倍加される。

E.官能的・生理的快感

 程よい重低音振動は人間にとって本質的に快いものであるらしい。何か、人間の根源的な官能に訴えるものがあるように思える。この快さは、女性の方がより深いように見える。と云うのは展示会などで、ボディソニックミュージックチェアで試聴している中に快くなって眠りこんでしまうのは、100%女性であったから……。

 ボディソニックシステムの体感音響振動は、振動には違いないが、バイブレータやマッサージのそれに比べれば、微弱で微妙、かつ繊細なものであり、オーディオ的なものである。(従ってバイブレータなどの感じだけを期待する人には、失望を与えるかもしれない)。しかし、それなるが故に音楽鑑賞に効果があるわけで、ボディソニックは技術的手段としては、人間の体を物理的に揺さぶるのであるが、本当に揺さぶっているのは、人間の感性や心であると云える。
 前述したA〜Eの効果などにより、ボディソニックシステムによって音楽鑑賞を行なうと、音楽が持つ、“感動”や“陶酔感”を、より深いものとし倍加する。そして、たいへん快いものとする。
 ボディソニックシステムが、音楽療法に効果があるのは、上記効果によるものと考えられる。特別な曲でなくても、患者の好みの曲で効果があった、と云うのも上記効果によるものと思われる。
 体感音響効果を付加するのは、音響学的な高忠実度原音再生の立場からすれば、明らかに邪道と云えよう。しかし、音響学的な高忠実度原音再生の立場が見落していた“音楽の重要な本質の何か”を拾い上げているように思える。

5.2 ドキュメンタリー音による効果

 ボディソニックは音楽だけでなく、ドキュメンタリー音や効果音でも大きな効果がある。電車やSLの走る音、トラクタや車のエンジン音、噴火や大砲などの爆発音、雪崩や山崩の音、地震などによりビルなどが崩れる音、etc。
 これら広い周波数レンジと重低音域の成分を含む衝撃感や、振動感を伴なう音、ときには地響きさえ伴なうようなドキュメンタリー音や効果音を、ボディソニックシステムを使用して再生すると、スピーカやヘッドホンだけの再生ではとうてい再現することのできない迫真の臨場感を再現することが出来る。
 この効果を、映画などの映像メディアと組合わせることによって圧倒的な劇的効果を高めることが可能である。ポートピア、川鉄地球館、つくば科学万博'85、NEC館映像ホール、などへの大規模なボディソニックシステムの採用は、上記効果を応用したものである。
 映画やテレビなどへの応用に於ける特殊事情として、ドキュメンタリー音などでは圧倒的な効果が得られる反面、ナレーションや会話(台詞)などの人声で振動を発生すると、不自然感が起こりがちなので、人声をリアルタイムで識別し、これをカットする必要が生ずる。この目的のため、人声をリアルタイムで識別処理する非常に特殊な、一種のアナログコンピュータが開発され、映画館に設置されている。

 以上、ボディソニックの理論的背景や実状などについて述べたが、次にボディソニックが発展した新しい技術について少しふれたい。

6.メンタルバイブレーション(感性振動波形)

 音楽療法的に用いられる、ある種の曲は、単調でゆっくりした鐘の音や波を思わせるような音で成り立っているものがある。心を静めたり、リラクゼーション、入眠などに効果がある。 
 そこでボディソニックシステムに、音楽を用いる代わりに、鐘の音のような感じや、波の音のような感じのする電気信号を電子回路で発生して駆動すると、非常に高い効果が得られることが、実験によって確かめられた。
 音源信号が音楽による場合は、曲によっては、必ずしもボディソニックの良い効果が得にくいものがあるが、電子回路により合成する場合は、最大限の効果を発揮させることが可能である。
 単調で比較的ゆっくりした繰り返えしが、快く“心のバイブレーション”“感性のバイブレーション”として、たいへん大きな効果が、得られる。これを“メンタルバイブレーション”と呼ぶことにする。
 いろいろなパターンのメンタルバイブレーション信号を合成することが可能なので、メンタルバイブレーション信号発生回路を、ボディソニックAMPの中に組込み、選択スイッチにより、ボディソニックとメンタルバイブレーションを使いわけるようにしておくと、より変化に富んだ、巾広い応用が可能となり、より高性能なシステムになる。

7.能動的ボディソニックシステム

 ボディソニックは、音楽再生装置として使われているが、“演奏”の出来るボディソニックの研究が進んでいる。
 ホワイトノイズを音源信号として打楽器的な音の信号を作ったり、入力音楽信号を分析してピッチ成分、その他のパラメータを検出して、音程感のある楽器信号を合成したりして、これをキーボードを叩くことによって体感音響振動を発生可能にしておくことにより、“演奏”が出来るようになる。
 この機能をボディソニックシステムに付加して、音楽を再生し、スピーカからの音を聴きながら、音楽のリズムに合わせてキーボードを叩くことにより、ボディソニックを演奏しているようなリアクションを得ることが出来、再生のみでは得られない興味や感動、陶酔感を倍加することが出来る。
 体感音響振動信号源として“再生”と“演奏”の両者を備えておき、これをスイッチによる選択、ミクシングレベル調整器による調整によって“演奏”のみにも“再生”のみにも、あるいは“演奏”と“再生”が同時に行えるようにも任意の設定、選択が出来るシステムとなる。 
 音楽療法には“受容的音楽療法”と“能動的音楽療法”があるが、能動的ボディソニックシステムは、“能動的音楽療法”の要素を加味し、その可能性を開くものである。

8.音楽療法に使用されているシステム例

8.1 ボディソニック・リフレッシュ1

 バイオミュージック研究会でも取り上げられ、一番、馴染みのあるシステムである。 椅子形式で、無段階リクライニング機構を備えているので、起きた姿勢から寝た姿勢まで出来るので、療法、状況に最も合った姿勢が得られる。
 頭部には開閉の出来るフードがあるので、これを下ろせば囲りの環境から遮断された状態が得られ、より深く音楽に没頭しやすくなる。音源は主としてカセットテープによるが、有線放送などのボディソニック・リフレッシュ1外部信号を接続することも出来る。
 休養効果、解放効果、回復効果、快適効果、夢遊効果、断絶効果などがあり、最近はコンピュータ関連のテクノストレスの解消用として、企業、職場にも多数採用されている。

●ボディソニック・リフレッシュ1 バイオミュージック研究会でも、
   しばしば取り上げられ、音楽療法に応用されているシステム。


8.2 ボディソニック・ベッドパッドシステム

 ベッドのマットレスの上に敷く、ベッドパッド形式のシステムで、病院用ベッドに合せたサイズになっている。
 パッドの中には、図に示されるように、人体のツボを押えるような配置で多数のトランスデューサが取付けられている。この配置は膨大な実験と試行錯誤の結果得られたもので、高い効果が得られるようになっている。ツボを押えたと云っても、ゴロゴロするような感じは皆無で、駆動していなければ、トランスデューサがどこにあるのか、まったく分からない。
図1 ボディソニック・ベッドパットのトランスデューサ配置図。
 ボディソニック信号で駆動すると、ツボを押えるかたちで振動が発生すると同時に、ベッドのマットレスのスプリングを駆動し、振動はベッド全体に広がる。このため、生理的にも、心理的にも、また物理的にも、バランスの取れた、全体感、全身感のある非常に快よい振動感が得られる。

 トランスデューサが人体の真近かにあるので、周波数特性、過度特性など、オーディオ的物理特性も高い。


●ボディソニック・ベッドパッドシステム
 ベッドのマットレスの上にボディソニック・ベッドパッドを敷くだけで
 ボディソニック・ベッドになる。頭部にスピーカがセットされている。

 トランスデューサには、大形のマグネットが使用されているので、磁界が発生している。この磁界は、磁気寝具や磁気ネックレスなどの磁束密度と比較するとだいぶ低いが、総磁束エネルギーは、たいへん高い。これを温度に例えてみると、線香やマッチの火は、温度は数100度もあり、さわればヤケドをするが、カロリーは低く、これで室を温めることなど出来ない。
 一方、パネルヒーターは、温度はあまり高くなく、さわってもヤケドなどしないが、カロリーは高く室を温めることが出来る。
 ボディソニックベッドパッドの磁界は、パネルヒーターに似て、磁束密度は低いが(温度は低いが)総磁束エネルギーは高い(カロリーは高い)ので、局所的ではないが、広くおだやかな高磁束エネルギーが、人体におだやかに作用すると考えられる(磁束ネックレスやリングなどは、磁束密度は高いが、局所的で総磁束は低い)。
 電気駆動系(ボディソニックAMP)にも最新の技術が盛られている。音楽療法では、クラシック音楽など多用されるが、弦楽四重奏曲などの室内楽では、低音成分が少なく、充分なボディソニック効果が得にくいが、弦楽四重奏曲でも充分な効果が得られるような最新開発の信号処理技術が採用されている。
 振動のトーンも、乾いた振動、自然な振動、深い振動、発音の少ない振動など、がスイッチで選択出来、好みや、音楽の種類などに合わせることが出来る。ボディソニックは、椅子やベッドを振動させるので、スピーカの音だけでなく、これら人体載置物からの発音が無視出来ない。病院での使用に於ては、発音の少ない振動のポジションは不可欠となる。
 また、体感音響振動信号源としては、音楽の他にメンタルバイブレーション信号が内蔵されているので、音楽がなくても、快い重低音振動で、心と体をリラックスさせることが出来る。ボディソニックベッドパッドが、褥瘡に効果があると云う話を聞いているが、これは皮膚マッサージの効果・磁気の効果もあるのではないかとも思われるが、医学的証明は、まだ行われていない。
 人間が最もリラックスするのは寝た状態であろう。寝た状態で上記、高いボディソニックの効果が得られるので、たいへん高いリラクゼーションの効果が得られるシステムである。

ベッドパット用BSアンプ


メンタルバイブレーション信号を搭載した
ベッドパッド用BSアンプ 音源としてAM-FMラジオ付きカセットデッキが装着されている。振動のトーン、音楽の種類、ボディソニックと
メンタルバイブレーションの選択などの機能がある。

9.ボディソニック・フロアパネル

 床面から体感音響振動を発生し、体に直接音楽のリズム感を与える床方式がエアロビクススタジオの音響効果を一変させていることは前にも記したが、この効果は能動的音楽療法への可能性があるのではないかと考えられる。
 例えば、音楽のリズムに合わせて体を動かさせるような方法の場合、直接、体にリズム感を与えるので、自然に体が動く感じになる。

 ●ボディソニック・フロアパネル F32 このパネルを敷き
  詰めてボディソニックフロアを構成する。 →


ボディソニック・フロアパネル F32

ボディソニック・プロセッサ、パワーアンプ


●ボディソニック・プロセッサP20H(上)と、ボディソニック・パワーアンプ M200H(下) エアロビクススタジオやディスコなど などの業務用大規模床方式ボディソニック用のアンプ。

 長いスパンで考えれば、今、ボディソニックでエアロビクスをしている若い人達が、老人になって上記のような音楽療法をする場合には、ボディソニックフロアパネルが不可欠と云うことになるかも知れない。
 また、比較的、狭い室にボディソニックフロアパネルを設置すると、高い効果の体感音響振動が得られるので、何か別の応用の可能性があるかも知れない。

結 言

 以上、ボディソニックの理論的背景やその効果について述べたが、医学的にどのような効果や影響があるかの研究はまだ緒についたばかりである。
 本文が、それらの研究・応用への、いくばくかの参考になれば、この上ない喜びとするものである。

 

                                     (1987年1月)

参考文献

  1)小松 明:日本オーディオ協議会誌 JAS Journal 1981年6月 P54-60
  2)小松 明:ラジオ技術 1978年4月 P268-270
  3)五十嵐一郎:ラジオ技術 1963年4月 P60-65
  4)永見 勝:特公−21697、昭44
  5)小松 明:無線と実験 1970年1月 P136-139.・ラジオ技術 1970年4月 P251-254
  6)小松 明:無線と実験 1971年3月 P123-128.・ラジオ技術 1971年3月 P265-269
  7)糸川英夫:公開特公昭48−90515
  8)山田恭太:特公昭52−3281
  9)松島正秀:自動車技術 1984 Vol.38 No.2
 10)体育施設 1986年8月 P154、
 11)小松 明:日本バイオミュージック研究会誌 1987年3月 Vol.1, P93-104


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