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  bodysonic laboratory


 

ボディソニック(体感音響装置)用としての  
振動駆動に適した椅子のフレーム構造  

 

体感音響研究所 小松 明   

 

2000年6月 (Web 05.8.6)  

はじめに

 椅子には長い歴史があり、さまざまな形、構造が確立されている。椅子は座るためのものであり、振動構造については当然ながら配慮されていない。しかしボディソニック(体感音響装置)用の椅子は、振動構造について十分な配慮が為されていないと性能を発揮することができない。

 しかし、椅子の専門家は大勢いるが、ボディソニック用の椅子に対する振動構造まで熟知する専門家は皆無に近いであろう。
 この為、長い歴史をもつ椅子の形状、構造が優先され、ボディソニックとして重要な振動構造には、あまり配慮が及ばない。
 現実的には、伝統的な椅子の形状、構造に妥協しながら、技術的に工夫を凝らして設計・製作される場合が多い。この為、振動効率や体感振動効果を十分に発揮しきれないまま、製品化されているケースも多いのが現状である。

 こうした現状に鑑み、ボディソニック用として合理的な振動構造の椅子フレームについて検討し、いくばくかの参考に供したい。右上に示す写真は、この検討から導かれたボディソニック用として合理的な振動構造の椅子フレームによる体感音響チェアの1例である。
 この椅子がなぜ振動構造に適しているのかを理解するために、いくつかの椅子の構造とそれを振動駆動した場合の問題点を検討した後、写真に示す椅子の構造について述べてみたい。

1.台枠後部フレームの角度の問題 (写真1、第1図-1、第1図-2)

 第1図-1は、写真1の椅子のフレーム構造を示す。この椅子は軽量なので、その点では振動効率を高くしやすい。しかし椅子に振動トランスデューサTr (電気-機械振動変換器)を取り付け振動駆動した場合、台枠が台形をしているので、矢印A で示す振動方向のベクトルと合っていないので撓み難く、振動を妨げることになり、振動効率を悪くすることになる。台枠は床面に接地しており、撓みの要素がないと振動できないことになるからである。仮に台枠が三角形の場合は更に撓まなくなる。  また、矢印で示すTr の振動方向 に、台枠の後部フレーム10 の角度方向が近付くと背フレームが振動を押さえ込んでしまい振動しにくくなる。

     

       写真1                     第1図-1

 

 この様子は第1図−2で見ると、もう少し分かりやすい。第2図-2第1図-1を少し変形した例で、台枠の後部フレーム10 の方向と、振動トランスデューサTr の振動方向矢印 の方向がかなり近い。後部フレーム10 が撓み、振動可能な振動方向のベクトルは矢印 である。振動ベクトルが合っていないので、振動が阻止されてしまう。
 この場合、台枠後部フレーム10 が伸び縮みしないと振動できないことになるが、通常、台枠は鉄パイプなどの伸び縮みしない材料で作られている。この為、振動が阻止され、体感振動の発生効率が落ち、ボディソニックとしての性能を発揮することができない。

第1図−2

2.がっしりと床面に固定されると振動できない (写真2、第2図)

 写真2の椅子のフレーム構造を第2図に示す。この椅子は土台ともいえるほどガッシリした台枠の構造をもっている。支持点は振動的に床に着いた設置点であり、腰部に振動トランスデューサTr を付けても、振動エネルギーの大方は床を振動させることに費やされ、肝心の人体への振動はあまり伝わらず、振動効率が悪くなってしまう。
 人体を駆動するためには、駆動点が振動的に浮いていなければならない。しかし、この例ではほとんど接地されており、電気的な等価回路に置き換えて例えれば、信号(振動)を伝える回路がアースに短絡している感じになっている。

  
   

         写真2                     第2図

3.しっかりした足で床面に接地されている (写真3、第3図)

 第3図は、写真3の椅子フレーム構造を示す。この椅子は台枠がしっかりした足で支えられ、比較的床面に近い位置が支持点 13, 14 となっている。支持点は振動的に床に近く、接地点に近い。この点では第2図の場合と同じような状況となり、振動効率が悪い。
 また、腰部に振動トランスデューサ Tr を付けても座部に振動を伝えることは困難な構造である。これは座部が支持点 13, 14 でしっかりした台枠に固定されているからである。

  
   

               写真3                 第3図

第3図-2


 背部 7 は、座部よりは振動しやすい。しかしその振動モードは腰部の振幅が少なく頭部の振幅が大きくなる。その様子を第3図-2に示す。腰部より頭部の方が大きく揺れると不快感を与えるので、振動駆動する際に避けるべき重要な点である。
 快い体感振動を得るためには、腰部を強く駆動し、頭部にはあまり振動を伝えないことが重要である。

 この振動モードは、腰部にを強く振動させ頭部にはあまり振動を伝えたくない事情に反するので、体感上の振動効果を悪くする。

4.台枠がばね構造を持ち振動効率は高いが、腰部より頭部の
      振幅が大きく揺れる振動モードで快さを損なう (写真4、第4図)

 第4図は、写真4の椅子フレーム構造を示す。この椅子は台枠がばね構造を持ち、座部、背部が、床面から振動的に浮いており、振動効率が高い点で優れている。この点は第1図〜第3図に示すものより、ボディソニック用として適している。
 しかし、そのばね構造の性質上、支持点1より支持点2の方が大きく揺れるため、腰部より頭部の振幅が大きく揺れる振動モードで快さを損なう。この点は前項の第3図-2で説明したことと事情は同じで、不快感を与え、体感上の振動効果を悪くする。

  

     写真4                      第4図

5.背フレームと台枠後部フレームが並行している
      ボディソニック用として合理的な振動構造 (写真5、第5図)

 第5図-1第5図-2 は、本稿の主題であるボディソニック用に適した椅子のフレーム構造を示す。第5図-1 は斜視外観図、第5図-2 は側面図である。第5図-2 の背フレーム と台枠後部フレーム 10 が並行している。取り付けられた振動トランスデューサ Tr の振動ベクトルは 第5図-2の矢印 A で示す方向で、台枠10, 18 の撓みやすい振動方向のベクトルA と一致している。この為、振動効率が高い。
 背フレーム は矢印 B で示す方向のベクトルで振動し、ほぼ平行移動であり、頭部が大きくふれて不快になるなどの弊害もない。頭部位置は振動トランスデューサ Tr の駆動点から離れているため、むしろ振動は弱まる。この為、腰部の振動が強く、頭部の振動が弱い理想的な振動分布となり、高い振動効果が得られる。
 第5図-2 に示す座部 は矢印 A で示すベクトル方向に振動する。これは前後方向の振動と上下方向の振動が少し合成されたものリである。座部を振動させるため座部に振動トランスデューサを付けて上下方向の振動を付加すると「くすぐったい」 問題を起こし、これを取り除くのに苦労することが多い。第5図-2 の場合は 「くすぐったい」 の問題は皆無である。


    

             第5図-1                 第5図-2


 以上のことから 第5図-1,2 に示すフレーム構造では高い振動効率がえられるとともに、高い体感振動効果を得ることが出来る。この為、振動トランスデューサ Tr は1個だけで背部にも座部も十分な振動効果を得ることが出来、高いコストパフォーマンスを実現する。
 3項で述べた第3図の場合は座部が振動しないし、第1図-2で説明した、背フレームと台枠後部フレームが直角(90度)になっている場合は、台枠後部フレームが伸び縮みしないと振動できないので振動を妨げるのと好対照である。
 また第5図-2における振動トランスデューサ Tr は、支持点 9 の下側に Tr が取り付けられているので、第4図で説明したような腰部より頭部の振幅が大きく揺れる振動モードにはならず、高い体感振動効果が得られる。
 このように第5図-1第5図-2 に示すボディソニック用椅子フレームの構造は、比較的軽快な椅子をベースとするボディソニックに好適なもので、合理的な振動構造によって振動効率が良く、高い振動効果の得られるものである。



写真5 第5図-1、第5図-2 に示す椅子のフレーム構造によって作られたボディソニックチェア。左右肘掛け前方にはスピーカが取り付けられ、袖にはアンプ、プレーアなどが取り付けられている。


おわりに

 ボディソニック用として振動駆動に適した椅子の振動構造は、ここに述べたものに限るものではないことは言をまたないが、椅子の振動駆動構造を検討をした文献は、筆者の知る限り、ほとんど見当たらない。こうした現状に鑑み検討を試みたが、いくばくかの参考になればと願うものである。
 

参考文献

 小松 明:体感音響装置用椅子 特許第3484494号 (2003.10.24)


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