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エコニックサウンドトランスデューサ WA3020

壁全体が音源となる新しいSP エコニックサウンドトランスデューサ

エール音響/小松 明   

 

1970年1月号 無線と実験 1)   


はじめに

 スピーカにコーン紙その他の振動板があり、その振動により音を発生するのは今更ここで書くことでもありませんが、こうして得られる音はあくまで点音源です。しかし大オーケストラの演奏などはもっと広がりのある音です。また各楽器から出てくる音はほとんど無指向性です。
 ナマの演奏会で聴く音と、スピーカから出る音とをくらべますと、どんなに周波数特性を良くしても、ナマ演奏の持つ雰囲気やバイタリティーまでは伝えてくれないような気がします。どんなに特性を良くしても、特性データだけではカバーしきれない、もっと他の多くの要素があるように思えます。
 そこで特性データにあらわれない要素のひとつとして、音の広がりに着目しました。どんなに特性をよくしても、ナマの演奏会とは所詮別物であるなら、別物であることを最初から肯定して、スピーカから出す音でなければ得られない音、効果、おもしろさ、etcに着目して、何か新しい行き方があってもよいのではないか…、しかもできることなら巨額の費用を要する限られたマニアだけにしかできないような高嶺の花的なものではなく、誰でもが応用できる方法は…、と考え、実験、試作、試聴を繰返えした結果、多くの困難が統出しましたが、当初予期した以上の、そしてそれ以外のおもしろい数多くの成果を得ることができましたので発表させていただきます。

コーン紙のないスピーカ

 どんなに良いコーン紙をつけても、コーン紙を振動させるかぎり、音源は“点”になってしまいます。そこでコーン紙を振動させることは思いきってやめてしまい、壁全体を振動させてやろうと考えました。
 こうして得られる音は、広い音の広がりと、無指向性とを持つ面音源である筈です。理論は間違いない筈なのですが、軽いコーン紙を振動させることさえ問題が多いのに、コーン紙などとは比較にならない重量のある壁板を振動させる…、またコーン紙は、その材質、すきかた形状etcに細心の注意をはらって作られますが、壁板はそんなことは まるでお構いなしです、到底まともな音が出てくるとも思えません。
 しかし何らかの方法で壁全体から音が出せたらすばらしいし、多くの便利さ、おもしろい応用がある筈です。ここから悪戦苦闘がはじまりました。
 最初は音質にあまり重点のおかれないパックグランド・ミュージック用にと考えていたのですが、試作を重ねていくに従い、壁の何たるかも見当がついてきました。だんだん性能が向上し、音質もとうてい壁が鳴っているとは信じられないほど良いものとなり、Hi-Fi の領域にせまるものさえ可能になってきました。
 こうして出来上がったのが、標題の壁全体が音源になる新しいタイプのスピーカ “エコニック・サウンドトランスデューサ” です。
 コーン紙などの振動板を持たないエコニックは、それ自身からはほとんど音が出ませんが、これをいったん壁板や天井板など(2〜15mm ぐらいのベニア板、新建材など好適)に取り付けますと、壁全体あるいは天井全体が振動して音響を発します。このためほとんど指向性の無い、広がりのある面音源が得られます。

 照明の歴史をみますと、電球などの点光源にはじまり、螢光灯の線光源、そして壁全体、天井全体が光るエレクトロ・ルミネツセンスなどの、面光源が未来の光だといわれています。エコニックは未来の面光源に相当する面音源を先取りした格好でず、従来のスピーカが本質的に点音源であったのとおおいに異るところです。もう置場所に困るようなわざとらしいおおきなスピーカ・ボックスは不要になりそうです。

新宿にあるエコニックの試聴室

 壁板の裏側、天井板の裏側から取り付ければ、どこにスピーカがあるのか誰にも気づかないようなさりげない、それでいてハイセンスなリスニング・ルームを作ることもできます。また構造的には防水構造となっておりますので、屋外での使用も可能です。
 外観、寸法、重量などは写真および第1図に示すようにたいへん小さく、手のひらのなかにスッポリ入ってしまうほどです。 このためどんな場所でも簡単に取りつけることができます。


壁面に取り付けられたエコニック 第1図 エコニックの外形寸法図

音響再生システムとしての構成法

 再生システムとして考える場合、プレーヤに始まってアンプ、スピーカと個々の組合せ方が問題となるところですが、プレーヤ、アンプについては、とくに他の再生システムと異るところはなく、一般に市販されているプレーヤ、アンプをそのまま使えます(もちろんホームメイドもおおいに結構)。
 ただ何分にも重量のある壁板を駆動するので、普通のスピーカよりどうしてもパワーが必要です。幸い現在ではアンプのパワーは皆大出力化されていて、スピーカのボイスコイルがトンでしまう事故が相次ぐほどでずので、あまり間題にならないと思いまず。
 アンプのパワーの目安としては、普通のスピーカを使う場合の2〜3倍あることが効果を高めます。スピーカ・システムとしては、エコニックを壁、天井その他できるだけ広い面に取りつけることが効果を高めます。ステレオにする場合、2個のエコニックはできるだけ離して下さい。すると素晴らしい音の広がりが得られます。
 取付け位置は部屋の状況によりますが、第2図(a-f)などが考えられます。取りつけは、エコニックの取りつけ板の4コの穴に3mmぐらいの木ネジ、またはビス、ナットでしっかり取り付けます。その際、必ずスプリングワッシャを入れると。できればネジロツク、接着材などを併用すれば完全です。

第2図(a-f) エコニックの取付位置の例 第3図 壁面へ取付け状況説明図

 また壁などに取りつける場合、壁の表側につけても、裏側からつけてもかまいません。性能の上ではどちら側からつけてもほぼ同じです(ベニア板厚 3mmの場合)。
 普通のスピーカの場合は、壁の裏側から付けたら音の出る穴を明けてやらないと音が出ませんが、エコニックの場合、エコニック自身から音が出るわけではなく、壁板が振動して壁板から音が出まずので、音の出る穴などいっさい不要なわけです。
 このため、壁、天井などの裏側から取り付ければ何処にスピーカがあるのかまったく分からなくなります。
 取り付ける板は、2〜9mm厚ぐらいが適当です。取り付ける位置は、なるべく大きい板の中央に、近くの柱などに固定されていない部分に取りつけて下さい。そのようすを第3図に示します。

変った応用

 取りつける湯所は、壁や天井にかぎらず板状のものであれば何でも可能です(ドアなどでも可)。また材質についても、ベニヤ板、新建材などの木ばかりでなく、ダンボール、金属板、ガラス板、発泡ポリエチレン、各種合成樹脂板、etc…… 材質をうまく選びますと特色のある音色を出すことができます。
 たとえば1mm厚前後ぐらいのなるべく大きなアルミニューム板(1m×2mぐらい)を吊り下げ、これにエコニックを付けますと、再生音に残響効果がつきます。それに再生される音色はやはり金属板らしい音がします。このためシンバルの音を再生すると、迫真のシンバルの音がします。何かナマ演奏が持つバイタリティーのようなものを再生してくれる感じです。
 エコニックには、ウーハ、ツィータなどはありませんが、取りつける板の厚さ、大きさ、材質、部屋の状況などをうまく組合せますと、かなり再生周波数帯域を変えられます。応用如何によっては、ウーハ、ツィータも可能となりましょう。
 家のなかに適当な壁などがない場は、3〜10mm厚ぐらいの定尺(1m×2m)のベニヤ板、化粧板などを用意して、これに取り付けますと超薄型のスピーカ・システムができます。この場合、補強のフチ取りを適当におこないますと、音響効果が格段と高まり、音圧レベルが上がります。
 この考え方をうまく応用すると、壁掛け形のスピーカ・システムを作ることができます。ただ注意を要するのは板そのものが振動しますので、単に立て掛けて置きますとビリツキますので、しつかり固定するか、吊り下げるかする必要があります(但し補強の縁取りがあるときはあまり問題にならない)。
 その他、黒板やテーブルなどの板状の家具類へ取リ付けたり、写真や看板などのパネルに取り付けたり、自動車の天井に取リ付けて車の屋根全休をスピーカにしてカーステレオを鳴らしたり、さらに凝って、ベニア板などをモダンアート的な形に作って適当に装飾したものに、エコニックを取り付け、これを天井、壁などに取り付けるとチョッとしたインテリア・デザインができます。
 これはまだ実験してないことですが、エコニックは防水構造であること、高い圧力の振動を出せること、比較的高い圧力にも耐えることなどから、少し工夫すれば水中スピーカとして応用が可能と思われます(何分にも寒中の為プールに入れませんので、そのうちに温泉プールに行って試みたいと思っています)。

試聴の結果

 板厚5mmぐらいの新建材 (ベニヤ板に木目プリントしたもの) を張った壁(室の大きさ約 36u、壁の大きさ巾5m×高さ3m)にエコニックを4個取りつけ、30W×2 のンプで鳴らした結果、非常に音の広がりのある素直な音が得られました。ダンピング特性も意外に良く、周波数帯域も思いの外、広いようです。
エコニックWA3020とWF6007 今までいろいろな人(専門家を含む)に試聴していただいた範囲では 皆一様に驚き、壁からこんな HiFi な音が出るとは信じられず、どこかにスピーカでも隠してあるのではないかと疑う人が続出する始末でした。
 音圧分布は非常に均一で、エコニックのすぐ近くでも特に大きな音にならない反面、離れてもそれほど音圧が下がりません。これは音源が点でないことの利点です。
 スピーカとマイクが近づくことの多いワイアレスマイクなどにエコニックを使うと、近づいても一般スピーカの場合よりハウリングが起こりにくくなります。
 周波数特性については、取り付け場所などによってだいぶ変ることと、測定方法も現在のJIS規格によるスピーカの測定方法では測定できないため、目下測定方法の規格作成を検討中です。

おわりに

 紙数の都合で詳しいことが書けませんでしたが、使う人のアイデアで、おもしろい応用のできる、そして音響再生における新しい行き方への提案として、読者諸兄のご意見、ご批判をお待ちいたしております。

参考文献

1)小松 明:壁全体が音源となる新しいSP、エコニック・サウンドトランスデューサ
  無線と実験誌 1970,1月号, P136-139
2)小松 明:面音源を実現させた新しい振動ユニット、エコニック・サウンドトランスデュ
  ーサの特徴と性能 ラジオ技術誌 1970,4月号, P251-254
3)大石 進:場所を選ばず遊び気分で音を楽しめる
  ダイヤトーン アクチェータ・ユニット ACT-1  ラジオ技術誌 1990,5月号, P68-69



 【注】 エコニック・サウンドトランスデューサ は、後に ボディソニック(体感音響装置)を開発するに
     あたって重要な基本技術となった

 


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 04.3.22


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