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  bodysonic laboratory


  

面音源を実現させた
    新しい振動ユニット

 

エコニック・サウンド
  トランスデューサの
   特長と性能

壁面に取り付けられたエコニック・サウンドトランスデューサ WA-3020
  
エコニックの大きさをとたばこと比較

 

 ■エコニックの規格■

 

   小松 明

1970年4月 ラジオ技術2)   


1.新しい音響再生方式

 この程、エール音響(株)で開発された“エコニック・サウンドトランスデューサ WA3020”について、その特徴を説明しましょう。
 このエコニック・サウンドトランスデューサは、面音源を実現させた新しい振動ユニットで、壁や天井など、板状のあらゆる面に取り付けることにより、壁や天井自身を振動させて音を出す新しい音響再生方式を実現するもので、従来のスピーカの常識を打ち破る画期的なものです。大きさはわすかに直径56mm、高さ35mm、重さが380g、しかも音の出る穴やスピーカボックスは不要です。
 「室内のどこを見まわしても大げさなスピーカボックスや機械くさいホーンは見あたらない。壁や天井を見ても音の出てくる穴やサランネット等、スピーカを埋め込んだあとはどこにもない。それなのにHi-Fiで非常に広がりのある美しい音楽が聴こえる。音はどこから聴こえて来るのだろう?…… 音は四方の壁全体、天井全体から出てくるのだ。音楽を聴く人はその音の中に包み込まれる…」。これが未来のリスニングルームの姿だとすれば、こんな夢のリスニングルームの実現に一歩近付いたのが、エコニック・サウンドトランスデューサです。
 いくら壁全休から音を出すといっても、壁や天井と同し大きさのスピーカを作るのでは、お金があり過ぎて困っているような大ブルジョアならいざ知らす、われわれの懐ぐあいでは手が届きません。だいいち、スピーカのコーン紙では壁や天井の役に立ちそうもありません。
 そこで壁や天井はそのままにしておき、壁や天井を振動させる駆動ユニットを作ることにしました。ただし普通のスピーカなら、せいぜい数cm〜数10cmの軽いコーン紙を振動させればよいのですが、エコニック・サウンドトランスデューサは、寸法も重量も文字どおりケタ違いに大きく重い壁板を振動させなけれはならないのですから大変です。

2.構造と動作

2.1 構造

 振動部そのものの動作原理は、動電形スピーカと同じく、フレミングの法則によっています。このため、各部は普通のスピーカに対比させることができますが、「壁を振動させる」という意図に合うよう、細かい工夫がされています。
 話をわかりやすくするため、まず第1図で普通のスピーカと対比してみましよう。マグネット、ヨーク等の磁気回路部分は、普通のスビーカと同じです。ボイスコイルも普通のスピーカと同じです。ただし壁板や天井など、非常に質量の大きいものを動かすため、特別なものを使っています。このボイスコイルについては、後に詳しく述べます。
 パッキングはダンパに相当します。取り付け板はコーン紙の一部に相当するとでもいいましょうか。この取り付け板を壁板に取り付けることにより、壁板が振動してコーン紙に相当する働きをします。端子はスピーカと同じです。
 このように、だいたい普通のスピーカに対比させることができますが、取り付け方法はだいぶ異なります。普通のスピーカは、マグネット、コーン紙等すべてフレームに取り付け、フレームで保持されていますが、エコスックにはフレームがありません。エコニックでは、取付板を壁に取付け、すべてがコーン紙に相当する壁や天井で保持されます。
 図面の上では、普通のスピーカと対比できますが、技術的にはだいぶ様子が違います。ではそれらのうちのひとつ、ボイスコイルについて少しふれてみましよう。
 ボイスコイルは普通、ポリウレタンなどの融着電線を巻いているのですが、エコニックのものは銅線の上に磁性メッキ層を設け、その上にポリウレタン等の絶縁被覆をした磁性線をアルミのボビンに巻いています。こうして作られた磁性ボイスコイルを、スピーカマグネットの磁気ギャッブの中に入れますと、磁石の吸引力と磁気バランスにより、ホイスコイルは磁気ギャップの上下方向の中間位置に浮びます(普通のボイスコイルでは下に落ちでしまう)。磁性ボイスコイルは常に上下の中心に自己保持されるため磁気ダンパ作用が働きダンピング特性を向上させます。
 このため低域での特性が改善され、ダンピングの良い歪みの少ないスピーカを作ることが可能などの効果があります。また磁性ボイスコイルは、磁性メッキされているため、これを磁気ギャップ中に入れますと、見かけ上磁気ギャップが狭くなったのと同じ効果を持ち、磁束密度を高めます。磁性ボイスコイルを使用したスピーカについては、また別の機会にふれてみたいと思います。

2.2 動作

 普通のスピーカの場合、磁気回路はフレームによって固定されているため、磁気回路が振動することはないわけですが、エコニックの場合、磁気回路は固定されておらず、振動可能となっているため、エコニックを壁に取り付けたとき、壁面が振動するのか磁気回路が振動するのかという疑問が生じます。
 理想的な動作状態は磁気回路の質量が無限大で、振動させる板状の壁面の質量がゼロの状態です。この場合は磁気回路が静止し壁面が振動します。しかし現実的には磁気回路の質量は有限であり壁面も質量があります。従って駆動可能な壁面はベニア板などの軽量で振動可能な壁面であり、質量の大きいコンクリートなどの壁面は駆動できません。

3.規格と性能

 エコニックは従来のスピーカとだいぶ異なりますので、JIS規格によるスピーカの規格にそのままあてはめるには、些か無理があります。測定方法についても同様です。しかし使う人の立場からすれば、やはりスピーカの規格と対比できる規定の仕方が便利なので、一応スピーカの規格に準じた方法によっています。しかしこれらはあくまで便宜的に定めたもので、厳密な意味では、スピーカのそれと多少異なる面があることを、予め了承していただきたいと思います。第2図にエコニックの寸法を示します。以下、いくつかのに周波数特性例によって、その性能をみてみましょう


 第3図の(a)は、第4図に示すような新建材の壁に取り付けた場合の周波数特性で、エコニックを取り付けた正面軸上と、軸上昇面から1m右にずれた点での測定データを重ね合わせた周波数特性です。正面軸上と、軸上昇面から1m右にずれた2つの特性は、驚くほどあまり変らない音圧レベル、周波数特性です。壁全体から音を出すのですから当然といえば当然のことですが…。
 一方、第3図の(b)は普通のHiFi用コーンスピーカの周波数特性です。正面特性はフラットですが、正面から1メートルずれたものはだいたい6dB音圧が下り、高域では2KHzあたりから減衰して6kHz以上では実に20dB以上落ちています。
 実際に実際に再生音を聴く場合、普通はスピーカからかなり離れ、正面より横にずれています。このため実際に聴いている音は、特性で示される音より高城の出ない悪い特性で聴いていることになります。さらに、特性は無響室におけるものてすが、実際は無響室ではなく、複雑な反射、干渉、吸収等があり、室内てあることを考え合わせると、特性はさらに悪くなります。
 その点エコニックは測定した特性と実際に聴いている音とが、ほとんど同じになります。このため特性を見ただけでは、一見あまり高域が出なくて,それほど良くないように見えますが、実際に聴いて見ますと,よく高域が出ているように聴こえます。
 そして、その音はたいへん自然な音がします。壁全体の広い面から出る音ならではのもので、高域まで完全無指向性なわけてす。もう一度、第3図の(a)と(b)の特性を見比べて、その辺り事情を感じ取って下さい。「案外高域が良出てるしゃないか」という人に特性を見せると「この特性よりもっと高城が出ているように聴こえるけれどもなあ」という原因がこの辺にあるわけです。
 第5図の性特は、板厚9mmで、3尺×6尺のいわゆるサブロク定尺のラワンベニア板に30cmの木材でフチ取りしたものを用いた場合のものです。壁の場合より寸法が小さいため、低域が壁ほどは出ていない半面、板厚が厚く、しっかりしているため、高域が壁の場合より伸びています。
 第6第の特性は板厚3mm、910mm×760mmの大きさのラワンのベニアに縁取りをし、さらに30mm×10mm厚のラワン材のサンを対角線上にクロスさせて入れたものの中点、つまリサンがクロスした部分にエコニックを取り付けた場合のものです。
 第5図の場合よりさらに板が小さいため、低域が出にくくなっていてす。板厚3mmとはうすいのですが、サンが入っているためにかえってしっかり補強され、高域が割合良く出ています。

 サンはピアノの響板における響棒の役割をするわけです。第6図の場合にサンを取ると、高域、低域ともに出にくくなります。

4.エコニックの使い方

 エコニックを取り付ける板としては、一般的にいって、てきるだけ軽く、面積が大きくて、ヘナヘナ曲ったりしない固い感じのしっかりしたものが、能率も周波数特性もよい結果が得られます。
 では実際には何に取り付けるのが良いのかというこうことになにますが、身近にあって比較的良い良果を得られるのが、ベニア板の壁や天井です。最近はプリント合板の新建材と呼ばれる物が多く建築に使用されていますが、これなど、おあつらえ向きです(第4図参照)。
 新建材の壁は一般に4mmぐらいの厚さの板を使っていて、この板自身はかなりヘナヘナしていますが、壁や天井にする場合、大工さんは適当にサンを入れますので、これが大変効果的に作用し、良い特性が得られます。第6図の場合と同じ効果です。30mm角前後ぐらいのサンが入っているものなどは好都合で、この場合はエコニックをサンの上に付けると効果的です。ただしサンが太くて押しても引いても動かないような固すぎるものである場合は、第4図のように板の中心に取り付ける方が効果的です。
 だいたいは第4図の方が一般的で、まちがいがありません。板厚が7〜12mmぐらいのものでは、サンはなくてもかまいません。第5図の場合をもう一度見てください。
 壁や天井に取り付けた場合は面積が大きいため、無限大バッフルに付けた場合に近い効果が得られ、再生される音も自然で、非常に広がりのある音が得られます。第5図や第6図の場合のような平面スピーカ、あるいは壁かけスピーカとして使う場合は、かならず板にフチ取りをしてしっかりさせた方が、特性がフラットになり、音圧レベルも高くなります。
 その他、材質としては木材の外に発泡スチロール(発泡スチールは音圧レベルが上る)段ポール、各種プラスチック板、金属板、ガラス板etcと、いろいろなものが可能です。
 特殊効果としては、2mm厚でlm×2mぐらいのアルミ板を吊り下げて、これにエコニックを付けますと、再生音に残響効果がつきます。それに再生される音は、吊り下げてあるために、いかにも金属板らしい音がします。シンバルの音を再生すると迫真のシンバルの音がします。金属板のようにカタイものを使った場合、高城が広く出ます。第7図の特性をごらんください。2mm厚のアルミ板の特性です。
 エコニツクの取り付けは壁や天井の裏側から取りつけることを最上とします(ただし、性能的には表から付けても、ほとんど同じです)。そうすればどこにスピーカがあるのか誰にも見えず、壁や天井全体から音がする未来の夢のリスニングルームを作ることができるからです。もちろん、音の出る穴などは不要です。
 エコニックは4本の木ネジで簡単に取り付けられますが、必ずスプリングワッシャを入れて、できれば接着材でネジのゆるみを止めておけば間違いありません。またどうしてもネジの使用ができない場合は、良い接着材を使えば、接着材のみによる取り付けも可能です。取り付け場所は壁等の他に、ドア、テーブル、家具、ダンボール箱、写真等のパネル、和室では襖等良い音がします。
 アンプとの組み合わせは普通のスピーカを使う場合と同じですが、壁を振動させるためにどうしてもパワーが要るため、普通のスピーカの場合の3倍ぐらいのパワーが必要になります。現在では、アンプは高出力になっていますので、あまり問題はありません。一般に30W×2ぐらいあれば、相当広い室でも十分です。ステレオ再生としては第8図の(a)〜(f)等の組み合わせがありますが、中でも(d)や(f)の場合が比較的効果が良好です。
 エコニックは音原が広いため、直ぐそば聴いても特に大きな音がしない反面、離れてもあまり小さな音になりません。でずから、BGM用としては恰好で、音圧分布が均一のため音の影などができません。喫茶店等にはもってこいです。

(エール音響KK技術部)     

参考文献

1)小松 明:壁全体が音源となる新しいSP、エコニック・サウンドトランスデューサ
  無線と実験誌 1970,1月号, P136-139
2)小松 明:面音源を実現させた新しい振動ユニット、エコニック・サウンドトランスデュ
  ーサの特徴と性能 ラジオ技術誌 1970,4月号, P251-254
3)大石 進:場所を選ばず遊び気分で音を楽しめる
  ダイヤトーン アクチェータ・ユニット ACT-1ラジオ技術誌 1990,5月号, P68-69



 【注】 エコニック・サウンドトランスデューサ は、後に ボディソニック(体感音響装置)を開発するに
     あたって重要な基本技術となった

 


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 04.1.24


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