体感音響研究所


エコニック STD
ボードスピーカー









ボディソニックの技術開発
ボディソニックの研究
ボディソニック効果の探求 −情報を持つ体感音響振動こそが効果の正体である−

 

  bodysonic laboratory


 

音づくりの新しい可能性を示す   
全面的に改良された GTボードスピーカー  

 

ボードスピーカーは 後に ボディソニック を開発するにあたって重要な基本技術になった。  

 

小松 明       


1971年3月号 ラジオ技術4)    

壁面に取り付けられたGTボードスピーカー

 設計者自身が 「イヤ 決してハイファイだなんていうつもりはありません」といわれるのですから、この新しい音響再生方式と現在の一般SPシステムとを比較して、その忠実度を争っても、あまり意味はありません。しかし、では現実の楽音とぜんぜん無縁の音かといえば、決してそうともいえないのが、このスピーカー(?)の音なのです。
 “再生”なのか“創造”なのか? 考えかたからいえば、筆者のいう通り、たしかに“邪道”なのでしょうが、この駆動ユニットが作り出す音の世界は、アマチュアが―度は覗いてみてもよいのではないでしょうか。
                     (編集部)


はじめに

 このGTボードスピーカーは、壁板や天井板(ボード)などを振動させて壁や天井そのものから音響を発生させる、ユニークで画期的なスケールの大きい音響再生方式です。
 コーン紙を振動させるスピーカーがコーンスピーカーと呼ばれていますので、壁板や天井板などのボードを振動させる本器を「ボードスピーカー」と呼ぶわけです。
 筆者はこのボードスピーカーに関して、昨年本誌4月号251頁〜254頁で面音源を実現させた新しい振動ユニット、エコニック・サウンドトランスデューサとして発表させていただきましたところ、たいへん反響をよび多くの読者諸兄よりお問い合わせやご意見をいただきました。その後、ボードスピーカーの研究もさらに進み、後述する周波数特性に示すような、すぐれた特性を持つDS-8000シリーズの開発に成功しましたので、前回発表しましたものと比較しながら技術的進歩の様子を説明します。

1.ボードスピーカー誕生の背景

 現在、音響再生技術は、よりよい音場効果を追求して4チャネル・ステレオ時代を迎えました。どんなに再生装置の特性を向上させても、モノラルでは音場効果におのずから限界があり、それを克服するために2チャネル・ステレオが生まれ、さらに4チャネル・ステレオ時代を迎えたわけですが、よりよい音場効果を得る方法として、チャネルを増すことが効果的であることは言をまちませんが、ここで現在のスピーカーの音源というものを、もう一度考えてみたいと思います。
 現在、主流を成しているコーンスピーカーにしてもホーンスピーカーにしても、その振動板はせいぜい数cm〜数10cmにすぎず、こうして得られる音源は「点音源」となってしまいます。
 ある音響空間を作る場合、特にステレオとして、ある音の広がりを求める場合、ふたつの「点音源」の組み合わせによるよりは、もっと面積のある「面音源」による方が、より自然に音響空間を形成できます。大きな面積を持つ「面音源」は本質的に無指向性ですから、指向特性の面でも非常に有利です。
 このような利点があるために、「面音源」は、はやくから注目されていました。そして、壁面など広い大きな面から音を出し、音に包み込まれるような音響空間を得ようという考えが、一部の音響屋さんの夢として、かなり以前からありました。そして一部では実験もなされましたが、決定的な結果は得られないままになっていました。
 筆者もそんな夢にとりつかれた1人です。「壁全体、壁そのものから音響が再生され、機械臭いホーンや、ものものしいスピーカーボックスなどないのが、未来のリスニングルームだ」と考え、未来のリスニングルーム実現のための、新しい音響再生方式の研究を続けてきました。
 大きなスピーカーボックスを目の前に置いて、それとニラメツコをしながら音楽を聴くという形が「常識」になっていますが、よく考えてみますと、何か妙な気がします、スピーカーボックスなどは、本来舞台裏のものであって視界に入らないところにあるべきだと思います。未来のリスニングルームはあまり舞台裏をさらけ出したり機械を意識させたりするようなハ−ドなものではなく、もっと音楽的なムードを重視したものであるべきだと考えます。再生装置そのものは、よりよい音楽を再生するための手段であって、目的はあくまで音楽そのものの筈なのですから……
 性能的には音場効果の良い面音源を! ムード的にはスピーカーボックスを視界からなくす音楽的なリスニングルームを! こんなビジョンを画きそれを実現する手段として、壁そのものから音響再生を行なう駆動ユニットを作る道を選びました。

2.面音源の特長

 さて壁面を音源にした場合、その最大のメリットは、何といっても振動板面積が桁違いに大きいものが容易に得られることです。そして、この振動板面積が大きいということがいろいろな効果をもたらします。それらを以下に列挙してみましょう。

●少ない振幅で低音が出せる

 スピーカーの振動板の振幅は、面積に逆比例して大きくなります。これをスピーの直径で考えますと、直径を2倍にすると振幅は1/4ですみます。つまり2乗で逆比例します。普通のコーンスピーカーの直径が、数cm〜数10cmであるのに比し、壁面は文字通り桁違いに面積が大きいので、振幅は、ほとんど問題にならないほど小さくてよいことになります。
 ウ−ファ設計者の悩みである大振幅により起るひずみの問題からは、開放される感じになります。

●すぐれた音場効果、指向性

 壁面を駆動して音響再生を行なうと「面音源」が得られ、音に包み込まれるような音場(ある意味で4チャネル・ステレオの求めているもの)を得ることができます。また、広い面積の面音源は室内空間内では本質的に無指向性です。このため、ステレオのリスニングポイントを大幅に広げまず。

●心理的効果

 ものものしいスピーカーシステムとニラメッコしながら音楽を聴くという異様な形から解放され、壁面全体から音響が再生されるユニークさと、前記リスニングポイントが広がったことと合わせて、よりリラックスした音楽鑑賞ができます。

●最低共振周波数がほとんど現われない

 どんなスピーカーにもそれぞれ「音色」というものがあります。筆者はしばしばナマの演奏会に足を運びますが、ナマの演奏会の音とスピーカーから出る音とでは、大きな音色の違いを感じます。特性の良い再生装置で、良い音であっても、なお、音色の違いを感じます。特に無音時に、何か息詰まるような圧迫感のある異様な雰囲気とでもいうような音色を感じます。それは多分、AMPから出る熱雑音やヒスノイズなど、連続スペクトルを持つ雑音に、スピーカーの共振で色づけされることによる音色の違いなのだと思います。
 これは、スピーカーボックスに入ったコーンスピーカーにおいて特に著しく、ナマの演奏会場では絶対に存在しないものです。
 この犯人は、どうも最低共振周波数fおよびそれと関連するスピーカーボックスの問題のように思われます。
 ホーンの音はぬけきっているといわれますが、その理由の1つとしてホーンの場合fの影響が少ないからであろうと思われます。大きな振動板を持つボードスピーカーを測定してみますと、ほとんどfが現われません。したがって圧迫感を感じさせるような音色にはあまりならないのです。
 以上のようにすぐれた効果がある反面、これを実現するのには多くの技術的困難がありまずが、その駆動方法さえ適当であれば、実験データの上では数10Hzの重低音から20kHz近くの超高音まで再生することができ、ベニヤ板などの壁板は、すぐれた振動板であることが経験的に分かりました。

3.ボードスピーカー GT の構造

 ボードスピーカーの性能を決める重要な点は、壁を如何に駆動するかということです。壁板は、コーン紙と異なりかなり独特なクセがあります。ボイスコイルが発生したエネルギーを、いかに能率よく歪みなく、かつフラットな周波数特性になるように伝達するかが問題です。

 

  
  

 ボードスピーカーはそれ自身では単なる駆動ユニットに過ぎず、壁面に取付けることによってはじめてスピーカーとしての機能が完成されます。このため、ボードスピーカーの壁面への取り付けは、単なる取り付けだけの問題ではなく、取り付け → 振動エネルギの伝達という、性能上の重要な役割をもっています。従って如何に壁板に取り付けるか、その構造と方法のメカニズムが、特性を決定するといっても過言ではありません。

 第1図にGTの構造を示します。この構造はデュアルダンパ・センターセッテイング方式という形式で、その特徴は前面支持ダンパと後面支持ダンパの2枚のダンパによってマグネットなどの重い磁気回路を支えていることと、中心部を貫通する取り付けネジによって壁板に取り付けられていることです。これを前回発表したものと対比してみましょう。

 昨年本誌4月号に発表したものは、シングルダンパ・プレートセツティング方式という形式で、第2図に示すように、1枚のゴム・ダンパで重い磁気回路を支え、アルミプレートで壁板に取り付けています。低音域を再生するためには、ゴムダンパのスティフネスを、小さくする必要があります。つまり、やわらかくしなければなりませんが、ある値以下にスティフネスを小さくすると、磁気回路の重みで第3図に示すように磁気回路が垂れ下って、磁気ギャップの中心からずれて磁気回路にボイスコイルが触れてしまい、スピーカーとして正常動作しなくなってしまいます。

 これを避けるためには、ダンパのスティフネスを大きく(つまり固くする)しなければならなくなり、低音域の再生が困難になります。ダンパのスティフネスを小さくして十分底音域の再生ができ、かつ磁気回路が垂れ下るなどのトラブルが起らないようにしたのが第1図のGTです。

 ここでシングルダンパとデュアルダンパの違いを、例え話で説明してみましよう。第4図aのように磁気回路を1本の糸で吊り下げますと、かたむいてしまいますが、第4図bのように2本の糸で吊り下げた場合は、水平に保つことができます。
 第4図aがシングルダンパに相当し、磁気回路が傾かないようにするためには、糸を非常に剛性の高いもの、つまりスティフネスの大きなダンパにしなければならなくなります。
 これに対してデュアル・ダンパ方式は第4図bのように前と後を吊下げますので、糸はやわらかくても、つまりダンパのスティフネスは小さくしても、磁気回路は傾いたり垂れ下ったりしません。これがデュアル・ダンパのすぐれた点で、第1図の前面支持ダンパと後面支持ダンパが、第4図bの2本の糸に相当します。このため16Hzの重低音を楽々再生できます。
 壁板への取り付けについてみますと、前回発表したプレートセッティング方式は、取り付け上は、なかなか捨て難い良さがあるのですが、性能上、ボイスコイルで発生したエネルギが壁板に伝わるまでの間で、プレートによって高音域が吸収されてしまう欠点があります。このため高音域の再生が困難です。
 一方、GTでは中心部の狭い面積にエネルギを集めて壁板を駆動するため、15kHzぐらいの高音域までフラットに再生することができます。
 このようにGTは、デュアルダンパで低音域が伸び、センターセツティングにより高音域が伸びて、16Hzの重低音から16kHzの超高音までの広い周波数帯域の再生を可能にしています。
  

4.GTの特性

 ではその性能を、各種振動板にGTを取り付けた場合のデータにより見てみましよう。 第5図a〜fに周波数特性例を示します。壁面、板、パネルなど、その材質、面積、板厚など、いろいろですが、いずれも16Hz〜16kHzぐらいまでの広い周波数帯域をもっています。前回発表したシングルダンパ・プレートセッティング方式では、取り付ける材質、板厚、面積などにより周波数帯域が変り、面積が小さくなると極端に低城が出なくなったり、板厚が薄いと高音域が出なくなったりで、良い再生音を得ることが非常に難しかったのですが、今回発売するGTは、どんな板に付けても、ある範囲の周波数帯域を再生するため、取り扱かいが非常に容易になりました。
 これがデュアルダンパ・センターセッティング方式のすぐれた点であり、また技術的進歩でもあります。
 
  

5.GT DS-8000 シリーズの規格と種頻

 GT. DS‐8000シリーズには第1表に示すような4機種があり、使用目的により選ぶことができます。外形寸法は各機種とも共通で 86φ×38_×750cです。
   
 この中でちょっとおもしろいのはDS-8080です。インピーダンスが80Ωのため、第6図のような電源トランスレスのアンプの使用が可能です。
 最近はパワーICが出まわり、アンプも小形にできそうな感じがしますが、いざlCを使ってアンプを作ってみると、少しも小形にも軽量にもなりません。それもその筈、大きくて重いパワートランスがあるためですが、その点、第6図の回路のアンプは電源トランスレスのため小形軽量にすることができます。
 
  

6.GTの使い方

 GTを取り付ける板としては、一般的にいってできるだけ軽く、面積が大きくてヘナヘナ曲ったりしない剛性を持ったものが適しています。
 では実際には何が良いかということになりますが、身近にあって比較的好結果の得られるのがベニヤ板の壁や天井、家具などです。最近はプリント合板の新建材と呼ばれるものが多く建築に使用されていますが、これなどおあつらえ向きです。
 新建材の壁は一般に4mmぐらいの厚さの板を使用しており、この板自身は少しヘナヘナしていますが、壁や天井にはかならず第7図に示すようにサンが入っているため、これが効果的に作用して良い特性が得られます。このサンとGTの取り付け位置の関係は第7図を見て下さい。また壁への取り付けは第8図を見て下さい。
 今や4chステレオ時代ですが、より良い音場効果を追求する4チャネル方式にボードスピーカーはうってつけです。特に主として残響音、反響音などの再生を行なうリアスピーカーにおいては、このボードスピーカーはそのものズパリで、壁面全体から音響再生が行なわれるため、コンサートホールに近い効果を出すことができます。
 リアスピーカーには小さなスピーカーシステムが使われることが多いようですが、その場合どうしても低音が不足します。その点GTは重低音も出ますので、性能的にも満足のいくものです。また、GTは低音再生が得意ですからウーハとして使用することができます。クロスオーバ周波数5kHzぐらいのホーン・トゥイータとGTを組み合わせますと、スピーカーボックスなしのスピーカーシステムができます。
 GTを壁面や家具に取り付ける場合、ネジ穴が明いてしまいます。しかし壁面や家具にあまりキヅを付けたくないもの、その場合には取り付けアタッチメント F−80を使用することにより、写真Cのように壁面や家具の板面、ドアなどにネジ穴を明けることなく、GTを取り付けることができます。
 使用するアンプは特別なものは不要で、普通のスピーカーの場合と同じに考えて差し支えありません。普通の室でしたら、2chステレオの場合20W×2以上あれば、まず十分です。

おわりに

 GTは壁の裏側から取り付けても同じ音響効果が得られ、且つスピーカーを見えなくすることができます。そして音源面積が広いため音の影がでませんので、喫茶店などのBGM用としてはうってつけです。
 ボードスピーカーは、他のスピーカーに比べ歴史が新しく、まだ生れたばかりです。この新しい音響再生方式が、より大きく育っていくよう、読者諸兄のご意見、ご批判をいただければ幸いです。

                             ニッケイ電子株式会社 技術部


 

 スタインウェイの響板にGTボードスピーカーをつける

 

                         五十嵐 一郎


 風変りな ドライブ・ユニットが発売されたものです。ゆかいですナ。小生はだいぶ以前から「ピアノの響板にラッパをつけてみたい」という下心がありました。ある時期に平板パフルに、フォスター・FE-103Jを2発くっつけて、これをピアノの中に押込んで聴いたりもしました。
 今回のDS‐8000というユニットには、取り付けに通称“ペタリンコン”の両面接着テープというのがアダプタとしてあり、ピアノの響板に、穴や木ネジをたてたりせずにオイタができました。
 例によって、何となく貼りつけなんとなく音を出しての第1印象は、
 1)よくいう電気くさい音がしない。LPレコードがSPレコードのそれの音のような音色になる。上質の木の音、これは貴重(?)。
 2)むろん、f特のようなものは、つける相手で一変する。また、どうも低レベルからパワーをあげていっても、リニアに音量が増えたように感しられない(これからすると、ピアニストというのは、たいへんなコントロールをやっている)。
 3)けれども、この音はちょっとやそっと電気系でいじっても出てくる音ではない。もともとピアノの響板というのは何センチのウーファに匹敵するか? などと考えるとツマヅクようです(ユニットは加速度形で12dB/octのはず)。楽器のディメンジョンと楽器のイメージ(寸法)とは、空間を無視して話ができない。それに特定の楽器を好むという行為は、ともすると“端正”な高忠実度再生を、技術レベルから芸術音指向へと、走らせるようです。けれどもピアノはいいなあ−。
 ただ、こういうことがわかりました。旧ろう乙部和尚が“ピアノの中にラッパをいれるときは、ペダルを踏んで実験しろよ”。ところが、ペダルはいれても抜いても、このばあい変わらない。すると響板はまさに響板で、2次音源として使うのがよいのかも知れません。ドライブすべきは各コード(弦)なのです。それにしても、スタインウェイの響板から、エネスコの“ラ・フォリア”など出すなど、西条盤鬼先生からは破門にされそうです。
                                  (1971.1.20)


【参考文献】

1)小松 明:壁全体が音源となる新しいSP、エコニック・サウンドトランスデューサ
  無線と実験誌 1970,1月号, P136-139
2)小松 明:面音源を実現させた新しい振動ユニット、エコニック・サウンドトランスデューサ
  の特徴と性能 ラジオ技術誌 1970,4月号, P251-254
3)小松 明:壁自体が音源となる 4チャンネル音場再生に適したボードスピーカについて
  無線と実験誌 1971, 3月号, P123-128
4)小松 明:音作りの新しい可能性を示す 全面的に改良された GTボードスピーカ
  ラジオ技術、1971年3月、P265〜269.
5)小松 明:ヘッドホンとの併用で重低音を体験できるオーディオクッション・ディスコターボとは?
  ラジオ技術、l978年4月、P268〜270.



   【注】 ボードスピーカーは、後に体感音響装置(ボディソニック)を開発するにあたって重要な基本技術
    なった。ラジオ技術、l978年4月号5)掲載の「ヘッドホンとの併用で重低音を体験できるオーディオクッ
    ション・ディスコターボとは? ボディソニックMODEL 24」のドライバユニット(振動素子)として、
    ボードスピーカーが使用されている。


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