HurrIでK/D10.0は可能か


 Kill/Death。それはWBの中で自分の技量を見つめるための一つの目安です。もちろんK/D=強さというわけではありませんし、K/Dだけでは表しきれないさまざまな要因もあります。

 しかし私自身にとっては、K/Dは自分の調子を図る一つのバロメータであり、常々それなりに注目している数字であります。特にK/D10.0というのは一つのボーダーであり、だいたいこの数字を維持できていれば私はWBやっててハッピーです(笑)

 K/Dの他にもK/SとかStreakとかMAでの目立ち方とかさまざまな評価対象があるのですが、K/Dは一番シンプルでかつわかりやすい指標ですので、とりあえずはこれを自分の上達の度合いとして注目しているプレイヤーも多いのではないでしょうか。

 今回はこんなK/Dについてちょっと考察してみようと思います。


K/Dの定義

 K/Dは文字通り撃墜数と自分の被撃墜数の比です。

 撃墜数は一般にはPiece(Assist)は考慮しないのが普通です。また、被撃墜に関しては、Killed(爆発または死亡)とBailed(脱出)のみをカウントし、DitchやDumpはカウントしないのが普通です。

#Ver.1.07くらいまではDumpは死亡扱いだったので悔しかった思いがあります(笑)

 一出撃だけの数字で計算するわけにはいかないので、普通はある程度の出撃数があってやっと有効な数字とされます。以前Scoring Pageがあった頃の内容にしたがって、私の部隊の中では50sortieを規定打数としています。戦っていれば自軍が有利なときもあれば不利な場合もある、でも50sortieもすればだいたい平均化されるだろうという考え方です。
 もちろん国の強さや乗ってる飛行機、その他の要因で単純にK/Dを比較することはできませんが、とりあえずただの「目安」として考えて差し支えないと思います。

#点数を増やす方法として、1出撃して撃墜をとったら規定打数に達するまで.fly.exitを繰り返すとか、別IDを飛ばしておいてそれを撃墜するとかありますが、これらの行為はメガプレイヤーゲームの本質を外した自慰行為であると思うので、ここでは「そんなことする奴はいない」として無視することにします(^^;;



乗る飛行機によってK/Dに有利不利はあるか

 もちろんあるでしょう。

 意外と認めたがらない人が多いのですが、WBでは戦闘機の性能差は厳然として存在します。単純に「強い飛行機」「弱い飛行機」とは分類できませんが、各種性能が違う以上当然「戦力」としての能力も異なります。

 BoBでもやればすぐわかるのですが、機体の性能差ははっきりと出ます。例えば10対10でSpit5対A6M3の全滅戦BoBをやったとしましょう。これくらいの人数になると、パイロットの技量差は統計的分析の誤差範囲に入ってしまい、出てくる撃墜比の数字は残酷なまでにその機体の性能差をあらわすことになります。

#ちなみにVer1.10の頃、イベント運営のためにテストプレイでこの実験を行ったのですが、撃墜比は実に3:1でspitの圧勝でした。これが「いや、零戦はもっと強いはずだ」という論争を生んだりしたのですが(^^;


 とにかく機体による性能差は厳然として存在します。ですから当然「K/Dを稼ぐに向いた飛行機」に乗った方がK/Dは伸びるでしょう。

 しかし、「K/Dを稼ぐのに向かない飛行機」で取るK/Dには限界があるのでしょうか?K/D10.0を実現することは、低速で火力の弱い飛行機(例えばHurrI)では不可能なのでしょうか?



Hurricane I

 現在のWB(Ver.2.5)で最弱な戦闘機はどれかと考えたとき、inue氏のデータ集を見て一番速度の遅いHurricaneIを思い当たりました。

 火力は隼の12.7mmx2と同等の7.7mmx8。威力は同等とは言え、7.7mmは12.7mmよりずっと弾道特性が悪いです。

 そして速度は海面高度でたったの260mph。WBの戦闘機の中では最もカメ。これではUS版ゴジラのダッシュに追いつかれてしまいます(笑)

 格闘性能はなかなか鋭いものがありますが、上昇力の欠如と視界の悪さは致命的。特にRPS後半の350mphオーバーの機体が飛び交う中ではかなり辛い戦いを強いられます。

 さて、果たしてWBのMAの中で、HurrIを使ってK/D10.0を達成することは可能でしょうか?


 結論から言えば可能でしょう(^^; それだけの腕のある人が乗れば良いわけですから。「いや、いくらトップエースでもそれは無茶だろう」という声が聞こえてきそうですが、少なくとも物理的限界は無いでしょう。

 例えばKill/Sortieには、一出撃に使える弾数という制限がありますが、K/Dは生きて帰ってこれれば良いわけで、物理的限界というものが無いわけです。

 しかし、この「物理的限界」を考えるために、WBのMAという場を分析してみなくてはいけません。



Main Arena

 Main Arena。WBプレイヤーの主戦場です。そこはまるで魔窟、あるいは混沌の巣。さまざまな目的を持ったプレイヤーたちが、それぞれ異なる行動規範を持って仮想空間を飛びまわっています。

 この空間の最大の特徴は「命令体系が無い」ということです。皆自分勝手に自分の飛びたいように飛んでいます。逆に言うとこれがMA最大の長所であり、MAでは誰の制限も受けず、自分の好きなように飛べるのです。

#MAでの行動の仕方に関してはさまざまな議論がありますが、これは別の機会に譲りたいと思います。少なくとも私は、課金を払っている以上は自分の楽しみだけのために行動する自由は保証されると思っています。ただしこれは原則であり、メガプレイヤーゲームを楽しむためにどのように行動するべきかという行動規範・マナーとは別の問題と認識しています。


 「命令体系が無い」ということは、自分を死地に追いやるような無理な作戦や命令が無いということです。ですからプレイヤーは皆、自分の意思で「危険な状況」「無理な作戦」を回避することができます。基地が一つしかなく、出撃すれば必ずVulchされる状況が嫌なら、出撃しないというオプションすら選択できます。要は「逃げたければいつでも逃げられる」ということです。

 実戦では無理な作戦に投入されて死んだパイロットがたくさんいるでしょう。逃げたくても戦わざるを得なかった状況もあったに違いありません。

 しかし、WBのMAではそんなことはありません。行動の自由が保証されているのであるから、考え得るあらゆる危険は全て自分の意思で回避できます。逆に言うと「死ぬのは全て自己責任」ということです。



MAにおける「詰み」

 例えばFw190D9でMAを飛んだとします。Doraは最も高速な機体の一つで、ほとんどの危機をダイブでの高速離脱で乗り切ることができます。

 十分な速度を持ったDoraに追従できる機体はP51Dと、RPS上一日しか飛べないMe262しか存在しません。

 しかし、Doraとてエネルギーがない状態では零戦にも補足されます。D9が加速して十分な速度域に達するまでに、零戦はその20mmでD9をしとめてしまうでしょう。

 この仕留められるまでの間、やられる側としてはただ幸運を祈るしかない状態、この状態を私は「詰み」状態と称しています。

 低空で旋回戦をしていた零戦がFwの集団に囲まれる。調子に乗って突入を繰り返していたこのFwが更に上空から来たP51に補足される。そのP51は、ドックファイトでFwを仕留めたが、速度と高度を全て失った時に別の零戦に補足される。これらは全て「詰み」の状態です。Vulchされている基地から離陸することは、もう滑走路に出た瞬間から詰んでいるようなものです。

 「詰み」状態になった機体が生き残れる可能性は二つだけ。相手がミスした場合と、相手がこちらを攻撃する意思が無い場合だけです。

#Vulchされている基地から上がることが悪いといっているわけではありません。その状態は自分に死につながるリスクがあると指摘しているだけです。念の為。もちろんそれを楽しむことはまったくもって個人の自由です。:-)


 多くの場合、「詰み」即イコール「死亡」ではありません。それは相手が人間であり、人間である以上ミスもすれば、きまぐれを起こすこともあります。

 しかし、たとえ生き延びたとしても、自分が「詰み」という危険な状態に身を置いてしまった事実は隠せません。

 もしMAで生き延びたければ、どのような状況が「詰んで」いるのか(あるいはいたのか)を感じ、そしてそれを避けるべく努力しなければなりません。



「詰み」の形 −Fw190A4−での例

 Fw190A4にとって、P51D、Ki84、Spit14などは皆天敵です。これらの機体は皆自分より高速で、かつ自分より格闘性能に優れます。すなわち、これらの敵に優位(技量の差、状況、その他を含む)から挑まれた場合、相手がミスしない限り勝ち目は無いということです。

 例えばあなたがFw190A4に乗って高度3kにいたとします。先ほど1機しとめたばかりで上昇中、速度は200mph。基地まで4分はかかります。

 気付くと6時上方からKi84がD20くらいをダイブしてきています。速度は400mph近く出ているでしょう。周りに味方はいません。

 これはもう完全に「詰み」の形です。相手がミスをしない限りあなたは逃げ切れないでしょう。ダイブして速度を稼ぐには高度が足りないですし、また速度を稼いでも相手の方が速い。切り返して格闘戦を挑んでも格闘性能には天と地ほどの差があります。

 これでも腕に差があれば逆転することができるかもしれません。しかし、相手が自分と同等なら? あるいはそれ以上だったら?


 現実にはこのような状況を生き延びてしまうことが少なからずあります。しかし、それでもこの状況は「詰んで」いたのです。なんらかのミスあるいは人的要因のおかげで生き延びれただけなのです。これを理解できず、「どんな状況でも腕さえあればなんとかできる」と考えるのであれば、きっと何度でも同じ状況が己を悩ませることになるでしょう。


 さて、では上の状況から少し変わって、基地まであと1分、もう着陸態勢だったとしましょう。基地にはAckが全門生きています。この状況は詰みでしょうか?

 おそらくまだ詰んでいます。あなたはAckに身を隠すことができますが、相手はAckに突っ込んでも撃つという選択肢があります。WBのMAでは全ての人がAckに撃たれるのを嫌がるとは限りません。相手も無傷である保証はありませんが、多少の被弾と引き換えにあなたを撃墜することは可能です。相手が射撃位置につける前に、あなたは機体を着地させ、停止させて.exitできない限り、この状態は相変わらず「詰み」です。



「詰み」の回避

 「詰み」状態を回避するためには、その状況を回避すべく行動しなければなりません。それは詰んでしまってからではもう遅く、詰まないように事前の行動を行うということです。

 先のFwであれば、簡単なことですが高度を取ることです。高度があればいきなり危険な状況に敵が現れることは少ないでしょう。例え現れても、D40程度なら速いうちにダイブして逃げればまず逃げ切れます。しかし、これをボーっと見過ごして、自分の真上D20くらいに占位されてしまったらこれはもう詰みの状態です。


 現実には攻撃するためにはエネルギーを使わなければなりません。ですから先の例では、そのように自軍基地から遠いところでそこまでエネルギーを使って最初の1機を仕留めたことが、既に失敗であるとも言えます。それを防ぐためには、そこでの敵はあきらめるという選択肢も考慮しなければなりません。

 更に言えば、MAでは自分の味方も単機でなければ敵も単機ではありません。メガプレイヤーという事実がこの状況判断をより複雑なものにしています。ですから、MAで行動するにおいて、詰みの状態を完全に回避するということはほとんど不可能に近い難しい事柄といえます。

 しかし、この難しさがある意味WBの醍醐味とも言えます。少なくとも私の知る何人かのパイロットはそこまで考えてMAで戦っています。



「詰み」の回避 −低性能機の場合−

 先のFwの例ですが、もし他の低速な機体だったらどうでしょう?例えばあなたのFwは事情があって300mphしか出ないとしたら?

 おそらく先よりも「詰み」の状況が広がることでしょう。通常のFwならD40までの接近を許しても逃げ切れる場合、きっとこの機体だったらD60で逃げないと「詰み」でしょう。

 しかし、あいかわらず詰みの回避は可能です。ただ、自分の危険度合いを測る基準がよりシビアになるだけです。先ほどP51でも状況によっては零戦にも追いつかれると書きましたが、逆に言えば、状況が整えば零戦でもP51から逃げ切れるということです。ですから、HurrIでも詰みの回避は可能です(もちろん難易度は上がってます)。

 一般に低速機はその分旋回性能が上がっており、単純により遠くから逃げれば良いというわけではありません。ある程度近寄られても格闘性能が上まっていればなんとかなることが多いです。しかし、旋回性能があれば全ての詰みが回避できるというわけでもありません。

 結局さまざまな要因を考慮しなければなりませんが、あらゆる機体に「詰み」の状況が存在し、そして自分の意思でそれを事前に回避することが可能です。

 低性能機(ここではMAで生き延びにくい機体)では高性能機よりも「詰み」の範囲が広いだけで、結局生き延びるためにやらなければいけないことは同じなのです。



Sortie/Death一定の法則?

 先にあらゆる詰みは回避可能と書きました。理論的には(^^;

 しかし、WBは人間の営みです。人間は必ずミスします。ですから現実には全ての「詰み」を回避できる人はいません。

 しかし、できないものに向かって努力するのが人間です。少なくとも私はそれを目指しています(^^;

 そして、その目安になるものとしてS/D(Sortie/Death)があります。


 Sortie/Deathは「平均何回連続して生還できるか」ということです。言いかえれば「何出撃に1度致命的なミスをするか」という、集中力の目安にもなります。

 そして、おそろしいことに、(少なくとも生還を目指してWBをプレイしている場合において)ほとんどのパイロットのS/Dは、乗る機体が変わってもあまり変動しないのです。

 Ver.1.10くらいの時、Fw190D9、P40E、A6M3と乗り換えたことがあります。そのときの数字はこんな感じでした。

  K/D K/S S/D
Dora 19.0 1.9 10.0
P40E 15.0 1.3 11.6
A6M3 10.0 0.9 10.7

*A6M3は40sortieくらいで規定打数に達してません。

 自分でこの数字を分析していたときに、なんとなくS/Dなんて計算してみたら、機体が変わってなくてもあまり変化が無いことに気付いてびっくりしました。

 どう考えても、D9に乗っているときよりもA6M3に乗っているときのほうが辛いはずなのに、「死に至る確率」はあまり変わらないのです。MAでは。


 つまりこういうことです。WBプレイヤーは「生き延びる」ことを重点に置いた場合、あらゆる「詰み」の状況を回避しようとする。それは機体がどの機体になろうとも変わらない。しかし、人は必ずミスをする。そのミスする度合いがS/Dではないか。

 そうなのです。MAでは(生還しようという意思がある限り)、飛行機の性能は「撃墜を取る能力」に影響を与え、「生存性」に影響を与えないのです。生存性に影響を与えるのはそのプレイヤーの集中力と言いますか、どれだけミスをするかということになります。
#先の数字では当時私は約10Sortieに1度致命的なミスをしていることになりますが、実際はもっと多いはずです。ミスしても運良く生き延びれたことが少なからずあるはずですから。個人的な感想では、大体3回の詰みで1回死んでいる感じです。


 この理論に気付き、さっそくうちの部隊員のスコアを調べてみました。うちの部隊(FT)は当時「生きて帰る」ことを部隊訓としており(最近はだいぶ変わってきましたけど)、この理論のデータ検証にはうってつけのサンプルです。

 これで計算してみると、皆結構機体を乗り換えているのにS/Dには大きな変動が無いことがわかってきました。もっと長期的にデータを引っ張ると、S/Dがその人の成長を表していることもわかります。皆さんも、もし自分の飛行データを保管しているなら是非計算してみてください。

#もちろんこの計算は「生還」に重きを置いている場合にのみ有効です。生還しなくてもいいからたくさん撃墜したいという場合はもっと違う数字になるでしょう。しかし、一般に「出撃したら必ず死ぬまで戦う」という人はそう多くなく、だいたい生きて帰れれば帰ろうとするのでほとんどの人に当てはまるのではないでしょうか。ですからS/Dは「堪え性の度合い」とも言うことができます(^^;



機体性能とS/Dの関係

 上のS/D理論を再度まとめるとこういうことになります。

前提条件:生還に重きを置いているパイロットにおいて

S/D (生還しようとするパイロットの集中持続力)
K/S (機体の殺傷力)x(パイロットの殺傷力)
K/D (K/S)÷(S/D)

*S/Dは機体性能に影響しない
*K/Sは機体性能により、大きく左右される
*(機体の殺傷力)は火力、弾数、射撃精度、滞空時間などが影響する。

 おもしろいですね。

 この理論から考えると、K/Dは、パイロット要因であるS/Dと、機体要因が主であるK/Sによって決定される結果に過ぎず、「K/Dを稼ぎやすい機体」とは「1SortieでKillをたくさん取りやすい機体」ということになります。



HurrIでK/D10.0は可能か

 さて、やっと本題に戻ってきました。上のS/D理論から考えてHurrIでK/D10.0を取るための条件を考えてみましょう。

 まずK/Sから考えてみることにします。果たしてHurrIでどの程度のK/Sを出すことができるでしょうか。私がA6M3に乗って生還しようと戦うとK/Sが0.9くらいになりますから、HurrIだともっと辛くて0.6くらい?いや、0.4くらいが妥当でしょうか?

 これからK/D10.0を達成するのに必要なS/Dを計算すると、

K/D K/S S/D
10.0 0.9 11.1
10.0 0.6 16.7
10.0 0.4 25.0

 うーむ、K/S0.4だと25Sortieに1回しか死ねないことになりますね。とりあえず今の私の腕ではまだ辛そう。ですが、MAでは決して無理ではない数字のように思えます。それよりも殺傷力の方の腕を高めれば、K/S0.6あれば17S/Dで行けるので、こっちのほうが実現性高そうですね。いずれにせよまだ修行が必要ですが(^^;



 とまぁ、なんとなく意味のないことをつらつらと考えてきたわけですが、K/Dという数字を一つ考えるだけで、WBのMAという場の性質や人間の行動パターン、そして陥る失敗など、さまざまなことが浮かび上がってきます。いやぁ、WBって本当に面白いですね(^^;

#結論は特にありません(笑)

Back