部隊戦の戦い方を考える


 J's部隊トーナメント99も終了しました。戦っている間は余裕も無いので、ただしゃかりきに目の前の問題を解決していくだけでしたが、戦いが終わってみると色々と振り返る余裕も出てまいります。

 そう思えば、H2Hの戦い方やMAでの戦い方に関するコンテンツはけっこうありますが、部隊戦の戦い方に関するコンテンツはまだなかったなと思い、自分なりに部隊戦(ここでは単純BoB形式の部隊戦)について考察してみようと思います。

*ただし、極力「単純BoB」という形式の戦いに集中して、WBでなくとも応用できるような記述を心がけたつもりです。ホーム&アウェー方式や3ラウンドでの機体決定の駆け引きなどの部隊トーナメントルールに関しての話題は別の機会にまた触れたいと思います。



H2Hとの違い −個人技から連携の世界へ−

 単純BoBとH2Hのルールは極めて似ております。高度、燃料制限、conからの制限解除、同時の離陸、などなど。「複数vs複数」という点を除けば、H2Hと単純BoBは本質的にまったく同一と言ってよいでしょう。

 しかしながら戦い方としては新たな要素が加わることになります。H2Hではシンプルな個人技量の戦いであったのが、部隊戦ではそれに加えて連携という要素が重要になってきます。

 戦力として人数をカウントした場合、1+1が単純に2にはならずに、3あるいは4になったりする、また場合によっては逆に1.5や0.5になったりしてしまう、これが連携という世界です。



連携の難しさ −過去2回の部隊トーナメントの傾向と対策−

 先ほど1+1が2ではなく、3あるいは4になるのが連携であると書きました。しかし、実際に連携を行って1+1を2以上にするのは予想以上に困難であると言えます。過去の部隊トーナメントを見ても、連携を重視する部隊よりも個人技を重視する部隊(あるいはエースを揃えた部隊)が勝利を得るという傾向があります。

 これはある一面、WBにおける部隊戦がまだ黎明期であるということに起因しているのではないかと私は分析しております。

 例えばサッカーを見てみましょう。ワールドカップで行われるサッカーは個人技だけではなく、極めて複雑かつ練りこまれたシステム運用による連携が重要とされております。特にそのポジションの関するシステムの重要性は、全てのチームのストライカーを11人揃えても、システム運用が無ければ(例えば全員FWでは)まず勝てないだろうと予想できることからも伺えます。

 一方、現在のWBの部隊戦はまだ子供のサッカーに近いものがあります。子供のサッカーではシステムもへったくれもなく、20人がボールに群がってわーっとやります(^^; そこで勝負を決するのはフォーメーションや作戦などのシステムではなく、単純な個々の能力と気合です(笑)

 現在のWBもこれに近い状態にあると言えます。ただこれは、部隊トーナメント自体のレベルがまだ低いということではなく、まだまだ発展する余地が大いにあると解釈すべきでしょう。もう少し言うなら、近い将来、部隊トーナメントのレベルがどんどん上がっていったとき、単純にエースを揃えるだけでは勝てなくなる時代が必ず来るということではないでしょうか。

#「子供のサッカー」と書きましたが、最初は「小学生のサッカー」でした。しかし話に聞くと最近の小学生のサッカーのレベルアップはすさまじく、その辺のガキが「うちのシステムは4-5-1のワントップなんだけど、うちのストライカー、プレッシャーに弱くて大事なときに決定力欠けるんだよね」とかほざきやがるらしいです(^^; 恐るべし。



部隊戦でのプレイヤーの性格

 部隊戦はサッカーに似ていると思ったのは友人のchacha氏にサッカーの応援に駆り出されて等々力競技場で観戦したときのことです(笑)

 一般的にサッカーではフォワード(FW)、ミッドフィールダー(MF)、ディフェンダー(DF)の三つの役割があります。近代サッカーではさらにボランチやらウィングバックやら、上記の役割をさらに複雑化したシステムが導入されているらしいです。

 そこでWBの部隊戦を振り返ってみると、意外とこのポジション分けは各プレイヤーの性格分けにマッチしているように思えます。

・FW的性格


・DF的性格


・MF的性格


 現在(1999年)のWB部隊トーナメントの状況から見るに、部隊の中でいわゆるエースと言われる人はFWとMFの役割を兼任しており、攻撃的MFというよりはFWが司令塔を兼ねているケースが多いようです。



部隊戦での役割分担

 上記、3種類の役割を紹介しましたが、サッカーではボールは一つ、ゴールも一つであるのに対して、WBでは全員がボール(機銃)を持っており、ゴールも一つではない(全員自身がゴール)であるという相違があるため、単純に部隊のメンバーを「君はDF、君はFW」と分けることはできません。

 しかしながら、例えばFWとDFの性格は矛盾するところがあり、高いレベルでバランスを目指すことは可能ではあるものの、基本的には他方の性格を犠牲にしなければならない部分もあります。そのようなわけで、ある程度の役割分担及び性格付けは成り立つことになります。部隊の中で自分がどの役割を担っているのか、これを意識しておくことは戦いの中での各場面での判断に役立ちます。

 また、その役割は実際のサッカーと同じように、攻守が入れ替わることも十分にありえる流動的なものとなるでしょう。したがって、状況が変わればDF的役割だった者が積極的に攻撃に出るのもあり得るわけです。



ポイントゲッターの存在

 各部隊には戦闘においてKillを稼ぐもの、いわゆるエースが存在します。エースの特徴としては、射撃機会につけた場合に極めて高い確率で相手を無力化できるという殺傷力があげられます。これはまさに部隊戦において勝利を掴むために最重要とされる能力であります。

 特にWBにおいては、サッカーと違い、誰もがボール(機銃)を持ってシュート(射撃)を行うことができます。このため、部隊員全員の射撃能力を高めることは勝利への近道になるものと思われます。エースが一人しかいない場合、彼が何かの手違いで死に体(6に敵をつけてしまってdragしている状態。すぐclrしてくれる味方がいない場合、彼はしばらくの時間、空戦域の中で戦力として期待できなくなる)になってしまうと、大幅な決定力ダウンにつながってしまいます。そのためにも、各々の殺傷力を高めておくことは、攻高守低の状況である部隊戦では必須であると言えます。

 しかしながら、将来部隊戦のシステムが確立されていくにつれ、「決定力を全員に求めない。撃墜能力が高い人間が二人いればいい。後の人間は別の能力を高める方向に労力を費やすべきだ」という時代がやってくるのかもしれません。

 現在の状況でも、自部隊のポイントゲッターを如何に動きやすくさせるか、これに腐心している例が見て取れます。ある意味、連携の最終的な目的は、敵機を誘導して味方のポイントゲッターの射撃間合いに入れることと言っても過言ではないでしょう。



司令塔の存在

 いくら現在のWB部隊戦が黎明期で、システムらしいシステムがまだできていないとは言え、戦いの司令塔たるリーダーは存在しております。

 この司令塔の役割は各部隊長がやることが多いようなのですが、参加部隊のオーダーを見ていると、決してエース(もっとも殺傷力の高いパイロット)が司令塔を兼ねているわけではないことが見て取れます。

 具体的に「〜〜のフォーメーションを取れ」などような命令までは出ていないものの、戦いの中で状況を俯瞰したり、味方を落ち着かせるための指示を出すためには、ひたすら攻撃だけを考えているわけにはいかないのでしょう、ある程度の時間的余裕が必要みたいです。

 このあたり、WBの部隊戦が将来もっと複雑化したシステムに発展していくことのあらわれではないかと私は分析しています。



攻撃は最大の防御?

 部隊戦の大きな特徴の一つに、撃墜を取れば取るほど自陣営が有利になっていくということがあります。サッカーなどでは点を取っても、次のキックオフでは(精神的なダメージは別として)基本的には戦力差は発生しません。

 しかしながらWBの部隊戦においては、撃墜は直接戦力バランスに影響します。6vs6で初めて、3機いきなり撃墜されてしまったら戦力比は2倍(6:3)。集団戦闘では個々の技量は著しく平均化されてしまうので、この状況での逆転は極めて困難と言えるでしょう。

 したがって、サッカーに比較して、WBにおいては攻撃的要因がより強くなる傾向があると言って良いと思います。ある程度防御を犠牲にしても、勢いに乗って一気に攻撃をしかけて数的優位を作ってしまえば、後の戦いは相当有利になると言えます。

 もちろん、「最初はガチガチに防御を固め、1機も墜とされないようにする。その間にこちらのエースが1機食って、パワーバランスが崩れた頃合を狙ってカウンターアタックをかける」なんて戦法も可能だとは思うのですが、果たしてそれだけの組織連携が可能かどうか。これは将来の部隊戦のレベルアップの方向として非常に興味深いところです。



速攻狙いのHOは有効?

 部隊戦においては攻撃面を重視すると有利に持っていきやすいと書きました。時に接敵直後の初期段階に相手の数を少しでも減らしておくことは、後々の展開に大きく影響してきます。

 となると勢い、最初の交差でHOを狙いたくなってしまうのが人情です。実際、最初の一撃でいきなり出るKillメッセージは、部隊員に与える影響は計り知れないものがあります。

 しかしながら、HOを狙うということは相手からもHOができるということ。当然自分も一撃で葬り去られるという危険性があります。特に水冷エンジンの機体の場合、エンジンケムになると30秒ともたないので、リスクを伴ったHOで受けたまぐれ当たりの1発でも、戦闘不能に陥ってしまうという危険性があります。

 また、HOを狙いすぎると交差後の初動で遅れを取ってしまうことが指摘されています。交差直後の10秒間は空戦域の形を決める大事な一瞬です。これに遅れることはかなりのリスクを伴うと言ってよいでしょう。

 しかしながら、それでも初期において相手の数を1機でも2機でも減らせる可能性があるHOはリスクを侵してでも挑みたくなる魅力があると言えます。特に戦力で劣っていると判断した場合には挑みたくなるでしょう。

 結論としてHOは有効かそうでないかは、一言、「諸刃の剣」であると言うことになりそうです。



エースを揃えれば強い?

 これはYESともNOとも言えます。

 例えば6vs6で戦っているとして、部隊内のエース3人が2機づつ撃墜して勝てば、残りの3人は1killもできないということになります。部隊戦において、チーム内のポイントゲッターが2kill以上することは決して珍しいことではありません。

 とするとKillを取らなくても良いメンバーがいるのは当然であり、彼はKillを狙うよりかはむしろ他の役割(drag、上空制圧、威力牽制、6callなど)を担当したほうが効率的であるとも言えます。1機の敵に複数の機体が金魚のフンのように追いかけている状態の愚かさは自明であり、そのような状況ではもう1機は何か別の行動に出るべきです。

 しかしながらいわゆるエースと言われるパイロットたちは豊富な経験をもっており、MF的な役割もDF的な役割も臨機応変に対応できるだけの能力を持っている傾向があります。その意味ではやはり、臨機応変に対応できるエースを揃えた方が戦いを有利に進められると言えます。

 強いて言えば、全員が強力な決定力を持ったFWだけでは勝てない、または勝てない時代が必ず来ると言う事でしょう。その理由としては、決定力だけでは臨機応変の状況に対応できない、あるいは攻撃の段階において多すぎるFWは無駄が出てしまうということが挙げられます。

#さらに逆説的に言えば、Killに必要な状況を作戦・連携で作り出せるならば、決定力を持ったパイロットは一人ないし二人で十分であるという思想も考えられます。



上を押さえるのは有効か?

 空戦の形を作る意味で、上空制圧は非常に有効な手段であると言えます。しかしながら、あまりにも高度を取ることに腐心しても良い結果が得られません。部隊トーナメントにおいてもそのような例はいくつか見受けられます。

 上空を押さえるのは敵の行動を制限し、自軍の攻撃を有利にするのが目的であって、やはり最終的には相手の高度まで降りて行って射撃をしなければ戦いにならないのです。

 このことを取り違えると、むやみに高度取りに集中するあまり敵に6時のポジションを許してしまうことになります。

 特に全ての機体がgrabに専念するのはあまり効果的では無いと言えるでしょう。実際のトーナメントでは、部隊を二つにわって片方がgrabしたり、あるいは2機くらい戦線から離脱させてgrabさせているような作戦を取ることが多かったようです。



フォーメーション

 部隊戦においてどのようなフォーメーションを取ることが有効なのか。これは正直言って現時点ではまったく確立されていない部分であると言えます。部隊戦の歴史が積み重なっていくにつれ、徐々にその定石や打開策が見えてくると思います。

 ただ、フォーメーションの目的としては、基本的に互角の条件で戦う場合において、空戦域の中で局所的に機数優位の状況を作り出すことがポイントになります。一部分が局所的優位であるということは、とりもなおさず他の部分が局所的劣位に他ならないわけですが、劣位でも積極的な戦いを避け、一定時間を生き延びることができれば(DF的役割)、優位の部分の戦いが終了して戦力が戻ってくることで、最終的な優位をつくることができます。

 しかしながら実際にどのようにして「局所的優位」をつくるかという理論はまだまだ発展途上です。

 ここでは実際に部隊トーナメントで見受けられたフォーメーションをいくつか紹介する程度にとどめたいと思います。

・密集


・適度な散開


・2Wing


・別働隊



 いずれにしても考察として言えることは、フォーメーションは相手の隊形と対峙することを前提としており、敵がいて初めて評価できるという性質のものです。単純にこのようなフォーメーションにしたから勝てるなどという、無敵の隊形というものは存在しないでしょう。将来的に理論が体系付けられた頃には、「突破能力に優れた錐行の陣」「臨機応変の対応ができる雁行の陣」「包囲を目的とした鶴翼の陣」などのように、傾向と対策が明らかになって行くものと思われます(^^;



あまり作戦を立てなかった部隊の方が勝つような気が?

 これは一重に精神状態の差でしょう。真剣勝負である部隊戦のプレッシャーは尋常ではありません。WBを3年もやっているベテランパイロットですら、離陸時にはギアを引っ込めるのを忘れたり、スロットルが100%になっていなかったり、コンパス読み間違えて逆方向に飛んでしまうことがあるくらいです(笑)

 現時点においては、あまり深く考えることよりもリラックスして平常時の実力をフルに発揮できたほうが総合力では勝るということなのでしょう。また、敢えて作戦を立てず、隊員の平常心を引き出すことも立派な作戦と言えます。

 結局戦いは総合力の世界であり、全ての要因をトータルしてアドバンテージを持った者が勝つと言えます。全ての要因を高めることは非常に困難であり、逆に一つの要因を犠牲にすることで別の要因を高めることは可能です。現時点のトーナメントにおいては他を犠牲にしても精神面のリラックスに注目した方が良い結果が出たということでしょう。



新兵器Roger Wilco

 99の部隊トーナメントより、Roger Wilcoというオンラインで音声通信できる新兵器が登場し、多くの部隊がこれを採用したようです。戦闘中の通信の様子をWAVファイルが公開されたこともあり、各方面にかなり衝撃を与えたようです。

 やはり音声による指示はわかりやすく、確実に全員に届きます。特に6callなどは文字チャンネルでは相手が射撃に集中していると届かないことがあります。このメリットだけでも音声通信は有効であると言えます。

 実は私の部隊では今回RWは敢えて利用しなかったのですが、これは使いこなせるだけの自信が無かったことに起因しております。というより、習熟訓練にあてるだけの十分な時間が無かったのです。しかしながら戦っていて、6callを数人しているのに気づかなかったりして列機を失うことは実に歯がゆく、RWがあればと思ったのも事実です。

 サッカーなどではいわゆる「アイ・コンタクト」が重要とされていますが、やはり重要な場面では声を出して指示を飛ばします。WBでも「阿吽の呼吸」という場面があり、音声に頼りきりになってしまうのは逆効果ですが、それでも処理できる能力があれば情報は多いにこしたことはありません。

 今後部隊戦がよりいっそうシステマチックになっていくにつれ、RWのような音声通信はますます重要な地位を占めていくことでしょう。



最後に

 今回このコンテンツを書くにあたって、戦史や参考書をずいぶん紐解いてみました。すると、編隊戦を戦うに当たって、参考になるような記述がほとんど無いことに気づきました。

 編隊を組むに当たってのフォーメーションの解説はあります。しかし、これは使用する目的が異なり、今回のような戦闘機vs戦闘機の編隊戦闘に応用するものではありません。多くの記述は「爆撃機を守るor攻めるため」だったり、「対地攻撃をするため」だったり、「見張りを充実するため」だったりします。

 もうお気づきかと思いますが、戦史を紐解く限り「互いの位置を把握した戦闘機編隊と戦闘機編隊ががっぷり四つを組んで全滅まで戦う」というような戦いは、ほとんど無かったのです。また、あったとしても互角の状況で戦いになることはまずなく、有利なら戦い、不利ならそれを避け、被害は対応に遅れた場合というのがほとんどであったようです。不利でも積極的に挑んでいった見敵必戦という思想もありますが、それはそれなりの事情があってのことであり、本来ならば望まない戦いであったはずです。というより、そういう戦い方をしなければならないのが戦争というものなのではないでしょうか。

 とすると、最初に書いた「部隊戦は黎明期である」というのは納得が行きます。このような戦い方をした(少なくともシステム化しようとした)先人はまだいないのです。過去の歴史で出てきた戦法は、戦いが始まる前に戦いを有利にしようとする努力であり、部隊戦のように完全にイーブンの条件で始まる戦いをどのように戦うかというものではないのです。

 ある意味、全体の戦いの中のもっとも不確定な部分を抜き出して、競技的な色合いを強めたのがこの部隊戦とも言えます。まぁこれを楽しめるのも平和な時代だからなのですが(^^;

 とりあえず、98年と比較して、99年ではよりシステマチックな戦いが見られたというのは評価として正しいと思っております。少なくとも私の部隊では既に将来の対戦に向けて、「レギュラー争い」のもう一歩先を行った「ポジション争い」が始まっています(^^;

 今後、部隊戦トーナメントが定着してレベルがどんどん向上していったとき、いったいどのようなシステム・戦法が登場し、どのような戦いの様相を見せるのか。今後の展開が非常に楽しみです。:-)




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