大晦日の神様(猿長者)

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 子供のころ、「日本のまほう話」という小学生向け民話・伝説集を愛読していま
した。懐かしいのでもう一回読みたいと思い、時々本屋の子供向けコーナーを覗い
ているのですが見つかりません。似たようなタイトルの本はあるのですが中身が違
うのです。たぶん、「博労」、「部落」などが言葉狩り対象にされたのだろうと思
います。
 しかたがないので、ネットや日本民話辞典(?)などを調べ、好きだった話を思
い出すことにしました。一番のお気に入り(たしか「赤い薬と黄色い粉」とかいう
タイトルでした)の話は、どうやら琉球で有名な民話だということが判明しました。
しかし、子供のころ読んだのは明らかに内地の話で、肉など食べてはいなかったと
思うのですが。ここでは、記憶をたどりながらあらすじを紹介します。
 あるところに貧しいおじいさんとおばあさんがすんでいました。ある年の暮れ、
おじいさんは「隣のお金持ちの家から米、味噌を借りてきて年忘れをしよう」と、
いいましたが、おばあさんは「やめておきなさい、どうせ貸してはくれません。こ
こに粟で作ったお粥があるからこれで年忘れをしましょう」。おじいさんも同意し
ます。
 そのころ、みすぼらしい僧の姿をした神様が、お金持ちの家に一晩泊めてくれる
ように頼んでいました。しかし、お金持ちは非常にケチで、大晦日の日にみすぼら
しい僧を家に上げるわけにはいかない、といって追い出しました。
 追い出された僧は今度は貧しいおじいさんとおばあさんの家にやってきます。こ
の家は僧を暖かく迎え入れます。
 囲炉裏を囲むと、僧は紙入れから数粒の米を取り出し、「これを炊いてみなさい」
といいます。炊いてみると、お釜いっぱいにご飯が炊き上がります。続けて僧は、
数枚の葉を取り出し、「これを煮てみなさい」といいます。今度は鍋いっぱいのご
馳走ができました。
 食事が終わると、僧は言いました。「二人とも、年をとって貧乏しているようだ
が、お金持ちになりたいかな、それとも若くなりたいか、遠慮せずにいうように」
二人そろって、「お金なんかはほしくありません。十七、八の若さに戻りたい」と
願います。僧は、「風呂を炊き、この薬を湯に入れ、二人でつかりなさい」といっ
て薬を渡します。試してみると本当に若くなりました。
 次の日、お金持ちの家の人は、なぜ貧乏なおじいさんたちが若くなったかを尋ね
ました。元老夫婦は正直に仔細を打ち明けます。それを聞いたお金持ちは、今夜は
ぜひうちに泊まってくれ、と僧を招きます。
 お金持ちは僧をもてなし、もっと財産を増やしてくれと頼みます。僧は、「もう
十分にお金はあるのだから、あなた方の気持ちのとおりに若くしてあげよう」とい
って粉を取り出し、家族全員で粉を入れた風呂にはいるようにと命じます。すると、
下男や下女は馬、子供たちは牛、金持ち夫婦は猿の姿になってしまいます。
 僧は、貧しい元老夫婦の家にいき、隣の家のものはみんな動物になってしまった
ので、引っ越して住むといい、と教えます。夫婦は引っ越しますが、夜になると猿
が庭に来て暴れるのでうるさくてたまりません。やはり元の家に戻ろうかと相談し
ていると、また僧が訪れ、焼けた石を庭においていくようにと告げます。
 言われたとおりに石を置き、夜になるとまた猿たちがやってきて、石に腰掛けま
したが、焼けているのでお尻が真っ赤にやけどしてしまいました。これが猿のお尻
が赤い理由です。

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