『現代用語の基礎知識』の流行語大賞には決して選ばれないけど、地味に、しかし確実に流行っている言葉。そんな日の目を見ない流行語に光を当て大々的に顕彰する裏流行語大賞の季節がやってまいりました。
選考委員会構成メンバー
世に問う男(反語尾上げ連盟開闢総督兼世に問う男制作責任者)
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大賞
『正直(しょうじき)』
■選考委員のコメント■
今となってはやや旧聞に属するが、「ぶっちゃけ」という言葉が2001年裏流行語大賞の準入賞に選ばれたことを皆様は覚えておいでだろうか?
以下はその「ぶっちゃけ」に関する記事をZAKZAK(http://www.zakzak.co.jp/)から引用したものである。この中に致命的な間違いが一箇所ある。どこが間違っているのか探してみてほしい。
「ぶっちゃけ」言えばあなたもキムタク?
ドラマ「GOOD LUCK!!」で頻発
TBS系ドラマ「GOOD LUCK!!」(日曜午後9時)で、若手パイロット・新海元を演じるSMAP・木村拓哉(30)が劇中、「ぶっちゃけ」というセリフをたびたび口にしている。必ずしも上品な言葉とはいえないが、ドラマ中のキーワードで、若者の間では頻繁に使われている言葉だという。
先月、初回視聴率31.6%と高発進の同ドラマは、3回目の今月1日放送分も28.6%の高視聴率を記録。木村のパイロット姿が若い女性を中心に大人気だが、なかでも「ぶっちゃけ」というセリフを使って、相手役の柴咲コウ(21)や上司役の堤真一(38)に素直な感情をぶつけるシーンが印象的だ。
推察通り「ぶっちゃけて言うと」を略したフレーズで、「打ち明けて言うと」や「思い切って言うと」などの意味。最近は、若者が口癖のように会話の頭に付け、「ぶっちゃけ、やってらんねえよ」などと頻繁に使うようになっている。
これがドラマによくはまる。
新海は新米だが、自分に正直に生き、パイロットという職業に情熱を持っているキャラクターで、本音をズバリと言い放つシーンにはピッタリの言葉。キムタク人気もあり、にわかに口真似する若者が増え、“ぶっちゃけブーム”が沸き起こりつつあるそう。
ドラマ関係者によると、「ぶっちゃけ」はもともと木村自身も使っていたが、セリフはもちろんすべて台本に書かれているもの。脚本の井上由美子、プロデューサーの植田博樹、瀬戸口克陽、演出の土井裕泰が意識的に選んだ言葉という。
「台本制作の際、新海のキャラクターを木村さんと重ね合わせて効果的に表現できるセリフとして選んだ。先輩や彼女などに対して、言いにくいことではあるけれど、建前を壊して言わなければならないときに使うキーワードです」(担当者)
このセリフは、今後も劇中でたびたび登場する予定。普通は言えないことを、勇気を持って口にする新海の姿がぶっちゃけ、ドラマ人気の秘密だろう。
ZAKZAK 2003/02/04
(太字引用者)
冒頭でいきなり語尾上げ風「?」が登場しているのが気にはなるがまあそれはいい。ヘッドラインにこのように不適切で意味不明なクエスチョンマークを付けるのは近年多く見られる現象であり、それが語尾上げの影響だということは論を待たないが、まあ今日のところはいい。
この記事の誤りと正解は次に示すとおりである。
(誤)『本音をズバリと言い放つシーンにはピッタリの言葉。』
(正)『本音を自分の身を守りながら言い放つシーンにはピッタリの言葉。』
※
どういうことか説明しよう。
私はこのドラマを一度も見ていないので、木村拓哉扮するパイロットがどういうセリフを言ったのか分からない。したがってまず、劇中における「言いにくいことではあるけれど、建前を壊して言わなければならないとき」を想定してみた。そうなると考えられる状況は一つしかない。おそらく木村拓哉扮するパイロットは次のようなセリフを言ったに違いない。
ぶっちゃけ、課長ヅラですよね。
確かに、普通は言えないことを勇気を持って口にする新米パイロットならではのセリフであると言える。
だがこれが果たして「ズバリと言い放」っていると言えるだろうか?
残念ながら答えはノウである。
ズバリと言い放つのであれば、「ぶっちゃけ」などという余計な前置きは不要。
課長ヅラですよね。
もうこれで十分なのだ。後者の方がよほどズバリと言い放っている。
ではなぜ木村拓哉扮するパイロットは頭に「ぶっちゃけ」と付け加えたのか? それはまさしく「本音を自分の身を守りながら言い放つ」ためである。前もって「ぶっちゃけ(=思い切って言うのでどうか御勘弁くださいまし)」というバリアーを張っておくことで、上司がカツラを装着しているという究めて口にしづらい事実も堂々と口にできるようになったのである。
そしてさらに言えば、この「ぶっちゃけ」は、元々はこの担当者氏の言うとおり「建前を壊して言わなければならないときに使う」ものであったが、いつの間にか待ち合わせの時間を決めるようなどうでもいいことでも「ぶっちゃけ」てしまう若者が急増(2001年裏流行語大賞参照)している、という事実も忘れてはならない。現在あまねく使用されている「ぶっちゃけ」はもはや、本来の意味からは大きく乖離しているのである。というかもう意味など無いのである。
※
さて、いよいよここからが本題だ。本年2003年の裏流行語大賞は上記のとおり「正直」の受賞が決定した。次の例は、メンズノンノ2003年12月号(集英社)に実際に載っていた某スタイリストの記述である。
正直、黒好きなんです。
私は目を疑った。黒が好きであることを伝えるぐらいのことで、何をはばかっているのか。この言い回しが成立するオケイジョンとして考えられるのは「披露宴に喪服で出席してしまい周囲から責められたときの言い訳」ぐらいしか思い浮かばない。「お前お祝いの席で非常識だぞ!」「正直、黒好きなんです・・・」
だがもちろんこの某スタイリストの記述は、披露宴に喪服で出席してしまい周囲から責められたときの言い訳ではない。もうお分かりだろう。ここで使われている「正直」は意味を持たない「正直」であり、その成り立ちと使われ方は結局のところ「ぶっちゃけ」と同じなのである。だからこそこうして長々と「ぶっちゃけ」について述べてきたのだと御理解いただきたい。両者の共通点をまとめると次のようになる。
1. 元来は『本音を自分の身を守りながら言い放つシーンにはピッタリの言葉。』であったものが、
↓
2. 次第にいろいろな場面で使用されるようになり、
↓
3. ついにはどうでもいいことでも「ぶっちゃけ」たり「正直」に言ったりするようになった。
違いは大人と子供、ONとOFFという点ぐらいである。もちろん、「正直」がONで「ぶっちゃけ」がOFFである。「ぶっちゃけ」をむやみやたらと意味もなく口癖のように連発する大人はいないだろうが、「正直」をむやみやたらと意味もなく口癖のように連発する大人は履いて捨てるほどいる。
だがそれは本当に「正直」に言わなければ口にできないようなことなのか? たとえば、バレヅラ着用中の上司に向かってヅラと言うぐらい命を(社会人生命を)懸けて伝えなければならないほど緊張感のある内容なのか? 各々今一度自らの胸に問うてみていただきたい。と思ったが、実際の話どうでもいいというのが正直なところだ。
2003年裏流行語大賞 入賞語一覧
大賞
『正直』
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*わたしは「正直」と「ぶっちゃけ」をON・OFFで使い分けている、という人は、2003年裏流行語大賞選考委員会(thori@gol.com)まで至急御連絡ください。マン・オブ・ザ・裏流行語大賞として、正直、引きます。
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選考を振返って
第三回裏流行語大賞はご覧の通りの結果となった。1つしかないのは手を抜いたからではない。決してない。第一回、第二回流行語大賞に選ばれた「意味わかんない」とか「微妙」とか「超ウケる」とか「ヤバい」とか「無理」とか「〜だし」とか「ぶっちゃけ」とか「ありえない」が2003年も引き続き流行していたので他に該当作品がなかっただけである。
よいお年を...2003.12.17
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