泣いてニュースステーションを斬る

■はじめに
 最初に、2000年12月に放送されたニュースステーションの語尾上げ特集(詳細はNEWS STATION In-Depthを参照)で、語尾上げの心理背景について説明されていた部分を掲載する。まずはご覧いただきたい。


ニュースステーション
『語尾上げウィルス 起源と対処法』
(2000年12月14日放送)


(ナレーション)
質問として話しているようではないけれど、疑問形のようなしゃべり方で語尾を上げる、いわゆる語尾上げは、数年前から日本にまん延しています。

(東京外大「社会言語学」井上史雄教授)
「自分の言ってることが相手に通じているのかな、それから、自分の言ってることが本当に正しいのかな、なんて時に、確認?(わざと語尾上げで)の意味で使われていると思うんですね。」



(ナレーション)
語尾上げで話す人の心理には、断定口調を避けて角が立たないように伝えたい、などといった、自分にとって有利な立場を作るという姿勢が見え隠れしているようです。

(テロップ)
「語尾上げ」心理分析
▼あいまいにしたい
▼角を立てずに伝えたい
▼相手の注意を自分に引きつけたい



■文脈のつながらないナレーションとテロップ
 この放送でなされていた語尾上げ心理についての説明は、これがすべてである。さて、ここでいま一度井上教授のコメントと、その直後に流れたナレーションおよびテロップをよく見比べてほしい。目を皿のようにして見比べてみてほしい。



 見比べてみると何か変だとはお感じにならないだろうか? 賢明な皆様なら、井上教授のコメントと、直後のナレーションおよびテロップまったくリンクしていないことにお気づきだろう。
 井上教授は「確認の意味で使われている」と言っただけで、「断定口調を避けて角が立たないように伝えたい」とか「あいまいにしたい」とか「相手の注意を自分に引きつけたい」と受け取れるようなことは何ひとつ言っていないのである。


■ナレーションとテロップの情報源
 ではニュースステーションは一体何を根拠にそのようなナレーションやテロップを流したのか。その答えは、かつて私が妄想と独断のみで書き上げた語尾上げ暗黒列島1999の中にある。

語尾上げ深層心理分析(語尾上げ暗黒列島1999より抜粋)
1.発言内容に自信がないので、曖昧にしておきたい。
2.強制的に相手の同意を得ることで、安心して話を進めていきたい。
3.断定口調を避けることで、強調したいことを角を立てずに伝えたい。
4.常に相手の注意を、自分の方へ引きつけておきたい。


 これを見れば、井上教授のコメントは語尾上げ深層心理分析2に、先のナレーションおよびテロップは語尾上げ深層心理分析1、3、4に、それぞれ対応していることがお分かりいただけよう。そう。ニュースステーションをして上記のナレーションおよびテロップを言わしめたのは、井上史雄教授のコメントではなく、語尾上げ撲滅専門サイト世に問う男のいちコンテンツなのである。(下図参照)
(*ボタンを押しても図が変化しないときは→こちら

■巧妙な編集テクニック
 ニュースステーションが私の意見を採用するのはいい。しかしその場合は情報源を明らかにして、こういう意見がある、ということを正確に伝えるべきだ。でなければ、ニュースステーションとしてはこう考える、とあくまでも番組の見解として述べるべきだ。
 だが実際にやったのはそのどちらでもなかった。
 あらかじめ大学教授の説明を見せて番組をオーソライズしておき、そのあとで反語尾上げ連盟開闢総督世に問う男の勝手な判断を、さも大学教授の見解から得られたものであるかのように編集して垂れ流しただけである。こういうことを大テレビ朝日の看板番組がやるのだから驚いた。


■第三者の立場を死守
 さらに私が解せないのは「語尾上げには…という姿勢が見え隠れしているようです。」などと第三者の立場からものを言っている点である。
 個人サイトから引用した意見をあたかも大学教授の見解から得られた情報であるかのように誤解を誘うような編集をしておきながら、公明正大なるニュース番組として事実を客観的に報道しているのだ、という体は死んでも崩さない。ことが語尾上げだからまだいいが(よくないが)、他の、よりシリアスなニュースで同じようなことをやっていないと一体誰に言い切れる?


■テレビ>孤高のホームページ
 つまりこのエピソードがもたらす教訓は、言っている内容は同じでも、見せ方を変えるだけでもっともらしさが全然違ってくるということである。
 確かに、どこの馬の骨ともしれぬ個人サイトに書いてあることよりも、キー局の有名なバラエティ番組で大学の先生が言っていた(ように見える)ことの方が信頼できそうに感じるのは人情だろう。が、その信頼できそうなバラエティ番組の内実はといえばこの程度なのである。もちろんすべてがそうだとは言わない。しかし少なくともこのようにテキトーな一面もあるということは紛れもない事実なのだ。皆様も今日はこの点だけはしっかり覚えて帰って、帰ったらぜひお家の人にお話ししていただきたい。



■テレビを鵜呑みにしてはいけない
 なお、なぜ今ごろになってこんなことを言い出したのかというと、放送当時はそうでもなかったけど日が経つにつれて段々腹立ってきたからである。
 もちろん私とて、ニュースステーションが語尾上げ特集を放送するにあたって私のサイトに白羽の矢を立てたその見識は高く評価している。『世に問う男』のクオリティの高さを見抜いたニュースステーション制作スタッフの方はなかなかセンスがいい。そのことは間違いない。
 だがそれとこれとは話が別だ。あの放送を見た善男善女に「ふ〜ん、語尾上げって、あいまいにしたり、角を立てずに伝えたいって心理が働いているんだ…」と鵜呑みにされても困る。騙されるな。それは私の独断だ。マスコミを疑え! 語尾上げが何なのか自分の頭で考えろ! いや、考えるな! 感じろ!!((c)ブルース・リー)と警鐘を鳴らす意味も込め、今回敢えて言及した。


おわり。


2002.3.10
2005.8.14