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東京国際映画祭「アジアの風」部門では、多くの上映で監督や関係者によるティーチ・インが行なわれます。ティーチ・イン(質疑応答)ではゲストと観客の間でやり取りが行われ、映画の見方を広げられます。
この舞台で日本語と英語の司会通訳を務めるのが松下さんです。
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私は主に「アジアの風」部門でのティーチ・インの司会および直接、あるいはゲストの母国語を介しての英語通訳を担当ました。
ティーチ・インでは作品の深い部分に触れ、ゲストと観客の間で映画の見方が広がるようなやり取りが交わされることがあります。「アジアの風」作品は2回ずつ上映されますが、ティーチ・インは通常1回しか設けられていません。にもかかわらず、「2度目の上映でもぜひティーチ・インを行ないたい」と希望された監督がいらして、1回目が充実したものだったからだろうなと感じ、嬉しく思いました。 |
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ティーチ・インの様子 |
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ゲストと観客の交流を見事にフォロー |
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アジア人監督などにはとりわけ熱烈なファンも多く、観客のつっこんだ質問をきちんとフォローできるか、というのが映画祭側の懸念でもありました。そのため、事前の準備にはゲストの過去の作品や関連作品などを観ることに時間を費やしました。また、本番でのやり取りがスムースにいくよう、作品選考の方や中国語の通訳の方などに協力いただき、なるべくゲストと顔見知りになっておく機会をつくっていただきました。人柄に触れ、話し方に慣れておくことでティーチ・インがぐっと血の通ったものになります。
今年の「アジアの風」は中国語圏の作品が多かったのですが、こんなに多くの中国や台湾の方々と接したのは初めてでした。東南アジアで育ったものの、ヨーロッパの文化人との仕事が多い私には、近くて遠かった国の人びとを身近に感じるきっかけになりました。
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アート・自主製作系映画の司会や通訳においては、その文化、地域情勢、宗教事情といった背景の知識が不可欠です。私は外国メディアが日本で行なう取材・撮影のリサーチャーやプロデューサーをしていることもあり、日本の社会風俗、ユース・カルチャーなどネタとなり得る情報の収集も心掛けています。 |
大学時代にレコード会社でアルバイトをしたとき、好きなドイツのバンドの来日ツアーに同行する機会を得ました。そのとき通訳とは学べて楽しんで裏の世界を体験できる仕事だと、安直に理解してしまったのがことの始まりかもしれません(笑)
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さまざまな現場、思想や文化と遭遇できるのがこの仕事の魅力。大いに触発される、素晴らしい人たちとのかけがえのない出会いも数多くありました。通訳は意見の橋渡しをする媒介役でありながら、役割としては調停役に近いものがあります。
そこで、両者の考えの違いを浮き彫りにしつつ、ときには言葉の不足を補い、状況に応じた解釈を示すことも必要だととらえています。
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