いよいよ、飛行機の本題にはりました。
まずは、これ抜きにしては飛行機は成り立たない、揚力の話から。

飛行機嫌いな人が言う言葉に、

「空気よりも重たい金属物が、空を飛ぶなんて、嘘だ。」

という屁理屈があります。
しかし、その重たい飛行機が空中に浮いていられるには、それなりの
理由があるわけです。
簡単に言えば、その飛行機の重量以上の力で重力の向きとは反対の方向から
引っ張っているからです。
それを揚力と言います。
飛行機は、この揚力を、主に主翼で発生させています。
厳密に言えば、胴体や尾翼などでも形状やその時の飛行状態によっては
揚力を発生しますが、最初のうちは、それらは考えからはずします。

主翼各部の名称を覚えましょう。
初心者を実際に指導する場合、指導者が後ろに付き、
「エルロン左、エレベーターアップ、エルロン右。」
だの、言います。その時に
”エルロンってどれだっけ?なんだっけ?”
と一瞬でも考えるようでは、操縦操作は全くできません。
ですから、名称と、それがどれのことであるのか反射的に思い浮かべられるぐらい、
きちんと覚えてください。

赤い点線が3本ありますが、3本とも翼弦線といいます。 
翼幅方向にどの位置であっても翼弦線ですが、
翼弦線は、”前縁と後縁を結ぶ機体の進行方向に平行な線”です。

そして、この翼弦線で主翼をすっぱり切ったその断面を
翼型(よくけい)といいます。
揚力の話は、この”翼型”からはじまります。

いろいろな翼型が存在しますが、ここでは、下半分が真っ平らな
”クラークY”という翼型で進めていきます。

この断面図をみて、なにか思い出しませんか?
キャブレターのところでふれた、ベンチュリー効果の図の下半分と同じです。

こんどは、頭の中で、小さな流れの川を思い浮かべてください。
その川は、水流がまっすぐです。
そのまっすぐな水流に、この断面のものをつっこみます。
おっと、その時に、水流と断面の底辺が平行になるように水につけます。
すると、前縁で翼断面の上と下に水流は泣き別れ、そして、後縁で再び出会います。

川の流れの速度を1秒間に10センチと仮定しましょう。そして、翼弦長も10センチとします。
すると水流が泣き別れてから再び出会うまで1秒です。
よくよく考えてみると、上の面はカーブしているので、下面を通る水流よりも上面の方が、
距離が長くなります。
同じ時間で移動距離が違うので、上面の方が下面よりも速度が速くなっているのです。

ここで、ベルヌーイの定理を思い出してください。
”流速が早くなると圧力が低くなる”のです。
翼の下面より上面の圧力が低くなる、負圧が発生するので、翼は上面に引っ張られます。
この上向きに引っ張られる力が”揚力”であり、飛行機は、自重よりも大きな揚力を発生するから
飛ぶことができるのです。

では、この川の流れがまったく止まってしまったら?
上面と下面の速度差はゼロですから、揚力は発生しません。
逆に早くなったら?
揚力はどんどん増えていきます。

飛行機には、重量がありますから、空中に浮かぶためには、その重量以上の揚力を
発生しなくてはなりません。
速度ゼロでは揚力もゼロ。 速度がわずかに付けば、揚力も発生しますが、飛び上がるためには、
ある程度の速度が無いと、重量分だけの揚力を発生できない、すなわち飛べないということです。
この、浮かぶか沈むかの瀬戸際の速度が、”失速速度” といわれるものです。
飛行機は、失速速度をわずかでも下回ると、揚力が足りなくなり、(これを失速といいます)
ぜったいに飛んでいられません。

あ、そうそう、もう一つここで大事なことをわすれていました。
先ほどの水の流れに、指を一本つっこんでみましょう。
ごくわずかに流れと同じ方向に持って行かれますね?
では、こんどは手のひらを流れと直角になるようにつっこんだら、かなりの力で
流されるでしょう?
つぎに手のひらを流れと平行に入れて、少しずつ流れに対して角度をつけていくとどうなるでしょうか?
この、流れに対する角度のことを”迎え角”といいます。
最初は指一本分の時と同じぐらいの後ろ向きの力だけ感じます。
角度をつけて行くに従って後ろ向きの力と角度をつけていった側にも力が掛かっていきます。
この角度をつけていった側に働く力、これこそ揚力なのです。
そして、流れの方向に持って行かれる力、これは抗力といいます。この抗力は流れに対する
物体の抵抗成分です。
角度を増やしていく状態を、川上から眺めていると、次第に面積が増えていくように見えるはずです。
つまり、投影面積が増えるほど、抗力は増えていくことがわかります。
そして、角度を増やしていくと、ある角度で急に揚力が無くなり、抗力のみになってしまいます。
これはどういうことでしょうか?

角度が増えていくと、それまで上面の翼の膨らみに沿って綺麗に流れていた水流が、
突然渦を巻き始め、流れが表面からはがれてしまいます。これを”剥離”といいます。
この剥離は最初部分的におきるのですが、迎え角を増やしていくと剥離する面積が増え、
それが限度を超えると、揚力の維持ができなくなり、翼に発生する力は抗力のみになってしまうのです。
揚力が無くなればこれまた”失速”なわけです。

つまり、翼が失速(速度を失うと書くが、実際に失うのは揚力で、抗力のみになってしまうので速度も失うことになる、かな?)する要素は、

1、速度が足りない
2、迎え角が大きくなりすぎる

この2点なのです。
この2つは常に密接に関係していて、飛行機では、迎え角が急に大きく増えると抗力も増え、
抗力が増えた分パワーを足してやらないとどんどん抵抗で速度が落ちて、ほっとくと失速、
高度を失う、もとの高度が低ければ、リカバリーしきれず地面と熱いキッス、ということになります。
中級クラス以上の腕前を持つフライヤーならば、意図的に失速させた演技も行い、失速に対する
リカバリーもできるのです。
初心者では、機体が自分から離れていくのを恐れるあまり、旋回が急になりがちで、
急激な舵を打つことは、この失速につながるのです。
したがって、リカバリーできないので、墜落の憂き目を見ます。
ですから、かならずクラブに入って、指導を受けましょう。
初心者の単独飛行は、絶対に不可能です。