わたしはおとさまがだいすきで、おとさまのみえるところからぜったいに
はなれません。
おうちにいるときは、おとさまのすぐそばにいつもいます。
だからおしごとで、おとさまがでかけると、とてもさびしいんです。
さびしくて、とおぼえしちゃいます。
おとさまがいるときには、とおぼえなんかしないから、
おとさまは、わたしのとおぼえを、どあごしにきいたことがあっても、
じっさいにみたことはいままでいちどもないんです。
おとさまは、わたしがおるすばんするときは、かならず らじお を
つけてでかけます。
「ひとりでいるのはとてもふあんだろうから、せめておとだけでもながして、
へんかをかんじさせよう」
としてくれるらしいんです。
でも、らじおがながれていたって、やっぱりさびしい。
あいてをしてくれるひとがいないとさびしんです。
だから、ちいさいころはひとりになると、いたずらをしました。
ごみばこのふくろをひっぱりだしたり、しんぶんしをこまぎれにしてあそんだんです。
おとさまは、おうちにかえってくると、いつも むっ
としながらおかたづけをしてました。
でも、わるいことをしたときに、すぐにしかってくれないと、
わたしにはなんでおこられているのかりかいできなくなっちゃうから
っていうことで、おとさまがかえってきたときに
しかられたことはありませんでした。
あるひ、おとさまがしごとででかけて、やっぱりさびしかったんです。
ひとりあそびをしているうちに、おとさまのにおいがいっぱいする
ほん をみつけました。
うれしくて、おもわずそれであそんじゃったんです。
きがつくと、こまぎれになっていました。
おとさまが、しごとからかえってきました。
いつもなら、だまってかたづけて、そのあとで
すぐによしよししてくれるおとさまが、
このときは、きれちゃったみたいです。
おこられました。もうれつにおこられました。
そのほんはおとさまがとてもだいじにしているほんだったから、
ほんとうにおこられました。
あんまりこわくて、わたしは、はじめてちびっちゃいました。
あとにもさきにも、おこられてちびったことはそれだけです。
あんなにこわいおとさまをみたのも、あれっきりです。
いまかんがえてみると、おとさまは、あのときなぐったりけったり、らんぼうなことはぜんぜんしなかったんです。
いつもしかられるときは、首の後ろをぎゅってされるか、せいぜいおしりをかるく
たたかれるかぐらいです。
でも、なにもいたいことをしなかったのに、あのときは、こわくてこわくて、
しばらくふるえていました。
いまは、おるすばんちゃんとできます。
もうしんぶんをこまぎれにすることもしません。
だって、かならずおとさまはかえってくるし、かえってきたら、まっさきに
よしよししてくれるから。