いつもはあまり散歩にいかない、通り向こうのほうにライムを連れてさんぽに行った。
時間は午後8ぐらいであった。
夜、ライムを散歩に連れ出すときは、光るペンダントのついたカラーをつける。
このペンダント、大型の発光ダイオードが10個ぐらいはいっているのだが、
赤い色でかなり明るく、遠くからでもはっきりと見えるのである。

ライムと、ぽいからぽいから住宅街を歩いていくと、
前方100メートルぐらいの十字路のかどに、自転車を停めて立っている男の
人がいた。
なにげなくそこを通り過ぎようとしたときに、声を掛けられる。

「ずいぶん明るいんですねぇ、それ。」

このペンダントをつけて歩くと、たいてい一晩に1人はそういって声を掛けてくる
のである。

「いくらぐらいするんですかぁ?」

「4千円ぐらいですよ。遠目からよくみえるから、夜の散歩はいつもこれつけて
 歩いてるんですよ。」

ってなぐあいで、立ち話が何となく始まったのである。
その方も、犬を飼っていて、なんでもお孫さんがとてもその犬のことが好きらしい。
そのかたは、お孫さんがいるような歳には見えなかった。
5分ぐらいも犬の話をしていただろうか。
その方の服の中で、ピーピー発信音が聞こえた。
あわててその方は、イヤホーンを耳に入れたのを、
観察眼の鋭いワタシは見逃さなかった。
(きっとこのかたは、私服の警察官なんだろうな。このへんでなにかあったかな?)
とおもったのだが、それを聞くのもへんかとおもい、またしばらく犬の話をして
散歩の続きをしようとそのかたと別れたのである。

そこから10分ほど歩いたところに公園があるので、
そこまで足を延ばすつもりだったのだが、いつも持ち歩いている携帯電話を
うちにわすれたことに気づき、公園はやめてその辺を一周して帰ることにした。

ぐるっと回ってきたら、さきほどの人はまだそこにいた。
またしても話が始まり、どうやらそのかたは、ロングヘアーダックスフンド
を飼っているらしい。
ライムがノーリードでもまるでダイジョウブなので、いたく感心したらしく、
「ずいぶん訓練したんですか?」
ときかれた。
「いえ、そんなにきちんと訓練しているわけじゃないです。じぶんでしつけをして、
 普通に暮らしているだけですよ。」
とまたまた話し込みはじめてしまった。
そこへ、そのかたの仲間らしき人がきたのである。
数分もすると、6,7人そこへ集まってきた。
で、そこへきたひとたちに、
「いやぁ、この犬なら、警察犬にできるかもねぇ。」
と半分冗談で、はなしていた。
で、わたしは、
「あの、もしかして警察のかたですか?」
ときいたら、やっぱりそうであった。
なんでも、ひったくりがその界隈で続発しているので、警戒中だったそうである。
どうやら、ワタシと話をしていた方は、そのなかでは一番のベテラン捜査員らしい。
ひったくり犯にかぎらず、不審な人をみかかたら、遠慮なく通報してくださいと
言っていた。
不審者だと思って実際には通報者の勘違いであっても、それで未然に防げるのなら、
それが一番だと言っていたのが、とても印象にのこったのであった。