エピソード その1
あれは1996年の夏であった。
それまで住んでいたアパートは、ものが増えたことによりどうにも
空間がなくなってしまい、4度目の更新が来る時期でもあった。
そこで、ワタシはない知恵と財布を振り絞って、
「おお、そうだ、引越しをしよう。」
というところに考えが至ったのである。
当時、ペットは一匹もいなかったのだが、妹にレトリバーをプレゼントしたのが
刺激になり、自分でも飼いたくなっていたのである。
天下無敵の道楽者のワタシは、どうせ引越すなら道楽の条件が通るところにしようと、心に堅く誓ったのだった。
その条件とは
1 手狭になったから引越するのだからして、財布が許す限り広ければ広い程良い。
2 アマチュア無線をするのだからして、ベランダの形状には注意し、
建物の最上階であること。
3 犬を飼う許可が取れること。
4 あまりの高層の建物では生活する気がしないので、せいぜい5階建て、できれば3階立てぐらいで、その建物の周囲に高層の建物がないこと。
5 窪地でないこと。
6 同じ建物内にアマチュア無線をしている人がいないこと。
7 住み慣れた高円寺からあまり遠く離れないこと。中央線沿線であること。
8 リーズナブルな駐車場が付近で確保できること。
9 建物に傷を付けずに無線のアンテナケーブルをはわせるには、エアコンの引き込み口を利用するのが手っ取り早いので、エアコン付きであること。
10 当然できるだけ安いこと。
ざっとあげても条件が10個はあるのだ。
そう簡単に見つかるわけがない。
不動産屋を何軒回ったことだろう。
ようやく、今住んでいるこのマンションにたどりついた。
ん〜が、少々家賃が高い。
2DKでエアコンの口は二つあるものの、エアコン本体は自前。
う〜ん、それらの点を不動産業者に言っていったんは断ろうとしたのだぐわぁ、
「お客様、オーナーと相談してみますので、ご検討ください。」
ということだった。
数日して
「家賃は値引き、エアコン2つというわけにはいきませんが、一台新品でいれる
といった条件でどうでしょうか? それから犬もOKだそうですが?」
人間思ったことは口に出してみるものである。
ここまで言われて断る理由はなくなった。
かくして、道楽の下地となる アジト は決まった。
「ふつうはなぁ、住むところや、生活の条件がすでにあって、そのゆとりの部分で
道楽はやるもんだよ。
おまえさんは、根っからの本末転倒男だなぁ。
そうだ、今日から
”手段のためには目的を選ばない男”
と呼ぶことにしよう。」
ワタシの友人はそうのたまわったのである。
”手段のためには目的を選ばない男” か。
う〜ん。 かっこいいぞ。 わけわからんけど、響きはかっこいい。
結構、気にいってたりして。
引越ののち、犬種はどうするのかおおいに悩んだのであった。