エピソードその3

近所づきあい

 ライムを散歩につれていけるようになってからは、
知り合いがたくさんできたのである。
同じマンションでも、隣の人の顔も知らないことが都会では当たり前。
しかし、ただでさえワタシは身長があって目立つところへ持ってきて、
日本では比較的飼っている人がすくない種類の犬をつれての散歩。

 これは、もう、目立つことこの上ない。

 おかげで、マンションの人たちはもとより、近所の犬好きの人や、
犬を飼っているおたくとのつきあいが生まれたのである。
道ばたで会えば挨拶をし、家の前を通りかかれば、
「ちょっと寄ってお茶でもどうぞ。」

と誘われ、

 「正月用に米屋で餅をついてもらったんだけど、たくさんあるから持っていって。」

 ってなぐあいにお裾分けに預かることもときどき。
ライムのおかげでワタシはときどき豊かな食生活を送れるのであった。

近所に、シエットランド・シープドッグの小太郎、
猫の茶々、猫のこま、の3匹を飼っているお宅がある。
こたちゃんは、犬の好き嫌いが結構あるらしく、
相性のよくない犬の飼い主にはなぜか愛想は悪い。
ところが、相性のいい犬の飼い主には甘えてくる可愛いやつ。

ライムのことも、結構気に入っているらしい。

 ワタシが、こたくんを抱き上げても彼はじっとしているのを、
そこの奥さんは驚いていた。

「家族以外で、こたが抱かれてじっとしていられるのは
横山さんがはじめてだぁぁぁ。」

 ワタシも、彼に相当気に入られているようである。
おかげで食生活がゆたか。

猫の茶々は、犬と遊ぶのが好きらしい。
気に入らない犬には近寄りもしないのだか、気に入った犬には、
猫パンチをおみまいしてくる。
といっても、決して攻撃的ではない。
その証拠に、しっぽは興奮して太くなっていても、耳は起きたまま、
パンチの手は絶対に爪を出さない。
だから、爪によるけがの心配はゼロなのである。

そこのお宅の玄関が開いていると、ライムは勝手に上がり込んでしまう。
かのお宅では、いやがるどころか、大歓迎されてる。(と思う)

 ある日、ライムが例によって上がり込んでいった。
ワタシは、しばらく外で待っていると、ライムが飛び出してくる。
目撃者の証言によると、
上がり込んだライムに、物陰から茶々がいきなりじゃれついて、
猫パンチをもろに顔に食らい、
びっくりして外へ逃げた、ということだった。
あまりにも不意の攻撃を食らって、ライムは相当おじけづいたらしい。

 それ以来、ライムは茶々にはなかなか近づかなくなった。