エピソードその4
訓練
訓練といってもライムにそうきっちりと訓練をしているわけではない。
訓練というより、しつけというべきか。
どこのお宅でも、犬が来て最初に教えることはトイレのしつけ。
ライムは、家に来て1週間ほどでほぼトイレを覚えてくれた。
もちろん、100%確実ではないが、子犬にそれを求めるのは無理である。
犬が75%ぐらいの確率でちゃんと場所でするようになれば御の字。
それと同時に必ずしなければならないのが、攻撃性を持たせない訓練。
これは、食事どきにするのが一番手っ取り早い。
犬に餌を与えて、食べている最中に、わざと体に触ったり、
餌の中に手を突っ込んだりするのである。
このときにうなり声をチョットでもあげたり、かみついたりするようなら
すかさず叱るのである。
それも、だらだらといつまでも叱るのではなく、
短く、強くぴしっと叱るのである。
どんなしつけでも、一番大事なのは、ほめたり、叱ったりするそのタイミング。
これをはずすと、叱られた理由を犬は勘違いして覚えてしまうので、要注意。
まあ、ともかく、犬の性格によっては、この食事でのしつけは、
かまれる可能性があるので、それを承知の上でしなくてはならない。
従って、子犬のうちでないとできないのである。
そう、犬を飼う以上、飼い主は体を張ってしつけをしなくちゃいけないんだよぉぉ。
ライムは幸いなことに、攻撃的なところはなく、今まで本気で噛まれたことは
タダの一度もないのである。
まあ、そんなこんなから始まって、ライムもいろいろなことを覚えてくれた。
お手、おかわり、だめ、座れ、伏せ、待て、おいで、ごろん、吠えろ、
行け、放せ、探せ、(車や椅子の上に)乗って、降りて、(脇に)付いて
ざっと大まかにあげてもこれぐらいある。
そして次はそれらを組み合わせて遊んでやるのである。
例えば、
「座れ、待て。」
で、どんどん遠くに離れていく。
動こうとしたら、
「待て。」
と声をかけて、とにかく待たせる。
適当なところで離れるのをやめて、
「おいで」
で、手元に呼び寄せる。
そして手元に来たら、言葉と、動作でたっぷりとほめてあげるのである。
ほめられれば、犬にとっては楽しいことという条件付けができるので、
「座れ、待て、おいで」
が、彼らにはとても楽しい遊びになるのである。
楽しいことは人間同様、犬も好きなのだ。
ライムの好きな遊びは、たくさんあって、投げたボールを持ってくる
のは、その代表格である。
最初のうちは、投げた瞬間に走り出して取ってくることばかりしていたのだが、
これも、バリエーションをつけると、とてもおもしろいのである。
そう、いろいろな命令と組み合わせて遊ぶのである。
まず、
「座れ、待て」
で待っているときにボールを投げてしまう。
ボールにつられそうになるのだが、動こうとしたらすかさず
「待て」
で待たせる。
しばらく我慢させてから
「よし(うちでは、お預けの後もすべて”よし”というのをOKの
合図にしている)」
で取りに行かせるのである。
で、持ってきたら当然ほめてやる。
そして、
「放せ」
で、ボールを口から出させる(最初のうちは取り上げてもよい)
そのうちに、このパターンが定着したら、
「よし」
の合図を
「行け」
にすり替えるのである。
すると、今度は
「行け」
の意味を覚えるのである。
こんな風に、どんどん遊びながら命令語をすり替えていくと、
かなりの語彙を理解できるようになった。
そうして覚えた言葉の一つが ”探せ” である。
家の中で、ボールで遊んでいるときに思いついたのだった。
まず、例によって
「座れ、待て。」
で始まる。
待たせておいて、ボールを隣の部屋にライムから見えないように、しかし、
簡単に見つけられるようなところへ置く。
そしてライムのところへ戻り、
「行け。」
と命令する。
ライムは喜んですっ飛んでいき、ボールを拾ってくる。当然ほめてやる。
これを繰り返して、なれてきたときに、
「行け」を「探せ」にすり替えるのである。
そのうちに、探すという言葉そのものを覚えてくれた。
最近では、物の形と名前がある程度結びついてきたようで、
「ぬいぐるみ探せ」
「ボール探せ」
そして、「〜はどこ?」
でもわかるようだ。
さあ、今までのは長かったけど、あくまでも伏線なのだ。
あははは。本題はこれからである!!!
先日、無線の友達のえんどーさんが遊びに来た。
何度もえんどーさんはライムに会っているので、ライムの
ことはチョットは知っているのであった。
そのときライムはご機嫌モードに入っている時間だったので、
ガムを持ってきて盛んに愛嬌を振りまいていたのである。
そこで、ワタシは、遠藤さんに、宝探しのゲームを披露してあげたのである。
そう、
「座れ、待て。」
で、ライムを待たせて、隣の部屋にガムを隠し
「探せ!」
で、見つけさせるアレである。
例によってライムは合図とともにすっ飛んでいき、
しばらく後に、ガムを持ってくるのである。
「おお〜、こんなことするんですかぁ。すごいですねぇ。」
えんどーさんにそういわれ
「いや、これぐらいはけっこうどんな犬でも覚えますよ。」
と言いながらもジツは内心 鼻タァカダァカであった。
ところが! そのタァカダァカの鼻を折るえんどーさんのことば、
ポケットからハンカチを取り出して
「これでも、探せますかねぇ?」
ぎっくぅ! ライムのおもちゃ以外でこのゲームをしたことナイのである。
今までに隠し場所の難易度を上げたとき(布団の間に隠すとか、家具の
隙間に入れるとか)には、嗅ぎ回ってにおいで見つけだすことまではある
のだが、見知らぬ物のにおいを覚えさせて、同じにおいの物を探す
というのはやったことがないのだ。
「う〜ん、できないと思うなぁ・・・・」
と、いいつつ、挑戦させてみたのである。
例によって「座れ、待て。」
違うのはここから。
えんどーさんのハンカチを鼻先に持っていき少しひらひらさせて興味を
ハンカチに引かせる。興味を引くと犬はにおいを嗅ぐので、
ついでだから言葉を覚えさせるつもりで、ふんふんした瞬間に
「嗅いで。」
と声をかけたのである。
この場面は、えんどーさんには、
ワタシの「嗅いで」という命令で、ライムがにおいを覚えようと
嗅いだように見えたはずであるが、事実は違うのだ。(ひひひひ)
で、ひとしきり嗅がせた後、さらに「待て」をさせて、
隣の部屋においてくる。
戻ってライムに
「探せ!」
と、いうと、おお、すっ飛んでいく。
しばらくして、見事ハンカチを持って来たのである!!
これにはワタシもおどいた。
いや、まだこの時点では偶然だと思っていたのである。
えんどーさんが帰った後、さっきのは偶然なのかどうかを検証してみた。
そう、紙切れでやってみたり、ともかく普段おもちゃとしてライムが
さわったことがないものを選んで嗅がせてから探させたのだが、
何度やっても、品物かえても百発百中なのである。
すっご〜、さすが犬だね。
そして最後に極めつけの難しいテストをしたのであった。
人間の足の裏は、その日の体調によって微妙に匂いが変わり、犬には同じ人物の
匂いでも、その違いをかぎ分けることができるという話を聞いたことがあるのを
思い出したのである。
ベッドの脇に、前の日にはいた靴下とその前の日の靴下の計2足があったので、
(あ、たまたま、洗濯機にいれわすれただけっすから。)
ちょうどいい実験用具になった。
ほんとうに、たまたま4つの靴下が、ひとかたまりだったので、
ほかの3つにさわらないように一つだけ取り出してしばらく手に持った後、
ライムに
「座れ、待て、嗅いで。」
で、嗅がせて(イヤだっただろうなぁ)。再びその靴下の山の中に戻したのである。
わかりやすいように、戻した靴下には、目印をつけてあった。
さあ、これは難しい。
同じ形状の、おなじような匂いの物の中から、
チョットだけ違う匂いのものを探すのである。
「探せ!」
ライムはしっぽを振りながら走っていく。
ベッド脇の靴下の山を嗅いでいる。
そして、一つを持ってきた。
おおおおおおお、だ〜い正解!!!!
宝探しゲームにまた新しいバリエーションができたのであった。
話はここで終わると思うでしょ? ジツはまだ続きがあるのである。
散歩しながらワタシは、いいことを思いついた。
この宝探しゲームを、家の中でするとき、しばらくは
1万円札、5千円札、千円札でするのだ。
そして、外へ行ったときには、
「探せ!」
でお金を探し当てさせる、文字通り宝探しゲームをするのだ。
ライム、おまえの食いぶちぐらいは、自分で稼いでおくれ。