レオと一緒に川遊び

レオの仮病(?)騒ぎ以来、久しぶりに実家へ行って来た。
実家のベランダが、レオの昼間の居場所なのだが、
あの世の爺さんが、趣味でやっていた盆栽用のガラス温室が
ベランダにしつらえてあり、そこが現在のレオのトイレ場になっている。
実家はちょっと変わった建物で、土地面積いっぱいにコンクリートの
ガレージがあり、その上に木造2階建ての家が建っているのである。
で、縁側に面したベランダは、ガラス製の温室、そしてそのまま玄関を通り越して
勝手口までまでぐるっと回り込んでベランダになっているのである。
レオの居場所は、その温室から、玄関脇いっぱいまでである。
そのベランダ、日を遮る物がなにもないので、夏場は、
大型のよしずを2枚立てかけるようにして、日陰をつくってやるのである。
レオは自由に家の中に出入りできるように工夫してあるので、
どうしようもなく暑い日差しなら、家の中に入ってしまう。

今年は、ぐずついた天気が続いているために、よしずはりが、延び延びに
なっていたのである。
そろそろ暑くなりそうな気配があったので、よしずはりに行って来たのであった。
この作業自体はたいして時間はかからない。
風で飛ばされないように、よしずを針金で固定していくだけである。
だから、妹にレオを泳がせにつれていく約束をしたのであった。

最初は、いつもの丹沢渓谷に行くつもりだったのだが、車で約40分ほどと
時間がかかり、この日は、また午前中ぐずついた天気だったので、
行って増水してたら無駄足になってしまうので、
近場で妥協した。

うちから、車で10分ほどのところに(歩いてもいける距離である)
K渓谷という谷間がある。
周囲は、昔はなにもないところだったのだが、
15年ほど前から、山林は開発され、ちょっと上の方には新興住宅地がある。
しかし、このK渓谷は、ワタシがガキのころから、ちっともたたずまいが
変わらない、貴重な場所なのである。
V字状に切り立った深い崖のそこに川が流れ、大きな淵が一カ所ある。
そこでレオとライムを泳がせていたのであった。
そんな場所であるから、ほとんど人が入ってこない。
この日も、ワタシ以外には人影はなかったのである。

1時頃から泳がせて、1時間ほど遊んで、そろそろ帰るかな、と思ったときに、
下流から、ガキがやってきた。
レオとライムは、見慣れないガキなので警戒のほえ声をあげたのだが、
ガキが犬に興味を示して、遠巻きに
「その犬だいじょうぶーっ??」
と聞いてきたので
「大丈夫だよ、知らない人だからちょっとほえたけど、
噛んだり飛びついたりしないから、こっちへきなよ。」
と答えたのである。
レオも、ライムも、すぐにそのガキとうち解けて、なんだかうれしそうだった。

おじさん、ぼくね、友達と釣りに来たんだけど、飽きちゃったから、
こっちまできたんだ。下に友達いるから、そっちにいこうよ。」

こら、”おじさん”はないだろ。
まあいい。
その子は、上半身裸で、半ズボンもぐっしょり濡れている。
早い話が、水の中にそのままばしゃばしゃ入って来ちゃったんだよね。

その渓谷は、溶岩の裂け目が浸食されてできたところである。
大きな岩がごろごろ、溶岩の巨大な一枚岩に刻まれた溝が、天然の
滑り台のようになっていたりする、なんとも楽しい
場所なのである。
その子も、その岩場をつるつる滑りながら下っていった。
100メートルほど下流で、そのこの友達と合流したのである。
彼は、”釣り” と言っていたが、大したものを持っていたわけではない。
ほら、河口湖とか、山中湖、あるいは、東京周辺の川だと、立派なルアー竿に
豪華なルアーを持ち歩くガキどもがたくさんいるのだが、
彼らは、至ってシンプルであった。
そこいらで拾った1メートルほどの細い金属パイプに釣り糸とおもりを
くっつけて、それで釣りとしゃれ込んでいたのである。
おじさんは、そういう、シンプルな
スタイルはとてもとても好きなのである。

もともとワタシもガキのころは、ここで同じことをしていたのである。
その子たちは、特に泳ぐ準備をしてきたわけでもなく、上だけ脱いで、
水に入りたくなっちゃったから、そのままはいっちゃったのであった。
そういうノリ、
おじさんは大好き
である!!

ライムたちと最初に遊んでいたところは、深く切り込んだ淵であるのだが、
その子たちのいたところは浅瀬になっていて、(といっても深いところは、
ワタシの腰ぐらいはある。ま、渓谷だから、変化に富むのよ)
ウグイが、大量に泳いでるのである。
そのへんは、あちこちの岩の割れ目から湧き水が出ているので、
最初の淵より、若干水温は低めである。
ガキどもは、ワタシが来たこともあって調子に乗って、
手づかみで、ウグイを取り始めた。
これをワタシがガキの頃は、

ニギル

と称していた。
どこぞの大人たちが、芝生の上で
”ニギル”
のとは、根本的にちがうのである。
おじさんは、とてもとてもうれしくなってしまった。
ワタシも、昔取ったキネヅカとやらで、一緒になって
ニギッたのである。
川の中で、ガキどもが、じゃぶじゃぶ遊ぶので、レオもライムも
喜んで遊ぶ。
ガキどもがちょっと離れたところへいくと、レオも付いていったが、
ほかに人が入ってこないし、なにも危険なことはないので、
放っておいた。
試しに、ガキどもに付いていったレオを呼ぶと、なにをしていてもちゃんと
戻ってくるので、もう、完全に好きかってにガキどもと遊ばせることにした。
ほんとにレオは、ガキと遊ぶの好きらしい。
ワタシに対してと違って、飛びついたりぶちかましたりしないもんね。
だから、安心して、見ていられるのである。
ライムは、レオのところと、ワタシの間を行ったり来たり。
彼女は、ちょっとガキは苦手なのである。
でもレオがいるから、結構一緒に遊んでいた。


小一時間もおじさんはガキと一緒にはしゃいでいただろうか。
ウグイは、15匹ほど、集まった。
ガキどもに
「とったウグイを食ったことあるか?」
ときいたら、ナイというので、
ウグイは、塩焼きや、甘露煮で食えることを教えてやった。
おじさんは、こんなこともあろうかと、いつも折り畳みのナイフを
ぽっけに入れているのである。
車のトランクには、小さなガスコンロや、自分で防水加工したマッチ、
手斧、パラシュートコード、石鹸、救急用具など、必要最小限の
物を厳選して積んであるのだ。
ただし、ホントに必要最小限の物しか載せていないのであるが・・
厳選したコンパクトなお道具と、
どこにでもあるちょっとした物を工夫したお道具と。
山遊びや、川遊びをするときは、刃物を持っているかいないかで、
できることがぜんぜん違うのであった。
ガキの頃、この渓谷で、何度もボーイスカウトのキャンプをしていたから、
湧き水の場所も熟知しているのである
ワタシがガキの頃は、釣ったりニギッたウグイは、全部自分でさばいて、
調理もじぶんでやって、自分や家族で食ったものである。
そして、さばきかたを、ガキどもに実際に見せてあげた。
さばいたウグイを、湧き水であらう。
本当は、そこで火をおこして、試食したかったし、
ガキどもも、とても乗り気だったのだが、
雨が続いていたためにまともな薪が集まらず、
それは断念した。

ガキどものおかげで、とても楽しい一日を、過ごすことができた。
レオもライムも、くたくたになるまで遊んだのである。
”おじさん”
と呼ばれるのは気にくわないが、とてもいい出逢いであった。
3時頃には帰るつもりが、夕方暗くなるまで、遊んでしまった。
いつかまた、このガキと会ってみたいものである。”おじさん”は。
その場でさばいたウグイは、笹の穂をナイフで切ってそれに通して持ち帰り、
あとでおいしくいただきました。

無用の殺生はしない。だが、殺生した生き物は、
きちんと食べて自分の血肉にするのが、礼儀である。

と頃得るのである。
おじさんの足は、5カ所ほど虫に食われて
(蚊ではなく、たぶんブヨだろう)
赤い勲章が残った。
2日たったいまだに、赤い勲章はカユイけど、
思い出すととても気分爽快の川遊びであった。