温泉つかってテレビに出よう?

トルルルル、トルルルル
それは一本の電話で始まった。

「ハイ、横山です。」
「あ、横山さん、サラのとこのYですけど。」
サラとは、ビアデッド・コリーのサラちゃんで、
Yさんはそこの奥さんである。

「あ、どもども、こんちは。」

「あのさあぁ、突然だけど、みんなで温泉行ってどんちゃん騒ぎしなぁい?」

この、”みんな”とは、犬つれて公園に集まる人たちのことである。
楽しそうなお誘い。
しかし、ワタシは、道楽者である。
だが、決してお金持ちではナイ。
懐はいつも寒いのである。
だから、どうしようかとても迷ったのである。

「もちろんライムちゃんも一緒でだいじょうぶだよ〜。」

ぐらぐら。震度3。

「泊まりはねぇ、犬も同じ部屋でOK」

おお、震度4。

「それでねぇ、足代はでないけど、飲み食いタダ! 一円もいらないよ〜。」
超弩級直下型大地震!!


「万難を排してでも、参加させていただきます。」

まあ、うまい話には必ずウラがある。
行き先は、ペンション・ブランシェ草津
温泉の王道、草津である。
毎年、11月をすぎるあたりから、週末はスキー客でにぎわうらしい。
しかも、愛犬を同伴で宿泊できる数少ないペンションなのである。
12月末に2月放送分のテレビの取材のスケジュールが組まれていたのである。
もちろん、犬同伴のスキー客でごった返すところを撮るつもりだったらしい。
ところが、この年は、
暖冬で、雪がじぇんじぇんナイ。
雪がなけりゃ、スキー客もナイ。

おまけに、取材日は、仕事納めにちょうど当たってしまう金曜日だったので、
ますます、空きだらけ。
お客さんがいないと絵にならない、
そこで、番組製作会社は、我らがYさんに、犬好きのネットワークを利用した、
人集めの依頼をしたのであった。
要するに、
”タダで飲み食いする代わりに、取材に協力してね”
ということなのだ。

犬好きのグループが、
犬のお誕生日会をペンションでやっているところを
峰竜太さんが取材する、というシナリオまですでにできているのであった。

ま、早い話が、
サクラ
なのである。

我が愛車、おんぼろブルーバード1800SSSアテーサ4WDリミテッドに
荷物と、便乗のチャッピー(ゴールデンリトリーバー)その他を乗せて、
目指すは草津。
草津に近づくにつれて、お食事どころの看板が目につく。

「あれ食べたーい。」
「これも食べてみたーい。」

大騒ぎ。もちろん騒いだのは犬ではない。
しかし、食べたい気持ちをこらえ、ペンションに到着。
我々がいっちばーん乗りであった。

ペンションに着くと、いろいろと説明を受けた。
入り口脇には、犬の足洗い場があり、水とお湯が24時間
いつでも使うことができ、足拭きのおしぼりまで、用意されている。
その反対側には大きなポリバケツと、ビニール袋がおいてあり、
犬との外出時にその袋を持って出て、持ち帰ったおみやげは、
そのポリバケツに袋のまんまぽいすれば、あとはすべて、ペンション側で
処分してくれると言うことであった。
なんと驚いたことに、ペンション内は、全域犬同伴OKなのである。
犬をつれて宿泊できるところは最近徐々に増えているが、
館内どこでもOKというところは、まだまだほんのわずかしかあるまい。
しかも、犬種は、小型犬でも大型犬でも何でもありなのである。
犬と同室で、部屋のどこで寝させても文句言われない。
レストランだって、もちろん犬同伴である。
こんなに犬好きにとって至れり尽くせりのペンション、そうそうあるモノではない。
オーナーによると、これまでにレストラン内で犬がトラブルを起こしたことは
一度もないそうである。
どの犬も、いつもと違った雰囲気(要するに公の場所であること)
を敏感に感じ取り、
どんな犬も、自然におとなしくなるんだそうである。
でも、うちのライムは、それほど大きな犬じゃないのに

図抜けた食いしん坊
とても食いしん坊

である。ワタシは、一抹の不安をぬぐい去ることができなかった。

さて、集合時間にはまだ早かったので、そこらあたりを散策と洒落こんで
戻ってみると、三々五々、みんな集まってきたようである。
撮影のクルーも到着し、打ち合わせが始まった。
基本的に、レストランでのどんちゃん騒ぎを峰さんが取材するということであった。
一通り説明が終わった後、

「お風呂にはいれるワンちゃんはいませんかぁ?」
「あまり大きすぎず、さりとて小さすぎずの子がいいんですけどぉ。」

と、ディレクター女史の目が、ライムに止まった。

「こ、このこいいわあ、うん、このこ、お風呂どですか?はいれますか?おふろ、
ね、はいりましょうよ、
だいじょうぶですよね?」


鼻息が荒い。
迫力にけおされて


「あ、いや、はいれますけどね、でも泳ぐのは好きなんですけど、
おふろは大嫌いで・・・どうかなぁ・・・」


と、曖昧にこたえてるのに、


「あ、じゃ、おねがいしますね。
食事シーンをとったあとにお風呂、いきますから。」

「・・・・・・・」

結局、ライムと、ビーグル(たまたま居合わせたお客さんの犬)
と、バブ(フレンチブル)たちが出演することとなった。

さて、お誕生会シーンの撮影である。
食いしん坊のライムは、やっぱり料理の香りにそわそわし始めたのであるが、
一度諭すと、テーブルのしたでちゃんと行儀よくしている。
ふっしぎぃ〜?
ほかの犬たちも、みんなそう。
どして??
料理は、ペンションの名の通り、ヨーロッパ料理風なのである。
味の方はかなりよい。
少なくともわたしは気に入ったのである。
肝心の食事会の取材は、あっという間に終わった。
おそらく、そのシーンはトータルで1分もビデオ回ってなかったんじゃないか?

いよいよ問題の入浴シーン。
ここのお風呂は、窓がなく、吹きさらし、露天風呂もどきである。
で、男湯は、犬と一緒に入れるようになっているふろと、
さすがにいぬと同じ湯に浸かれないお客さん用の風呂と続き部屋になっている。
女湯にはワタシははいっていないので(当然です!)
そちらの様子までは分からなかった。

ライムを湯船につけると、やっぱり、いやがる。
なんとかつからせたまま待てをさせる。
ワタシの姿が見えなくなると、間違いなく出てしまうので、
ワタシだけ、カメラの死角でずっと見ていた。
なんども我慢しきれずに湯船から出てしまい、
数回取り直しもあった。
なんとか使えそうなシーンがとれたので、
OKにしてもらった。
ライムにはいい迷惑であった。



2月にその放送を見た。
やはり、そう大した時間映ってはいなかった。

番組で、峰さんに司会者が質問する。
「は〜、犬と一緒に温泉にはいれるんですかぁ!」
「ええ、そうなんですよ、もう、最高ですねぇ。」
「ワンちゃんたちって、温泉だいじょうぶなんですね。」
「ま、なかには、いやがって出てしまう子もいるんですけどね。」

それは
ライムのことで〜す

でも、タダで飲み食いして温泉つからせてもらったからよかったよかった。
ありがとね、ライム。

翌朝早く、ライムに起こされて散歩に出ると、何人かやっぱり散歩をしていた。
たまたま雪が降ってうっすらとつもっていた。
ライムは、

雪が大好き
おおよろこび!!
これでライムも旅行に来た甲斐があったというものだね。


犬好きのかた、ぜひ、草津にお寄りの際は、ペンション・ブランシェ草津へ。
絶対に行って損はありません。


ブランシェ草津 0279-88-7000