ピカチュウ
ワタシの仕事時間はたいてい午後からである。
仕事の時は、出かける直前に必ず、そう、雨が降っていようと
雪が吹き付けていようと、必ず、ライムをおさんぽにつれていくのである。
おさんぽから戻って、なんだかんだ出かける準備をしているときに、
ふと、
「犬たちってば、どうやって、人を見分けているんだろう?
背格好か、それとも顔形か、はたまた臭いか?」
ワタシは探求心旺盛である。
好奇心と言っても意味は同じだろう。
気になると、確かめずにいられないのである。
ガキのころは、密かにマッドサイエンティストに憧れていたのだ。
(ホントだよ。いまでもジツはちょっとなってみたかったりする)
知的好奇心の欲求に我慢できなくなったワタシは、
やっぱり実験してみちゃったのである。
アマチュア無線で使う、自動方向探知器の特殊なアンテナに
ピカチュウのお面を引っかけてあったのを思い出した。
(なぜピカチュウのお面がそんなところにあるかは、
深く追求しないように。そこにそれはあるのだ。)
こいつだ。これをつかおう。
鞄に入れて持って歩くと壊れそうだったので、
入り口の扉にぶら下げようかとも思ったのだが、
盗られてもつまらないので、
ガスメーターの扉の中に隠しておいたのである。
ライムは、滅多にほえない。
ワタシが一緒にいるときに、外で物音がすると、低めの声で
いかにも警戒してますと言った風情のほえ方をちょっとするぐらいである。
町中で不審な人を
(歩いていて突然すっ転んだひと、とか、
動きの予測がつかない子供などが不審に見えるらしい)
見かけたときも、たまにほえるぐらいか。
ワタシが外出から帰ってくると、
いつも玄関の扉を開けた瞬間に、
短いしっぽをけいれんしたように振りまくって、
ピィッ、ピィッ、
と、鼻にかかった声でとても喜んで出迎えてくれる。
さて、仕事も終わり、お楽しみの実験である。
鍵をがちゃがちゃやっていると、扉の向こうで
すでにしっぽを振っている。(郵便受けの隙間からちらちら見えるのだ)
さあ、ピカチュウのお面をかぶって、扉を開けると・・・・
いつものように、しっぽを振りながらピィ鳴きをして、足下に
飛びついてきたのだが、
ライムが顔を上げて視線があった瞬間、
ものすごく驚いたらしい。
ぱっと飛び退いたかと思ったら、警戒のほえ声で
思い切りほえられた。
こちらから近づこうとすると、
臭いはワタシなのに、顔が変なので、
すぐに飛び退く。
あまりに驚いたのだろう。
おしっこちびった!!
生涯2度目である。
ちょっとかわいそうなことをしたと思い、お面をはずすと、
すぐにいつものように飛びついてきた。
これで、犬は、顔かたちで人を見分けられることがはっきりしたのである。
またひとつ、マッドサイエンティストは、新しい発見をし、
世界征服の野望に近づいたのだった。

イラストは、ワン絵プロフェッショナル”あちこさん”作。
興味のある方は、リンクページから行ってみてください。