名前探しの放課後

辻村深月・講談社

同級生の自殺を巡るミステリ。明らかに「冷たい〜」の二番煎じじゃないか。
それでいて「冷たい〜」ほど呼称が定まらないので、誰の台詞なのかがイマイチ分からないし
誰の視点で物語が進んでいるのかも定まらない。
序盤は優しさに欠けた辛口な読み方をしてしまった。

ところが後半にかけて、あれよあれよと辻村ワールド展開。
「凍りのくじら」「子供たちは夜と遊ぶ」「ぼくのメジャースプーン」と連環するとは。
更にチヨダ・コーキが「スロウハイツの神様」へと繋がっているらしい。
伊坂ワールドもビックリだな。

辻村ワールドの共通点が、この作品にも垣間見られる。
間違いなく辻村深月は『いい子』として育てられ、
児童会長や生徒会長へのコンプレックスがあるんだろう。
坂崎や、おそらく長尾も片親。親の出奔も辻村キャラの特色。
田舎と都会のギャップも辻村の底流の1つ。
そこで地デジかぁ。広く遍く普及させるために私の仕事があるわけだけどね。
呉地ってミニサテもカバーしない様な辺鄙な土地なワケ?

仕掛けた伏線のしまい方は上手いと思う。
物語りのカギとなる交通の便の悪さを何度も強調している。
おじいちゃん先生の帰宅時のタクシーだったり、
ハジメを体育倉庫から救うためにいつかとあすなが乗るタクシーも。
でも電車がない時間帯に学校前の開かずの踏切とは?

某掲示板で辻村深月がえらく叩かれていたのだけれど、
自分が好きなものを酷評されるのは不愉快だ。
いろいろツッコミどころはあるけれど、やっぱり私は辻村深月が好きだ。

恩田陸風に言えば、“魂が上等”な人たちの集い。
高校生にしては随分キャラが背伸びしてる気もするけど、心暖まる1冊だった。

ここからはネタバレありの、2周目。

(10/04/17)


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