ラッシュライフ

伊坂幸太郎・新潮文庫

まったく関係のない独立した視点が、少しずつ連環していく。
なるほど、これは面白い。
そしてその連環のちょっとしたズレが明らかになっていき、また面白い。
コンセプトはよく分かった。
よく整理するとこんな風になるのだね。
エッシャーのだまし絵の様に、時系列も連環して元に戻るのかと思ったけど、そこまでは破綻させなかったか。
恩田陸ならやったかもな。

■志奈子
志奈子の物語にだけマークが無いのは寂しいね。

■豊田
豊田が舟木の昇進を確認する電話を入れるシーン。
電話に出た後輩が飲みに誘う件で目頭が熱くなる。
でも「ありがとう」を言わずに切っちゃダメだろ。
後輩クン、「何だよ」って文句言ってるかもよ。

■黒澤
人生については誰もがアマチュアだ。なるほど。けだし名言。
ただし佐々岡と語り合ってる最中の瞬間移動で、
この作品のコンセプトである時差トリックが透けて見えた。
佐々岡が黒澤邸に侵入した際の「予期せぬ先客」ってミスリードはアンフェアでは?

■京子
青山の車のトランクで死体がバラバラになるのは「かまいたちの夜」みたいだった。

■河原崎
塚本が自分を描かせなかった辺りで、彼の真意は分かった。

(10/02/14)

DVDを借りてみて・・・「となり町戦争」なみにガッカリ。活字万歳。
河原崎編はボブ・ディランもなく黒澤へバトンタッチ。これじゃ全くもってバトンリレーなだけ。
そして黒澤が若すぎるだろ。強盗老夫婦も登場せず。佐々岡との問答も淡白。キューブリックが出てこない代わりにクリームソーダが出てくる。
京子は膀胱炎の代わりにムチウチに。サトエリと寺島しのぶなら、そりゃサトエリだろう。老犬との絡みや展望台に登るシーンは無し。
豊田はほとんど割愛。井口との遭遇くらい。京子にも出会わないし、オヤジ狩りにも遭遇しないし、郵便局強盗も行わない。
さすがに戸田とのやり取りはあったけど、クジは豊田が持っていかなきゃ仕方ないだろうに。
一文字ずつ託していく味のあるシーンもばっさりカット。
仙台の代わりに選ばれた桜木町に意味はあったのか?

(10/02/28)


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