コロヨシ!!

三崎亜記・角川書店

伊坂ワールド、辻村ワールドと同じく、三崎亜紀もこってこてに作り込まれた成和ワールドがある。
きっと作品群を跨ぐキャラもいるんだろう。この世界観嫌いじゃない。いよっ、出ました一角龍鳥 !
『掃除』は鴨川ホルモーみたいな架空の設定下でのスポーツ。動きを描写だけでイメージするのは難しいので、実写化されないかな。

展開は比較的ベタ。大介の転校や、異邦郭の暫定王者は読めた。
顧問の飼ってるオタマジャクシが新入部員を表しているのもね。
寺西顧問は、スラムダンクの安西先生みたいなものだ。
樹の爺さんは政府直轄校で『掃除』を指導してると見た。
父親は道を歩く、あの「歩行技師」? いや、違ったか。

他の作品との連環も気になる。
双頭の龍の刺青なんて珍しくもないかもしれないが、澪合わせだか何だかで居留地にいた鈴とか言う女の子が高倉偲か?
石祖開祖は紛れも無く「失われた街」にも出てきたハンドルマスターだな。
廃墟促進剤も、「廃墟建築士」に出てきたんだろう。
古奏器とか、音への拘りは感じる。三崎亜紀の底流の一つだね。
“片付けられない”過去を持つ、日登美はどの作品のどんな設定を背負ってるんだ?

青春時代の反骨と挫折と恋心と。そんなテーマかな。三崎亜紀の作品群では比較的明るい物語だと思う。
次回作「海に沈んだ町」に大きな喪失が待っているのかな。
少なくとも、本作には続編があるに違いない。
梨奈の父親が渡した家の鍵が持つ意味も明かされなかったし、
大介の召喚部の活動にもオチが無かったのが気になる。
小塚尚美・佐緒里の義理姉妹も、今ひとつキャラが描ききれてない様な。

ただし物語は何から何まで全てを書く訳にはいかないし、むしろ何を書かないかがセンスなんだろうね。
例えば「銀英伝」ではヤンの死後は書かれても、ラインハルトの死後は書かれなかった。
ロイエンタールやシェーンコップの死は書かれても、ビッテンフェルトやポプランの死は書かれなかった。
だから、やっぱり『掃除』についてもこのくらいで筆をおくのが上策なのかな。

(11/01/11)_


茶色い本棚(国内作家)へ戻る

私の本棚へ戻る

タイトルへ戻る