事件と性の扱いは「ラットマン」「シャドウ」に似通ってる。
一つの事象を受け取り方によって複数の真実(ミスリード)を成立させる道尾流炸裂。
睦男を殺したのはいったい誰なのか。脅迫者の正体は。
登場人物が限られるだけに、怪しい人物の特定も比較的簡単ではある。
だけど、序盤から登場人物の言動を疑いながら読まなきゃならないのはしんどい。
それにしても救われないお話。皆が不幸。
翔子(本名は分からず終いだし)は救出されたかもしれないけど、既に廃人同様だし。
深雪の死の真相は分からぬまま。確かに辰也の推測どおり康文の未必の故意によるものだったのかも。
辰也がレッド・タンに謝罪に行こうとした理由は、蓮が楓の兄と知り印象を良くしようと思ったのか。
スカーフが辰也の手に渡るために必要な仕込ではあるが、ちょっと不自然と言うか違和感あり。
吉岡との再会もご都合主義の至りだし。
■文庫化を再読
解説を読んでなるほど。
まさか現代に蘇ったスサノオノミコトとはね。確かに高校の先生の逸話は唐突で違和感あったんだよ。
屈折と言うか、錯覚と言うか、“ハマらなさ”が道尾秀介の真骨頂なんだとすると
まぁ、この物語や「シャドウ」なんかは、らしい作品だよね。