虚貌

雫井脩介・幻冬舎文庫

登場人物の多くが鬼籍に入る殺伐とした物語。犯人は誰なんだ?
最後まで読み通し、解説まで読み終えると、この作品の賛否両論にも頷ける。
これはミステリーでも推理小説でもなく、ファンタジーだと捉えるか。なるほどプロはいろんな見方をする。
私が思うのは、この犯人はこれまでどうやって生計を立てていたのだろうという点。
八面六臂の活躍を支える財力にリアリティを感じなかったのだが、ファンタジーなら重箱の隅を突くのは無粋か。

大事なキャラクターは序盤に顔見せを済ましておく。
山田裕二氏はどんな犯罪被害に巻き込まれていると言うのか。
辻薫平と北見宣之はどう絡むのか?
有田3兄弟は遅すぎる登場なので、推理小説としては犯人候補から除外しても良いだろう。今枝君、残念。
浮気がばれた釜地編集長。
所属タレントが失踪の後に死んじゃった<ルーシープロ>高江社長や冬木マネージャー。
彼らのその後も気になる。

この作中で『顔』については執拗に書かれている。辻のカバーマーク、朱音の整形手術、清水塾、守年の面の無さ。
逆に荒の指紋だけは、明確な答えがないまま。彼の腕を持ってすれば復元も容易かったと言うことなのか。
また清見塾に遺された征彦のライフマスクが粉々になっていた事から、かつての師である平賀は何を感じ取ったと言うのだろう。
辻がわざわざ警察手帳を紛失した事にして追いかける事にした真意も分からない。
征彦が湯本殺害するのを予想した上で、応援を求める意味があったってこと?

守年について飛水峡へ行った人物の正体は想像できた。
辻の体調が思わしくないから、彼が替わりに守年の相手を務めたと言う事ね。
守年は朱音を追うため。彼は湯本を殺すため。
「俺はやってない」と言うけど、ガソリンで顔を焼くのは報復以外の何物でもあるまい。

舞台が名古屋圏なので、いつも本を借りているN先輩(岐阜出身)に提供するには打って付けだ。

(10/05/15)_


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